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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第27回のゲストはTOKYO BASEの谷 正人さん!



――今日はこのあと、TOKYO BASE全社の大運動会が開催されるそうですね。

谷 正人「実は今年初めて開催するんですよ。去年までは半期に一度社員総会を開催していたんですが、まあ、みんな固くなっちゃうんですよね(笑)。なので、今回は下期に向けてからだを慣らそうという意味でやってみようかなと」

石田紗英子「どんなことをするんですか?」

谷「綱引きとか、ドッヂボールとか、リレーとか……誰でもできる競技ですよ」

久保雅裕「へえ!本気の運動会だ。まあ、TOKYO BASEの社員はみんな若いもんね」

谷「そうですね、社員の平均年齢は27歳くらい。いちばん年長で55歳だったかな。本社勤務のスタッフは年長者が多いですが、肌感では現場のスタッフは20代半ばから後半ですね。本社でも30代前半くらいがボリュームゾーン。みんな若いですよ」

――スタッフの話題が出たのでお聞きしますが、デイトナ・インターナショナルからスピンオフした時点でSTUDIOUSの3店舗に在籍していたスタッフも谷さんといっしょに転籍されたと思うんですが、谷さんが口説いてという流れですか?

谷「みんな僕がリクルートしてきたスタッフだったので自然な流れだったと思いますよ。もしかしたら、デイトナに戻れって言われたらみんな辞めちゃってたんじゃないですかね。スタッフみんなでSTUDIOUSを作り上げてきたっていう感覚はありましたし、これがFREAK’S STOREから引き抜いたスタッフだったら別ですが。人たらしじゃないですけど、それだけ惹き付けるものがあったと思います」





――谷さんが、“お前はフリークスっぽくないから”と鹿島さん(株式会社デイトナ・インターナショナルCEOの鹿島 研氏)に言われたというエピソードが印象的ですが、それになぞらえるなら、いっしょに転籍したスタッフは、STUDIOUSっぽい人材だったということでしょうね。

谷「そうですそうです。それは表面的な格好もそうですし、内面的にもそうです。STUDIOUSっぽさって“ファッションの世界で大きくなってもっとがんがん稼ぐんだ!”っていうモチベーションかもしれないですね。これは良し悪しではなくて、フリークスは“社員はみんなファミリー”っていうフィロソフィーがあると思うんです」

久保「確かにね。鹿島さんはEARTHMANSホテルに社員を連れて行って、キャンプしながら会議してたりするもんね。家族主義だし、自然派志向というか……TOKYO BASEはもっと都会派って感じがするね」

谷「かもしれないですね。デイトナの社員って都心に住んでる人が少なくって逗子とか湘南の方に住んでたりしますし。対してうちは都心型。会社で“渋谷手当”っていう仕組みがあるんです。渋谷周辺に住まうと手当が出ますよという。サイバーエージェントさんの“2駅ルール”っていう家賃補助制度を真似たんですけど」

久保「なるほど、おもしろいね。他に福利厚生面でユニークな取り組みってありますか?」

谷「えーと、海外手当はなかなか好評ですよ。1年に1回ですが、海外旅行の旅費をサポートしてます。アメリカ、ヨーロッパだといくら、アジア圏だといくらって決めていて」

久保「え、それは出張扱いではなくて?」

谷「いや、完全に遊びですよ。行ってきた証拠にインスタを1枚アップしてねってルールはありますけど」

――海外を見てきなさいというメッセージですね?

谷「そうです。あとは美容手当もあります。全額ではないですけど、美容院、エステ、ネイル、睫エクなどの費用を補助しています。男女問わずTOKYO BASEの販売員、スタッフとしてきちんとした格好をしていて欲しいという会社からのメッセージです。ただし、2ヵ月以上連続していないとだめです。こういうのって継続していることが大事なので。手当って給料とは違って、会社が求めている人物像に近づいてもらうための仕組みですから」

石田「女性としてはすごく助かりますよね。だって美容院もエステも毎月のことですから」

谷「うちは初任給もアパレルの水準からすると結構いいはずなんですよね。もちろんお金がすべてとは思っていないですけど、そうしないといい人材が集まってこないですから。これはTOKYO BASEが、というよりもアパレル業界全体としてそうであって欲しいと思いますし」

――まあドメスティックな視点では、優秀な人材の確保が課題のひとつですね。TOKYO BASEは海外展開もしていますが、香港、上海などの動向はいかがですか?

谷「上海のSTUDIOUSは8月にオープンしたばかりですが好調です。香港は少なからずデモの影響があるんですが、おもしろいことに流動客が多いUNITED TOKYO、PUBLIC TOKYOは苦戦しているものの、固定客が多いSTUDIOUSはあまり影響がないんです。8月には香港の「K11 MUSEA」という大きな商業施設にUNITED TOKYOとPUBLIC TOKYOが同時オープンしたこともあって僕も現地に行ってきたんですが、日本で報道されているよりもデモの影響ってもっと限定的なものなんです。現地スタッフには身の安全を確保するように判断を一任していますが、ちょっと日本国内の報道は偏重している気がしますね。まあ、ファッションとかスポーツって政治と切り離して考えるべきだと思います」





――もう少しMBOの話を聞かせてください。いまも資本関係があり、鹿島さんと谷さんは交流がありますし、こんなにも友好的かつWIN WINなバイアウトってめずらしいように思うんですが、なぜでしょう?

