――まず髙城さんの最近の活動についてお聞きします。2024年上半期までの印象的なエピソードやトピックスは?
「2023年に5枚目のアルバム『e o』を発表してから、これまでceroを聴いてくれているファンの方々に加えて、新たに若い世代のお客さんがライブに来てくれるようになったり、音楽とは違った分野の方から反応をいただくことが増えたように感じています。その影響か、2024年に入ってからは、他のアーティストへの楽曲提供や、劇伴制作の依頼が来るようになり、新鮮な気持ちで音楽に関わることができています」
――8月12日にはZepp ShinjukuでWONKとの対バンイベントが予定されていますが、WONKとの馴れ初めや、ライブの展望について聞かせてください。
「WONKとはこれまでも何度かライブの現場でいっしょになったり、ボーカルの長塚健斗さんとは冨田ラボさんのゲストボーカルで共演させてもらったりもしました。WONKは凄腕のプレイヤー揃いなので今から緊張と期待でいっぱいですが、このタイミングでceroに声をかけていただいた喜びを胸に、精一杯イベントを盛り上げたいと思っております!」
――今回はOTORAKUキュレーターとして、「店内を彩る空間BGM」という観点で選曲に携わっていただきましたが、DJとして聴かせるセレクトとの違いや、意識した部分は?
「僕はいわゆる職業的なDJではないので、曲の繋ぎ方やテクニカルな聴かせ方というより、曲のセレクトと、場の雰囲気作りに重点を置いています。そういう意味ではDJをする感覚とそこまで離れてはいないと思いますが、長くバーの店員として働いていたこともあり、どちらかと言うと店で選曲をしている時の感覚をより意識して取り組みました」
――今回のテーマは「Beautiful "Extra Ordinaly" Pops」ですが、オリエンタルでノスタルジックでありながら、どこか近未来的な風景も思い浮かぶ不思議なムードのプレイリストになりました。
「かつて店内BGMといえば、かなり限定的な、言い方を変えると差し障りのない楽曲の印象があったのですが、ここ最近はスーパーマーケットにしろ、大手チェーンのカフェにしろ、すごく凝った選曲がされていて、感心することが多いです。現代において、BGMという定義は、かなり拡張されてきたのではないかと感じます。そこで、BGMの枠組みをさらに押し拡げるべく、“規格外”の楽曲をあえて交えつつ、かつ空間に安定感をもたらすことができるようなプレイリストを目指そうと思い立ちました。具体的には、通常あまりBGMとしては選ばれなそうな、アヴァンギャルドな音楽活動をしているアーティストの、意外なほどに人懐っこいポップな楽曲だったり、カヴァーされることによって、刺激的な原曲に誰もが楽しめる普遍性が加わった楽曲などを中心に選びました」
――プレイリストの中で、レファレンスになった曲をいくつか挙げていただけますか?
「ロバート・ワイアットの名曲のインストカヴァー、Lost Weekend「At Last I Am Free」ですが、原曲の歌声には美しい退廃感がありましたが、インストは不思議なリゾート感があります。Pyrolator「Passage to Melilla」は、初期DAFのメンバーとしても活動したクルト・ダールケによるソロプロジェクトです。テープコラージュなどの現代音楽的な楽曲も発表していますが、この曲はとてもポップで人懐っこいです。戸田誠司「Ponta de areia」は、ブラジルの国民的歌手ミルトン・ナシメントの楽曲カヴァーですが、ブラジルのサウダージに、清水靖晃の声が合わさり、無国籍な手触りに。Floratone「Floratone」は幽玄なジャズギターのビル・フリーゼルと骨太なドラムのマット・チェンバレンが独創的なダブ。大御所、ポール・サイモンがイタリア人プロデューサーCLAP!CLAP!を迎えて作った「Wristband」は意欲的な新機軸です」
――髙城さんが手掛けたプレイリスト「Beautiful "Extra Ordinaly" Pops」を使われるOTORAKUオーナーや、OTORAKUを通じて髙城さんのセレクトした音楽を聴かれるリスナーへのメッセージをいただけますか。
「従業員の皆さんの仕事の邪魔にならないこと、お客さんが不快にならないこと、というのは大前提として、BGMには少しの刺激も必要だというのが、バーで働きながら選曲してきた僕の実感としてあります。お客さんから“この曲誰の曲ですか?”という会話が誘発されるような、コミュニケーションのきっかけになるようなプレイリストを目指しました。良い空間づくりの一助になれば幸いです」
(おわり)
取材・選曲監修/大園絢音、三浦祐司(USEN)
文・構成/高橋 豊(encore)
写真/Tatsuya Hirota
「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LIST髙城晶平~Beautiful "Extra Ordinaly" Pops~
■ Message from 髙城晶平
私自身が長くバーで働いていた経験を踏まえ、安定感はもちろんのこと、お客様とのコミュニケーションを誘発するような刺激も同時に提供できるBGMを目指しました。飲食店、美容室などでぜひ。
