『In The Moonlight』 Mia / Star Creature / STCU12641

『In The Moonlight』 Mia

マイアミを拠点に活動するSSW、Mia(ミア)によるデビューLP。

現行ブギー、DIYファンク、ベッドルームR&B、そして海外視点のシティポップ再解釈を横断するサウンドで注目を集める彼女のファーストアルバムである今作は、トロントのプロデューサーGil Masuda(ギル・マスダ)を共同制作者に迎えて制作されている。レーベルのStar Creature Universal VibrationsはMiaのことを「Miami’s Queen of the Bedroom Boogie」と紹介しており、親密でローファイなベッドルーム・ブギーの感覚が一貫して流れている。80年代ブギーやAOR、シティポップ的な語法を用いながら、決して懐古趣味的なだけではなく、甘く滲むシンセ、柔らかくうねるベース、軽快なリズムと裏腹な眠たさ、音像全体に霞がかったようなイメージはシティというよりも、やはりベッドルームを彷彿とさせる。Miaのトラックに溶け込むようなヴォーカルもまるで"月明り"のように作用し、繊細な距離感が聴者のぼんやり記憶に残る夜の感触を思い起こさせる。

『Funny How?』 Chassol / Creature / LUDI003LP

『Funny How?』 Chassol

フランスの作曲家、ピアニスト、映像作家のChassol(シャソル)による5枚目となるアルバム。

現実世界の音・会話・映像からリズムと旋律を抽出して構成されるultrascoreなる彼の独自の手法で制作された今作はアメリカのスタンダップコメディにインスパイアされたという。Patton Oswalt(パットン・オズワルト)を中心とした実際のスタンダップコメディアンを起用し、話芸をひとつの楽器のように扱い、声の抑揚、間、観客の反応でメロディやテンポを表現することで、人間の会話や話そのもの、笑いの構造が音楽化されている。且つ今までで最もポリティカルなテーマ性があるとのことで、アメリカ社会の緊張性やブラックコメディの空気を扱おうと試みている。

『Mercy』 Armand Hammer & The Alchemist / Backwoodz Studioz | Rhymesayers Entertainment / BWZ808LP

『Mercy』 Armand Hammer & The Alchemist

billy woods(ビリー・ウッズ)とELUCID(エルシド)によるデュオ、Armand Hammer(アーマンド・ハマー)とThe Alchemist(ジ・アルケミスト)による、前作『haram』から4年、再びのタッグ作。

不協和なパーカッション、陰影の深いループ、張り詰めたピアノサウンドによるトラックはいつもながらのThe Alchemistとはまた違っており、むしろArmand Hammerによる複雑なラップに対してアプローチするスタンスであり、それは前作『haram』より健在。そのトラックと、ポリティカルな問題や歴史的な文脈、暴力の痕跡、パーソナルなエクスペリエンスを交錯し現代に拡散する日常の残酷さを描き出すリリックが絡み合い、暗澹たる文学的ラップ作品と成っている。

『Pure Devotion』 Overmono / XL Recordings / XL1668CD

『Pure Devotion』 Overmono

UKベースミュージックの最前線を走るOvermono(オーヴァーモノ)より前作に引き続く2作目のアルバム。

それぞれTruss(トラス)、Tessela(テセラ)としてUKのアンダーグラウンドテクノ、ベースミュージックシーンで活躍してきた彼らがり大きなライブアクトへ進化させるために始めたOvermono。2023年の『Good Lies』はまさにそれを体現したわけだが、今回ではむしろ内側に入り、より削ぎ落されたサウンド、実験的な試みへと変換。『Good Lies』のリリース以降、長期にわたる世界ツアーや大規模なライブハウスの中で生まれた楽曲などを再構築する試みとしてスタートし、「自分たちのスタジオ空間そのものを閉じ込めたような作品にしたかった」という言葉の通り、アイスランドやスペインの小さなスタジオにこもり、数台のシンセサイザーとエフェクトユニットという最小限の機材で制作されている。1930年代の古い鉄道アナウンスシステムでの録音や、実際にシンバルをオーブンで焼いたり、音の質感を変えるための実験的なプロダクションは偶発性と不完全な美しさを生じさせている。それらはタイトル『Pure Devotion』が示すダンスミュージックという文化と、それを身体で体験することへの愛なのかもしれない。

『Pavor』 Edgar / Dark Entries / DE361

『Pavor』 Edgar

アメリカ・オークランドとメキシコ・グアダラハラを拠点に活動するベテランミュージシャンLuis Gutierrez(ルイス・グティエレス)によるソロプロジェクト、Edgar(エドガー)のデビューアルバム。

Edgarは彼によるペルソナで、 “Edgar feels mightier than anyone but is always reduced to his vices(誰よりも強そうに振る舞うが、結局は自らの悪癖に支配される男)”として設定されている。そんな人格から繰り出されるサウンドは70~80年代のラテン系ディスコ、B級ホラー、EBM、シンセポップ、ゴシッククンビアをごった煮にしてダンサブルなのにクリーピー、存在しなかった80年代メキシコの深夜のTVショーのBGMのような、不気味で不吉、陽気でユーモラスなマスカレードである。

『Luminous』 Charles.A.D. / Avantroots / AR060

『Luminous』 Charles.A.D.

普段は農業を営みながら、コンスタントに作品を発表するHiroyuki TanakaによるソロプロジェクトCharles A.D.のアルバム。

今作は彼の持ち味であるダブテクノを軸としながら、光、空間の広がりを意識したサウンドが特徴としてあり、深海を漂うような重低音とディレイはありながら煌めくように差し込む光と透明感は水面近くに浮上してきたかのよう。穏やかな揺らぎと残響、音色の変化が柔らかな没入感を提供する。

『Sunshine』 Jungle / AWAL / CAI003LP

『Sunshine』 Jungle

2013年にロンドンを拠点とするJことJosh Lloyd-Watson(ジョシュ・ロイド・ワトソン)とTことTom McFarland(トム・マクファーランド)の二人によって結成されたJungle(ジャングル)の5枚目のアルバム。

今作は、前作『Volcano』の夜の高揚感を引き継ぎながら、より柔らかくオーガニックな方向へ舵を切った一枚で、これまでの作品で探求してきたサウンドの幅を広げつつ、親しみやすくストレートな魅力を保っている。先行シングルカットの「Carry On」からも暖かな温度感のあるムードは、どこか陽光のなかにある多幸感を彷彿とさせる。





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