――地元福岡のダンススクール「jABBKLAB」のYouTubeチャンネルでセレクトしている楽曲が、音楽好きにも刺さる絶妙なセレクトですが、yurinasiaさんのルーツミュージックであったり、音楽遍歴について教えてください。

「両親が音楽好きで、物心がついたときから音楽がある環境で育ちました。歌う事もピアノを弾く事も大好きで。特に影響を受けた音楽はジョージ・ウィンストンです。彼のピアノの旋律が幼い頃から大好きで。いまでも似たような雰囲気の楽曲はビビッと来るし、自分のルーツを感じて涙が出そうになります。毎週の選曲も――もちろんそれだけではないのですが――結構旋律の面白さをメインに選んでいることが多いんだなって最近気がつきました。レッスン終わりに生徒たちも歌えるようになっていたりとか……自分の脳にビビッ!と来る楽曲を選んでいます」

――ダンスと音楽は密接に絡み合っていて、分かち難いものだと思いますが、リスナーとしての音楽との向き合いかた、ダンサーとしての向き合いかたに違いはありますか?

「私がダンスを始めたのは15歳なので、それまでは日常的に音楽と触れ合っていました。頭の中で音楽を分解したりするのも好きでしたね。耳で聴くし、頭で聴くし、心で聴く。私のダンスと私自身はリンクしていて、それはダンスを始める前の聴き方と変わらないように思います。ですが、振付師として作品作りなどエンターテイメントとなると変わってきますね。ピュアな音楽の聴き方だけでは身体表現として足りない事もあります。楽曲vs自分の表現みたいな聴き方じゃないと、作品としての魅力や力が出なかったりするんです。振付師になって聴き方のパターンが増えたので、今すごく楽しいですね」

――yurinasiaさん自身がミュージックビデオ、CM、TV番組などに出演していたり、あるいは振付という役割りでいろいろな作品にも携わっていますが、印象的なエピソードや転機になった出来事は?

「2020年7月公開のポカリスエットのTVCM「NEO合唱 ボクらの夏」編の振付師として関わらせていただいたことです。振付師として初めての大きな現場でした。リモート撮影だった前作の「春編」から繋がる作品となっていて、その続編となる「NEO合唱 ボクらの夏」篇は、春の撮影で会うことができなかったヒロインの汐谷友希さんと学生たち計36名がNEO合唱を繰り広げるCMでした」

――YouTubeにも「ポカリNEO合唱 ボクらの夏 バックストーリー」としてアップされていますが、大作CMですよね。

「世の中はまだコロナウイルスに翻弄されている時期でしたが、現場では”やっとみんなと会えた、話せた”という喜びで感情剥き出し。長期間に及ぶ撮影というのもあって最後は涙涙でしたね。大人数でのダンスシーンでしたので、東京まで練習のために数回往復したのも思い出深いです。このCMがきっかけで私のまわりはもちろんですが、福岡のメディアでも取り上げてくれたり、地元の人たちも喜んでくれたり。貢献できた!感がすごくありました(笑)。かなり長い撮影期間だったので当時小さかった二人の子供を連れて家族総出で滞在させてもらいました。撮影がお休みの日などレンタカーを借りてドライブしたりできて、家族の時間なども考えてくれる温かい現場でした。家族と共に乗り越えた大仕事だと思っています」

――たとえば、音楽シーンにおいてはダンス&ボーカルグループというフォーマットの流行であったり、ブレイキンやプロダンスリーグといった競技化、学校教育の現場など、おおよそ2000年代以降、ダンサー/コレオグラファーの存在感が高まっていますが、yurinasiaさん自身がそうした変化を実感することはありますか?

「変化は実感してますね。実際私もテレビ番組でダンスコンテストの審査員として携わらせていただいたり、教育の場で講習をさせてもらったりなどの機会も増えてきました。身体表現だけではなく、ダンスの中身を見てもらえるような時代になってきたのかなと。私自身、技術者として芸を磨くことはもちろん続けますが、人間としても成長していかないとと自分自身に喝を入れてます。素敵な時代です。また、最近はダンスがきっかけで”自分の目指す方向がわかった!”という子たちが増えたように感じています。うれしいですね。ただのムーブメントで終わらせたくないですし、私にとってもかなり刺激になってます」

――ツアーやプロダンサー養成スクール「jABBKLABアカデミー」を主宰していたり、東京での活動も増えているなかで、地元である福岡に根ざした活動がとても印象的です。

