――前回のインタビューで2024年の展望として、アルバムリリースと海外でのライブについて語っていただきましたが、実際の手応えはいかがですか。
「そうですね、今まさにやりたいことをやれていると実感しています。そして、ようやく自分が進むべき道を見つけたと思います。2017年にデビューしたときはまだ20代で、あれもこれも試してみたくて、今流行っているものにも挑戦しようと色々悩んでいました。でも、今では自分のサウンド、自分にしか作れない音楽、そして素晴らしい仲間たちに出会えたおかげで、本当に楽しいです。数字が伸びたとか、以前より大きな会場で演奏できるとか、そういった表面的な部分はあまり変わらないけれど、年齢のせいか経験のせいかはわかりませんが、心が落ち着き、今が音楽人生で一番楽しいと感じています」
――「origami SAI 2024 OSAKA ~味園ユニバース EDITION~」そして台北公演もありましたが、origamiアーティスト陣とのライブやセッションからどんな刺激を受けていますか。
「origamiのメンバーは全員素晴らしいミュージシャンなので、本当に安心できます。大阪では僕がライブのトリだったので、アンコールのセッションでバンマスや進行を任されましたが、サウンドチェックを一回軽く通しただけで、素晴らしい演奏をしてくれました。セッションは、決めすぎるとセッションならではのマジックが失われてしまうと僕は感じています。曲の終わり方がわからなくて不安な顔をしながらアイコンタクトをとりつつ、楽器を弾きながら指示を出して、それがうまく着地する瞬間――(まさに大阪でmabanuaさんとのセッションがそうでしたが(笑)――は最高ですね。台北では、whyteという素晴らしいシンガー・ソングライターとセッションできて、とても光栄でした。彼女はバイブスも最高でした!ライブの後、彼女やバンドメンバーと朝5時くらいまで飲んでいましたが、飲みもセッションの延長線上にあると思っています(笑)」
――5月にリリースされたアルバム『Daydreams』の制作期間はどのように楽曲と向き合っていましたか。
「ソロアーティストとしてすべて自分で作っているので、バンドメンバーと盛り上がるようなレコーディングの印象的なエピソードはほとんどありません(笑)。1年半、ひたすらスタジオにこもって自分と向き合いながら作ったアルバムです。でも、それを辛いとは全く思っていませんし、この孤独がなければ自分の音楽は作れないと思っています。何時間も制作を続けて、アレンジがハマったり、素晴らしいメロディーが浮かんだときに感じるエクスタシーは、他に代えがたいものです」
――2024年の活動の中で印象的な出来事やエピソードは?
「自分が誇りに思えるアルバム『Daydreams』をリリースできたことは、とても印象的です。これまで出した作品も好きですが、どうしても少し無理している自分が見え隠れしているように感じます。プロデューサーとしても、ソングライターとしても。今回のアルバムは、サウンド面で自信を持って世界中の人に聞いてもらいたいと思っています。もうひとつは、新しく始めたbrkstblendのバンド活動です。インディペンデントで、メンバーと友達のスタッフ一人と一緒にやっているので、裏方的なことからアーティスト活動まで全て自分たちで行っています。とても大変ですが、本当に勉強になります。30代になって、ただ事務所やレーベルに頼っているだけでは甘いと感じたので、バンドを始めてから学ぶことがたくさんあり、音楽人生にとても大きなプラスになっていると思います」
――OTORAKUでは2度目のキュレーションとなりますが、イントロダクションをいただけますか。
「今回も、今の自分がよく聴いている曲をたくさん選びました。ジャンルはかなりバラバラです。1970年代のAORから、かなり無名なインディペンデントアーティストまで。ふだん車で聴いたり、友達とお酒を飲みながら聴いている曲を選曲しました」
――プレイリストのタイトルは「Michael Kaneko ~Daydreaming~」です。もちろん『Daydreams』の楽曲も選曲されていますね。
「『Daydreams』を作っているときによく聴いていた曲を選曲したという理由もありますが、今回選んだ楽曲は、どのシチュエーションにも合い、邪魔にならない音楽なので、単純にリスナーがDaydream(白昼夢)を見ているような気分で聴いてほしいという気持ちを込めて選びました。ロケーションとしては、窓を開けて風を感じられる場所をおすすめします!今の季節、窓を開けて音楽を聴くのは本当に気持ちいいですし、お酒を飲める場所のBGMとしても似合うとます。テンションは上がるけど、盛り上がりすぎず、ちょうどいい感じで気持ちよく酔えると思います」
――プレイリストの中でレファレンス的な楽曲や、それらの楽曲と『Daydreams』との関係性について教えてもらえますか。
「今回は、『Daydreams』を作る際にアレンジ面で影響を受けた曲を選曲しました。例えば、Mac DeMarcoの「Heart to Heart」「Choo Choo」「Nobody」など音数が少ない、気だるいBedroom Popの世界観や、もこもこしたベース、またはWinnetka Bowling Leagueの「America In Your 20's」のような80年代サウンド、MICHELLE「FOOL 4 U」などたくさんの音楽に影響を受け、自分なりに調理したものが『Daydreams』です」
――このプレイリストを使うOTORAKUユーザーや、OTORAKUを通じて音楽を聴かれるリスナーへのメッセージをいただけますか。
「みんなが知っている有名なアーティストも含まれていますが、日本ではまだ無名な、僕が好きなアーティストをたくさん選曲しました。少しでも彼らの音楽、そしてGOOD MUSICを広められたらうれしいです!」
――2024年も後半戦ですが、開催中の「Daydreams JAPAN&ASIA TOUR 2024」の手応えとバンコク公演への意気込み、来年以降の展望は?
