──昨年10月より2人体制になりましたが、この1年間で気持ちに変化はありましたか?
Yuji「2人体制になったのも急なことだったので、最初の半年間は応援してくださっているファンの方に“それでも俺たちは音楽を届け続けるぞ!”という姿を見せられるように、前のめりに活動をしていました。とにかくライブをして、YouTubeで曲やライブ映像をアップして。そんな中で、6月に5周年記念のワンマンライブ『duo PRESENTS BuZZ ANNIVERSARY PARTY 2022 “B-DAY”』を開催したのですが、その公演は2人体制になって初の単独ライブでもありました。そのライブを終えて、ようやく先のことが考えられるようになりましたね。リリースの話もそうだし、2人体制になってやる音楽やエンタテインメントの方向性とかもようやく落ち着いて考えられるようになりました。とにかくあっという間の1年でした」
üsay「2人体制になったのが去年の10月で、コロナ禍の影響もあってひさしぶりにライブができたのが11月だったんです。それもすごくタイミングが良かったなと思っていて。“2人でやるしかない!”となったときに、ちょうどお客さんの前でライブができたので、良いスタートになったなと思いますし、その勢いのまま来られた1年だったなと思います」
──6月のワンマンライブを終えて新体制のBuZZについて考えられるようになったとのことですが、そこで見えた新生BuZZの方向性とはどのようなものだったのでしょうか?
Yuji「4人組から2人になったので、最初は“抜けた2つの穴を埋める”という感覚が強くて。4人で歌っていたものを半分半分で歌うみたいな考え方だったんです。だからまずはその考えを一旦取っ払ってみようと思いました。不思議なもので、ライブでも、4人で歌っていた曲を2人で歌うと、お客さんも“2人がいない”と感じているのがわかるんですよ」
üsay「言葉にして言われるとかでもないんですけど、何だか感じてしまって。だったら“2人の穴を埋める”という考えを取っ払ったほうが、自分たちも変な迷いもなくなるし良いなって。逆に“2人です!”って胸を張れるくらいに頑張ろうと思いました」
──2人体制になって、改めて相手の声との相性などに向き合う機会も増えたと思います。その中で見えたアーティストとしてのお互いの良いところはどういうところだと思いますか?
üsay「たくさんありますね。Yujiさんは4人時代のときからずっと真ん中にいる人で。2人になってもそのスタンスを変えずにいてくれて安心します。あとは新曲を録っていて改めて思ったのですが、パワフルにも歌えるし、優しくも歌えるし、両方が入り混じった声もあるし、本当にいろんな声を使い分けられるんですよ。そこが良いところだと思います」
Yuji「ありがとうございます(笑)」
üsay「あとはMCですね。巻き込むのがほんとうに上手で。しゃべるために生まれてきた人です」
Yuji「そうそう(笑)。ラジオに出れば爪痕しか残さないですからね。ラジオでBuZZの曲をかけると“ちゃんと音楽やってるんだ!”と驚かれます(笑)。üsayはいろいろな部分でパワーアップしているのを感じます。BuZZの中では高音担当だったんですが、今はそれだけじゃないし。もともと好奇心旺盛で、かつ吸収が早くて、いろいろなものをすぐ自分のものに変える力があるから、とにかく成長が止まらない1年間だったと思います。“俺も頑張らないと”、とケツを叩かれましたね。あとはこの1年ですっごく色気が出ました」
──そんな中で1年を経て、新作EP『MOOD』がリリースされました。本作のコンセプトは“ムード”、キーワードは“ロマンティック”とのことですが、このコンセプトはどういったところから着想したのでしょうか?
Yuji「どちらかと言うと、楽曲が先にできて、コンセプトは「MOOD」に収録している3曲が揃ってから考えたんです。ただ楽曲を作る上で、再スタートのときに“俺たちがいるから大丈夫”とか“一緒に未来を切り開いていこう”とか、そういうグループとして届けるメッセージじゃなくて、物語性の強い楽曲で何かを感じ取ってもらいたいなということは考えていましたね」
──それはどうしてですか?
Yuji「コロナ禍になってから、みんなが音楽を聴くテンションが変わったというのを感じて。ここ最近の音楽って、フェスだったりクラブだったりで、“みんなで一緒に聴くもの”だったと思うんです。でもコロナ禍になって、家で一人で聞くとかイヤホンで聴くとか、そういうものになって。だから、一人で聴く場面に合うような音楽、聴く人に寄り添うような音楽が必要とされているんじゃないかなって」
──なるほど。その考えのもと楽曲を作っていったら“ムード”や“ロマンティック”という言葉が似合う楽曲になっていったと。
Yuji「そうです。スタッフと一緒に会議をしながらタイトル案を考えていたんですが、俺とüsayは1時間くらい何も思い浮かばなくて。そしたらスタッフさんが“ムードはどうですか?”とアイデアを出してくれて、“それだ!”ってなって。実は今作を作るにあたっての一番の変化は、制作のチームを作ったことです。今まではセルフプロデュースとして、BuZZメンバーだけで制作をしていたんですが、今回は若いクリエイターを含めて新しいチームを作りました。レコーディングのボーカルディレクションにも新しいスタッフに入ってもらって。外部の人にボーカルディレクションしてもらうのなんて5年間で今回が初めてなんです」
üsay「あれは大きかったよね」
Yuji「5年間も一緒にいたのに、“お前、そんな歌い方できるの!?”という驚きが15回くらいありました」
──üsayさんは新しいチームになって、何か発見はありましたか?
