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2021.01.27

「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」2019 – 2020 バックイシュー――第31回/村井博之さん(株式会社バロックジャパンリミテッド)

Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けするSMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。第31回のゲストはバロックジャパンリミテッドの村井博之さんです。収録を終えてのアフタートークをどうぞ。

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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



――村井さんは全く畑違いの業種からファッション業界への転身したわけですが、その点について抵抗はありませんでしたか?

村井博之「ビジネスって何でもいっしょですから。特にこれだからできる、これだからできないというのはないですね。ただ、女性の服はわからなくて、“どうしてこんな服が売れるんだろう?”という感じでした」

――特にその時期の109を中心とした風景は印象的でしたからね。

村井「そうですね。やはり社員やスタッフのみんながあんなに一生懸命やっているというのがなければ全然興味が湧かなかったですね」

――それだけ販売スタッフさんがすごかった?

村井「人として優れている人が多かったんです。その後、違う業界に行って活躍されている人も多くて。ブランドを立ち上げた人とか、芸能人になった人とか。これからもっと良い人材が出てくると思います。今うちにいる人って、どんどん人材も入れ替わってきているんです。外国籍のスタッフを増やして全社員の構成比率の10パーセントにしようとしていて、これからまた違ったバロックになっていくんじゃないかなという期待はあります」



――外国籍というと、どのあたりの方が多いですか?

村井「今は地の利から中国や韓国の人が多いですが、国籍を問わずですね。留学生を採っているのではなくて、向こうの大学にリクルートしに行くんです。たとえば中国でもトップ20に数えられる大学から採用しているんです」

――では大学で日本語を勉強されている方が多い?

村井「そうですね。まったく日本語を勉強しない人も今後採用していきたいんですけどね。海外進出という局面で、日本人が海外に行って出来ることって限りがありますし、最後はその国の人たちが何人いるか?っていう人材の厚さでその国でのビジネスの成否が決まってきますから」

――バロックジャパンという社名の由来を教えてください。

村井「もともとバロックって香港で登録した社名なんです。香港の現地法人がバロックだったという事と、私自身が香港に長く住んでいたのでこっちを本社名にしちゃおうと(笑)。 ではバロックってどういう意味なのかというと、キリスト教で宗教改革というのがあって。その宗教改革でプロテスタントが台頭してきた時に、カトリックの人たちが、うかうかしておれん!ということで、カトリックの中に、自民党をぶっこわすって言っていた小泉さんみたいな、そういった体制内の改革派が出てきたんです。これがバロックなんです。ですから、全く今までの価値と違うところから出てくるのではなく、体制の中で新たに自分たちを抜本的に変えて新しい組織になっていこうとする社内改革。外からではなく内から変えていこうとする改革として、私的には好きな言葉なんです。今のバロックジャパンもまさにそこに直面していて、外国籍スタッフを増やしていく、まさにマルキュービジネスからの脱却、内なる改革。総合アパレルになって、ここからどうやってグローバル化をするか?という事は社員の構成比を変えていかないと出来ないと思うんです」

――そういったすごくロマンチックな意味合いがあったんですね。例えば有名なところでは、自分たちが欲しいものを作るという社風があったと思いますが、その社風や働いている人たちの雰囲気で感じ取れる変化はありますか?

村井「変化しているところでいうと、マーケットに合っていても外れていても関係なく自分たちがやりたい事をやって、それにマーケットが付いてくるという事で、もともとうちの中でマーケット分析って機能はなかったんです。でも今はマーケットを変に意識しすぎて、つまらなくなっているってところがありますね。トレンドセッターがバロック本来の強みだったのに、フォロワー的な要素が出てきてしまった。これは良いことなのか悪いことなのか、総合アパレルとして発展していくにはある程度必要なことなんですが、過度に進んでいくとバロックでなきゃいけないという存在意義にならないんですよね。バロックはバロックでしか作れないものを作っていこうって理念をきちんとキープしないと、グローバル化が進むともっともっとライバルが増えていきますから、そこでの存在意義がなくなってしまいます。ニューヨークとかロンドンのマーケットを見ると非常にわかりやすくて、多くの日本のアパレルがグローバル化に成功していないという理由もドメスティックマーケットを見過ぎちゃっていたってところかもしれませんね」



――これは海外経験の豊富な村井さんだからこそ感じ取れることかもしれませんが、日本のお客さんと、例えば中国など海外では、購買層や嗜好に差はありますか?

