──ミニアルバム『とあるアイを綴って、』を挟み、1stアルバム『産声みたいで、』からは1年半ぶりとなる2枚目のアルバム『窓越し、その目に触れて』が完成しました。
「本当はもう少しコンパクトになるはずだったんですけど、“あれ、この曲やりたくない?”、“この曲も入れたいよね”となって…“よっしゃ、14曲、全部入れちゃおう!”ってなったアルバムです(笑)。新曲もあって、長く歌ってきた楽曲もあって、どの曲にもそれぞれに思い出がちゃんとあって。1stアルバム『産声みたいで、』の時は弾き語りで、自分の声とギターだけのすごく素朴なさとう。で、少しマイナスな部分もひっくるめたようなアルバムだったんですけど、今回はバンドアレンジでいろんな色を見せていて。2枚を聴き比べた時に、“あ、ちゃんと踏み出せているな”というのを自覚できるアルバムになっていると思います」
──今の言葉の中から、“長く歌ってきた曲”、“新曲”、“一歩踏み出した曲”という3つのテーマに沿った曲を全14曲の中から1曲ずつ挙げていただけますか? まず、“長く歌ってきた曲”は?
「6か月連続配信リリースの第5弾としてリリースした「決別」と「ダイアログ」です。「ダイアログ」はそんなに古くはないんですけど、ずっと前からライブハウスで歌わせていただいていて。歌うたびに、ライブが終わってから、“あの曲はどこで聴けますか?”という声が多かった楽曲でもあります」
──「ダイアログ」はアコギの弾き語りですね。
「どういう風なアレンジにしようか?というのをギリギリまでみんなで悩んでいました。“普段のライブやっている弾き語りもいいけど、バンドアレンジにしてもいいよね”って仮歌を録ってみたんです。でも、“いや、やっぱりこれは弾き語りでいこう、なんならクリックもなしで”ってなったんです。より一発録りに近いような環境でやらせていただいたので、ライブのままを受け取ってもらえたらいいな思っています」
──元々はいつぐらいにできた曲だったのですか?
「2023年の10月くらいに生まれました。いろいろな曲を書いている時期ではあったんですけど、さとう。の曲はフィクションとノンフィクションが入り交じることが多くて。この曲のサビの<「ありがとう」より、「ごめんね」を>は、実はさとう。自身のことなんです。「ありがとう」を言う前に謝ってしまうことが多くて。それを恋愛ソングに当てはめてみました。例えば、カップルが別れた後、男の人が“あの時に、「ごめんね」を「ありがとう」に変えていたら、もっと違う未来があったのかな?”と後悔することもあるのかな?という妄想から始まった曲です。新しいことにチャレンジしているアルバムの中でも、“これぞ、さとう。”の弾き語りのラブソング”を収録できたことは嬉しいです」
──別れの曲ですよね。アルバム『窓越し、その目に触れて』は別れの曲が多い印象があります。恋愛に限らず、終わったもの、過ぎ去ったものに対する愛情を感じるアルバムでした。
「そうですね。さとう。は、どうしても前ばかりを見ていられない人なんです。踏み出そうとする度に、昔の後悔がよぎったり、後ろ髪を引かれたりすることが多くて。そういう意味では、さとう。の人間性がより深く出たアルバムだと思います。ただただ前を向いて、“明日も頑張って生きていこう”、“これからも歩いていこう”というよりかは、背負うものがあったりとか、後ろを振り返ってしまったりとか…そういう人もたくさんこの世界にはいると思います。そういう人に寄り添えるようなアルバムになったらいいなと思います」

──「決別」も別れの曲ですね。
「この曲はコロナ禍の2021年くらいに書いた曲です。さとう。が専門学校を卒業して、ライブハウスでなんとか歌っている時に、音楽を辞めていく人がすごく多くて…。身近にも多かったですし、SNSを見れば、誰かが解散したり、音楽を辞めますっていう人がいました。でも、その人が決めたことだから、決して止めることもできないっていうのがあって。なので、そういう人たちに対しての別れの歌でもあるんですけど、そういう別れをたくさん経ても、さとう。はやっぱり歌っていたいし、ちゃんとステージに立っていかなきゃいけないっていう過去との決別も込められています。離れていった人たちを追いかけるような自分ともまた別れなくちゃいけない…自分はここから行かないといけないっていう、自分自身に向けての決別の歌でもあるので、この曲も大事に歌ってきた曲です」
──<窓際が青く 染まる>というフレーズがあります。この<窓際>はどんなイメージですか?
