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2020.04.10

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第33回のゲストはシップスの原 裕章さん!

Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けするSMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。第33回のゲストはシップスの原 裕章さんです。収録を終えてのアフタートークをどうぞ。

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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第33回のゲストはシップスの原 裕章さん!



――SHIPSのルーツであるミウラは、御徒町、アメ横界隈で、軍モノ、サープラス品を扱う中田商店さんとか、上野商会さんのような成り立ちだったんでしょうか?

原 裕章「まあ、そうですね。中田商会さんはミリタリーですけどミウラの場合はジーンズとかTシャツ、ネルシャツとかもうちょっとカジュアルな品揃えでしたね。僕は上野にあったミウラにも行っていましたけど、どっちかというと買い物に行っていたのは――その後働くことにもなるんですが――渋谷の道玄坂にあったミウラ&サンズだから渋谷育ちなんですよ」

――ミウラ&サンズという屋号は、家業を継いだ三浦義哲さん(現シップス代表取締役社長)に由来するんですか?

原「サンズってイギリスなんかでよく使われている屋号なんですが、それになぞらえたイメージなんでしょうね」

久保雅裕「&サンズとか、ブラザーズとか多いですよね」

――すごくトラディショナルなネーミングですね。

原「渋谷にミウラ&サンズができたのは1975年なんですが、当時はどちらかというと、アメリカ西海岸のリーバイス、コンバース、ワークブーツ、あとはウェスタンだったりという文化で。その後、ベトナム戦争が終わると、アメリカ人の髪が急激に短くなって、こぎれいになってゆくんですよ。そうやって文化の中心が東海岸に移っていった頃、銀座にシップスを出店するんですが、トラッドっていう意味ではここがスタート地点でしょうね」





――いわゆるヤッピー、プレッピーの時代ですね。

原「そうです。なので、シップスの品揃えは常にアメリカなんですね。まあ、アメリカの宗主国はイギリスなので、そこから遡ってシェットランドセーターなんかを扱うようになって、徐々にヨーロッパのイタリアやフランスのものも仕入れるようになるんですが」

――いま現在のシップスを見ていると、バブアーやラベンハムがあったり、ヨーロピアンのイメージがあるんですが、意外にもルーツはアメリカなんですね。

原「ああ、特に重衣料はイタリアのブランドも多いですし、いまのシップスはそういう見え方でしょうね。イタリア製スーツの仕立ても“イタリア人が見たアメリカントラッド”がベースになっていますから。だからどこまで行っても根底はアメリカなんです。久保さんは、マルセル・ラサンス(MARCEL LASSANCE)ってご存知ですよね?」

久保「はい。フランス人デザイナーですが、彼が作る服はアイビーっぽいんですよね」

原「まさに。このブランドが典型的なんですが、ラサンスはいま70歳くらいだったかな……いわゆる上流階級の人なんですが、彼自身がアメリカントラッド好きなので。シップスとしては、ヨーロピアンブランドであっても、そういうのが好きなデザイナーが作った服を扱うっていうことなんです」

――そういったカルチャーや傾向は、ミウラ&サンズ時代から備わっていたものですか?それともシップス以降に醸成されていった?

原「そうですね。いっしょに育った、育てたっていう感覚はありますね。会社全体として、みんなが見ているもの、見ている方向が同じというか……本編でもお話しましたけど、他のセレクトに比べると、うちの会社ってあまり変化を好まないというか、堅いんですよ。いい意味でも、悪い意味でも(笑)」





――だいぶ前ですが、「SHIPS MAG」の企画でやっていた青野さん(ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター 青野賢一氏)との対談を覚えていますか?

原「ああ、シップスの創業35周年のときですよね。どんな話をしていましたっけ(笑)」

――ファッションにおけるスタンダードとは?という禅問答のようなやりとりがあって、原さんが「洋服が素材、色、スタイルの3つで構成されるものであるなら、シップスはその3つのうちひとつだけを変えるんだ」というメソッドを語っていたのが印象的で。

原「うん、思い出しました。2個変えちゃダメ、同じままでもダメって話ですね」

久保「なるほどね。ビームスは2個変えてくるってことですか?」

原「ビームスはね、ホットなんだよね。常に変化し続けてる感、新しいものを生み出している感がありますし、それは昔からそうなんですけど、それってもしかしたら経営者のキャラクターかもしれませんよ。ほら、うちの三浦は元高校教師だけど……」

久保「ははは!ビームスの設楽さん(株式会社ビームス 代表取締役社長 設楽 洋氏)は元電通マンだから?いや、あながち間違ってないかもしれませんね」

――対してシップスは、いくつかのレーベルを展開しつつも基本的にはシンプルにシップスというひとつの屋号で勝負しているイメージがあって、それも“らしさ”なのかなと。

久保「そうだね、今日お邪魔した渋谷のエニィ(SHIPS any)は新しいラインですが、これまで展開していたジェット・ブルー(SHIPS JET BLUE)と、カージュ(Khaju)、リフラティ(liflattie ships)のコンセプトを引き継いだものということですよね?」