谷「まず、こういうことってお金の問題で揉めることが多いと思いますが、僕はちゃんと1億5千万円を払って事業を買い取っていますし、なおかつ鹿島社長はうちの株主になってくれて、最初の投資額を上回る利益を上げていますし。それは、まあ関係も円滑になりますよね(笑)。僕としても、鹿島社長が喜んでくれて気持ちいいですから」

久保「MBO自体はアパレル業界でもめずらしくないけれど、ここまでうまくいっている事例ってあまりないかもしれないよね。仮に、MBOの提案に対して鹿島さんがノーと言っていたら、谷さんはどうするつもりだったんですか?」

谷「ノーと言われた場合のために、自分で新しいお店を立ち上げるのでそちらに出資してくださいというプレゼンテーションを用意していましたよ。でも鹿島社長は“ノーと言ったらこいつは辞めるだろうな”ってわかっていたと思います。あと、どうやったら気持ちよく独立させてもらえるかっていうことはすごく考えましたね。上場するっていうプランはそのための手段だったんです。デイトナ自体は上場する会社ではなかったし、でも僕は上場したいからと。そしてそのことによってデイトナにもこれだけ利益をもたらす可能性があるんですっていう話もしましたから。まあ、言うほどスマートに話が運んだわけではないですし、さまざまな交渉や調整があったうえで独立できたわけですが」

石田「谷さんの、そういったビジネスセンスや経営手腕はどこで身に付いたんでしょう」

谷「どうでしょうね……常に物事の本質的な面を見るように努力しているつもりではありますけど。あと、業界の前例はあまりあてにしないようにしています。これは変な意味ではなくて、やはり、前例を見てしまうとビジネスモデルが似てしまいますし、8割の人から上手くいかないって言われたことをやる。中国での展開もそうです。日本のアパレルでうまく現地展開できているブランドってユニクロと無印良品だけなんですよ。それはなぜか?その2社は現地法人と組まずに自前で展開しているんですよ。他のほとんどの会社は現地と組んで上手くいかなくなっちゃった。“じゃあ、うちも自前でやろう”っていう一歩引いた視点でそういう本質的な部分を見極めるようにしています」





――さて、学生時代にバックデートしてみましょう。アルバイトで大金を稼いだというエピソードがありましたが、そのときにどんな買い物をしたか覚えてますか?

谷「覚えてますよ。これ、ギャグみたいな話ですけど、インポートのブランドものばっかり買ってました(笑)」

久保「ははは!それはシニカルだね」

谷「もちろんコム・デ・ギャルソンとかも買ってましたけどね。いまもそうですけど、僕ってわりとミーハーなんですよ。おしゃれコンシャス度を5段階評価で測ったらたぶん3.5かせいぜい4くらい。ある意味、一般的なコンシューマー像に近いと思うんです。決してマニアックじゃないし」

――そこまでエッジーなものを求めていない?

谷「そうですそうです(笑)。デザイナーとかクリエイティブ寄りな人だとエッジーに向かうんでしょうけど。僕は“素人のなかの洋服好き”っていう立ち位置を大事にしたいですね。中高時代に遡ってみても京都や名古屋でSTUSSYやAPEを買ったり、豊橋でMILKBOYを買ったり。がんばってbeauty:beastに手を出してみたり。アウトドア系が流行り始めたんで、アークテリクスとかカブー、ワイルドシングスも買いました。もちろんヨージヤマモトとかギャルソンも」

久保「すごく幅広いね(笑)」

谷「そうですね。常に真ん中でいようという意識はそのころからありまして。そうやって両極端に振れるから真ん中の立ち位置がわかると思うんです。僕、ビンテージ風っていうのは嫌いで。最新だったら最新、ビンテージだったら徹底してビンテージにこだわりたい。それはファッションだけじゃなくて時計とかクルマもそうですし。そういう買い物のしかたっていまも変わらないですね」

――かつて鹿島さんが谷さんの才能を見出したように、いまの谷さんも起業家や経営者を探したりはするんですか?

谷「クリエイティブやセンスという視点ではうちの社内にも優れた人材がいますよ。でも経営者という意味ではなかなか見当たらないですね。正直、新しい才能を育てるということにはあまり興味がないんです。興味はないんですが、やらなきゃいけないことだとは思っています。それはTOKYO BASEをもっと大きくしたいという意味で。この業界って、世代交代で苦労していてる会社が多いですから」

久保「日本のセレクトショップやデザイナーズブランドの諸先輩方はみんな70歳オーバーまでトップでがんばっているからね」

谷「そうなんですよ。鹿島さんもそうですが、創業者のパワーってすごいですから(笑)。それを超えてゆくのは並大抵じゃできないですし。僕ら世代の経営者は日本のなかに収まってちゃだめだと思うんです。もっと海外に出て行って、逆輸入で日本に入ってくるくらいの存在にならないとね」

久保「なるほど、力強い言葉だね。10年後のSTUDIOUSとTOKYO BASEが楽しみです」

(おわり)

取材協力/STUDIOUS TOKYO 神南店
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき





■谷 正人(たに まさと)
株式会社TOKYO BASE 代表取締役CEO。1983年生まれ、静岡県出身、中央大学商学部卒。2006年、株式会社デイトナ・インターナショナルに入社、STUDIOUS業態を立ち上げ、事業部長を経て2008年、同事業をMBOののち株式会社STUDIOUSを設立。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。





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