「SNSをずっと見ていて、夜眠れなくて…という時に書いたので、その時の朝焼けです。真っ暗なところからどんどん日が昇って、空が少しずつ青くなっていく。水色とかではなくて、濃い青になっていくのを覚えています。その時に、“ああ、この曲を書こう”と思ったので。そういえば、意図せずに<窓>というフレーズが隠れていましたね」
──そうなんです。ピータパンからの手紙をモチーフにした「ネバーランドより」や、“どこか遠くへ逃げられたらいいな”という祈りを込めた「逃避行ハイウェイ」にも<窓>や<車窓>が出てきましすし、リード曲「通過する故郷」は<車窓から見た街は今日も平穏>というフレーズから始まっています。
「去年の秋冬のLIVE TOUR『この芽の色を知る人へ』を車で移動していて…佐賀や鹿児島まで、北海道以外はマネージャーさんがずっと運転してくださって。さとう。は運転免許書を持ってないので、後部座席でボケッとしてるだけなんですけど、車の移動中に窓を見るのが好きで。西の方に行く機会は、少し前までは地元の伊豆に帰る時だけだったんですけど、そこを越えて、名古屋や大阪に行くことも増えました。秋冬のツアーでも何度も何度も静岡を通るんです」
──東京から西に車で向かうときは必ず静岡を通りますね。
「はい。通るんですけど、途中で降りるわけにもいかなくて。故郷を思い出しながら、“帰りたいけど今は帰れないな”ということを思った時に書きました。でも、いろんな街を通り過ぎる中で、“ここももしかしたら誰かにとっては故郷なのかもしれないな”という風に思ったんです。この“通過する故郷”というのは、自分にとっては地元の伊豆なんですけど、誰しもがそういう帰りたい場所、帰っていい場所があって。でも、“今は帰れない”という気持ちになっている。そういう時にこの曲が少しでも寄り添えたらいいなって思って作りました」
──さとう。さんにとって、故郷の伊豆はどんな場所ですか?
「すごく田舎の小さい街なので、さとう。のことを昔から知っている人もたくさんいて。いつ帰っても温かく迎えてくれるような場所だと思います。学校が閉校してしまったり、どんどんなくなっていくものもります。でも、それすらもちゃんと受け止めているような町なので、今でもずっと大好きなところです」
──そして、アルバムのタイトルにも“窓”が入っていますが、どんな想いで『窓越し、その目に触れて』と名付けましたか? 先ほど、“窓を見ることが好き”と言っていましたが。
「窓を見て、どんな人が暮らしていて、どんな生活があって…って勝手に妄想することが好きなんです。もちろん、その生活、全てを知り得ることはできなくて…そこに入っていけないことに悔しくもなったりもして。そういう時に、もし、さとう。の音楽がその部屋で流れていたら、その窓の向側に行けるっていう、さとう。の夢が少し叶ったようなことになるのかな?と思って。聴いている人とさとう。の音楽をつなぐような、そういう窓みたいなアルバムになってくれるといいな。そんな祈りを込めて、このタイトルにしました」
──“窓を見るのが好き”と聞いたときに、車窓から見る景色が好きなのかと勘違いをしていました。
「車窓越しに見た家の窓の先にある部屋というイメージです。深淵を覗く時みたいな…」
──ニーチェですね。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という。向こうの窓からも、さとう。さんを見ているのでしょうか?
「昨年の秋冬のツアーは初めて行く場所も多かったので、さとう。の中で“種まきツアー”として、ツアータイトルを『この芽の色を知る人へ』にして、ちゃんと種をまいて、その“芽”をみんなに持って帰ってもらいたくて。“いつかちゃんと花を咲かせて、その場所でワンマンライブができるように”という意味も込めたタイトルだったんですけど、実は各地ですでに“芽”を持ってくださってる方がいて。初めて行った場所にも関わらず、“ずっと前から知っていました”と言ってくださる方がたくさんいたんです。そこで、この“芽”をずっと見つめていてくれていた誰かに対して、さとう。もちゃんと見つめ返していたいと思って。この“芽”を見ている人の“目”にさとう。が触れたい。このアルバムを通して触れていたいと思って、“芽”が“目”に変わったタイトルになっています」
──なるほど。では、アルバムの中での“新曲”はどの曲ですか?
