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――昨年tvkでオンエアされたドキュメンタリー「吉田山田、十年十色」、とても興味深い内容でしたが、おふたりの感想はいかがですか?
吉田結威「1年かけて回った「吉田山田47都道府県ツアー~二人またまた旅2019~」ですけど、スタッフさんも、tvk「吉田山田のドレミファイル♪」でいっしょにMCをやっている麻生夏子さんも、本当、全国のいろんなところに来てくれて。だから膨大な記録があるわけで、それを知っている僕らからすると、どうやってまとめるんだろう?って。泣く泣くカットした部分もあったと思うんですよ。逆に言うと、1年間密着してくれた人たちが、どの部分が重要だと思って1時間に切り取ってくれたのかっていうのは興味深いですね。“あ、ここを使ったんだ!”ってね」
――“あの部分を使わないで取鳥(鳥取のこと)かよ!”みたいな?
山田義孝「あはは!そうっすね。“頼む!使わないでくれ”……とは思いましたけど、まんまと使われてましたね」
吉田「あれは神懸ってたもんなー!いや、でも逆に“あれが入ってない”っていうのはないような気がするな」
――で、『吉田山田大百科』のデラックス盤だとディレクターズカットの「吉田山田、十年十色」が見られるわけですね。
吉田「そうですね。“泣く泣くカットした部分が山ほどある”ってディレクターさんも言ってましたけど、そういう映像をできるだけ長く編集してくれたので、ぜひBlu-rayで見て欲しいですね」
――デビュー10周年を飾るベストアルバム『吉田山田大百科』ですが、このタイトルはどうやって決まったんですか?
吉田「これはですね、タイトル会議でスタッフさんといっしょに考えました。発端は僕だったのかな……そしたら“それいいと思ってたんだよね!”ってみんな言ってくれて。ちゃんと10周年のベストアルバムですよっていうことが伝わるタイトルにしようっていうことを決めてからわりとすぐ出てきましたね。大百科って言葉が」
山田「こうやって出来上がったジャケを見ていると、大百科の方が、ベストって書いてあるよりも字面、絵面が強いなって思いました」
――確かにね。そしてあえて苦言を呈するならば、本編CDが15曲じゃ全然足りないって思うわけですが、そんなことないですか?
山田「あー!そりゃそうだよね?」
吉田「そうですよ(笑)。だって、10年で100曲近くリリースしてるわけですから。本当、15曲を選ぶのも大変でしたし。正直、僕らはお手上げっていうか、僕ら自身の気持ちを反映させてしまうと選べなかったですよ。だからスタッフさんに“いまの吉田山田といえばこれだよねって曲を選んで”ってリサーチして決めました」
――じゃあ、おふたりが思うベストというよりは、客観的な意見に身を委ねた結果がこの選曲と?
吉田「ですね。で、最後に僕らが思うところの1曲、2曲を入れさせてもらった感じ」
――その最後に追加したのってどの曲ですか?
吉田「「花鳥風月」と「もやし」ですね。この2曲は僕らふたりの独断と偏見で」
――なるほど!でも、スタッフさんの選曲で「もやし」が挙がらなかったのが不思議。
山田「いや、一応、挙がってましたけど、あえて僕的に絶対入れたいですって言いました。「もやし」はシングルカットされていないので、他に選ぶべき曲もあったんでしょうけど。アルバムの“色”としては大事かなと。“色”っていう意味では「しっこ」もありましたけど」
――ひらがな3文字縛り(笑)。前のインタビューで吉田さんが読み解いてくれましたけど、「もやし」「しっこ」みたいな着眼点と発想が山田曲らしさだって。そういう意味ではよいアクセントだと思います。ちなみに曲順はストレートに年代順ですね。
吉田「そうです。そこは意図的に。やっぱりベストアルバムのいいところって、歴史を感じてもらえることだと思うんですね。僕らもマスタリングしてて、順を追って聴いていくうちに“このときのサウンド感、若い!”“歌い方がいまとちがう!”みたいなね(笑)。そういうのも含めて楽しんでもらえるのがベストアルバムなのかなって」
――大百科っていうくらいですから。そうやって年表的な楽しみかたができるっていいですね。でも意外なことに『証命』からの楽曲が入っていないんです。
吉田「あれ?「赤い首輪」は『欲望』か……そうか!そうかも。いま気が付きました(笑)。『証命』はリリースして半年くらいなので、まだ“吉田山田といえばこれ”感がないのかもしれないね」
――逆に、アニバーサリー盤には「吉田山田47都道府県ツアー~二人またまた旅2019~」のライブ音源が6枚も入っていますが、これはなぜでしょう?