üsay「僕も、自分のボーカルに対する発見もありましたけど、やっぱりお互いの発見が大きかったです。「Chandelier」で言えば、元々デモで作っていたものとは全然違うディレクションをしてもらったんです。その結果、ボーカルブースから聴いたことないYujiさんの声が聴こえてきて。“Yujiさんって、かわいかったんだ。優しかったんだ”と思いました。それをこれまでの5年間を知らない人にディレクションしてもらったからこそ、納得させられて。信頼できる人たちと巡り会えて良かったなと改めて思いましたね」
Yuji「実は、クリエイターチームを作るためにずっと旅をしていたんですよ。いろいろなレコーディングの現場を手伝いに行ったりもしましたし」
──“チームのメンバーを自分たちで決める”というのもセルフプロデュースならではのやり方ですよね。
Yuji「はい。以前もレコード会社の人が連れてきてくれたこともあったんですけど、どうしても“大人とタレント”みたいな関係性になってしまう気がして。“利益とか関係なく俺たちの音楽を見つけていこうぜ!”というチームにしたかったので。だから自分たちで波長の合う人たちを見つけて、“一緒にやってください”と話をして、事務所にちゃんと説明して」
──自分たちで5年間やってきたからこそできることですね。
Yuji「それはすごく意識していました。ミュージックビデオもそうですけど、今まで自分たちで作っていたからこそ、少なからず知識もあるので、プロの方ともちゃんと意見交換ができるんですよ。全部任せるんじゃなくて、必ず僕たちも参加するし、意見もシェアするし、みんなで作っていく。それがめちゃくちゃ楽しくて!」
üsay「うん!」
──先ほど「Chandelier」の歌い方が優しいというお話もありましたが、聞かせていただいて、私も今までにない柔らかい楽曲だという印象を受けました。
Yuji「僕は歌い上げる癖があるので、最初自分のボーカルを聴いたときは“大丈夫かな?パンチがないって言われちゃうかな?”みたいな不安があったんです。でも今回は楽曲自体のテーマとして、腹7分目くらいにして、何回も何回もリピートして聴いてもらえる曲にしたいというのも考えていたので、そう考えると、このボーカルだからこそ成立できるなと思って」
üsay「僕もいつもはバキッと歌うタイプなので、ライブでやるとどうなるのかが楽しみですね」
Yuji「僕たちはライブに力を入れているので、今まで、音源ではライブでやるものを体現するという意識で作ってきていたんです。でも今回はその考え方を逆にして。“音源は音源”と割り切って制作しました。だから、ライブでは全然違うものにするのか、音源を再現するのかはまだ決めていませんが、音源に対する考え方をガラッと変えたことは大きいのかもしれません」
──その考え方の変化は、先ほどおっしゃっていたリスナーの音楽を聴く環境の変化によるものですか?
Yuji「そうですね。状況が戻ったらどうなるかはわからないですが、しばらくは今回みたいな表情のある曲を作っていくことになるんじゃないかなとは思っています」
──「Chandelier」は歌詞もストレートなラブソングですが、ストレートなラブソングをしっとり歌う、ということについてはいかがでしたか?
üsay「実は「Chandelier」はこの形になるまでに3年くらい温められていて」
Yuji「曲を作りながら、2人で愛について語っていた時期があったんです」
üsay「“愛とは?”ってね」
Yuji「「Chandelier」は、そんな“愛とはシリーズ”の1つです。恋愛初期の初々しくて一番楽しい時期を振り返ったときの気持ちを歌にしています。üsayも言っていたように、3年前くらいにはもう形ができていたのですが、今とは全然違います。尺も5分弱あって、どっぷりした感じの曲でした。でも今回、それこそ新しいチームと話し合って短くしたので、そのぶんストーリーもちょっと変えて」
üsay「心を鬼にしましたよ。でもこの尺とアレンジがすごく良いので、ぎゅっと。でもその結果良い曲になったので、この子はすごいです」
──80年代のシティポップの雰囲気もあって。近年のリバイバルブームとぴったりはまっていますしね。
Yuji「そうそう。BuZZは80年代、90年代の音楽をリバイバルして僕たちの音楽にしていくということが多くて。そういう“古き良きもの”としてシャンデリアをモチーフにしているんですよ。手間もかかるし、お金もかかるけど、長く残せるもの、そういう日々という意味も込めて「Chandelier」にしたんですけど、結果、うまくハマったなと思います」
──3年間温めた甲斐がありますね。
üsay「本当に!」
Yuji「3年間ずっと前のアレンジで聴いていたから、お着替えさせるのは大変だったんです。愛着も湧いていましたし。でもチャレンジして良かったと思います」
üsay「そうだね。もちろん昔のアレンジの「Chandelier」も愛してるし。でも、今は君だよと」
Yuji「今は破壊と再生が本当に楽しいです」
──そのほかの収録曲「Mint & Co.」、「Candy Rain」は最近作った曲ですか?
