――ISEKIさんのソロアーティストとしての活動はもちろん、最近のプロデューサー的な動きや、今年後半のイベントについてもお聞きしたいなと思っております。イベントプロデュースの活動をするなかでどんな発見がありますか?
「「Yamaha Acoustic Mind」もそうですし、「毎日がクリスマス」とか、白馬でやっている「HAKUBA ヤッホー!FESTIVAL」とかいろいろやってるなかで、やっぱり音霊の時からそうだなと思ってたんですけど、まあ僕は音楽が大好きなので、自分が好きな音楽をみんなにも聴かせたいなとか、この組み合わせ最高じゃね?とか、そういうプラットフォームを自分は作りたいんだなっていうのはやればやるほど思いますね。もちろん自分もプレイヤーとしてやり続けたいなっていうのがまず基本にはありますけど。僕の中の好きなことのひとつというか……」
――確かに音霊はイベントとしても、ハコとしても象徴的な存在でしたよね。
「当時の時代感としてはそうかもしれませんね。ちょっと暑かったんですけどね(笑)。ちょっと蒸すっていう、逆にそれがなんかデトックスみたいな」
――それがキマグレンのライブの時に極まった?(笑)
「極まった!で、ライブ中に倒れました(笑)」
――出演したアーティストが終わってすぐ海に行けるあのシチュエーションは他では得難いものでしたね。
「そうですね。だから新しく始めた白馬フェスはちょっとそれに近いです。最高ですよ」
――音楽イベントでありつつも、観光の要素もちゃんとありますし。
「1回来てほしいです。 標高1289メートルの山頂で約1000人から1500人くらいのキャパで行います。1000人がそこでやるちょっと空気の薄いライブなんですけど(笑)」
――また鍛えられるじゃないですか(笑)。
「そこまで薄くないですけど。でもあの絶景を楽しみながらのライブは格別なんですよ」
――「HAKUBA ヤッホー!FESTIVAL」って今年が初めてでしたっけ。
「今年が2回目ですね。2020年5月にやる予定だったのが、コロナで延期して10月になって、 2021年はちょっとやめましょうという話をして。もともとの5月に戻したかったので、それで今年は5月の開催でした」
――やっぱり5月がベストシーズンですか?
「ベストですね。最高です。グリーンシーズンで気持ち良い空気を全身で感じることができます。ブランコのヤッホースイングも5月が最高ですよ。
――白馬の場合は地方創生の意味合いもありますね?
「そうですね、白馬ビールや白馬豚とかご飯も美味しいですし。でもやっぱりいちばんはあの環境ですよね。もともときっかけはスキマスイッチの常田(真太郎)から連絡がきて、彼が子供の頃から白馬で過ごしてたっていうのがあって、それで言うと友達を紹介したいんだ、仲間を紹介したいんだっていう流れで“ISEKIやってくんねえか?”って。やっぱりいちばんは人との繋がりかな。白馬は特に。またそうやって仲間は仲間を呼ぶものなので。“ISEKI、ちょっと手伝ってほしいんだけど……”って言ってくれたものに関しては極力何かお手伝いできたらいいな、とは思ってるんですけどね」
――アーティスト同士の繋がりで、しかも常田さんは子供の頃から知っている場所だから自信を持って薦められるんでしょうね。
「最初はね、僕も“うーん、遠いなあ!”とか言ってたんですけど(笑)。でも自分が行ってみたら“これはやばいわ!”ってなって。これは来てくれた人も絶対喜ぶし、アーティストも喜ぶし、最高なライブになるだろうなあっていうのを思って」
――まず自分が行くこともそうですし、ともかく1回足を運んでもらうっていう、なんかそこですよね。
「そうですね。スタートアップがやっぱいちばん楽しいんですよね。ちょっと音楽の話じゃなくなってきてますけど(笑)。事業家の話になってましたけど」
――いいじゃないですか(笑)。ISEKIさんは元々スタートアップ気質というか、自分がやりはじめるっていうことに喜びを感じるタイプですか?
「なんでなんでしょうね、きっと音霊の最初のスタートアップが楽しかったので。その波に乗ってからはやっぱりいろんな大変なこともあったんで、あれですけど、やっぱスタートアップってみんなが同じところに向かうじゃないですか。で、なんか成功したり、結果がある程度出たりとかすると、そのときの感動ってやっぱ二度はないので、あの感動は味わいたいっていうのはありますね」
――自分が感じたことをいろんな方法で伝えていこうとする?
「音楽もそうなんですよね、きっとね。だから皆さんたぶん“この音楽やべえな、やばいの出て来たな”と思ったら聴かせたいなって思うじゃないですか。なんかそういうものと一緒かなと思いますけど」
――3月リリースの「TORCH」がアルペン、そして白馬岩岳マウンテンリゾートとのコラボとしてMVも流れてますけど、白馬の中でもかなり過酷なシチュエーションで。ソロキャンパーみたいな映像ですね(笑)。
「そう!そのソロキャンパーっていうのがテーマで(笑)。アルペンさんからいろいろ機材をお借りして。白馬岩岳マウンテンリゾートのチームが撮影も含めてMVを手伝ってくれて。で、こっちのプロデューサーのシライシ(紗トリ)さんとか、カメラマンの入船さんもいっしょに連れて行って、大変でしたけど、楽しかったですね」
――シライシさんも一緒に?
