――昨年の「For Weekday Morning」に続いて、理美容店向けに「〜A New Me -クールで新しい自分〜」というテーマでプレイリストを作っていただきましたが、mabanuaさんとしてはどういうことを意識した選曲や流れになりましたか?
「美容師の友達もいっぱいいるんですけれども、本当にお店で雰囲気がそれぞれ違っていて。賑やかな音楽が流れてるところもあれば、オーガニックなほぼほぼドローンミュージックしかかかってないようなところもあったりすごく幅広いなと。なのでその両方で流せるようなプレイリストにもしたいなと思ってたんですよ。かといってノリノリすぎてもノらなすぎてもアレだしっていうので、どっちにも行けるバランスを狙ったとこもあるんですけど、一番にはやはり髪を整えた後に聴いた時、よりそれを高めてくれるような曲にした感じですね」
――理美容室って滞在時間が長いし、途中で疲れたり眠くなったりもしますね。
「あとは最初入ってくる時とか不安だと思うんですね。今日どうなるかな?っていうのは楽しみでもあり不安だと思うので、そういった不安を和らげてくれるって意味でも音楽は大事な要素かなと思いますね。そういった意味ではどこの曲のタイミングで入店しても帰ってもらっても大丈夫なようにしてあるんです。シャッフルでもいいかな?なんて思ったんですけど、やっぱり曲の繋がりも明確にコンセプトが僕にはあるので、この流れで聴いてもらった方が、音楽的にもちゃんと役に立つプレイリストにはなってますね」

――最新の洋楽の中から懐かしい曲も混在していますが、特に面白い流れといえば?
「個人的にはデバージとかマイケル・マクドナルド、古い曲でいうと「メイク・ユア・オウン・カインド・オブ・ミュージック」、これはもう往年の曲になるんですけど、こういう曲もすごくいいなと思って最近、普段聴いてるんですよね。だから最新の音楽をずっと追ってるってよりかは、僕のなかでは常に古いところから新しいところまでのプレイリストがどんどん更新されていってるような感じで、それをそのままこの選曲に反映したというところなんですけど。とは言え音楽って歴史の上に成り立ってるのはもう当たり前というか、最近の音楽も昔の音楽のカラーをベースにしているところもあったりしますよね。それこそサブリナ・カーペンターの「Manchild」とかは80年代位のテイストなんですかね。明らかに今の音像を狙ってるわけではないっていうところで言うと、今のアーティストも昔の音楽から色々吸いとって音楽を作ってるんだなっていうのがこのプレイリストの並びから取れるんじゃないかなと。そういうのも感じてもらえると嬉しいかなというイメージですね」
――ディジョンの後のデバージ、そしてマイケル・マクドナルドへの流れでもそう感じます。
「音楽を聴き始めた当時はダサいと思っていたものが今すごくカッコよく聴こえたりする、それは自分自身の中でもサイクルがあったりするんですよね。あとは曲の流れで言うと昔の曲って低音があまりなかったり、ハイもキラキラ伸びてるわけでもないんで音像としては狭いんじゃないか?って思われがちなんですけど、実際昔の曲と今の曲をプレイリストに繋げてみると、音像が変わっても全然違和感がないというか。それよりその音楽の持つパワーそのものに何かリンクがあればあまり音像っていうのは気にしなくてもよかったりするのかなとは思うんです。そこが音楽のすごくいいところだなってふうに思いますね」
――その他にも流れの中でフックになっている部分はありますか?
「自分の曲が混ざっているところが個人的なフックでもあって。マイケル・マクドナルドから例えばOvallの「Bloom feat. KIKI」の繋がりは自分が作ったものが往年の曲に繋がったっていうところですごい快感を得るというか。もともと「Bloom feat. KIKI」という曲はコード感や持ってるバイブス的にはちょっとドゥービー・ブラザーズやシカゴみたいな往年のカラーを狙ったところがあって。そういう意味で言うとマイケル・マクドナルドとこのOvallの「Bloom」がうまく繋がったっていうのは狙い通りだなと思うし、個人的なフックになってるところですね」

