──今年2月に「Your Song」でメジャーデビューを果たしたOffo tokyoですが、メジャーデビューして、心境など何か変化はありますか?

Seiya Ozaki「あまり変わらないです。ただ、SNSとかライブの盛り上がりを見ていると、リスナーが着実に増えているという実感はあります」

Shota Kaya「曲を作って、プロモーションをして、合間にライブをやって、というサイクルはデビュー前から変わらずハイペースやっているので、メジャーデビューして何かが変わったみたいなことはないです。“ほっとしたね”とかも全然ないですし…。ただ、メジャーレーベルがついたことで、プロモーションの幅が増えたり、露出の機会が増えたりしているので、それによって少しずつリスナーが増えている実感はあります」

Hiira(Vo)

──皆さんの心境としては大きな変化はないということですが、つまりメジャーデビューを目指していたわけではないということですか?

Hiira「“幅広い人に聴いてもらいたい“という気持ちは最初からあったので、逆に想像がついていたというか…メジャーデビューは当初から捉えていたことなんです。だから”ようやく“という気持ちです」

──なるほど。では、新曲のお話を伺う前に、encore初登場なので皆さんの音楽遍歴を聞かせてください。

Hiira「僕が音楽を能動的に聴くようになったのは高校生くらいです。それまでバスケットボールに熱中していたんですが、怪我をしたりして挫折してしまって。そこで文化祭でコピーバンドに誘われて歌ったのがきっかけで…というベタな展開です(笑)。当時聴いていた音楽で1番覚えているのは大瀧詠一の「君は天然色」です。CMで流れていたので、よく口ずさんでいましたし、カラオケでも必ず歌っていました。逆に“CMで流れているのに、どうしてランキングに入っていないんだろう?”と不思議に思っていました」

──Hiiraさんとしては、CMで流れているから、リリースがいつかというのは気にしていなかったんですね。

Hiira「そうです。そこから自分の声に合う音楽を探して聴くようになりました。MONGOL800やハナレグミを聴いているうちに行き着いたのがフォークとカントリーでした。地元の愛媛にいたときにフォークバンドを45年やっていました」

Seiya Ozaki(Keys)

Seiya「僕はピアノをやっていたので、音楽遍歴ということで言うと、クラシックが最初です。でも練習が大嫌いだったから、ピアノはすぐにやめちゃって。ただそのときの先生が、良くも悪くもかなり古典的な人だったので、音楽ロジックなども教えてくれたんです。だから音感が身につきました。ピアノをやめたあと、聴こえてくる音楽を自分で弾くようになりました。それがポップスへの入り口でした」

──聴くよりも弾くほうが先だったんですね。

Seiya「はい、弾くのが先でした。親が洋楽邦楽問わず70's80'sの音楽が好きだったので、そのあたりの曲を聴いてコピーしているうちに、自分もそういう音楽が好きになって。松田聖子、ユーミン(松任谷由実)、サザンオールスターズあたりは今もブレずに好きです」

──ピアノはその後も弾いていたんですか?

Seiya「はい。バンドのキーボードになるとかでもなく、一人で弾いていました。ただ、一人でずっとやっていてもつまらないから、MIDIレコーダー付きキーボードを買って、いろんなパートをコピーして録音して、一人で一曲を完成させるということをやっていました。ほとんどサザンばかりでしたけど(笑)。そこで、“楽曲ってこういうふうにできているんだ”っていうことを学んだ気がします」

Shota Kaya(Gt&Sax)

Shota「僕は最初に楽器を触ったのは中学生くらいのときでした。アコースティックギターをなんとなく弾いたのが始まりです」

──アコギが家にあったんですか?

Shota「いえ、買いに行きました」

──そうなんですね。どうしてアコギを買ってまで始めたのでしょうか?

Shota「土壌として、割と音楽はちゃんと聴く家族だったんです。小学生くらいからはMDで自分のプレイリストを作ったりもしていて。なんとなくギターを弾き始めたら“作曲がしたい”と思うようになって…。そうすると“作曲するならピアノのほうがわかりやすいだろう”と思って、ピアノを習いはじめました。作曲を始めると、アレンジもしたくなるので、そうなると色々な楽器に関する理解があったほうが役に立つと思い、手始めに吹奏楽部に入りました。吹奏楽部では、トランペット、トロンボーン、サックスをやりました。高校生になってからはDTMで打ち込みを始めました。歌を歌う人が必要になるので自分で歌い始めて…大学生の頃には、シンガーソングライターとしてライブハウスに出るようになりました。大学卒業後、音楽活動をする上で何か肩書きがあったほうがいいと思って、松任谷正隆さんが主宰の音楽学校・マイカ・ミュージック・ラボラトリーに通いました。その時期にOffo tokyoの前身となるOffoを立ち上げて今に至ります」

──聴く音楽としてはどういうものを聴いていたんですか?