「やはり今の私があるのは地元福岡のjABBKLABなので、これからも仲間たちと共に面白いことを生み出して発信していきたいなと思っています。私のようにダンサーとして生きていけるような子たちや、ダンスをきっかけに強く生きていける子たちを育んでいきたいです。私自身としてはやりたいことはたくさんあって。まだまだ演者としてステージにも立っていたいし、振付師としても舞台を手がけたりなどやったことのないことに挑戦してみたいです。ほかにも音楽をやったり、アパレルブランド手がけたり、機会があれば声優とかもやってみたいな(笑)。jABBKLABの弟子や生徒たちの憧れの存在でありつづけたいので、拠点の福岡やこだわりは大事にしつつも活動の場所を選ばず、いろんなことに挑戦し続けたいと思っています。仲間たちと共に色々やっていきたいですね!」

――今回、「OTORAKU -音・楽-」でのキュレーションに携わっていただくわけですが、yurinasiaさん自身、ふとした瞬間に聴こえてくる「街鳴りの音楽」に心が惹かれることはありますか?

「音ってその日の匂いとか、雰囲気、思い出とかにすごく影響しますよね。旅先でずっと行きたかった居酒屋があって、やっと予約が取れて楽しみにしてたんですが、店内BGMが思ってたものと違ってて。お料理は美味しかったんですが、おしゃれなBGMが流れている地元の行きつけの焼肉屋に行きたくなりました(笑)。アパレルショップなどでも音楽が好みだと気持ちが上がり、服が似合うような気がするというか。いつもよりたくさん買ってしまったり(笑)」

――今回は、「店内を彩る空間BGM」というテーマでプレイリストを作っていただきましたが、手応えはいかがですか?

「とっても面白かったです。私が好きでいつも聴いてる音楽もあれば、新しく掘った音楽も入れさせていただきました。新しい音楽に会える喜びを改めて感じて、ダンスへのモチベーションも高まりました。結構いろんなジャンルを選ばせてもらったんですが、シンプルに私が踊りたい曲ばかりです。私自身も何度もこのプレイリストを聴き、楽しませてもらってます(笑)」

――プレイリストのタイトルは「daredemo odorouze playlist」ですが、タイトルの意味や、そこにに込められた想いを聞かせてください。

「ジャンル問わず好きな音で踊っていいんだよっていうことを私は体現してきたので、そこを感じ取っていただけると嬉しいです。皆さんが抱いているダンサーのイメージも少し柔らかいものになってほしいし、この楽曲なら私も体揺らしたいかも!踊ってみたいかも!など、ダンスに対しても柔軟な気持ちを掻き立てられるようなそんなプレイリストを作成しました。タイトル通り”誰でも踊ろうぜ!”を感じていただきたいです」

――プレイリストに入っている楽曲も然りですが、新しい音楽との出会い方は?

「それこそ店舗BGMなどはインスピレーションになってますね!あの店で流れてたあの音楽こんな感じだったよなあ……と思い出しながら似たような楽曲を探して、また違う音楽と出会ったり。ときには人におすすめされた楽曲も逃さずしっかり聴いて、そこを根っこに自分なりに新しく掘る事もあります。ジャケットやMVなど目から入ることもあります」

――では「daredemo odorouze playlist」が似合いそうなシチュエーションやロケーションのイメージは?

「さまざまな人が訪れて、さまざまなものをシェアできるようなそういうスペースがある店舗。この音楽いいね!ってお店でも私は普段から口に出しますし、1人でも踊っちゃうタイプなんですが、そういう空気が店内にも伝わって、音楽で繋がれるみたいな空間いいですよね。音楽が連鎖していくみたいな……コーヒーショップやアパレルショップ、雑貨屋などのイメージで選曲しました」

――ここ5年くらいのスパンでリリースされた楽曲が多いですね。とてもフレッシュなレパートリーだと感じました。

「そうなんですね!そこは知らなくて選曲していました(笑)。でも新しいものには古き良きものへのリスペクトがたくさん隠されていて、私はそれを解いていくのも楽しいし、好きなんですよね。そして新しい曲たちはすごく斬新で、聴いていてこれから音楽シーンどうなるんだろう。私たちダンサーもアーティストと共に進化していかなきゃなってワクワクさせられます」