吉田「ちょっと話が遡るんですが、初の47都道府県ツアーだった「吉田山田47都道府県ツアー~二人また旅2016~」を回ったときに、いろいろ試行錯誤するなかで、“今日のライブ、めちゃくちゃよかったね!”っていう日が結構あって、それを作品として残せなかったことがちょっと切なかったんですね。で、昨年の「二人またまた旅2019」のときに、10周年に向けてということもあって、これまでの6枚のアルバムを順を追ってやってみようってまず最初に決めたんです。じゃあ、せっかくだから各公演をちゃんとした音質で録音しておいたら、めちゃくちゃいいものになるよねって。そうやってかたちに残るっていうことで、ライブ自体もすごくいいプレッシャーを感じながら臨めたんですね。アコギ一本で回ったツアーなので、アレンジとかもすごく考えましたし、僕としてはこうやって作品として残せたことがうれしいですね」
――じゃあ、ツアーの時点ではこういうかたちでパッケージになるっていうことは決まっていなかった?
吉田「いや、ツアーが始まった時点では、10周年の年にベストアルバムを出して、そのなかにライブ音源を入れようって決めてました。吉田山田がリリースした曲がほぼ全部入っていますって言えるものを作ろうって」
――ここでアルバム毎に6つのタームにわけた「二人またまた旅2019」のコンセプトが生きてくるということですね。8月のファイナルは上野恩賜公園水上音楽堂でしたが、めちゃくちゃ暑かったですね。
山田「本当、暑かった。上野公演はツアーファイナルと毎年恒例の吉田山田祭りの2デイズでしたけど、やっぱり5ヵ月分、47回分のファイナルだったということもあるし、祭りは毎年お客さんの側があの雰囲気を作ってくれるので、それぞれに感慨深いものがありましたね」
――ベスト盤本編もライブ盤も吉田山田の10年を追える大百科になったと思いますが、せっかくなので本編15曲のなかからおふたりにとって忘れがたい1曲を選んでもらえますか?
山田「えー!1曲だけ?」
吉田「全部のアルバムに思い出の曲があるからね」
――えーとですね、できれば苦労話が聞きたいです。レコーディングが大変だったとか、チャレンジングだった楽曲とか。
吉田「ああ、なるほど。だとすると僕は「約束のマーチ」が印象に残っていますね。制作している最中に東日本大震災が起きてしまったんですけど、先にリリースが決まっていたので、歌詞を書かなくちゃいけなくて、でも何を書いてみても、その1時間後にはちんけなものに思えてしまって。日本全体が大変なときに、僕らはまだデビュー2年目だったので、そういう出来事に対応する能力がまだ追いついていなくって。このくらいで何もできなくなるなんて俺たちはなんてダメなんだって思いましたね。奇しくもいままさに、日本中、世界中が大変な状況に置かれていますけど、いまの僕らには、自分たちにできることがはっきり見えていて。いま、エンターテインメントの分野はがまんしなくちゃいけないことだらけじゃないですか。でも、それはしょうがないこと、当然のこととして受け止めることができるし、そんな状況のいまだからこそやらなきゃいけないことがあるでしょ?っていう思考に切り替えられる。自分たちの存在意義も感じられるし」
山田「そう、いまはがまんする時期だけど、その次に必ず僕らの音楽が必要とされる時期がやってくると思うので、そのためにちゃんと準備をしておかなくちゃってことかな」
吉田「うん、震災のときに苦しんだ経験があって、そのときに学んだことがいま役にたっていると思います。結果的に「約束のマーチ」は、音楽を始めたころのいちばんシンプルな気持ちに辿り着いたというか……この曲ができて僕らの進むべき道が見えた。“あれを乗り越えられたんだから、がんばれるよ!”ってどんなときでも思えるようになりましたね」
――山田さんはどうですか?