1. Lost Weekend「At Last I Am Free」
2. 鈴木さえ子「STUDIO ROMANTIC」
3. Pyrolator「Passage to Melilla」
4. ARTO LINDSAY「The Rare」
5. 戸田誠司「Ponta de areia (feat.清水靖晃)」
6. Bill Wells「Lead Sister (feat.Bad Apples) [Remix]」
7. SHI-SHONEN「Bye-bye Yuppie(2023 Remastered)」
8. The Beach Boys「Be With Me」
9. Astrud Gilberto「Summer Sweet」
10. LITTLE TEMPO「LIKKLE INNA BEAT BOX」
11. Floratone「Floratone」
12. Ogawa & Tokoro「Crusin' 2」
13. 王舟「West sun」
14. Sam Wilkes「Own」
15. Kelly Joe Phelps「Window Grin」
16. 清水靖晃「SHASHIN」
17. SKETCH SHOW「Wonderful To Me」
18. Paul Simon「Wristband」
19. Cécile McLorin Salvant「Ghost Song」
20. Mitchell Froom「So This is It (feat.Jacqueline Govaert) [Remix]」
21. JJJ「DANCE SHOES」
22. Khruangbin「Cmo Te Quiero」
23. atami「NIGHTINGALE (child's View remix)」
24. Sam Gendel「lil tiny」
25. Céu「10 Contados」
26. The High Llamas「The American Scene」
27. ロー・ボルジェス「Todo Prazer」
28. COSA NOSTRA「HIP TALK (I've Got You Under My…Version)」
29. Saint Etienne「Spring」
30. Todd Rundgren「A Dream Goes on Forever (2015 Remaster)」
31. rei harakami「come here go there」
32. Teitur,Aarhus Jazz Orchestra「Forgot My Sunglasses II」
33. MESHELL NDEGEOCELLO「Don't Disturb This Groove」
34. Gal Costa「De Volta ao Começo」
35. John Coltrane「One And Four [1990 Remaster]」
36. Sam Gendel「Sometimes I Feel So Good」
37. Daniel Ögren「Njulla」
38. Jeff Parker Trio「The Morning of the 5th」
39. Charles Stepney「Daddy's Diddies」
40. Godley & Creme「Cry」
41. The Free Design「My Brother Woody」
42. Los Lobos「Life Is Good」
43. Ry Cooder「Farmgirl」
44. Quantic「A New Constellation (with The Western Transient)」
45. Adriana Calcanhotto,Michael Sullivan「Seu Pensamento」
46. Kennebec,Hemlock Ernst,Sudan Archives「Tall Tales」
47. 大和那南「夜明け前」
48. Stephen Stills「Love the One You're With (Single)」
49. Timmy Thomas「I've Got to See You Tonight」
50. Shuggie Otis「XL-30」
51. Jim O'Rourke「Trains And Boats And Planes」
52. Blake Mills「Skeleton Is Walking」
53. Bill Frisell「Waltz for Hal Willner」
54. Herbie Hancock「Succotash」
55. HARMONIA&ENO 76「When Shade Was Born」
56. Virginia Astley「Some Small Hope」
57. Richard Hawley「Precious Sight」
58. David Feldman「Adeus」
Shohei Takagi『Parallela Botanica』DISC INFO
2020年4月8日(水)発売
通常盤(CD)/AICL-3882/ 2,750円(税込)
Sony Music Associated Records