杏子、山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博など数々の有名アーティストが所属するオフィスオーガスタは、2021年11月2日に設立30年目を迎えました。「この節目の年に、アーティストや共に音楽を届けてくださるスタッフの皆様、そして何よりオフィスオーガスタの発信する音楽を愛し、応援してくださるリスナーの皆様へ、改めて感謝とエールを送りたい」という思いを「MUSIC BATON」と言うタイトルに込め、この一年を通して様々なライブをお届けしていきます。
今年11月に設立30周年を迎えるオフィスオーガスタの30周年記念イヤーライブシリーズ「MUSIC BATON」。そのVol.6として、松室政哉のソロライブ『F.O.M』が渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催された。
18時になると、まずはウェルカムアクトとして、ReiRay(レイレイ)が登場した。2人は、オフィスオーガスタに所属して活動を続けていたバンド・FAITHのヤジマレイとレイ キャスナー。FAITHは昨年8月に惜しまれつつも解散してしまったが、そのメンバーだった2人が新たにユニットを組んで再出発しているのだ。結成してまだ半年。そんな彼らにとっては、この日が東京で初めての有観客ライブになる。しかし、緊張よりも楽しさのほうが勝っていることが、2人の笑顔と弾むような演奏から伝わってくる。ReiRayは、ツインボーカルとツインギターで計4曲を聴かせてくれたが、どの曲も未来に向かってどこまでも伸びていくような歌声とメロディーが、瑞々しい輝きを放っていた。一緒に暮らしているという2人の仲の良さや、それぞれのキャラクターが伝わってくるMCも楽しい。何より、彼らが歌い、演奏している空間が心地良かった。
ウェルカムアクトのReiRayのライブが終わり、いよいよ本編がスタートする。ステージにバンドメンバーが登場し、ベースのソロから演奏がスタートする。エレクトリックピアノ、ギターとゆっくりと音が重なっていき、ジャジーなサウンドが形作られていく。その演奏が終わりに差し掛かった頃、この日の主役である松室政哉がゆっくりとした足取りで姿を現した。1曲目は、福耳の「星のかけらを探しに行こう Again」だ。これまでも、節目節目で所属のアーティストたちの活動を彩ってきた、オフィスオーガスタの象徴のような名曲での幕開けに、満員の会場の温度がぐっと上がる。オリジナルよりもメロウにアレンジされたサウンドに、松室のスウィートな歌声がよく映える。そこに生まれるグルーヴ感に、早くも体が動く。歌い終えた松室は、「こんばんは! 松室政哉です!」」と観客に挨拶し、さっそくこの日最初のMCに。そこでは、ライブタイトルの『F.O.M』は「フレンズ・オブ・松室」という意味を持っていることなどが語られる。そして松室は、おもむろにアコースティックギターを手に取ると、「ここ数年、楽曲提供をいろいろやらせてもらってるんですが、ここからはセルフカバーさせてもらいます」と語り、ライブが再開した。
会場にピアノのコードが響く。松室がアコギを弾き始める。歌い始めたのは、3人組YouTuberのばんばんざいに提供した「ラテ」だ。ミディアムテンポのラブソングが、切なくも温かく会場を包む。「ラテ」を歌い終えると、ドラムのカウントが始まる。そのカウントを合図にするかのように、松室はアコギを置いて歌い出す。「ラテ」に続いて歌うのは、6人組ボーイズグループ・世が世なら!!!に提供した「いとしき世界」。ゆったりとしたグルーヴとすき間を活かした演奏が、会場内の空間に広がりを感じさせる。やさしく、やわらかい歌声と演奏だ。そして。松室は再びアコギを手にする。スピード感のあるドラムのカウントから、情熱的なボーカルと感傷的なギターが絡み合う。松室が、インディーズ時代に遊技機「CR仄暗い水の底から」に提供した「Fallen Angel」のセルフカバーだ。ソウルフルな中にハードな一面を見せる歌が、松室のここまでにはない魅力を引き出している。
3曲のセルフカバーを披露した松室は、MCで「今回は『F.O.M』ということで、いろんなことがやりたかった」と、この日のライブに込めた思いを語る。「MUSIC BATON」はこの日でVol.6を数えるが、毎回出演アーティストたちは普段とは異なる趣向を凝らし、特別な時間を作り上げようとしている。それはきっと、オフィスオーガスタという場所への思い、「MUSIC BATON」というライブ企画への熱意が特別だからなのかもしれない。MCの最後で、松室はウェルカムアクトとして素晴らしい演奏を披露したReiRayの2人を呼び込む。