Shota「最初はヒットチャートにランクインしているような、その時代のJ-POPを聴いていました。たとえば当時、誰もがモーニング娘。のメンバー全員の名前を言えましたよね。そのあと、松田聖子がきっかけで多くの曲をユーミンが書いていることを知って、そこからクレジット聴きをするようになりました。ユーミンの曲や、ユーミンが参加している曲から、そのプロデューサーや参加しているミュージシャンを聴くようになって…と、洋邦問わず、いろいろ掘り下げていました。そのなかでも特に好きだったのは7080年代のアメリカの音楽です」

Nemo(DJ)

──70、80年代のアメリカの音楽をOffoでやろうとしていたのでしょうか?

Shota「Offoでは新しい価値観を作りたかったので、音楽性にはあまりとらわれずにやろうと思っていました。僕自身が職人的というか、作家的なものに美学を感じていたので、設計図を書いて、その通りに曲を作るということを始め、J-POPの中で存在価値を高めていきたいと思っていました」

──J-POPの中にいるということは大切なんですね。Offoは下北沢で結成されたクリエイター集団だったわけで、そうなるとちょっと尖ったものというか、前衛的なものをやろうと思えばできたと思うんですが…。

Shota「ただ“やりたいことをやるんだ”、“俺は尖っているんだ”と言いながら、説教を垂れるだけの人間になりたくないなと」

──認めてもらうことが必要だったんですね。

Shota「まずは売れなきゃ何を言っても説得力がないと思っているので。自分が本当にやりたいことなんて、精神分析でもしないと正直わからないと思うんです。だから、“やりたいこと”というのは一度置いておいて、まずは何かしらのトロフィーを取ろうと。そのためにはJ-POPの中で存在価値を高めていくことが大切だと思っています。」

──Offo tokyoの音楽はいわゆる歌謡曲やシティポップに分類されると思うのですが、J-POPの中でそこを選んだのは、3人のルーツがそこだったからですか?

Shota「それもありますが、みんなが好きなコード進行とかメロディってある程度決まっている…と言うと乱暴ですが、まずは基本に忠実にやることが大切なんです。」

Seiya「よく“シティポップだ”と言われますが、自分たちとしては、そこだけをやっているつもりはないです。もちろんシティポップは好きですけど、そこを狙っているわけではなくて、それこそ基本に忠実に、良いと思うものをやっているだけというか…」

Hiira「僕は…好きだから(笑)。そういう曲を歌うのも得意ですし。Shotaが書いてくる曲が良質すぎるので、“俺に歌わせて!”ってなります。それだけです。ただ、Shotaが作る曲ってすごく難しいんです。巧妙な曲が多くて。だから、レコーディングやライブを経て、歌えるようになっていくのも気持ち良いです」

──Offo tokyoのことがわかったところで、8月6日リリースの「Mermaid -Never Ending Summer-」について聴かせてください。この曲は“トレンディ・サマーポップ”ですが、夏の曲を作ろうというところから生まれた曲なのでしょうか?

Shota「それが違うんです。メロディは変わっていないんですが、最初はもう少しテクノポップみたいな曲でした。で、アレンジを進めようとしたら初夏の足音が聴こえてきて、夏の曲にしたくなっちゃって」

──曲に導かれるように夏の曲に?

Shota「はい。メロディのラインが今のアレンジととても相性が良くて。そこから、日本の往年の夏ソングに思いきりオマージュを捧げようというコンセプトです」

──Seiyaさん、Hiiraさんは初めてこの曲を聴いたとき、どう思いましたか?

Seiya「夏の香りがしました。その時点では歌詞は乗っていなかったので、Shotaがどんな歌詞を書いてくるのかが楽しみでした」

Hiira「一聴しただけで、得意なタイプの曲だと思って、“好き!”って(笑)。“早くライブでやりたい”と思いました。大きな会場で歌っている景色がすぐに思い浮かびました」

──そこから歌詞を乗せていったわけですが、歌詞は曲のイメージからですか?

Shota「完全にそうですね。改めて当時の夏ソングを聴きあさって、自分の中にインプットして、そこから下ろすような感じでした」

──歌詞には<レモンスカッシュ>、<カセットデッキ>といった、物理的にリアルタイムではないものも入っていますが、そのワードチョイスはどのように?

