──“三位一体”という意味の2ndアルバム『TRINITY』の完成により、メンバー3人の結束がより強かったような感じがありますが、シングル「三大欲求」のインタビューの時に、矢野さんは「メンバー間の仲がいいから、仲悪くしていきたい」とおっしゃっていましたよね?

矢野「より仲良くなっちゃいました(笑)」

田口「なんか友情が愛に変わりましたね。愛って自然と育まれるものなんだなと思いました(笑)」

太我「薄いコメントやなー(笑)」

──あの時は「ロックバンドは仲悪くなきゃ」ということでしたが、このまま愛を深めていって大丈夫ですか?

矢野「次回までに……」

田口「ぶっ壊しときます(笑)」

──改めて、『TRINITY』というタイトルをつけた理由を教えてください

田口「まず“戦国”みたいな言葉がまず浮かんだんですよ。音楽がそういう時代に入ったというか、氷河期じゃないですけど、コロナの影響もあってライブができない、いろんなエンターテインメント・シーンが死んだに等しい状況まで叩き落とされて、これに対して準備ができていた人って誰もいないと思うんですよ。ここで生き残っていけるのかどうかって、なんか戦争みたいだなと思って。そんな中で僕ら3人は音楽だけじゃなくて、YouTubeもあったから今元気なんですよね。余力もあるし。その状況というのは、僕らが違う武器を持っていたから、というのもあるし、この3人だからっていうのもある。そう思った時に、“3”っていう数字が強く出てきて。三角形って、それぞれが背中を向き合ってパッと構えた時に、一番死角がないんじゃないかなと思ったんですよ。その形が最強であるっていう。そういうところから、“三位一体”という言葉が出てきました」

──なるほど。聴いてみて一番印象が強かったのは、とにかく矢野さんの歌だったんです。でも、それはボーカルを立たせるためのアンサンブルやバランスがあればこそで、そういうところが“三位一体”かなと。田口さんは矢野さんの声質や音域などを意識してソングライティングしていますか?

田口「もう、それしか意識してないです。そこが僕と太我の欠点でもあり、長所でもあると思っているんですけど、歌のためだったらギターが前に出てなくても、ドラムが前に出てなくてもいいと思っているんです。歌が王様だっていうぐらいの共通認識があって。絶対的に歌があって、メロディがあって、聴いた人にどう口ずさませるか、どうハルの声を馴染ませて耳に残すか、っていうところは、自分のギターとかバンドサウンドよりも大事にしています。ギターはコードだけを弾いて、メロディを打ってどうなるかっていうところだけで勝負しているというか。それは僕が憧れている久石 譲さんがやっていることで、ピアノだけを聴いた時に、ちゃんと久石 譲が弾いているように聴こえるのか、メロディだけで勝負ができているのか、ということはものすごく突き詰めて作っています」

──太我さんはいかがですか?

太我「まさにその通りで、ハルだけです!」

矢野「甘やかされてるなー(笑)。大事に育てられているな!と思います。このままスクスクと育っていけたらいいですね」

──今回のレコーディングで挑戦したことや、大変だったことを挙げると、どんなことですか?

田口「それこそヴォーカルの話なんですけど、「大丈夫じゃない」は1番が女性目線、2番が男性目線の歌になっているんですけど、そこのディレクションにめちゃくちゃ時間がかかって。”女はそんなふうに怒らないよ。息遣い然り。もっとだるそうに歌え。お前は女と喧嘩したことねえのか?“みたいな(笑)。”女って男に対して呆れちゃうだろ。黙って去る、みたいな感じで。もたっていいから、息をもっと多くして歌え“とか、こだわってずーっとやってましたね」

──全然甘やかされてないですね(笑)。

矢野「女かよ!って思いました。だったらお前が歌えよって(笑)」

──雲行きが怪しくなってきました(笑)。太我さんはドラムを叩く時、キャラクターが降りてくるというお話をどこかでされていたかと思いますが、今回はいかがでしたか?