「今、お話しした「通過する故郷」です。あと、「ドーナツホール」と「ライア」が同じ時期に作った曲です。2025年にいろんな出会いもあったんですけど、別れもすごくあった1年でした。そういう空いてしまった穴を何かで埋めようとして…仕事で埋めたり、友達と遊んでみたり、出かけてみたり。空いてしまった穴を一生懸命に埋めようとしたけど、“ドーナツって穴が空いていても美味しそうだよね”みたいなのがあって「ドーナツホール」を作りました。空いている姿、そのままを愛してみるのもいいんじゃないかな?って思えたので。さとう。は食べることがとても好きなので、それになぞらえて作れたらいいと思って作った曲です」
──食べることが好きなんですか?
「好きです。ドーナツも好きで、一時期はミスタードーナツの福袋を買って食べていたくらい好きです」
──ちなみに、全国ツアーで美味しかったものは?
「ちょうど昨日、ふと思い出していたんです。仙台のせり鍋がとても美味しかったです。人生で初めてだったんです。鶏肉も入っているけど、メインはせりで根っこを食べるんです。葉っぱも出汁に絡まって、すごく優しい香りになって。でも、何より根っこが美味しくて! 根っこの部分がおすすめです!」
──(笑)。食べたことないので気になります。
──話を戻しますと、「ライア」はどんな想いから生まれた曲ですか? ピアノトリオによる「胸ぐら」からアコギにバンドサウンドが加わった「ライア」の2曲は怒りや苛立ちを感じます。
「つよつよなさとう。が垣間見える感じです(笑)。さとう。は常になるべく言葉数を減らそうというイメージで曲を作るんですけど、「ライア」は思いつくままにつらつら、ギターのフレーズも自分が弾いていて楽しいように弾いています。“ああ、きっと本当のことを言えてはないんだろうな”と思いながら書いていました。あまり考えずに書いているので、“嘘ばかりつらつらと言っているのかな?”と思いながら書いてはいたんですけど、実際に完成して歌ってみた時に、“あ、ちゃんと自分の言葉になっている。自分の歌になっている”と気づけて。だから、「ライア」というタイトルではあるんですけど、ある意味、“自分の本当の部分を歌っている”という裏返しな楽曲になっていて。自分自身でもチャレンジな1曲だったと思います」
──では、“新しい一歩を踏み出せた曲”を挙げるとすると…。
「それこそ「ライア」です。自分のことを歌うと全部、悲しい曲になってしまうので、さとう。自身のことを歌いすぎないようにしていた時期があって。でも、「楽屋」や「決別」をリリースした時に、ネガティブな気持ちをそのまま受け止めてくれて、受け取った時に前を向いてくださる方がすごく多かったんです。自分自身のことを歌っても、ちゃんとそうやって温かく受け止めてくれるんだということに気づかされました。だったら、もう、これからはちょっとずつでも曝け出して、さとう。の本音の部分を散りばめていこうと思いました。その散りばめが強いのが「ライア」と「胸ぐら」です」
──「胸ぐら」は矛先が自分自身に向かっています。
「タイトルの通りというか…調子に乗ってしまいそうな自分の胸ぐらを常に自分で掴んでいけるようにっていう。調子に乗っていいことが本当に無かったんです。常に、誰かがどうにかしてくれたり、誰かのおかげでここに立てているというのを感じていて。その気持ちを絶対に忘れないで心から歌っていきたいっていう曲になっています」
──アルバム全曲に触れられず申し訳ないですが、最後の「風の便り」も、やはりもう会えない誰かを思う曲になっていますね。
「去年の 3月11日に1コーラスだけ書いた曲です。自分は直接、東日本大震災で大きな被害があったわけではないですけど、やっぱり残したいというのあって。明確にそれに向けてというふうには言ってはいないんですけど、毎年、少しずつ作ってはいました。その曲をフルで書こうとなった時に、もう会えない人のことを考えて作りました。私は、遠くに行ってしまうって感覚があまり好きではないんです。そばにいてほしいというか…“そばにいてくれるんだろうな”というのをずっと感じていて。だから、遠くに行ったわけではなくて、本当に今、風の中に大切な人はずっと潜んでいるのかもしれないっていう。そういうさとう。の祈りのような想いが込もった1曲だと思います」
──全14曲が揃って、どんな流れで聴いて欲しいと考えていましたか?