山田「うーん……僕は、チャレンジって意味では「宝物」ですかね。自分の親に対する思いをかたちにした曲なんですけど――言葉では括れない愛っていうか――棘のある愛おしさっていうのかな。大事なことなんだけど不思議な距離感のある関係。それを伝えるのは照れくさかったりするんですけど、そういう親に対する気持ちをきちんとかたちにすることができたときに、人間としても、アーティストとしても大きな達成感を得られるかも……って書いた曲です。ある意味、音楽という道を選んだからには避けては通れないというか、いちばん感情が高ぶって涙が溢れてくるのって親のことを思っている瞬間なので。非常に個人的なことではあるんですが、でもみんなもきっと同じような気持ちになることもあるんじゃないかなとも思うし」
――いまでも歌うときは照れくさかったりします?
山田「正直、いまでも気恥ずかしさはありますね(笑)。“なに言ってんだよ!”って自分自身を茶化してしまうような。いや、本当の気持ちを歌っているんですけど、どこか素直になれない部分もあって。不思議な感情ですね。でも、それをきちんとかたちにして、それに「宝物」っていうタイトルを付けたことによって一歩先へ進むことができたっていう意味で大事な一曲ですね」
――そういう気持ちから逃げずにきちんと正面から向かい合おうと、ある日突然思い立つものですか?
山田「そうですね、自分のなかにそういう感情があるっていうことには気づいていましたけど。「日々」をリリースしてからですかね。いろんな人から家族のエピソードを聞くようになって、ライブのMCでも家族のことをしゃべるようになって、“あ、いまMCでしゃべってることをちゃんと歌にしなくちゃいけないよな”と思うようになって。こっぱずかしいことだけど、ちゃんとしとかなくちゃなって。だから「宝物」が書けたとき、すごくすっきりした気持ちになったのを覚えてます」
吉田「だいたいの場合、山田は自分が書いた曲が聴く人にどう作用するかっていう作為がまるでないんです。ただ自分のなかから溢れ出てきたものをかたちにしているだけで。ふたり組のいいところは、ひとりがそういう曲を書いてきて、もうひとりが第三者的な視点でプロデュースできることだと思っていて。山田がさりげなく「宝物」のもとになるワンコーラスを上げてきたときに“これをちゃんとフルコーラスの作品として残しておくことがすごく大事なことかもよ”って僕が言ったんです。それに対して山田は“やっぱそうだよね!ちゃんとかたちにしたほうがいいよね”って」
――ましてやそれが三部作の一作目にあたる『変身』のタイミングだったというのはすごく象徴的ですよね。
山田「なんかね、吉田山田には家族の歌の印象があるってみなさん言ってくれますけど、それってベスト盤でもわりと後半戦っていうか、最近のことだと思うんです。「日々」「母のうた」「宝物」とか」
――「赤い首輪」もね。
山田「うんうん(笑)」
――10周年ということは、吉田山田のファンも10歳としをとっているわけで。それこそデビュー当時の高校生が大人になって、家族を持つようになっていたりとか……そういう時間の流れを実感することはありますか?
