杏子、山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博など数々の有名アーティストが所属するオフィスオーガスタは、2021112日に設立30年目を迎えました。「この節目の年に、アーティストや共に音楽を届けてくださるスタッフの皆様、そして何よりオフィスオーガスタの発信する音楽を愛し、応援してくださるリスナーの皆様へ、改めて感謝とエールを送りたい」という思いを「MUSIC BATON」と言うタイトルに込め、この一年を通して様々なライブをお届けしていきます。

オフィスオーガスタの設立30周年イヤーを記念し、昨年11月にスタートしたライブシリーズ「Office Augusta 30th MUSIC BATON」も、この日ですでにVol.930周年を迎えるクライマックスに向けて、佳境に差し掛かった。登場するのは、設立に深く関わったオフィスオーガスタのキーパーソンであり、所属アーティストたちの姉貴分的存在である杏子だ。杏子自身にとっても、ソロ活動を本格的に開始して30年の節目となるため、この日のライブは『KYOKO 30th Anniversary Special Live』と銘打たれた。

開演時刻の17時を少し過ぎると、場内が暗転する。ステージ上に映し出される『KYOKO 30th Anniversary Special Live』の文字、そして杏子のこれまでの歩みを綴ったフォトストーリー。期待が高まる中、杏子が颯爽とステージに登場する。ライブのオープニングを飾ったのは、’97年リリースの4thアルバム『TOKYO DEEP LONDON HIGH』の1曲目に収録された「イヌ」だ。自らギターをかき鳴らし、ブルージーでルーズなノリのロックンロールを披露する。間髪入れず、ギターを置いてマイクを手にした杏子は、「Welcome to the Nightmare」を披露し、スモーキーなシャウトと華麗なターンで魅了して、最初のMCへ。続く最新アルバムのタイトル曲「VIOLET」ではサングラスをかけ、重厚で荘厳なロックサウンドの中で力強い歌声を響かせる。サングラスを外し、ハットを被ってパフォーマンスした「JOHNNY MOON DOGの行方に関する仮説」では、スライドギターが妖しく響く。5曲目の「アヴァンギャルド」で上着を脱ぎ捨てると、セクシーなワンピース姿に早替わりして、引きずるようなブルースロックを聴かせる。ここまでのセットリストではブルージーな魅力を持ったナンバーが多く、杏子のハスキーな歌声との相性の良さが光る。「アヴァンギャルド」を披露したあと、メンバー全員が色とりどりの和装に着替え、会場が一体になるナンバー「幕末wasshoi」をパフォーマンス。会場全体で両手を掲げるパフォーマンスを促す杏子だったが、2階席に座る関係者たちの反応の鈍さを見るとすかさず指摘し、「みんながやってくれるまで、先生は帰りませんよー!」とユーモアを交えて会場の雰囲気をほぐす。最終的に会場が一体となると、「ありがとう!やればできる子たち!」と、実に杏子らしい表現で観客たちに語りかけた。

そしてここで、ゲストを迎えていることを明かすと、「ゲストを迎えるから」という理由で白いシャツとネクタイに着替える杏子。その理由こそチャーミングだが、視覚的にもファンを楽しませたいというサービス精神が、ここまでの衣装チェンジの多さからは伝わってくる。そんな杏子からゲストとして呼び込まれたのは、TRICERATOPSの和田唱。ステージに姿を現すと、すぐにギターを鳴らし始める。疾走感たっぷりのロックンロールは、杏子のソロ20周年記念アルバム『Skys My Limit』でTRICERATOPSと共演した和田唱作詞作曲ナンバー「Silly Scandals」だ。10年ぶりの共演を果たした2人だったが、続くMCでは息の合った掛け合いを披露する。「大金星よね~」と、杏子がらしい言い回しで和田の結婚を祝福すると、すぐに「杏子さんはどうなんですか?」と切り返す和田。すると杏子は、「私?触れちゃう?」とおどけ、会場には笑いが起こる。その後、杏子は「お酒が進むと聞かれてもないのに自分の恋愛話をする」という自らの気質を明かし、再び笑いに転化する。このあたりの話術は、やはり長年のラジオパーソナリティとしての経験がなせる技であり、杏子の魅力的な人柄が感じられる瞬間でもある。丁々発止のやりとりをしたあとは、BARBEE BOYSの「目を閉じておいでよ」を2人で歌い、一気にファンを魅了する。和田をゲストに迎えたラストの曲は、福耳の1stシングル「星のかけらを探しに行こう Again」だ。もともとは杏子のソロ曲のリメイクだが、今やオフィスオーガスタを象徴する名曲に育った同曲をこのライブで披露したことからは、オフィスオーガスタと杏子の30周年を自ら祝福する意味合いが感じられた。