「はい。シライシさん、MVの編集まで全部やってますから(笑)」
――すごいですね。世界観を見守るというか?
「もう全部。「TORCH」に関しては全部そのアイディアから“ちょっと白馬で撮ろう”っていうアイデアもシライシさんが」
――へえ!まさにトータルプロデューサーですね。ところで「TORCH」の時のISEKIさんが険しい顔してらっしゃるのが気になったというか、俳優さんっぽいなあと思って。
「ありがとうございます。あのー……表情が険しいのは、マイナス10度だったんで、単純に凍えていたという(笑)」
――自然とああいう表情になったと。
「けっこうやばかったですね。僕は焚き火やってたんでまだましなんですけど、まわりのスタッフは死にそうだったって。マジ、凍えていました」
――そうですよね。樹氷になってましたし。
「“アルペンのCM風なやつを作ろうぜ”って話にまずなってたんですよ。で、アルペンさんにいろいろ使ってもらえるっていうのは実はその時点では決まってなくて。むしろアルペンさんのWEBチームとかで使ってもらえるクオリティのものを作ろうっていうコンセプト。で、アルペンさんから物を借りたりして。でもなんか下心としてはアルペンさん何か使ってもらえたらいいなあっていうものを作ったんですよね。だから制作時点では自前で持ち出して全部作って。そしたらラッキーなことに起用していただけて」
――まさかの展開ですね。ところで曲のコンセプトっていうか、ミュージックビデオ自体はISEKIさん一人ですけど、逆にそれが曲にあってるというか。誰かに対して呼びかけているけど、自分に対する問いかけでもあるみたいな感じの曲なのかなと。
「そうですね。本当その通りだと思います。自分としっかり向き合う時間を持つことでしか得られないものがありますよね」
――そして長年開催されている「Yamaha Acoustic Mind」ですが、今年は本当に贅沢な規模感でいろんな場所で行われます。象徴的なのは若いアーティストの中でも、夜韻のあれくんが出る日もあって。彼、あんまりアコギのイメージがなかったんですけど。
「彼、めちゃくちゃうまいですよ!なんかもともとメタルかなんかやっててギタリストなんですよね。こないだもヤマハでいっしょに試奏に来てもらって……みたいなことをやりましたけど、めちゃくちゃうまいですね。彼はたぶんもっともっと伸びるんじゃないかな、これからのアーティストだなって感じました」
――吉田山田のふたりとは今まで接点あったんですか?
「そうですね。もともと吉田山田がまだヒットしてないタイミングから、“いい曲書くな”と思ってたんですよ、ずっと。で、自分の企画したイベントに出てもらったりとか、あとは音霊の10周年かな……あきる野市で、5000人規模で2日間やったフェスがあるんですけど、そのフェスのオープニングアクトにも出てもらったりとかして。でその直後くらいにドカーン!と売れましたね(笑)」
――ああ、「日々」で?
「“わー!ハネたー!”みたいに。そういう瞬間ってめっちゃ面白いですよ(笑)。miwaちゃんもそうですしね。なんかまだデビューして間もない頃、音霊でスキマスイッチとキマグレンのオープニングアクトかなんかで出たのかな。で、miwaちゃんの「ヒカリへ」が出て、 タワーレコードでそれ聴いて“めっちゃいい曲じゃん、これ”と思って。そのときの担当の人に連絡して“めっちゃいい曲じゃないですか、これ絶対売れますよ”って言ってたら本当にすごく売れて(笑)。でもそういうのを見守る、イベント企画として出てもらって、売れたら“あー、よかったね”っていうのが結構楽しいですね。半崎美子ちゃんとかもそうですし。なんか売れる姿、こう背中を見てるのが好きですね。まあ自分もそこにいっしょに行きたいんですけどね。でもなんか昔からそれが好きですね。」
――目利きってやつですね。KEYTALKの巨匠(寺中友将)はどういう接点なんですか?
