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2021.01.08

「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」2019 – 2020 バックイシュー――第29回/泉 英一さん(株式会社DESPERADO)

Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けするSMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。第29回のゲストはデスペラードの泉 英一さんです。収録を終えてのアフタートークをどうぞ。

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――番組本編では「若い時の試練は質より量だ。自分で感じることこそが大事」というお話を伺いましたが。

泉 英一「今の時代はネットなどでモノもコトも誰か評価したものの中から選択ができるんですけど、我々の時代は情報ってあってないようなもので、失敗を繰り返しながら成功していくという感じでしたからね。映画を観に行っても”なんだこりゃ !?”というものもたくさんあった。今の人たちは失敗ができない。失敗をしたくないという前提から誰かの評価を参考にしてモノやコトを選ぶので、映画を観に行って、ではその評価をと聞かれても、誰かが言っているようなことしか言えないし、自分の言葉になっていなかったりするので、みんなそれに気づかないのかなと危惧したりします」

――個人の感情が均質化し、それが情報化している感じはありますよね。

泉「アート、ファッション、映画にしてもスポーツにしても文化はいかにオリジナリティーかつオンリーワンで勝負していくか。誰かの物まねではやっていけない。岡本太郎にしても、ゴッホにしても、バスキアにしても皆そうで彼らのオリジナリティーだし、彼らのものですよね。デスペラードも僕のものなんです。時代とのギャップというか、ゴッホとかジャニス・ジョプリンみたいな独自性の強い人には憧れますよね。世間からのバッシングも多いですが、勇気と覚悟を持ってやっていけば、みんなのヒーローにもなり得ると思ってます。当然、タイムラグが生じることもあるし、私も30年経っても未だにうまくいかない(笑)。自分の中で完成しないっていうか……まだ納得してないんですよね。まだ伸びしろがあるんじゃないかと。人生一度きりなので、今生はこれに賭けてみようと。生まれ変わったらまた考えます(笑)」

久保雅裕「泉さんとは20年来の付き合いではありますけど、昔から見たおす、着たおすで展示会を回っていくスタイルで、量から質への転換という一定のターンが終わると、また量を追い求めていくという無限のサイクルは本当に変わらないですよね」

泉「今年61歳になって、まあ、いつまで生きるか、いつまでやれるかも予想がつかないんですよ。ただ、やれるかどうかは毎日朝起きて目が覚めてから考えてはいます。足が動きません、腰が立ちませんではできないですし。今はそれを見たい、やりたいという気持ちがモチベーション。それがもう何十年変わらない。今は昔と変わらないぐらい歩いてるんですけども、もういいかと思ったら辞めなきゃ。”昔はよかったのにね”なんて語られる人間にはなりたくないですね」



――たとえば、ルメールとかJWアンダーソンは、泉さんが日本に持ち込んできたときの最先端だったと思うんですが、いまやふたりともにユニクロとコラボするほどに一般化しました。

泉「彼らの持っている才能ですよ。その才能を誰よりも早く見抜くっていうのが自分のポリシーです。見抜く力、多くを売るというのが大事で、たとえば僕は彼らの作品を1個しか売れないけれど、ユニクロは1万個売る。その差は凄いわけで、僕は常に負けていくんです。ただ、デザイナーにとって最初の1個を買ってくれたバイヤーに価値がある、忘れられないって話を聞くんですが、自分もいちばん最初に商品を買ってくれたお客さんのことは覚えてる。そういうことなんでしょうね。過大評価のような気もしますが、こういうことに喜びを感じて日々戦っています」

――デスペラードとして、泉さんとして、これからこんなことやってみたいことは?

泉「今までやってきたことが大きく変わることはないと思っていますが、もっとパワーアップしていきたいですね。たとえば、今まではスピーカーもマイクも何もないところでアナウンスしていたとするならば、今はマイクを与えられている。そんな感じがします」



――自分の声が大きくなるぞっていうことですか?

泉「そういうことですね(笑)」

久保「特にスタッフは変えないで欲しいですね。わかりやすく、規模を追うようになると“らしさ”が薄まることがよくあるんです。それってデスペラード“らしく”ないと思うんです」


泉「日本のファッション業界の転換点はコストダウンだったと思います。シンプル・イズ・ベストという企業側の都合でデザイナー不明のアノニマス的な商品展開が蔓延していますけど、デスペラードはオリジナル性を追求していく。業界全体でも個性や独自性を復活させるべきだと思います。それと、音楽業界がCD販売からライブなどの体感型に転換して一定の成果を収めているように、ファッション業界もお店に行列ができるというだけではなく、お客さん自身が新しい体感できる仕掛けを考えていきたい。ネット販売ばかりに向かっている今の状況は少し残念ですし。魅力的な商品、エンタテイメント的要素があるような店舗、仕掛けを考えていきたいですね。楽しいコト、モノがあれば必ずお客さんはやって来てくれると信じていますので」

(おわり)

※2019年11月の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」番組収録後インタビューより

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/いのうえようへい



■泉 英一(いずみ えいいち)
デスペラード クリエイティブディレクター兼バイヤー。1958年大阪生まれ。1981年に(株)レナウンルック(現ルックホールディングス)入社。ブティック営業部門で海外ブランドのディストリビューションを手掛け、プリュック、ドリス・ヴァン・ノッテン、クリストフ・ルメール、マーク・ジェイコブスなどを日本国内に導入した。2000 年、セレクトショップ「DESPERADO」の開業に関わる。さらにイルビゾンテ、マリメッコのクリエイティブディレクターを歴任し、(株)ルック時代にはマーケティング・ジェネラルマネージャーを兼務。2013年、(株)パノラマを設立し、コミュニティストアとしてデスペラードをリニューアルオープン。2019年、(株)ファッション須賀傘下で新会社(株)デスペラードを設立。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。







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