――はじめに2023年のMichael Kanekoさんの活動を振り返りましょう。「Lovers」や「Strangers In The Night」などのリリース、「JAPAN＆ASIA TOUR 2023」の開催もあり、ポジティブな1年だったのではないでしょうか。
「去年は色々なことを見つめ直す一年、自分と向き合う一年になりました。2023年の後半には「JAPAN＆ASIA TOUR 2023」という自身最大のツアーを完遂することができました。無邪気に最高だった！と言いたいけれど、良いことばかりではなかったし、これからも良いことばかりではないと思います。仕事もプライベートもそんなアップダウンが激しいからこそ、アートというものが生まれると思いますし、それが人生なんだって受け入れることに、少し慣れた一年になったと思います」
――最新リリースの「Strangers In The Night」は、「Lovers」「longisland iced tea」の登場人物やストーリーとの繋がりという仕掛けがあります。かたや2022年リリースの『The Neighborhood』は他アーティストのコラボという手法をとりました。こうしたコンセプトの作品への向き合い方について教えてください。
「『The Neighborhood』はコラボアルバムというコンセプトと向き合って作った作品だったのに対して、次に作る作品は “僕が今一番やりたい曲を作ろう” というマインドから生まれました。ストーリーが繋がっている仕掛けは最初からそうしようと思ったわけではなく、曲を作って並べたら、自然にリンクしていたので、MVなども繋げたら面白そうという発想から生まれました」
――2023年の印象的な出来事やエピソードは？
「6月に1年ぶりにリリースした新曲「Lovers」は本当に一番思い出に残っている曲ですし、僕の中で去年1年間のテーマにもなった曲だと思います。去年の1月から6月の半年間、メンタル的に弱っていました。何のために音楽をやっているのか、生きていて本当に大事なことって何なのか……そんな風に悩んでいる中、自分を救ってくれたのが「Lovers」でした」
――「JAPAN＆ASIA TOUR 2023」の手応えはどうでしたか？
「「JAPAN＆ASIA TOUR 2023」の印象は、ツアーを実現するために裏で行われていたスタッフとのチームワークです。もちろん、タイのライブ、中国のライブ、 WWW Xのワンマンライブなど、刺激的で、最高に楽しい瞬間はたくさんありました。ただ、裏では、ツアーを成功させるために何度も話し合ったり、チケットをソールドさせるために作戦を立てたり、数々のチャレンジを重ねていました。みんなでひとつになり、ツアーを成功させようという気持ちが一番印象的でした」
――クリエイター、プロデューサー、そしてプレイヤーでもあるMichael Kanekoさんにとってのルーツミュージック、あるいはミュージシャンを志す契機になった作品やアーティストは？
「志す契機になったのかは分かりませんが、昔から一番リスペクトするミュージシャン、影響受けているミュージシャンはジョン・メイヤーです。高校生の時に彼と彼の音楽に出会い、彼のように歌も歌えて、ギターも弾き倒せて、作曲もできるミュージシャンになりたいと思いました。最近作っている音楽は、ちょっと彼のスタイルから離れていると思いますが、彼の音楽と出会っていなかったら、きっと今は音楽をやってないと思うし、ギターもここまで続けてなかったと思います」
――今回、OTORAKUキュレーターとして、BGMの選曲に携わっていただきましたが、ご自身は生活のなかのどんなシチュエーションで音楽を聴いていますか？
「origami PRODUCTIONSのレーベルメイトでもあるKan Sanoさんや関口シンゴさんが、こちらの企画に参加していて、その繋がりで今回は僕に声をかけていただきました！それが自分にとって一番自然なんだと思いますが、僕はアメリカで育ったので、日頃はほとんど洋楽を聴いています。ふだん音楽を聴くシチュエーションは主に運転中や移動中です。“音楽を作っている人あるある”だと思いますが、どうしてもクリティカルに音楽を聴く癖があります。それはクリエイターとして必要なことだと思いますが、何も考えないで音楽を楽しむ大切さも忘れてはいけないと思います。なので、日常では頭を空にして音楽を聴くことを心がけています。特に運転中は、何も考えずに一番ピュアに音楽を楽しめている気がします。他には、友達とお酒を飲みながら音楽を聴く時間も好きです」
――日常生活のなかで、店舗や商業施設で流れているBGMに耳を傾けられることはありますか？
「どのお店でも、どんなジャンルの音楽を流していてもBGMは必ず意識しています。自分の好きな音楽が流れていたら、もちろん気分が良くなるし、誰が選曲しているのかなと考えます。あとはBGMに意外性があるお店が結構好きかもしれないです。例えば、ビートルズしか流してないラーメン店。お店のインテリアとかでは一切そういうイメージがないんですが、毎回行くたびにビートルズを聴けるっていう喜びがあります。そういうお店は自然に好きになってしまいます。70年代ディスコしか流さないお寿司屋さんとかあったら面白くないですか（笑）」
――今回、選曲していただいたプレイリスト「Michael Kaneko ～MK daily tunes～」についてのイントロダクションをいただけますか。