2人を迎えて、まずはReiRay初のバラード楽曲である「Precious Moments」をパフォーマンス。ヤジマの透き通った声とアコギから始まり、間奏では2本のギターがかき鳴らされる、切なくもドラマティックな展開が魅力のナンバーだ。続いては、さわやかな曲調と失恋を描いた歌詞のコントラストが切なさを増幅させていく松室のナンバー「オレンジ」。松室とヤジマ、レイ キャスナーの歌声が重なり合う。「オレンジ」を披露したあと、ステージに呼び込んだのは、同い年のシンガーソングライターである、村上佳佑。松室と村上は同い年らしく気のおけないトークをひとしきりしたあと、松室が編曲を担当した村上の楽曲である「Alright」、松室のソウル風味のシティポップ「今夜もHi-Fi」を楽しそうに披露してくれた。
2組のゲストとの共演が終わり、再び松室のソロへ。メランコリックなピアノの旋律に寄り添いながら、語りかけるように歌うスローナンバー「Eternal」だ。続く「午前0時のヴィーナス」では一転して、観客にハンドクラップをリクエストする松室。自身も軽やかにステップを踏みながら、跳ねるようなビートで’90年代のポップスを彷彿とさせる。「午前0時のヴィーナス」を歌い終わると、”みんな出てこーい!”と声をあげ、ReiRayの2人と村上を呼び込む。そして、この日の出演者全員がステージに集うと、会場全体でハンドクラップをしながら「踊ろよ、アイロニー」をパフォーマンス。サビでは、松室と村上、ReiRayの4人が、ユニゾンのボーカルで聴かせてくれた。
「踊ろよ、アイロニー」で本編が終了すると、すぐにアンコールを求める拍手が起こる。その拍手に応え、ステージに戻ってくる松室。アンコールに選んだのは、この日が初披露となる新曲「大人の階段 駆けおりない?」だ。ファンキーなギターカッティングからシティポップなグルーヴが高揚感を生む、アダルトな松室流ディスコティック。初披露ではあるが、観客たちは思い思いに体を揺らしている。松室の新たな代表曲になりそうな予感がするナンバーだ。
アンコールも終了し、会場が温かい拍手でいっぱいになる。とても楽しくて、心地良くて、ハッピーな気分になれたライブだったなと思う。松室政哉は2組のゲストを招き、それぞれがお互いに自分の音楽を、そして歌を交歓した。「MUSIC BATON」という名に、ふさわしいライブだったなと思う。
- 取材・文/大久保和則
- 写真/清水ケンシロウ
Office Augusta 30th MUSIC BATON vol.6松室政哉 『F.O.M』
SET LIST
M1.バンドセッション~星のかけらを探しに⾏こう Again
M2.ラテ(ばんばんざい:提供曲カバー)
M3.いとしき世界(世が世なら!!!︓提供曲カバー)
M4.Fallen Angel(『CR仄暗い水の底から サウンドトラック』︓提供曲カバー)
M5.Precious Moments(ReiRay/ゲスト︓ReiRay)
M6.オレンジ(ゲスト︓ReiRay)
M7.Alright(村上佳佑/ゲスト︓村上佳佑)
M8.今夜もHi-Fi (ゲスト︓村上佳佑)
M9.Eternal
M10.午前0時のヴィーナス
M11.踊ろよ、アイロニー~ALLセッション
En.⼤⼈の階段 駆けおりない︖
松室成哉/ゲスト:ReiRay / 村上佳佑
バンドメンバー:岡本啓佑(Dr)/植松慎之介(Bs)/外園一馬(Gt)/松浦はすみ(Key)
┗2022年4月16日(土)@東京・duo MUSIC EXCHANGE
Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.7
秦 基博
出演:秦 基博 / トオミ ヨウ
日程:2022年5月27日(金)
会場:神奈川・ビルボードライブ横浜
OPEN / START
1stステージ:開場17:00 / 開演18:00
2stステージ:開場20:00 / 開演21:00
Office Augusta 30th MUSIC BATON
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