──OCEANSは、クレイさんを始め、佐藤嘉風さん、杉本雄治さん(ex.WEAVER)、マーティンさん(OAU)、小笠原拓海さん、OKP-STARさん(ex.Aqua Timez)、意外なところでは元HKT48の森保まどかさん、タップダンサーのサーロさん、そしてシンガー・ソングライターのyuiさんが“MEMBER-1”に名を連ね、“MEMBER-2”にはボーカリストの上野優華さんやDISH//のDJ&キーボーディストのToi TACHIBANAさん、さらには2人のイラストレーターの名もあります。1stアルバム『OCEANS with love』の話をする前に、OCEANSの成り立ちを紐解いてもらえますか?
「キマグレンを解散して、僕は音楽から完全に足を洗おうとしてたんです。そしたら、20何年来の友人だった佐藤嘉風やyui、バイオリニストのマーティンに呼び止められて。たぶん、一回やめたら音楽の世界にはもう戻ってこないと思ったんでしょうね。それで、“じゃあ、カバーでもやる?”っていう話になって。そこから、平昌オリンピックのパブリック・ビューイングのイベントでライブをしませんかっていうオファーをもらって、オリジナル曲はないけどみんなのカバーをするならって。そのときのドラムはHYの名嘉 俊くんで、キーボードはスペアザ(SPECIAL OTHERS)のセリちゃん(芹澤“REMI”優真)、ベースがOKP-STAR。それで、yuiの「CHE.R.RY」とキマグレンの「LIFE」、HYの「AM11:00」とAqua Timezの「虹」をカバーしたんです。まあ、こういう居心地のいい感じだったら俺もできるし、yuiもこれならなんとなく気を許してくれるかもって。そこからスタートしました。最初は、もっと趣味っぽい感じの名義でKureiYuki’sだったんですけどね。その後、コロナをきっかけに予定していたカバーライブが全部なくなって、“じゃあ、オリジナル曲でも作る?”っていう話から最初にできたのが、アルバムの1曲目に入っている「世界から音が消えた日 with DAZBEE」です。それからは、月イチペースで新曲を作って配信していきました。そして今回、OCEANSに改名して1stアルバムをリリースすることになったっていう」
──一度は音楽の世界から足を洗おうと思っていたということですが、結果的には新しいバンドの新しいアルバムが完成しています。
「ねえ(笑)。でも、草野球がきっかけで集まる人たちっているじゃないですか。とにかく野球をするのが好きで、集まるっていう。僕らの場合、それが音楽だったっていう(笑)。ドラムの拓海は山下達郎さんのバンドで叩いてるし、嘉風は桑田佳祐さんと一緒にやってたりするけど、“ここでできる別の何かがあるんじゃないか?”っていう。それは、メンバー全員がそう感じていると思います」
──アルバムを作り終えて、バンドメンバーのスタンスに変化は?
「全員が今まで大きなステージを経験してきて、今も続けていますけど、このOCEANSという形を守っていくためにも、今以上に大きいステージに立つことが必要だ。じゃあ、どうしようか。やっぱりヒットソングだよね。でも、今の時代、何がヒットするかってかなり難しいよね。なんてことを話しています(笑)。OCEANSというものへの向き合い方が、より真剣になっていますね」
──それは、クレイさん自身も?
「キマグレンを解散して7、8年経って、この夏のツアーを通してOCEANSとしての音楽的絆が生まれて、今後はどうしていこうかっていう話し合いも増えていて、いよいよこれからじゃないかなっていう気持ちですね。今回のアルバムでは、いろんな女性ボーカルの方にゲスト参加してもらってますけど、嘉風も杉ちゃんもマーティンもボーカリストでもあるので、もっとみんなの声を生かしたいとか、そういう意見がすでに出ていますね。あとは、yuiの歌力はやっぱりとてつもないので、もうちょっとyuiを含めたひとつの形を考えていったほうがいいんじゃないかなとか。すっごくゆるーいきっかけで集まったバンドが、どんどんちゃんとしたバンド化していっているという」
──そんな現在進行形のOCEANSですが、1stアルバムでは完成形に至る前に、今やりたいこと、やれることを自由に、好きにやってみたという印象の音楽的トライが詰め込まれているように思えます。
「サウンド面ではカントリーのマーティンとピアノロックの杉ちゃん、そして嘉風がメインになりつつ、いろんなジャンルに挑戦して、ポエトリーリーディングを取り入れたり、様々なタイプの曲が集まっていると思います。完成したアルバムを聴いて、いい意味で一貫性はないなと思いました。これだけいろんな人が参加しているし、たくさんのボーカリストに歌ってもらっているし、その中には本来はボーカリストじゃない人もいるし」
──歌手が本業の鈴木愛理さんらと並んで、女優の伊原六花さん、武田玲奈さん、桜井日奈子さんも参加しています。
「みんな、全然別の仕事で出会ったことがきっかけで参加してもらったんですけど、面白かったですね。歌がうまい云々ではなく、声の質感ってそれぞれあるので、その活かし方というのは勉強になりました。武田玲奈さんには、トラックの上でセリフを言ってもらってるんですけど、彼女の声の貫通力はすごいなって思いましたね」
──女優さんの声って、存在感がありますよね。
「そうですね。あと、アルバム全体の話に戻ると、さっきいい意味で一貫性がないと言ったんですけど、俺らなりに時代を象徴した音楽にはなってるんじゃないかなと思います。一番わかりやすいのは、やっぱり1曲目の「世界から音が消えた日」でしょうか。この曲は、不可思議/wonderboyというアーティストの「Pellicule」という曲から影響を受けていて、ニアリーな部分があるかな……アルバムの中でも特に、今の時代に伝えたいことを込めた曲かもしれない」
──その「世界から音が消えた日」が根っこになって、そこから新たに生まれていった思いが2曲目以降に広がっていっている?
「ですね!で、ラストの「Summer in COLORZ with yui」までが、今の僕らの答えなんじゃないかな。その2曲がアルバムの軸にあって、「世界から音が消えた日」のMVは廃墟の渋谷、「Summer in COLORZ」のMVは京都のお寺からみた渋谷の絵を描いていたりするんで、そういう意味でも入口と出口になってるんです。「世界から音が消えた日」の歌詞の左側を繋げると縦読みできる文章になっているので、そういうのも含めて楽しんでもらえればいいかな……と」
──アルバムタイトルの『OCEANS with love』に込めた思いは?
「仲間に対してもそうですし、その仲間の向こうにある家族だったりもそうだし、ベタではあるけど、やっぱり愛だよねって(笑)」
──アルバム発売後のOCEANSの展望を教えてください。
「このメンバーじゃないとできない音楽をやっていって、すごく遠回りな方法かもしれないけどいろんなミュージシャンにOCEANSのことを知ってもらって、いろんなところから一緒にやりたいという声がかかるようになれば。良質な音楽をやり続けて、3年から5年かかるやり方かもしれないけど、どれだけ根気強く続けられるか。その先に、ヒットソングという形を作っていきたいですね」
──クレイさんが、今のOCEANSで果たしている役割は?
「プロデューサー、指揮者ですかね。ミュージシャンじゃないです(笑)。メンバーも“クレイが組み上げたら、それに乗っかるか!”っていうテンションだし。ある種、OCEANSという会社の経営者かもしれないですね(笑)」
(おわり)
取材・文/大久保和則
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