「巨匠はね、意外とKEYTALKのマネジメントをしている会社だったり、スタッフの方にいろいろお世話になってて。で、“ISEKIくん、ちょっとさ見てよ”みたいな感じになって。もちろん、KEYTALKはもうすでに売れてる時ですけど、見に行って、“めちゃくちゃいいじゃん!”ってなって、“ちょっとイベント出てくれないですかね?”っていうので繋がって。ヤマハのイベントに1回、SILENT SILENとKEYTALKとで組んだイベントの時に出てもらって、それが最初ですね。そっから毎年毎年「毎日がクリスマス」の常連になりまして。巨匠の作った「黄昏シンフォニー」って曲あるじゃないですか?僕はあの曲がいちばん好きで。今回、アコースティックであの曲をいっしょに歌いたいなあと思って、それで声かけました」
――巨匠にはシンガー・ソングライター的な側面もありますもんね。
「そうですよね。歌上手いしね、ほんと。でも「黄昏シンフォニー」はキーがすごく高くてですね(笑)。“お前結構高いんだな!ごめん、ちょっと低くしていい?」ってお願いして。高そうに感じない音域があるじゃないですか?でも歌ってみると、“あー高いのね”って」
――なるほどですね(笑)。ISEKIさんご自身は今、歌や楽器との関わりに変化を感じますか。
「そう、なんか3年前にコロナになった時に、暇になるじゃないですか。じゃ何しようかってなったんですよ。イベントも中止になったし、生活ももちろん関係してくるんですけど。で、ひとつは別の事業を立ち上げて会社も立ち上げたんですね。それはまあ置いといて、ちょっとミュージシャンとして、もうひとつ階段を登りたいなと思って。まあ、お恥ずかしい話なんですけどギターレッスンに通い始めたんですよ。ギター上手くなりたいと思って。でも対面のレッスンが難しいじゃないですか、コロナだし。だからリモートでとりあえずやってみっか!って。それまでずっとキマグレンのバンマスやってくれていたギタリストの鈴木俊介さんにリモートで沖縄から――今もずっとやってるんですけど――ギターを一から教えてもらって。この3年間でギターがもっと好きになりました。ちょっと初心者の話みたいなんですけど(笑)」
――改めて見直す機会でもあるかもしれないし、例えば斉藤和義さんはプロのミュージシャンでもあるけど、楽器弾いて歌えたら、それが慰めになるというか。寂しい時に自分の伴奏で歌えたら、それだけで楽しいからという話をされていて。
「純粋!」
――人に聴かせるどうこうじゃなく、自分を楽しませるためだけでもギター弾いて歌えると楽しいよっていう。
「それ、すごいわかります。僕は、この3年間の目標がギターソロ弾けるようになるだったんですよ。ソロ弾けなかったんで。こう単音弾きみたいな、それが弾けるようになったんですよ。そんなめちゃくちゃ上手いわけじゃないですけど。だからそれでやれるだけでもうなんかどっかたぶんドーパミン出てるんですよね、きっとね。笑
“俺できる”みたいな。だからこれは幸せになるためのもしかしたらひとつの方法かもしれない。そのギターを弾けるようになるって。演奏できるっていうのは」
――ほんとにそう思います。さて、2022年後半、秋冬もいろんなことを計画されているようですが、恒例の「毎日がクリスマス」の展望はいかがですか?
「横浜、赤レンガ、馬車道、クリスマスっていうイメージっていうのから作ったイベントなんですけど、今年13年目なんですが、3年ぶりに開催出来る流れになりました。で、ラインナップもかなり豪華な――通常ここのハコだとちょっと小さいよねみたいな――アーティストもたくさんコラボレートしてくれるイベントが目白押しなんですよ。第一弾発表だとKEYTALKとwacciの2マンがあったり、第二弾では家入レオさんと声優の麻倉ももさんの2マンだったりとか、新しい学校のリーダーズさんとChilli Beans.さんの2マンがあったりとか」
――それすごく見たいです(笑)。そして来年はメジャーデビュー15周年ですね。周年のライブはどんな企画を?
「2月の18、19日にリリースライブみたいなものは横浜のサムズアップっていう、もともとキマグレンとキマグレンの前に、僕のソロでお世話になってたハコがあって。そこでやろうかって話してますね」
――サムズアップでやる前に新曲のリリースはされるんですか?
「それを機に夏曲を今やりたいなと思ってて。キマグレンのそのサウンド感っていうのをもう一回その15周年でやってみるのは面白いねって話を今アレンジャーとかプロデューサーと話をしていて。一人キマグレンみたいなのがテーマですね。キマグレンがずっと続いてたらこうなってたかもね、みたいな(笑)」
――リアレンジもしながら?
「リアレンジもやってみたいなと思いますし、新作もちろん出したいし……っていう。なので今、計画を少しずつ進めている感じですね」
――ISEKIさんのいま現在の近況報告とピープルツリーもをたっぷり伺えました。ありがとうございます!
「こちらこそ、ありがとうございました。ライブ、遊びに来てくださいね!」
(おわり)
取材・文/石角友香
写真提供/株式会社葉風舎(HAKUBAヤッホー! FESTIVAL 2022、「Torch」MVメイキング、Yamaha Acoustic Mind 2022~PREMIUM~、毎日がクリスマス 2019)
LIVE INFO
■毎日がクリスマス2022
2022年12月14日(水)~12月25日(日)横浜赤レンガ倉庫1号館
■ISEKI 15 ANNIVERSARY LIVE ~WHITE&BLUE~
ISEKI 15 ANNIVERSARY LIVE ~WHITE~
2023年2月18日(土)THUMBS UP
LINEUP/ISEKI、鈴木俊介
ISEKI 15 ANNIVERSARY LIVE ~BLUE~
2023年2月19日(日)THUMBS UP
LINEUP/ISEKI with BAND(ISEKI/Vo&Gt、鈴木俊介/Gt、後藤秀人/Gt、澤田将弘/Ba、大坂孝之介/Key、西岡ヒデロ/Per)
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