「今回選曲させていただいたのは、ふだん僕がプライベートで聴いている楽曲ということで、どのシチュエーションにも似合うと思います。業種やロケーションのイメージとしては、お酒が飲めて、いい音響で低音がしっかりしてるお店！BGMですがあえて少し大きめの音量で音楽をエンジョイできる場所がいいですね。あとは、クラブとまではいかないですが、照明も少し暗めで、踊りたくなったら自由に体を動かせるスペースがあったり、おしゃれすぎなかったり……そんなふうに音楽を聴きながら楽しめるお店で流していただければ！」
――プレイリストの中でレファレンス的な位置づけになった楽曲、あるいは注目すべき楽曲はありますか。
「選曲の軸にというわけではありませんが、今回はパーセルズというバンドのライブ音源を多めに選ばせていただきました。最近このバンドにハマっていて、選んだライブ盤が本当に素晴らしいです。バンドですが、クラブでかけてもおかしくないぐらいキックや低音が効いている曲が多めです。他には例えばLeon Thomas「Breaking Point」、The Paper Kites「I Don’t wanna go that way」など、わりとミッドテンポ系の曲が多めかなと思います」
――実際にこのプレイリストを使うOTORAKUユーザーや、OTORAKUを通じて音楽を聴かれるリスナーの皆さんへのメッセージを。
「海外のプレイリストなどには載っていると思いますが、日本ではあまり知られてないアーティストの楽曲を選曲させていただきました。ぜひみなさんもこのプレイリストを聴いてみてください！」
――最後に、Michael Kanekoさんの2024年の展望を聞かせてください。
「今年はアルバムをリリースするのが一番の目標です。昨年リリースした「Lovers」「long island iced tea」「Strangers In The Night」の3曲のストーリーをまとめてくれるアルバムになる予定です。他は、また海外に行きたいです。去年海外に行って、自分の海外での可能性をものすごく感じたので、引き続き今年も海外でも頑張りたいと思います」
（おわり）
取材・選曲監修／林 健斗（USEN）
文・構成／高橋 豊（encore）
写真／綾野裕輝 / Yuki Ayano
「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LISTMichael Kaneko ～MK daily tunes～
■ Message from Michael Kaneko
ふだんプライベートで聴いている曲を集めたプレイリスト。飛行機の中、運転中、友達とお酒を飲む時などに聴いています。皆さんもぜひ様々なシチュエーションでお楽しみください。
1. DACEY「HOLD ON」
2. Jordan Ward「FAMJAM4000」
3. The Japanese House「Sunshine Baby」
4. The Paper Kites「I Don't Want to Go That Way」
5. Michael Kaneko「Lovers」
6. Drugdealer「Madison」
7. Sam Evian「Knock Knock」
8. H.E.R.「Hard Place」
9. Leon Thomas「Blessing」
10. Leon Thomas「Breaking Point」
11. デイヴィッド「ヒア・ウィズ・ミー」
12. Omar Apollo「Go Away」
13. The 1975「All I Need To Hear」
14. ラウヴ「Kids Are Born Stars」
15. ダニエル・シーザー「Always」
16. MICHELLE「FOOL 4 U」
17. ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス「Kids」
18. Joji「Sanctuary」
19. Remi Wolf「Disco Man」
20. Tyler, The Creator「Boredom（feat.Rex Orange County / Anna of the North）」
21. ラーズ「ゼア・シー・ゴーズ」
22. THE 1975「ラヴ・イット・イフ・ウィ・メイド・イット」
23. Dominic Fike「Why」
24. brkfstblend「2am」
25. brkfstblend「Cannonball」
26. Michael Kaneko「Strangers In The Night」
27. パーセルズ「Tieduprightnow - from Hansa Studios, Berlin」
28. パーセルズ「Overnight - from Hansa Studios, Berlin」
29. パーセルズ「LIGHT」
30. パーセルズ「Free [Single Version]」
31. パーセルズ「Lightenup - from Hansa Studios, Berlin」
LIVE INFO
■ J-WAVEトーキョーギタージャンボリー2024 supported by 奥村組
2024年3月2日（土）、3日（日）両国国技館
■ brkfstblend「Cannonball Tour」
2024年2月10日（土）桜坂 摩天楼（沖縄）
2月11日（日）JAZZ BAR すけあくろ（沖縄）
2月13日（火）SHIBUYA WWW（東京）