――HIP HOPシーンのレジェンドも選曲していますね。
「ピート・ロックやコモンですね。僕がビートにのめり込んだ時期に聴いていたアーティストなので、やっぱりずっと自分のベースにあるんですよね。で、最近、トラップミュージックみたいなものが一段落してきてるような感じがする中で、特に海外のアーティストなんかはこういったオーガニックでちょっとダーティーなビートに戻ってきているような感じがあるので、今聴き直してほしいアーティストをHIP HOP枠として入れたっていうのはあるかもしれないですね。その流れにそういったHIP HOPの歴史をすごく研究しているタイラー・ザ・クリエイターも選曲していて、彼はこの当時のコモンとかビート・ロックとか今回は選曲していませんがネプチューンズとか、ああいう80年代90年代のHIP HOPを大切にしているなって毎回感じるんです」
――そして前回のプレイリストでもフックになっていたジャスティン・ビーバーの「DAISIES」も選ばれてますね。
「ジャスティン・ビーバーの最新作も好きですごく聴いていて、ある意味そのいろんなものを経てすごい境地に今は行っているなというところがあって。ジャスティン・ビーバーの新作にディジョンやマギー(Mk.gee)も参加してるんで、そういった意味で先頭に戻るとディジョンが流れ出してくるっていうプレイリストにはなってたりするんですよね」
――ディジョンもマギーもこのプレイリストの鍵になってるミュージシャンかなと感じます。
「そうですね。去年、今年はマギーとディジョンの年と言ってももいいぐらいの感じですね。やっぱり音のクリエイティブみたいなところで聴く人を置いてきぼりにせず、でも自分のやりたい放題やるみたいなところのバランスがすごくいいんですよね。で、エモーショナルでもあり風景が見えるような叙情的な感じもあって、僕の好きなポイントを全部突いてきてるっていうのがこの2人なんですよね。マギーの音楽もいろんな要素が入ってて、ちょっとポリスっぽい曲なんかもあるし、ディジョンはディアンジェロっぽい曲もあるけど、かといってただ真似してるだけでもない。ちゃんと自分の中に変換して落とし込んでいるっていうところがすごくいいなと思っていて。音楽の歴史っていうところを大事に次の世代に伝えていこうという意思が感じられるのがこの2人に共感したところです」

――ちなみにこのプレイリストとOvallのニューアルバム『Glimmer』にリンクする部分はあると思いますか?
「やっぱり向こう10年、20年経っても胸を張ってこういったプレイリストの中に入ってて大丈夫な音楽は作れているかなという感じがしますね。5、6年経つともう聴かせるのが恥ずかしいみたいな曲もたぶんあると思うんですよね。だけど10年、20年経っても自信を持ってなんかこのときこういう曲作ったっていうふうに言えるのが、今のOvallや自分の音楽のいいところかなと思いますね」
――manbanuaさんの近況もお聞きしたいんですけれど、今年はニューアルバムもリリースされ、秋にはツアーもあり、Ovallの年という感じがしますね。
「ありがとうございます。今までそれぞれの個人の活動が忙しかったのもあるのですが、スローペースだったので、去年ぐらいから2026年はもうちょっと本腰入れていろいろ進めてきたっていうのもあるかもしれないですね」
――アルバムは前半後半でも違うんですけど、一曲一曲のカラーも違っていて。
「今回こういった二面性のある分け方にしようとも話してなかったんですよね。アー写を見てもらえると分かるんですけど、陽が関口シンゴで陰がShingo Suzukiで、割と中間のどっちもいける感じが自分、みたいな感じのアー写なんですけど、本当にその通りになっているのかなっていう感じはアルバムを聴いてて思いましたね」

――新しいコラボレーションという意味ではプレイリストにも入っている「Bloom feat. KIKI」でコラボしたタイのバンドKIKIの存在があります。アジアのバンドやアーティストはどんどん面白くなってますよね?
「どっちかというと隠れていたアーティストがいろんな人に見つかったっていう考え方の方が正しいのかなっていう感じがあって。元々アジアのバンドシーンって昔からあったと思うし、アジアのカッコいいバンドはいたと思うんです。ただそれが欧米のシーンがいろんな人にも見つかりきっていて日本も日本独自のシーンがあった上で、他に何かないかって言ったらやっぱりアジアなんじゃないかというのはすごくあると思います。特に東南アジアのシーンには意外と都会的で洗練された音を作っているアーティストがいっぱいいて。紐解いてみたら変な先入観を持たずに聴いた方が良かったんじゃないかというようなシーンだったんですよね。KIKIは前から注目していたバンドで、僕らがタイにライブをしに行くことがあり、それをきっかけに一緒に作ったという経緯なんです」
――リード曲の「Needed」はSNSで見つけた曲としてバイラルしていて、「USEN HIT SNSランキング」にもチャートインしていましたね。
「うれしいです。これはShingo Suzukiが作ってくれたもので、全部完成した後に訊いたんですけど”mabanuaが歌うのを想定して作った”って言ってて。ボーカル曲ってデモを作った段階で誰が歌うか決まってないことが多くて。フィーチャリングで誰かにやってもらう?ってのもあれば、思いつかないからじゃあバンドメンバーの誰かってのもあれば、レーベルメイトのNenashiであったり、曲ができてから探すんですよね。だから今回もそんな感じなのかなと思ってたら「Needed」関してはなんかmabanuaが歌う想定で考えてたらしくて、後から訊いてびっくりした曲です」

――この“兆し”という意味のアルバムタイトルにはどんな思いがこめられているんでしょう?
「僕ら3人は兆しを感じてまた落ちて、また兆しを感じてっていう繰り返しなんで、そういう意味でいうと、この兆しがまた来るであろうっていうのを念頭に置くと自ずと今やっている辛さがラクになっていくなというか、陰と陽の変わり方を表しているとも言えるかなって気はするんですけど、アーティストはみんなそうだと思いますね。売れたら売れたで嬉しいけど、人気が落ちてったら精魂込めて曲を作っててもうんともすんとも行かないみたいな時期もあって、波のように繰り返してて。それに振り落とされちゃうと音楽やめてっちゃったり、バンドだと解散っていうふうになったりする。だから、バンドを”続けていく”っていうことが重要なんじゃないか……別に話をしたわけじゃないんですけど、自ずと共通認識としてはそういう風になってる気がするんですよね」
――ちなみにmabanuaさん個人の仕事はいかがですか?
「タイミング的に完成したものが山のようにあるんですけど、それのどれも今年の後半に出るみたいな感じになってるので、いろんなものの発射準備が完了している感じですかね。あと、自分のアルバムを今完成させてようとしてるので、年内には完成できればいいかなと思っています」
(おわり)
取材・文/石角友香
監修/大園絢音、佐々木亮太(USEN)
写真提供/origami PRODUCTIONS

