――2022年はいよいよライブバンドKEYTALKの年って感じがしますけど、4ヵ月ものロングツアーっていつぶりでしたっけ?

小野武正「そもそも50本が初めてなんですよ。4ヵ月に渡るツアーはもしかしたらあったかもしれないですけど、とにかくこの凝縮された本数ですよね。4ヵ月で50本やるっていう。バンド史上初、インディーズ時代含めてもここまでのライブ本数やったことないんで、かなり挑戦になっていると思いますね」

――楽しみ半分、実際始まってみないとわからない?

小野「お客さんが来てくれるかな?っていうのもあるし、僕らがどこまで最大のパフォーマンスを連チャンでやれるのかっていうのもあるし、期待と不安はあります」

――「KEYTALK 15th Annivarsary Tour『津々浦々夏の陣~鳴けぬなら。踊りたまえ、ホトトギス~』」っていうツアータイトルがまさに今の状況を表している感じですが、誰のアイデアなんですか?

寺中友将「タイトルは僕が。いつもツアータイトルとかそういうのはつけてるんですけども、長いタイトルが好きなんで、今回も長くしました」

――読んで字の如しって感じですけど。

寺中「ほんとに6月から始まって9月いっぱい、夏をツアーで駆け抜けるっていうところで、夏がテーマなのかなっていう感じですかね」

――やっぱ声を出せなかったら踊るほかないですし。

寺中「たぶんこのコロナ禍でずっとライブに行くの控えてて……っていう人も、久しぶりに行ってみようかなっていうタイミングだと思うので、マスクつけながら声出せなくても楽しんでほしいなっていう思いはありますね」

――「KTEP」シリーズは今でもライブで人気の高い曲も多いですが、あえて今回のEPにこの名を冠した理由は?

小野「もともと「KTEP」シリーズっていうのがタワレコ限定CDだったんですよ。で、ま今サブスク時代でCDの売り方も色々議論される中で、面白い売り方というか出し方示し方したいよねっていうところで、ほんとに原点回帰ですね、バンドとしての。“ライブ会場限定がいいよね、限定だったら。こんだけの本数も回るんだったら”って話になって“ライブ会場限定って言ったらやっぱり「KTEP」だよね”と。で、ナンバリングが3で終わってて、そこからコンプリートで3までのやつ全部まとめたので終わってたつもりでいたんですけど、別に終わらなくてもいいんじゃない?みたいな感じで今後もナンバリング4、5、6って続けてってもいいんじゃないかっていうので、 今回リリースすることになりましたね」

――なるほど。

小野「サブスクも同時解禁をしようと思ってたので、基本的にずっと4曲でやってきたんですけど、CDのメリットというか会場で買う意味を持たせたいなっていうので5曲目をつけて。その5曲目というのは完全に4人で作ろうという、そういうコンセプトで。その曲がサブスク解禁最初のリリースのタイミングではCD買わなきゃ聴けない、ライブで初めて聴く、そういう状態にしようみたいな話をしてました」

――ストリーミング時代を逆手に取る的な?

小野「みんなライブ会場限定CD、結構やってるとは思うんですけど、僕らは最近ほぼそういうことやってなかったので。KEYTALKとしては新しいことだって感じで」

――「KTEP」だという意識で聴くから、そういう風に聴こえるのかもしれませんが、インディーズ時代のそもそも影響を受けたバンドとか、今のKEYTALKらしさの両方を感じるEPだなと思いました。ちなみにこのEPってメンバー各々の作詞作曲じゃないですか。1曲ずつしか出さなかったですか?

小野「そんなことはないんですけど、大元の根底は4人で1曲作ろうっていうのはまずあったんですよ。で、それに対していろんな案があって、その曲ともう1曲の2曲入りとか……とは言えその曲を出すタイミングでいろいろデモだったり、それまでのデモもあったりもするので。と、いうことを考えてて結果的に「KTEP4」ってなって、だったらメンバーそれぞれの曲1曲あったほうがいいよねって。なので、「KTEP4」を作りましょう。じゃあ曲集めます。じゃないんです」

――見事に4人別々に作った曲には個人の色が出ますよね。順番にお聞きするんですが、八木さんの「ODORYANSE」にはドラマーとしてやりたいことが正直に出たのでは?