村井「日本は価格にシビアですね。まだまだ経済発展が続いている中国だとより高い商品ほど売れますね。高いのと安いのと両方あったら高いほうから売れていきます。」

――そこは如実にわかりやすいところなんですね。

村井「高い商品=消費者の上昇志向だと思うんですよね。日本も先進成熟国の仲間入りをして、今日より明るい明日があるとは限らないという不安から消費の防衛に回ってしまっていて、高いものにリーチしない。今よりアップグレードした生活を望まなくなっているんです。一方、中国とかそれに続くアジアの国々はどんどん生活が豊かになって、これからもっと良くなるんだっていう夢があるから消費に向かうんでしょうね」

――なるほど。北米に行くとまたニュアンスも違うでしょうし。

村井「そうですね。日本と同じように、北米は大多数の一般消費者は消費が非常にコンサバなんですけど、アメリカの不思議なところは、一般人とは無縁の、お金を持っている厚いマーケットがあるんです。浮世離れしたところで高い消費が行われているというのが、我々もニューヨークに進出してよくわかって。最初は日本的な中流を意識した商品作りをしたんですが、全く受けない。ですから欧米では、日本で販売しないような、オール・ジャパン・ハンドメイドかつハイエンドな商品でしか勝負しないということなんですね」

久保雅裕「そのほんの一握りの上流層の人たちとのビジネスでも商売として成立するということなんですね」

村井「そうですね。あとアメリカのニューカマーとして、中国人、韓国人などのアジア人富裕層は日本人と体型が似ていますから、アメリカでなかなか自分に合った服がないという事で、北米では3割くらいがアジア系のお客様だったと思います。かつ、中国で200店舗以上展開しているので、今はアメリカ駐在していたり、留学していたり、“北京で学生時代、Moussyを買ってました“っていうお客様が結構いらっしゃいます」

――ワールドワイドな視点で考えないと捉えきれないですね。

村井「そうですね。これは私だけでは足りないから、外国籍の社員を増やしてそういうマクロな視点で考えていってもらいたいですね」



――では、日本国内に目を移して、来年以降アパレル業界全般で大きな転換であるとか、何かクリティカルな出来事って起こり得るものでしょうか?

村井「予兆として感じ取れるのは、ファストファッションからちょっと乖離が出てくるんじゃないか、ってとこですよね。この10年間くらいリーマンショックからずっとファストファッション隆盛期が続いてきて、そろそろ飽きがきて、もうちょっと違うところに行こうって流れになるんじゃないでしょうか」

久保「バロックの強みとして、社内コンペティションとか新しいチャレンジをされているところがあると思うんですが、外からブランドを買ってくるのではなく、自発的に――それこそ販売員出身の方がデザイナーになって――とか、そういった社内の変化はどうでしょう?」

村井「まさに“バロック”ですから、体制内改革をやっていくということですよね。世代間格差はあるんですが、これは過渡期にあるということで、それぞれが得意な事をやりながら全く違うかたちで発展していくでしょう。接客とか店舗の販売力が強い会社と言われていますが、新しく入ってくる人たちは国内海外含めて、自分でもスマホで買い物をしていますっていう人が多くなってきて。そんな世代の人たちを、この5年間で年間50名以上採用していますし、若手とベテランで意見が合わないこともありますけど、むしろそれでいいんじゃないかと思います。社長が改革するんだ!って叫んでもなかなか進まないんです。社員自ら“おかしくないですか?こんなの時代遅れですよ”と言って、若い人たちが変えていってくれるという事が大事なんです」

――そういう新しい世代からクリティカルなアイディアが生まれてくるかもしれませんね。

村井「そうですね。RIM.ARK(リムアーク)などはまさにそういう感じです。中村真里が20歳代半ばくらいの頃に新しいものを取り入れるという事で立ち上がったブランドでしたが、当時は“スター発掘”って社内コンテスト形式だったんです。最近は“バロック・オープン”といって、いつでも自由に提案して、いいものがあれば事業化するというかたちにしています。社員が、何か変えようという意識があるということが大事で、毎日同じ事の繰り返しというのが組織的にいうとみんな飽きてきちゃうってとこなんですよね」



――“バロック”ですものね。

村井「僕は別にクリスチャンではないんですけどね(笑)。経営に限らずですが、歴史の中に必ず同じ体験や経験が見つけられるので、歴史を紐解くとほとんど答えが書いてあるんです。こういう時にはこういう風にすればいいんだというヒントがね」

(おわり)

※2019年12月の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」番組収録後インタビューより

取材協力/The SHEL’TTER TOKYO
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき





■村井博之(むらい ひろゆき)
1961年7月26日東京都生まれ。84年立教大学文学部卒業後、中国国立北京師範大学に留学。85年キヤノンに入社。広州、北京の支店開設駐在の後、キヤノンと合弁でKAI LUNG CONSULTANTS社を設立し、社長就任。97年日本エアシステムでJAS香港社長就任。2006年10月フェイクデリックホールディングス代表取締役会長に就任。08年2月フェイクデリックホールディングスとバロックジャパンリミテッドの経営統合に伴い、社長に就任。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。







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