「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LIST「~A New Me - クールで新しい自分へ~」by mabanua
■ Message from mabanua
理美容室で聴ける洗練された、新しい自分へ生まれ変わる為のプレイリスト。程よい温度感と共に、往年の曲から2020年代の今の曲まで時代を超えた幅広い選曲になっています。
1. レミ・ウルフ「Toro」
2. Dijon「The Dress」
3. デバージ「オール・ディス・ラヴ」
4. Quadron「LFT」
5. Shelley FKA DRAM「Best Hugs」
6. Michael McDonald「Our Love」
7. Michael McDonald「(I Hang) On Your Every Word」
8. Ovall「Bloom feat. KIKI」
9. bülow「Word Smith」
10. mabanua「All Right」
11. mabanua「Heartbreak at Dawn」
12. ジャネット・ジャクソン「No Sleeep (feat.J. コール)」
13. Lyrical Lemonade,Gus Dapperton,リル・ヨッティ,ジョーイ・バッドアス「Fallout」
14. ママ・キャス「メイク・ユア・オウン・カインド・オブ・ミュージック」
15. Teddy Swims「Suitcase」
16. Original Love & Ovall「接吻」
17. CIRRRCLE「TYO」
18. メイ・スティーブンス,メーガン・トレイナー「Mr Right」
19. SGルイス,Lucky Daye「Vibe Like This (feat.タイ・ダラー・サイン)」
20. SZA,Calvin Harris「ザ・ウィークエンド(ファンク・ウェーヴ・リミックス) [Funk Wav Remix]」
21. ポスト・マローン「ウェイスティング・エンジェルズ (feat.ザ・キッド・ラロイ)」
22. Smino「Anita」
23. Shingo Suzuki「Flower Dance feat. Ruri Matsumura」
24. MICHELLE「SUNRISE」
25. BENEE「Beach Boy」
26. ザ・バード・アンド・ザ・ビー「愛はきらめきの中に」
27. Jenevieve「Baby Powder (feat.2チェインズ)」
28. Jenevieve「Partycrasher」
29. ボビー・コールドウェル&ジャック・スプラッシュ=クール・アンクル「ゲーム・オーヴァー(フィーチャリング・メイヤー・ホーソーン)」
30. ムラ・マサ「Love For That (feat.シュラ)」
31. Childish Gambino「Feels Like Summer」
32. Tyler, The Creator「Ring Ring Ring」
33. ピート・ロック&C. L. スムース「イン・ザ・ハウス」
34. 5lack「Girl if you」
35. コーシャス・クレイ「Tokyo Lift (5am)」
36. Peach Tree Rascals「Pretty Wings」
37. Mahalia「I Wish I Missed My Ex」
38. Jean Grae「Keep Livin」
39. Forrest Frank「CELEBRATION」
40. Surfaces, Tai Verdes「Sheesh!」
41. Jordan Ward「JUICY」
42. Jordan Ward「THEMSELVES」
43. コモン「ホワット・ドゥ・ユー・セイ」
44. Leon Thomas「VIBES DON'T LIE」
45. Baby Keem「Good Flirts (feat.Kendrick Lamar/Momo Boyd)」
46. SZA「Broken Clocks」
47. Isaiah Rashad & SZA「BOY IN RED」
48. merci, mercy「Something You Like」
49. Clairo「Add Up My Love」
50. Infinity Song「One Foot Out」
51. サブリナ・カーペンター「Manchild」
52. Audrey Hobert「Sue me」
53. TOWA TEI「TASTE OF YOU (feat. TAPRIKK SWEEZEE)」
54. Dominic Fike「Ant Pile」
55. Yuna「Live Your Life」
56. SGルイス,Lucky Daye「Vibe Like This (feat.タイ・ダラー・サイン)」
57. SZA,Justin Timberlake「The Other Side (from Trolls World Tour)」
58. VivaOla「My Moon(feat. ZIN)」
59. スロウタイ「nhs」
60. ジャスティン・ビーバー「DAISIES」

Ovall New Album Release Tour「Glimmer TOUR 2026」LIVE INFO
2026年10月3日(土)札幌近松
10月9日(金)INSA(福岡)
10月29日(木)JANUS(大阪)
10月30日(金)ell.FITS ALL(名古屋)
11月27日(金)Spotify O-EAST(東京)

Ovall『Glimmer』DISC INFO
2026年5月27日(水)発売
OPCA-1072/3,300円(税込)
origami PRODUCTIONS
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