八木優樹「確かにそうですね。なんかファンキーな曲を作りたいっていうすごい軽い気持ちから作り始めた曲だったんですけど。ふだん使ってないリズムもちょっと入りこんだりしたり、でもこの「KTEP4」を作るにあたって、“ダンス”を裏テーマみたいなのに設けていて。そこから逸脱しないような心地よく踊れそうな範囲に収めたいなっていうのもあって。シンプルなところはシンプルに、その架け橋になるところはちょっとフックのあるリズムを使ってみたりっていうのをやりたくて、作りました」

――ドラムサウンドがすごい立ってるし、ふだんとちょっと違うフレージングとかリズムの組み方なのかな?と。

八木「確かにジャンル的なものは完成したものを聴くとよくわかんないんですけど、でもなんかKEYTALKの“KEYファンク”みたいな感じなのかなっていう気はしてます」

――メンバー的にはどうでした?八木さんからこの曲が出てきた時。

首藤義勝「シビれました(笑)」

八木「すぐシビれてくれるんで(笑)」

――ははは!八木さんの曲って以前はトゥーマッチな印象があったんですけど、全然今回また違う曲調で。それを言うと4曲ともアルバムからの延長線で、サウンドプロダクションがタイトだし、4人の楽器の音で成立してる印象です。

小野「スタジオとエンジニアさんの影響もあると思うんですけど、まさにインディーズの時の「KTEP」を録ってたstudio curva nordというスタジオで、及川 勉さんというエンジニアさんと結構久々なんですよ。ガッツリ作品をレコーディングするっていうのは。そこが割とちっちゃめのスタジオなので、ドラムの録り音とかも自ずとタイトになって行くというか。で、それによってそれぞれのフレーズも見えやすくなったりして。そういう完全に音像の原点回帰っていうのが久々のかなと。原点回帰って結構いろんな場所で使ってるんですけど(笑)」

――現実的に原点回帰した手法でやってるってことですよね。小野さんの楽曲「アニマ」は相変わらずなんか宇宙っぽいですよね。

小野「宇宙っぽいですね」

――レコーディングの方法を聞いて納得したんですけど、宇宙的ですけどカオスになってないっていうか。

小野「今回のEP全部に言えるんですけど、まず大元のコンセプトというか始まりが4人で1曲を作ろうと。4人で1曲って今までたぶん1回も作ったことなくて」

――意外です。

小野「4人それぞれは作るんですけど、4人で1曲って、他のバンドも誰かが基本的に主導になって、メロディと歌詞も誰かが書いてってパターンだと思うんです。それを覆す何かできないかなと思って全員が曲の根幹に携わる作曲法ってないのかな?っていうところから始まって。まあそれが「shall we dance?」なんですけどっていうところからこの制作が始まってるので、今まで以上にそれぞれが作った曲もみんな意見出し合ったりして。それは如実にバンドのみんなの音が前に出てるっていうところに繋がってるのかなと思うんですけど」

――そうですね。

小野「「ODORYANSE」の話で言うと最初、八木くんのデモにはギターのフレーズがそこまで入ってなくて。それこそギターのフレーズちょっと入れてほしいみたいな八木くんから話があって、そっから僕がギターを入れて、八木くんがそれに対してさらにアレンジするみたいな作り方だったり。まあレコーディング入ってからギターフレーズは自分がどんどん提案してっていうパターンがあったんですけど、その一個前の段階から密に曲に携わるっていうのってのは結構久々っていうか、八木くんの曲だとあんまりなかったんですよ」

八木「そうだね」

小野「REC入ってからアレンジって感じだもんね」

八木「いつもはそういうパターン」

小野「その前からワンコーラスに対して僕はギターを付けて、それにインスピレーションを受けて。プリプロの日を作るんじゃないです、KEYTALKの場合は。事前のデモのやり取り。もしくはほんとにレコーディング入ってからそのstudio curva nordってスタジオとエンジニアの及川さんの関係値があるんで、そこがプリプロ兼レコーディングのスタートみたいな感じで結構ざっくばらんにやり取りできるというか、そういうのもあってすごいやりやすくて。で、僕の曲に関しても割と当初のデモ、もうちょっと明るめのメロコアみたいな感じだったんですけど、徐々に違うかなって感じになってコード進行の具合とかも変えていったり。で、実際にコーディング入った時にあのサビのメロディもちょっと変わったりして。それは義勝が“こういうのもいいんじゃない?”みたいな提案してくれたりとか。あとはギターのレコーディングに関してはこの曲最後に録ったんですけど、そのフレーズを弾き込むか引くかの線引きが逆にわかんなくなってきて。若干自分的には抑え込みたいから弾かない意味で引く方で行きたいなっていうので 全面的に八木くんにどっちがいいかレコーディング中にお願いすると言うか」