「この「風の便り」を聴いた後に、また 1曲目の「ネバーランドより」に戻ってもきっと自然な感じがすると思うんです。その風が、もしかしたらネバーランドから吹いているのかもしれないってイメージもあったりもしますし、全体を通してさとう。の祈りが一番強いのは「風の便り」だと思っていて。他にも、「決別」で終わるとか、リード曲「通過する故郷」で終わるとかも考えましたし、曲数が多いので、曲順をすごくみんなで考えました。どの曲を頭にするかでかなりイメージが変わってしまうんですけど、最終的にはこの立ち位置に「風の便り」がいてくれることで、ちゃんとさとう。の祈りを込めて歌えたと思います。 前作のミニアルバム『とあるアイを綴って、』も「Aini」という曲で終わって…すごく祈りがこもった曲だったので、今回もさとう。の内側にある真の祈りが込められてよかったと思います」
──CDのみ、ボーナストラックとして「ぺちゃんこ」が収録されています。
「毎回アルバムには最後にボーナストラックを収録していて、1stアルバム『産声みたいで、』では「見かけなくなった猫」を収録して、今回はつぶれちゃったパンを収録しました(笑)。このアルバム、14曲で 1時間くらいあるんです。リアルな話で言うと、まずは、1時間まるっと聴いてくれるととても嬉しいです。ちゃんとストーリーや流れを感じながら聴いてもらいたいですけど、それを終えたら、どの曲から再生しても、きっとさとう。の言葉だったり、さとう。の曲だなって思う曲が 14曲詰まっているので。そういう形で皆さんの生活にこの アルバムが届いて、“さとう。の音楽という窓”を作ってくれて、その窓をちょっと開けていただけると嬉しいです」

──6月からはLIVE TOUR『その目を心の窓と呼ぶ』が決定しています。どんなツアーになりそうですか?
「仙台と福岡と広島にバンドセットでは初めて行くんです。ありがたいことに東名阪は何度かバンドで行かせていただいてて、今回はボリュームもレベルもアップして挑む事になります。弾き語りではどこも行っているので、弾き語りのさとう。を見たことある人はその差を感じてほしいですし、初めて見る方もさとう。が歌って弾いているところをその目に映していただいて。ちゃんと心に残るようなライブにしたいと思っています」
──ツアータイトル『その目を心の窓と呼ぶ』に込めた想いを聞いてもいいですか?
「前回のツアータイトル『この芽の色を知る人へ』から繋がってはいるんですけど、“目”と“窓”も似ているところがたくさんあって。閉じたり、開いたり、拭ったり、濡れたりして。“じゃあ、この目はどこの窓だろう?”と思った時に、“あ、きっとその人の心の窓だな”って思って。このアルバムとツアーを通して、一つ完結するような感覚があります。この先に続くかどうかはまだ分からないですけど、この3部作というか、3つのツアーが繋がっていくようなタイトルだと思います」
──『地平線、そこで会えたら』、『この芽の色を知る人へ』、『その目を心の窓と呼ぶ』というツアー3部作を終えた、その後の未来も考えていますか?
「2024年の初の全国ツアー『線路沿い1Kを飛び出して』から始まっているんですよね。あの小さな部屋を飛び出して、地平線を目指し、芽を植えに種まきをして。そして、アルバムをリリースして、その芽に私からも見つめ返して、窓を開けた…」
──その窓から部屋に入るのでしょうか?
「入っちゃうしかない、一緒に住むしかないですよね(笑)。勝手な目論見のような感じではあるんですけど、部屋の中に入っていくようなアルバムも作ってみたいと思っています。いろいろなバンドアレンジもしている中で、線路沿い1K(「楽屋」の歌詞から)を感じるような、さとう。の弾き語りをまた見せていきたいと思っています。このツアーからさとう。を始めてもらってもいいですし、このアルバムから始めてもらってもいいので、みんなで一緒に歩いていけるような1年にしていきたいです」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
RELEASE INFROMATION
LIVE INFORMATION

LIVE TOUR『その目を心の窓と呼ぶ』
2026年6月28日(日) 仙台 enn2nd
2026年7月4日(土) 名古屋 CLUB UPSET
2026年7月5日(日) 福岡 Queblick
2026年7月11日(土) 広島 CAVE-BE
2026年7月12日(日) 大阪 JANUS
2026年7月18日(土) 渋谷 WWW
【BAND MEMBER】
Bass 出口博之(モノブライト)
Drums 渡辺拓郎