太我「基本的にはわりと“お兄さん”が降りてきていたんですけど、「BAKEMONO」や「優等生」や「全部ブロック」とかは結構激しめな、深夜のディスカウントストアにたまってそうな……」

矢野「“お兄ぃ”じゃなくて“鬼ぃ”な(笑)」

太我「そうそう。鬼ぃ系のドラムを叩きましたね。結構今回はわりと好き勝手に叩いたかもしれないです」

──好き勝手に叩けない時もあるんですか?

太我「あります!あります!それこそ「DRESS」とかは完全にマシンになってましたね。同じことを繰り返す精密機械のような感じで。あと「未来へ」もバスドラを踏まないでレコーディングをして、打ち込みでバスドラを入れるっていう、上半身だけでレコーディングしたりしたんで、めっちゃ難しかったです」

──確かに「未来へ」は一聴した時、リズムはすべて打ち込みなのかと思ったぐらいでした。矢野さんはヴォーカル部分で特に印象に残っている曲はどの曲ですか?

矢野「初回限定盤にしか入っていないボーナストラックの「全部いい -独唱-」ですね。この曲は前回のアルバムにも入っているから、2年ぐらい前の曲なんですけど、今回また違う角度からこの曲を見れたというか。ピアノと自分の歌だけなんですよ。そういった意味でもテンポも違いますし、同じ曲なんだけどまったく違うものに聞こえるというか。また新しい聴き方をしてもらえたらいいなと、そういうことを意識しながら歌いました」

──前作にも入れたこの曲を、形を変えて今回入れようと思ったのはどうしてですか?

田口「僕ら的にはボーナストラックを入れない全10曲でいくつもりだったんですよ。だけど、マネージャーから「全部いい」は入れた方がいいんじゃないかと言われて。そう言われてふと考えた時に、この曲はコロナで豊洲PIT公演が中止になった時に歌ったり、卒業式ができない学生に向けて芸能人を集めて歌ったり、なんかコロナが始まる時に歌った歌だったので、逆にこのコロナ禍が明けかけているこの時期、またライブが始まるかもしれないっていう時期、次の始まりっていう時に使いたいなと思ったんです。だから、マネージャーの意見も即採用することにしましょう、と」

──新しい始まりの時にふさわしい曲として選んだということですね。この曲に込められた言葉が、届くべきところにちゃんと届けばいいなと思いながら聴いていました。改めて、いいアルバムだなと思います

田口「このアルバムでやっとメジャーアーティストになったなっていう感じがするんですよ。すごく感度高くいろんなことに挑戦できたと思うので。前作はどこにいっても名刺になるような作品だと言っていたんですけど、それをバージョンアップした状態で、音楽的にも極めることができた。1stアルバムの緊張感も、それはそれで良かったんですけど、こわばっていない感じというか、今回は伸び伸びとやらせてもらえて、やっとメジャーアーティストになりました、ここからがスタートです、と言える作品になりましたね」

──今年で結成5周年を迎えたNon Stop Rabbitですが、2022年はどんなことに挑戦してみたいですか?

田口「今までインディーズでたくさんツアーを回ってきましたが、メジャーデビューしてからは一回もライブをやってないので、メジャーデビューしてから初めてのライブっていうものをやりたいっていうのが僕らの願いです。一応来年の春に組んでもらっているんですけど、中規模の会場を2日間押さえてもらって、5、6公演やろうかなと」

──ということは、1日に3公演ってことですか。かなりハードですね。

田口「はい、自分たちを試すリハビリを設けたいなと思って(笑)。ほんとにずっとやってなかったから、やりたくてしょうがないんですよ。なので、ライブは1日に何回できますか?っていう質問を大人たちにぶつけているところです(笑)」

──確かにいいアルバムを作ったから、ライブでしっかりと届けたいですよね。

矢野「そうですね。ライブ以外では、やりたいと思ったことは全部やれたと思うので、来年は来年でまた新しい何かが起きると思うし、そうなった時にすぐに動けるような体制にあると思うんです。なので、具体的に何を、というのは決まってないですけど、やりたいことを今はやりたいなと思います」

太我「僕ももちろんライブがやりたいんですけど、実はコロナで中止になってしまった対バンライブっていうのがあったんですよ。仲のいいバンドとか友達とかとの。対バンイベントっていうのもほぼやったことがなかったので、今度こそやりたいなと思っています」

──そして今回、レコチョク×USENの店舗用BGMアプリ「OTORAKU -音・楽-」の中で、オリジナルプレイリストを作成していただきました。かなりバラエティに富んだプレイリストになっていますが、これは3人のピックアップが入り混じっている状態ですか?