八木「なんかみんなが迷った時に、ちょっと思ったことを言っただけなんです」

小野「八木くん、今回かなり敏腕ディレクターぶりを発揮してて。それぞれの歌録りの時もOKテイクを瞬時に選び。こんな早いやついねえぞ!ってレベルで、歌がどんどん完成して行くみたいなこともありましたね」

寺中「不安なぐらい早かったです。本当に聴いてんのか?と(笑)」

――ははは!ところで前作のアルバムの際、首藤さんが歌に新たに取り込めてると話していて。ほんと歌いいですよね。

首藤「ありがとうございます」

――すごく楽しそうなんですよ。

小野「踊りながら歌ってますね。たまに音入ってない。踊ってマイクから外れてる」

首藤「それじゃド素人(笑)」

――そして巨匠の「Platonic Summer」、サマーソングといえば巨匠みたいな感じがありますが。

寺中「大好きです、夏」

――全然感触が違いますよね、これまでと。

寺中「そうなんですよね。それこそデモ作った時はアコギで弾き語りで、バラード調の曲だったんですけど、この曲を「KTEP4」に収録するのが決まった時に、義勝が一言“この曲、BPM120ぐらいでアレンジしてみたらどうだろう”っていうのを言ってくれて。そのアレンジで進めるっていうのは僕になかったんで、やった事ないし、義勝言ってくれたし、その方向でアレンジ進めてみようかなっていうところから、いろいろ組み立てて行ったんですけど。それがあったんで、いつもの自分の夏ソングとちょっと違う味出せたのかなっていう」

――首藤さんがBPM120を提案した理由としては?

首藤「いちばん身近なテンポと言えばテンポですし、なんとなく懐かしいけど今っぽいっていう巨匠の作る曲のイメージがあって。そのテンポ感もなんとなくそれが生きるんじゃないかなあと思い付きではあるんですけど。で、なんとなくリファレンスの曲とかも渡して。そしたら、思ってた以上にキュンキュンする曲を作ってくれて痺れました」

一同「ははは!」

――この曲に関して言うとグルーヴがすごいなんかムチッとしたというか弾むみたいな感じのグルーヴがすごいあるなと思って。首藤さんのベースの効果も大きいかもしれないですね。

首藤「ありがとうございます。考えましたね。打ち込み全盛の時代ですけど、ちょっと人力で打ち込み越えたいなと思って」

――その感じはありますね。弾きすぎるわけでもなく。

首藤「弾きすぎるとちょっとJ-POPになっちゃうんで。加減は意識しました」

小野「確かに義勝がいるから好き勝手できますね、ギター」

八木「僕もベース丸投げしました」

寺中「俺はデモに入れてなかった。結構ベース丸投げしてます、ありがとうございます」

――その首藤さん作の「夜の蝶」はKEYTALKと言えば……っていう感じの楽曲です。やっぱり首藤さんからは出て来やすい曲調なんですかね。

首藤「そうですね、いちばん自然にしみ出してくるタイプの曲ですね。節(ブシ)というのか……」

――この曲、言葉数も展開も多いですけど、ボーカルに余裕を感じるんですよ。

首藤「ああ。歌いやすいメロディを選んではいるので。後は聴き心地のいい滑らかな日本語っていうのは意識して作ったりはしてます」

――見事に15周年らしい力強いEPだなと思って。で、皆さんで1曲作ろうっていう、詞曲とか担当者がいるわけじゃなくてゼロイチで作ったのが「shall we dance?」であると。

小野「そうですね。もうデモとかも作らず1日スタジオ入る日を決めて、そこでみんな意見出し合って大枠の土台を作って、そっからセクションごとに歌詞とメロディつける人を分担で決めまして。そのやり方がバンドとしては結構珍しいんじゃないかなと思って。1番Aメロは誰、1番Bメロは誰、ラストは誰、そういう感じで作ってるのでちょっとこれはいつもKEYTALKを好きで聴いてくれてるみんなに“どこを誰が作ったでしょう?”ゲームしてほしいですね」

――そのゲームに正答できる自信はないんですが、過去のアルバムとか楽曲のタイトルとか出てきたりとかして。

小野「その辺踏襲しつつ。ま、武道館が来年3月にあるんで、そこに向けてというのもありつつ。7年前の武道館のサブタイトルでもあるんですよ、「Shall we dance?」って。そういうの色々合わさって。で、この49本ツアーもこの曲、引っさげて行って武道館向かって行くぞ!みたいな強い想いみたいのは1曲に入ったんじゃないかなと思います。で、多分ライブでどんどん強くなっていくんじゃないかなと思ってます」