――ここからは、プレイリストの中でレファレンスとなる楽曲をいくつか挙げてライナーノーツ的に読み解いていただきましょう。

VIDEOTAPEMUSIC「ネペンテス」
「出演させてもらったTENDRE「sign」の監督を務めたテープさん。テープさんが手がけた作品に出演できたことがこの曲を聴いて改めて自分の中で大きくなりました。カッコ良すぎます。この曲で生徒たちと何度も踊りました」

YUNOWA「ヒカラビ」
「「金魚公園」でのayumuguguとのユニット、botanicの選曲でこの曲に出会い、ネタの方向性が一気に固まりました。最終的にYUNOWAさんの「宵はざま」で踊らせてもらったのですが、自分たちの尖りや陰な部分をエンタメとして見せれる世界観の曲で、次のネタでも踊りたい楽曲です」

ビリー・アイリッシュ「Billie Bossa Nova」
「今までビリー・アイリッシュは有名な「bad guy」くらいしか知らなくて。子どもたちと家で踊って遊んだりしていました。アルバム『Happier Than Ever』を聴いた時に結構衝撃が走りました。”え?誰?え!ビリー・アイリッシュなんだ!”って。私の好きな感じが詰まってて、概念変わりました。この楽曲も名前が可愛すぎてお気に入りの曲です。タイトル大事(笑)」

――このプレイリストを使われるOTORAKUユーザーや、OTORAKUを介してyurinasiaさんのセレクトした音楽を聴かれるリスナーの皆さんへのメッセージを。

「このような機会をいただき、選曲できたこと光栄です。ダンサーとして音楽と携わらせていますが、まだまだ世の中には素敵な音楽との出会いが待ってるんだと改めて感じ、私のダンス人生もまだまだ楽しいなとも思えました。音楽との出会いのお手伝いをできてれば幸いです。私も踊るぜ!一緒に踊ろうぜ!」

(おわり)

選曲・監修/大園絢音、北村魁知(USEN)
文・構成/高橋 豊(encore)
写真/SUGULU

「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LISTdaredemo odorouze playlist


■ Message from yurinasia
ダンスっていろんなジャンル、いろんな音色、いろんなペースで踊っていいのです。その日その時自分に合う音で。誰でも好きなように踊っちゃって!

1. YUNOWA「ヒカラビ」
2. Johnny Yukon「Right now!」
3. Billyrrom「Natural Sense」
4. 7co「Soup」
5. Saya Gray「LINE BACK 22」
6. D.A.N.「Chance」
7. PAELLAS「airplane」
8. Mime「Lights」
9. Gigi Perez「Normalcy」
10. LAUSBUB「Telefon」
11. °pbdb,梅井美咲,北村蕗「qp」
12. HUGEN「パン」
13. CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN「Moon Dance」
14. VIDEOTAPEMUSIC「ネペンテス」
15. wai wai music resort「Blue Fish」
16. kauai hirotomo「Surf's Up」
17. Buffalo Daughter「Socks, Drugs And Rock ‘N’ Roll - 2022 Remastered」
18. 文藝天国「破壊的価値創造」
19. Frex「Hoodie Back」
20. Blue Hawaii「Tan Lines」
21. xiangyu「BBIISPP」
22. um-hum「ユウマ」
23. Doona「BY MY SIDE」
24. E.scene「All Around You」
25. The Burning Deadwoods,柴田聡子「Another Day」
26. goethe「Make a Move」
27. ego apartment「REACH!」
28. luvis,I'm「夏果つ」
29. CANDYGIRL「LOVE BUG」
30. ビリー・アイリッシュ「Billie Bossa Nova」
31. 離婚伝説「メルヘンを捨てないで」
32. Group2「めまい」
33. Barbara「Vacation Disco」
34. wai wai music resort「夜の思惑~Last Bolero」
35. ぷにぷに電機,Mikeneko Homeless「your room」
36. Gliiico,Chara「Tragedy (feat. Chara)」
37. Geloomy「airam」
38. macaroom,知久寿焼「hyougaki」
39. Johnny Yukon「girlfriend ..」
40. hard life「ocean view」
41. emory「moth」
42. Bialystocks「Upon You」
43. sucola「mocha」
44. The Burning Deadwoods,maco marets「Jellyfishes」
45. さらさ,Olive Oil「ネイルの島 - Olive Oil Remix」
46. Raine Cloud「Fallin'」
47. Sorai「Cruise Ship」
48. Lil Summer「Saudade」
49. TOGITO「Stay」
50. moeki「A Rainy Night in NY」
51. Chunky Cookie Club「nidone」

OTORAKU キュレータープレイリスト

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