田口「そうですね。入り混じってます。その場で思いついた曲を挙げていった感じなんですが。だいたいファンの方が見れば、これは誰が出した曲ってわかるぐらい、それぞれの好みが出ています(笑)」

──そうですか。ちなみに「エリーゼのために」は、誰のセレクトですか?

田口「僕です。カフェとか飲食店に流れていそうだなと思って(笑)」

矢野「電話の保留音じゃない?(笑) Hilcrhymeの「純也と真菜実」って曲はどんな曲?」

太我「Hilcrhymeのメンバーの友達の結婚式の時に作ったラブソング。僕は日常的に聴きそうで聴かなさそうな曲を選んだんですよ」

田口「そう言えば、自分らの曲も入れた方がいいんじゃないの?って言ってたのに、入れなかったね」

──ぜひ入れましょう!どの曲を入れますか?

田口「そしたら「優等生」と「大丈夫じゃない」じゃないかな。「優等生」は、THEノンラビっていう感じの曲で、5年間やってきた僕ららしい曲なのでぜひ聴いてほしい推し曲です。「大丈夫じゃない」はちょっとフックがあるというか、“だいじょばない”っていう、近代になって現れたような単語をサビに使っているので、どこかのカフェやパーティーでかかった時に、“今、なんて言った?”って気になると思うんですよ。それを狙ってます(笑)」

──カフェやバーで流れている、というイメージでしょうか?

矢野「そうですね、パーティー系ですよね。ビルの7階のバーかな。1階でも2階でもなく7階」

──夜景が見える感じの?

矢野「いや、窓がひとつもないような暗いバーです(笑)」

太我「店の中でこのプレイリストが流れてきたら、食べるのを止めちゃうよね?」

田口「それをタイトルにする?」

矢野「BGMなのに“食べる手を止めさせるプレイリスト”って?(笑)」

(おわり)

取材・文/大窪由香
写真/平野哲郎

PLAY LIST空間の音楽 by Non Stop Rabbit~食事の手を止めさせるパーティミュージック~

ロケーションはレストランやバーのパーティルーム。バックグラウンドで聴き流すんじゃなくて、つい食事を、会話を中断し、ともするといっしょに歌ってしまうパーティチューン。ノンラビファンならどの曲がメンバーの誰の選曲かすぐにわかっちゃうような(笑)、顔が見えるプレイリスト。

1.X JAPAN「紅」
2.浜田雅功と槇原敬之[チキンライス」
3.EXILE「Lovers Again」
4.SEKAI NO OWARI「スノーマジックファンタジー」
5.KAT-TUN「Real Face」
6.森 翼「すべり台」
7.宇多田ヒカル「SAKURAドロップス」
8.Beethoven「エリーゼのために」
9.KREVA「アグレッシ部」
10.ヒルクライム「純也と真菜実」
11.竹原ピストル「よー、そこの若いの」
12.AKB48「10年桜」
13.Daniel Powter「Bad Day」
14.コレサワ「たばこ」
15.Avril Lavigne「Hello Kitty」
16.GLAY「誘惑」
17.L'Arc~en~Ciel「HONEY」
18.BIGBANG「FANTASTIC BABY」
19.小田 和正「ラブ・ストーリーは突然に」
20.t-Ace「超ヤバい」
21.Non Stop Rabbit「優等生」
22.Non Stop Rabbit「大丈夫じゃない」

キュレータープレイリスト(OTORAKU -音・楽-)

レコチョク「レコログ」インタビュー Non Stop Rabbit、三位一体で作り上げた2ndアルバム『TRINITY』が完成!「アルバムを作っていて、前作よりもより奥に進めたかな、という感覚がありました」

レコログ

DISC INFONon Stop Rabbit『TRINITY』

2021年12月22日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/PCCA-06095/4,070円(税込)

Non Stop Rabbit『TRINITY』

2021年12月22日(水)発売
通常盤(CD)/PCCA-06096/2,750 円(税込)
ポニーキャニオン

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