――1回目の武道館からの伏線でもあるわけですね。なんか一回目の武道館ですっごいいろいろ詰め込まれいた記憶が。

小野「モリモリでやりたいことをすべてやった感じでしたね。そこから、結構年数も経って。バンドとしても成長して何をやるか」

――メドレーもあったし、曲数もすさまじかったですよね。

小野「あの当時だとたぶん武道館で半分ぐらいはできたんです。そっから倍ぐらい増えちゃってるんで、曲数が。かなり厳選されてきますね、やる曲というのが。1回目の武道館やった曲もやると思いますし、そこから生まれた曲もどんどんやってくと思いますし、ちょっと楽しみですね」

――感慨深いというか、1回目よりもパワフルな気がしてるんですけど。

小野「気がしますですね、今の時点でそれですし、ツアーを回ってより面白くなるんじゃないかなと、バンドとして。そこも楽しみです」

――長いツアーでもありますし、そこを楽しみながら乗り越えながらっていう年になりそうですね。今年はツアーとその来年の武道館に向けてっていうところが大きいですか?もちろん夏フェスもありますし。

小野「夏フェスもいろんなお呼ばれするイベントもあると思うんですけど。今年は特になんですけど、いろんな呼んでいただくイベントで、今までのこの15年のKEYTALKのいろんな曲をイベントごとに散りばめて見せて、そういうのはたぶん全国ツアーでもあると思うし。改めてこのKEYTALKってこんだけいろんな曲を世に出してきたんだなあっていうのを自分らも再確認するし、お客さんもそれを楽しんでもらいたいツアーと武道館の1年にしたいなと思っているので。ライブに来てくれるお客さんはもう結構いろいろな曲聴いてくれてると思うんですけど、より隅々まで聴いて、楽しみにして欲しいなって思います」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/中村 功

LIVE INFOKEYTALK 15th Anniversary Tour 津々浦々夏の陣 ~鳴けぬなら、踊りたまえ、ホトトギス~

6月2日(木)小樽 GOLDSTONE
6月4日(土)旭川 CASINO DRIVE
6月5日(日)北見 ONION HOLL
6月7日(火)札幌 PENNY LANE 24
6月8日(水)札幌 PENNY LANE 24
6月10日(金)函館 club COCOA
6月13日(月)高崎 CLUB FLEEZ
6月17日(金)周南 RISING HALL
6月18日(土)鹿児島 CAPARVO HALL
6月19日(日)宮崎 LAZARUS
6月21日(火)熊本 B.9 V1
6月22日(水)大分 DRUM Be-0
6月24日(金)長崎 DRUM Be-7
6月25日(土)佐賀 GEILS
6月27日(月)福岡 DRUM LOGOS
6月29日(水)music zoo KOBE太陽と虎
6月30日(木)浜松 窓枠
7月5日(火)郡山 Hip Shot Japan
7月6日(水)仙台 Rensa
7月7日(木)盛岡 CLUB CHANGE WAVE
7月9日(土)青森 Quarter
7月10日(日)秋田 Club SWINDLE
7月12日(火)新潟 LOTS
7月14日(木)金沢 Eight Hall
7月16日(土)長野 CLUB JUNK BOX
7月22日(金)静岡 UMBER
7月23日(土)岐阜 CLUB-G
7月24日(日)松阪 M'AXA
7月26日(火)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
7月27日(水)広島 CLUB QUATTRO
7月29日(金)松江 AZTiC canova
7月30日(土)米子 AZTiC laughs
8月1日(月)京都 MUSE
8月2日(火)奈良 NEVERLAND
8月3日(水)和歌山 SHELTER
8月5日(金)滋賀 U-STONE
8月17日(水)千葉 LOOK
8月18日(木)HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
8月23日(火)水戸 LIGHT HOUSE
8月24日(水)甲府 CONVICTION
8月26日(金)HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
9月3日(土)高松 festhalle
9月4日(日)松山 W studio RED
9月6日(火)高知 X-pt.
9月8日(木)徳島 GRINDHOUSE
9月12日(月)Zepp DiverCity Tokyo
9月13日(火)Zepp DiverCity Tokyo
9月20日(火)Zepp Nagoya
9月21日(水)Zepp Osaka Bayside
9月29日(木)沖縄 Output

KEYTALKオフィシャルサイト

DISC INFOKEYTALK「KTEP4」

2022年5月25日(水)配信/6月2日(木)発売
ツアー会場限定盤(CD)/PROV-1026/1,980円(税込)

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