「ニューアルバムを引っさげたツアーなので、全公演が本当に楽しみです。来年はまたゼロから制作を始めて、新たなアルバムに向けて動き出したいと思っています!あとは、もっと海外でたくさんライブをしたいですね。少し環境を変えて、海外に住んでみたいなとも考えています(笑)。実際にできるかはわかりませんが、音楽ライフをマイペースに、楽しく続けていきたいと思います」
(おわり)
取材・選曲監修/大園絢音(USEN)
文・構成/高橋 豊(encore)
写真提供/origami PRODUCTIONS
「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LISTMichael Kaneko ~Daydreaming~
■ Message from Michael Kaneko
ふだんプライベートで聴いている音楽を選曲しました。どんなシチュエーションにも合い、邪魔にならない音楽です。自分が音楽を作る際に参考にしているアーティストや楽曲もたくさん集めました。
1. Winnetka Bowling League,Medium Build,ドーズ「This Is Life」
2. Winnetka Bowling League「America In Your 20's」
3. Busty and the Bass「Kids」
4. Stephen Bishop「On And On」
5. Michael Kaneko「Atmosphere」
6. Mac DeMarco「Heart To Heart」
7. Bleachers「Rollercoaster」
8. temp.「THE ART OF LETTING GO」
9. Humble the Great「find your own」
10. Kyle Dion「Brown」
11. hard life「ocean view」
12. MICHELLE「SUNRISE」
13. Jiwoo「Comme des Gar?ons」
14. Michael Kaneko「goodlife」
15. Mamas Gun「This Is The Day」
16. Ace「How Long」
17. brkfstblend「City Habits」
18. Michael Kaneko「maybe」
19. Parcels「Tieduprightnow - from Hansa Studios, Berlin」
20. Michael Kaneko「Strangers In The Night」
21. Jordan Ward「FAMJAM4000」
22. 落日飛車 Sunset Rollercoaster「Let There Be Light Again」
23. The Japanese House「Sunshine Baby」
24. Michael Kaneko「Field of Heaven」
25. Michael Kaneko「Daydreams」
26. Michael Kaneko「Lovers」
27. Daniel Caesar「Always」
28. Leon Thomas「Breaking Point」
29. Sam Evian「Knock Knock」
30. Michael McDonald「I Keep Forgettin' (Every Time You're Near)」
31. brkfstblend「0.0833333333333333」
32. ジョン・メイヤー「Helpless」
33. Kenichiro Nishihara,Michael Kaneko「Walk Out」
34. brkfstblend「nyc」
35. Matt Corby「New Day Coming」
36. New Radicals「You Get What You Give」
37. The Paper Kites「I Don't Want to Go That Way」
38. Drugdealer「Madison」
39. Omar Apollo「Evergreen (You Didn’t Deserve Me At All)」
40. フランク・オーシャン「Pyramids」
41. Diane Birch「Nothing But A Miracle」
42. Dominic Fike「Superstar Sh*t」
43. H.E.R.「Hard Place」
44. MICHELLE「FOOL 4 U」
45. Omar Apollo「The Two of Us」
46. Madison Cunningham「Hospital」
47. d4vd「Here With Me」
48. Surfaces「Let Me Know」
49. Young Gun Silver Fox「Kids」
50. HONNE「loving you is so easy」
51. Mac DeMarco「Choo Choo」
52. Mac DeMarco「Nobody」
53. Michael Kiwanuka「I'm Getting Ready」
54. Michael Kiwanuka「I Won't Lie」
55. ジョン・メイヤー「Queen of California」
Daydreams JAPAN&ASIA TOUR 2024LIVE INFO
Daydreams JAPAN&ASIA TOUR 2024
2024年11月6日(水)代官山 UNIT(東京)
11月9日(土)bar VECTOR(名古屋)
origami SAI 2024 Live in Bangkok
2024年12月15日(日)Blueprint Livehouse(バンコク)
Michael Kaneko『“JAPAN&ASIA TOUR 2023” TOKYO - Live at WWW X』DISC INFO
2024年10月16日(水)配信
origami PRODUCTIONS