吉田「あ、結構ありますよ。むしろ、すごく感じますね。サイン会とかやっていると、いつも女の子3人組で、きゃっきゃしてた子が、ある日、赤ちゃんを抱っこして来て、はっ!っとしちゃったりしてね」
山田「逆に“俺ら変わってなさすぎじゃね?”って我に返ったり(笑)」
吉田「そういう聴き手の変化を直截的に捉えて曲を書くということはまだしていませんけど、“ああ、本当に10年ていう時が流れたんだな”ってことは、今回の47都道府県ツアーではっきりと意識しましたね。僕らがよくMCで言っていたのは“今日、この場所にあなたが来てくれて、元気な人も、あまり元気じゃない人もいるかもしれないけど、でもそれでいいんです。そういう景色を僕らがステージから見ることによって新しい曲が生まれてくるから。だからみんなでいっしょに作っているのと同じだよ”って。まさに10年間、ずっとそういう繰り返しだったと思うし」
山田「本当、ライブでは、みなさんが思っている以上にみなさんの顔って僕らにはよく見えていますから。『吉田山田大百科』15曲目の「いくつになっても」は、そういう思いが結構強く出ているなって思いますね。これ、仮歌を録ったのは1年前くらいかな……こうやってライブしてレコーディングしてってずっとやっていけたらいいなって思いながら。でも、それって結構難しいことじゃないですか?いろんな人がサポートしてくれているから僕らふたりがステージに立てているわけで。そう思ったらなんかうれしくなってきて。ちょっと前ですけど日比谷野外大音楽堂の「吉田山田祭り2016」なんかはすっごい土砂降りで、そういう思い出を“あれ、すごかったね”ってみんなと共有できていることが宝物なんだなって。そういう思いが詰まった曲ですね「いくつになっても」は」
吉田「実は「いくつになっても」のミュージックビデオを撮ってくれた監督は同世代なんですけど、二十歳くらいのときからの友だちで、ずっと“いつかいっしょに仕事したいね”って言ってたんです。いままでも何度か仕事をしたことはあるんですけど、ここまでがっつり仕事をするのは初めてで、その彼がこの曲を聴いてて何度も泣きそうになるって言っていて。やっぱりね、僕らも、その彼もずっとがんばって仕事を続けてきたからこそ、お互い対等の立場で仕事ができるわけじゃないですか」
山田「確かに。“いつかいっしょに”って言っていて、まだ実現できていない人もたくさんいますから。長く続けていることでようやくひとつ夢が叶いましたね」
吉田「正直、1年前に作ったころはそこまで強い気持ちはなかったんです。でもいま選曲をし終えてやっと、『吉田山田大百科』のこのタイミングで「いくつになっても」という曲があってよかったなって思えるようになりましたね」
――これ、悩ましいのはボーナストラック盤にはラストにもう1曲「微熱」が入っていて、読後感というか、聴き終えての余韻が結構違うと思うんですよね。
山田「あー!確かに」
吉田「「微熱」は吉田山田としては10周年を迎えて最新の挑戦なんですよ」
――と、言いますと?
吉田「「微熱」はこれまでのアレンジとかノウハウを捨ててゼロから取り組んだ実験的な作品なんです。特にここ3年くらいにリリースした曲は、まずアルバムのテーマを決めて、そこに収める曲を作っていくっていうアプローチだったんですよ。それが「微熱」に関しては、そういうリリースありきではなく、何も決めずに作った曲なので」
――いやー、それを聞いちゃうと、アニバーサリー盤はともかく、デラックス盤とボートラ盤、どっちを買うか迷っちゃいますね。
吉田「たぶんラストが「いくつになっても」か、「微熱」かで、目に浮かぶ風景も、季節も全然違いますからね」
山田「んー!両方って言いたいところなんだけど、自分がこづかいを遣り繰りしてCDを買ってたころを思うとなかなかね(笑)」
――そうやっていろいろな選択肢を提供できるのも長く続けていればこそですね。そうこうしている間に「大百科ツアー」が控えていますから、早くライブを楽しめる日常が戻ってくるといいんですが……
山田「本当にそう!」
吉田「まあ、こればっかりは僕らにはどうしようもないことなので。じっとがまんですよ」
(おわり)
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき
■吉田山田ホールツアー2020「大百科ツアー」
6月7日(日) 札幌市教育文化会館 小ホール(北海道)
6月12日(金) サンケイホールブリーゼ(大阪) ※振替公演
6月14日(日) 都久志会館(福岡) ※振替公演
6月21日(日) 東京国際フォーラム ホールC(東京)
6月29日(月) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知) ※振替公演
※ライブ、イベントの内容は開催当日までに変更される場合があります。必ずアーティスト、レーベル、主催者、会場等のウェブサイトで最新情報をご確認ください
■「B-65アーティスト特集 WEEKLY J-POP 2」4月13日(月)~19日(日)の特集は吉田山田!(music.usen.com)
- 吉田山田ベストアルバム『吉田山田大百科』
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2020年4月8日(水)発売
アニバーサリー盤(CD+Blu-ray)/SCCA-00095/33,000円(税別)
ポニーキャニオン
- 吉田山田ベストアルバム『吉田山田大百科』
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2020年4月8日(水)発売
デラックス盤/PCCA-04936/3,900円(税別)
ポニーキャニオン
- 吉田山田ベストアルバム『吉田山田大百科』
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2020年4月8日(水)発売
ボーナストラック盤/PCCA-04937/2,500円(税別)
ポニーキャニオン