和田がステージを去ったあとは、「“Hell its me”」と「The Black Knight」、「MUDDY FLOWER」を立て続けに披露。ハードでエッジの効いたナンバーからラフでタフなロックンロールまで、ボーカリスト・杏子の底力を痛感させてくれる。

大きな手拍子に応えて登場したアンコールでは、1曲目に玉置浩二が作曲を手がけた「DISTANCIA~この胸の約束~」を歌う。ソロシンガーとしてのスタート地点になった同曲は、玉置浩二らしい哀愁と情熱が同居したナンバーだ。歌い終えると、「私は、相変わらず歌い続けていきます!」と力強く宣言し、最後に披露したのは最新シングルの「30minuets」だった。BARBEE BOYSが解散する最後の最後の30分で、その後の身の振り方を迷っていた杏子が、「やっぱり私は歌い続けたい」と決めた時の思いを込めた曲だ。そんな深い思いを最新曲に託し、自身の30周年記念ライブで初披露した姿に、時を重ねて歴史を作り上げていくことの尊さと、ここからさらに歌い続けていく杏子への期待が交錯した。

取材・文/大久保和則
写真/清水ケンシロウ

Office Augusta 30th MUSIC BATON vol.9杏子『KYOKO 30th Anniversary Special Live』

SET LIST
M1.イヌ
M2.Welcome to the Nightmare
M3.VIOLET
M4.JOHNNY MOON DOGの行方に関する仮説
M5.アヴァンギャルド
M6.幕末wasshoi
M7.Silly Scandals with 和田唱
M8.目を閉じておいでよ with 和田唱
M9.星のかけらを探しに行こう Again with 和田唱
M10."Hell it's me"
M11.The Black Knight
M12.MUDDY FLOWER
En1.DISTANCIA〜この胸の約束〜
En2.30minutes


杏子 / ゲスト:和田唱(TRICERATOPS)
バンドメンバー: 木下裕晴(Ba)、吉川LEE理(Gt)、坂本暁良(Dr)
┗2022年8月14日(日)@東京・duo MUSIC EXCHANGE

Office Augusta 30th MUSIC BATON『MUSIC BATON 〜The Final〜』

出演:杏子、山崎まさよし、岡本定義(COIL)、元ちとせ、スキマスイッチ、 長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、松室政哉
※スキマスイッチはVTRでのパフォーマンス出演です。
【MUSIC BATON Nice Band】
Guitar/外園一馬、 Bass/佐藤慎之介、 Keyboard/山本健太、 Drums/岡本啓佑
日程:2022年11月1日(火)
会場:東京・豊洲PIT

Office Augusta 30th MUSIC BATON

Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.12

さかいゆう『歌い繋ぎたい音たち』
出演:さかいゆう
日程:2022年10月15日(土)
会場:東京・duo MUSIC EXCHANGE

Office Augusta 30th MUSIC BATON

Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.11

山崎まさよし『YAMAZAKI MASAYOSHI Special Live at BLUE NOTE TOKYO』
出演:山崎まさよし/ゲスト:塩谷哲
日程:2022年10月12日(水)
会場:東京・Blue Note Tokyo

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