Yuji「実は1カ月で仕上げたんです。それまで毎日山ほど曲を作っていたのに。新しいチームになったこともあったので、それまでにできていた曲を並べて見せたのですが、“全曲なしにしよう”という話になって。そこから新たに作り直しました。本当にギリギリでしたね。前日に歌詞を作ったりして」
üsay「なんならレコーディング当日に届いた歌詞もありました。“譜割り、合ってます?”みたいな(笑)」
Yuji「あったね(笑)。でもその感じが逆に楽しかった。俺たちって、良い意味でも悪い意味でも、作り込む癖があって。例えば曲ができてからレコーディングまでに3週間あったら、ボーカルのアプローチも固めて作り込んでいく。でも今回は本当にギリギリだったから、固められなかったぶん、レコーディングしながらいろいろなことを試すことができて」
üsay「最初に机に並べた曲たちを、全曲なしと言ってくれなかったら、こういうことができていなかったと考えると、携わってくれたチームの人たちに感謝ですね」
──「これでOK」と言ってしまうほうが、楽ではありますもんね。
Yuji「そうなんです。本当はそっちのほうが楽なんですよ。前日まで曲ができてないなんて、みんなも嫌ですから。そういう意味でも、本当に愛のある現場だったなと思います」
──改めて、EP『MOOD』、ご自身たちではどのような作品になったと思いますか?
Yuji「ジャケットも真っ白ですが、“まっさらな自分たち”という意味も込めていて。3曲それぞれ個性はありますが、BuZZという新しいジャンルが生み出せた3曲になったと思っています。ポケモンで言うと、ゼニガメとかヒトカゲ…ってわからないですよね(笑)。ここから進化していくということです(笑)。新たなスタートラインというよりは、“1枚脱いでみました”みたいな感覚なんですよね。Tシャツとジーパンみたいな。肩の力を抜いた、力んでいない状態をお届けできたんじゃないかなと思います」
üsay「ちょうど良い温度感というのを初めてちゃんと形にできたEPだと思います。時代の流行りとかもあると思いますが、5年後、10年後も歌えているだろうと思える3曲が並んでいると感じています」
──12月11日には、LDH kitchen THE TOKYO HANEDAでのワンマンライブ「BuZZ New EP Release One-Man LIVE "Mood"」が控えていますが、どのようなライブになりそうですか?
Yuji「LDH kitchen THE TOKYO HANEDAは食事をしたりお酒を飲んだりしながらライブを楽しめる会場なので、ディナーショー形式でのライブになります。『MOOD』の収録曲以外もかなりオシャレにお届けできる予定です。今回は編成もギター、ベース、鍵盤、ドラムに加えてサックスが入るので、大人なBuZZも見せられるんじゃないかな」
üsay「今までも“お客さんをエスコートするようなライブをする”というのは意識していましたけど、今回はいつもに増して考えていかないとなと。最初からシッティングなので」
──今回、初のディナーショー形式にしたのはどうしてですか?
Yuji「1つは、今年の6月に5周年のワンマンライブをやったので、年内にもう一回ワンマンをやるなら、何かコンセプトがないとお客さんもつまらないんじゃないかな?と思ったからです。もう1つは、ご時世的にまだライブでは声を出せないし、立って見ても騒げなかったりするじゃないですか。だったら落ち着いて見られるほうがいいのかなっと思って。あとは、BuZZとしては、ビルボードでのライブを一つの目標に掲げているので、ビルボードのライブを想像させるようなライブをしておきたいなと」
üsay「ある種のプレゼンです(笑)」
──ビルボードでのライブを見据えているというお話もありましたが、最後に、BuZZとしての今後の目標や展望を教えてください。
Yuji「まずは、コロナ前にやっていたような会場でまた大きなライブをやりたいと思っています。そして再来年にはZeppでワンマンをやる!…というのが、ライブでの目標です。あとはもっともっと自分たちの楽曲を発表していきたいし、日本はもちろん、海外のチャートにも食い込みたいです。食い込めるような面白い楽曲を作っていくので、世界中の人たちにBuZZの音楽を気軽に聴いてもらえるようになりたいですね」
üsay「今回のチームもそうですけど、関わってくれる人ももっと増やしていきたいです。BuZZは“2人を中心としたプロジェクト”で、人数に制限はないので」
(おわり)
取材・文/小林千絵
Release Information
Live Information
『BuZZ New EP Release One-Man LIVE “Mood”』
日程:2022年12月11日(日)
時間:1部 13:00開場/14:00開演 / 2部 17:30開場/18:30開演
会場:LDH kitchen THE TOKYO HANEDA
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