Shota「時代考証というか…当時のポップスのシーンでは、どういうものが夏の季語として使われていたのかを分析して、そこからちぐはぐにならないようにと考えながら書いていきました」

──まさに時代考証ですね。

Shota「はい」

──セリフの入れ方も良いですよね。

Shota「レコーディングをしているときに“女の子のセリフは欲しいよね”って話になってコーラスも入れてもらいました。とあるお姉さんをレコーディング当日に“今から来れる?”と呼びつけて、“好き”とか“ふふふ”と書いた紙を渡して“これを読んで”って。夏と言えばサザンじゃないですか。だから原坊(原由子)が欲しくなっちゃったんですよ」

──そんないろいろなこだわりの詰まった「Mermaid -Never Ending Summer-」ですが、特に気に入っているご自身のパートや聴いてほしいポイントを教えてください。

Hiira「僕は<トレンディーな夢>という歌詞です。“トレンディー”ってこの曲を表す一言で。ミュージックビデオの撮影中も“トレンディー”という言葉がキーワードになっていたので、それが歌詞に入っているのが気に入っています」

Seiya「歌詞でいうと<なんか、クリスタル?>が好きです。ちょうどレコーディングしている時期にShotaと、田中康夫の小説『なんとなく、クリスタル』の話をしていたんです。そんなことを言っていたら、ここに<なんか、クリスタル?>という歌詞が入っていて…」

Shota「この曲、ここだけじゃなく1行1行にそういう元ネタがあります」

──聴いた人もいろんなところに見つけられるでしょうね。

Seiya「ニヤッとしてほしいですよね」

Shota「ニヤッとするか、怒られるか(笑)。僕が気に入っているのは音色です。イントロのベルもそうですし、ドラムも良くて。スネアとタムにゲートリバーブを深めにかけて、時代感をわかりやすく出せたと思います」

──歌ううえではどういうことを意識しましたか?

Hiira「それこそトレンディーな頃にポップス最前線だった男性ボーカリストをくたくさん下ろしてくるという作業をしていました。モノマネをするわけではないですが、僕のフィルターを通していいところを探っていくという感じでした」

──そうして最高な夏ソングが出来上がりました。今の心境はいかがですか?

Shota「リリースしてからの皆さんの反応が楽しみです」

──それこそUSEN放送で流れたときに、思わず耳を傾けてしまう人も多そうですよね。

Shota「だといいですね。すごく耳に引っかかる曲になったと思いますし、今までやってこないアプローチもしたので、いろんなところに広がっていってほしいです」

──リリース後の8月16日には、初の海外公演としてインドネシアでの公演も控えています。

Hiira「インドネシアでは今、日本のシティポップが流行っていると聞いたんですが、どれくらいの温度感で気に入ってもらえるのかはわからないので楽しみです。結成当初、いろんな縁があって、周りの大人から“インドネシアでライブができるといいね”って言われていたんです。それがようやく叶うので、“タイミングが巡ってきたんだな”という不思議な気持ちになります。個人的には初めての海外なので、そういう意味でも楽しみです」

Seiya「海外公演ができることは素直にうれしいんですが、インドネシアって行ったことがないのでまったく想像がつかなくて…。“どんなライブをしたら喜んでもらえるんだろう?”って、みんなで考えながら、いろいろと準備をしています」

Shota「パスポートが見つからなくて。1ヵ月くらい部屋の中を探してようやく見つかりました」

──ライブ以外にもインドネシアを楽しめるといいですね。

Hiira「それが…レーベルから共有された日程を見ると、お仕事を詰め込んでくださっていて(笑)」

──それこそ今、海外で日本のシティポップが人気ですが、日本のシティポップを広めたいという気持ちもあるのでしょうか?

Seiya「いえ…。というのも、そういうものって自然と広がってくものだと思うので、 “自分たちで”という考えは、あまりないです」

Shota「そうですね。シティポップに限った活動をしているわけではないので。ただ、日本の音楽が海外でも評価されているのは僕らにとっても嬉しいことです。」

──それでいうと、日本では12月から1月にかけてワンマンツアー『Offo tokyo Live Tour 2025-2026』が控えています。少し先ですが、どんなツアーにしたいと思っていますか?

Seiya「これまでのライブで一番披露する曲数が多くなりそうです。というのも、今制作中の曲がかなりあるんですが、その頃にはリリースしていると思うので。あと、ツアーで福岡には初めて行くので、九州の風を思いきり浴びたいですし、Offo tokyoの風も吹かせたいと思っています」

(おわり)

取材・文/小林千絵

RELEASE INFROMATION

Offo tokyo「Mermaid -Never Ending Summer-」

2025年8月6日(水)配信

Offo tokyo「Mermaid -Never Ending Summer-」

LIVE INFORMATION

Offo tokyo Live Tour 2025-2026

2025年12月6日(土) 名古屋 今池GROW
2025年12月7日(日) 大阪 梅田Zeela
2026年1月18日(日) 福岡 福岡OP's
2026年1月25日(日) 東京 渋谷WWWX

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