原「そのとおりです。いや、ビームスも、ユナイテッドアローズも、サブブランドをたくさん展開していてうらやましいですよ(笑)。多様性というか、そういう人材がちゃんと揃っているっていうことですから。うちは急拡大することを望まない社風もありますし、体質としては慎重ですよね」





――これは社風というよりも、コンプライアンスの範疇かもしれませんが、シップスは、人事労務という点でも先進的で、いちはやく働き方改革に取り組んでおられましたね。

原「はい。2015年だったかな……株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんの講演を聞く機会がありまして、日本は人口が増え続けるボーナス期からオーナス期へシフトする局面に来ていて、そのなかでどうやって効率を上げてゆくかっていう内容だったんですが、それに感銘を受けたんです。会社の人事担当も同じことを考えていたので、それじゃあということでシップス社内でも講演していただき、研修もやりました」

――では、現場では特に抵抗感もなく新しい取り組みを受け容れるスタンスだった?

原「いや、全員が納得して取り組んでいたかわかりませんけど、とりあえず試してみようという素直なところもシップスの社風なんですね。そこで効果が生まれると、残業が減る。残業が減ると収入が減るわけですから、やはり定着するまで一定の不満はあったと思いますよ。特に、残業が嫌じゃない/苦にならない層と、企画とかクリエティブ系の人たちの、自分のペースで仕事がしたい気持ちもわからないでもないので。でも、そういった層の社員にも、決められた時間のなかで効果を上げてくれないかって丁寧に説明しましたね」

久保「まあ、シップスという会社を外から見ていると、保守的、堅いという言い方もできますが、やさしい、誠実という捉え方がしっくりしますよね。そのイメージは昔からずっと変わっていないんです。逆に消費者のマインドセットはだいぶ変化したように思いますが、原さんの立場から見てどうでしょう?」

原「2000年代から2010年代に、ファストファッションの台頭と衰退という流れがあって、世界的にも物を大切にする、物を捨てないというマインドセットが醸成されてきました。今後は環境に配慮した取り組みができない会社は生き残ってゆけないでしょうね。単純によい商品というだけではダメで、お客様はその商品のバックグラウンドにあるストーリーまでひっくるめて価値を見出していると思うんです。あと、みんな幸せになりたい、気持ちよくなりたいっていう根底は変わっていなくて、でもそのためにお金を支払う対象が変化してるんですよ。たとえば10万円払っても最高のスーツは買えないけど、3,000円払ったら最高のパンケーキが食べられるわけじゃないですか」

久保「大量消費社会に対するクエスチョンマークがどんどん大きくなっている。もっと言うと、幸せの価値とかそれを測るための尺度が変化してきている。もしくは個人個人の嗜好が多様化しているということなんでしょうね」





――先ほど原さんが言ったように、長時間働くことが美徳じゃないということがベーシックな世代の人たちがそういう変化を捉えて新しい価値を創造してゆくのかもしれませんね。

原「そのとおりだと思います。古い人間ほど従来のやり方に縛られていて、ものごとを俯瞰できなくなってしまうことがありますから。あとは環境の変化という意味では、いま、感染症対策として行われている時差出勤だとか、リモートワークといった働き方が定着するとライフスタイルも変わってくるし、ライフスタイルが変化すれば、ファッションも変わってくるような気もしますね」

久保「まあ、たまたま今回の騒ぎでインフラの整備が進んで、働き方の変化が顕在化しただけで、のちのちに必然だったんだって言える日が来るんじゃないですか」

――思えば原さんは、セレクトショップという呼び名が生まれる前からファッションの仕事に携わっておられましたが、それがセレクトショップと呼ばれるようになったのはだいぶ時代が進んでからですよね。

原「そうですよ。セレクトショップっていう言葉が使われるようになったのは1990年代ですから。セレクトなのにオリジナルもやってるって言われたりね(笑)。まあ、流行とか新しいものって、そうやってあとから名前がつけられるものですよ」

(おわり)

取材協力/SHIPS 渋谷店、SHIPS any 渋谷店
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき



■原 裕章(はら ひろあき)
株式会社シップス 代表取締役副社長 。1960年生まれ。学生時代から渋谷のミウラ&サンズでアルバイトを始め、83年、有限会社ミウラ(現株式会社シップス)入社。販売員から店長、営業部長、商品部長、人事部長、取締役を経て、16年より現職

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。



■第33回のゲストはシップスの原 裕章さん!




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