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2021.03.13

第42回のゲストはバーニーズ ジャパン取締役、クリエイティブディレクターの谷口勝彦さん――「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN

Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けするSMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。第42回のゲストはバーニーズ ジャパン取締役、クリエイティブディレクターの谷口勝彦さんです。収録を終えてのアフタートークをどうぞ。

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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



――すごく陳腐な質問で恐縮ですが、谷口さんのご趣味は?(笑)

谷口勝彦「着物――いわゆる男着物――ですね。最初は仲間うちで着物を着ようじゃないかという単純な話だったんですが、ただ着るだけじゃつまらないから日本舞踊をやろうって誘われたんですよ。知り合いの師匠が踊りを教えてくれるからって。それで夜、仕事が終ってから通うようになって、そこから着物にのめり込んでいくことになるんですが、だんだん江戸文化に傾倒するようになって」

――なかなかにスノッブというか、粋ですね。

谷口「江戸時代って、とんでもなく派手ですごいデザイナーがたくさんいたはずなんですが、そういうことを教わっているうちに、着こなしから、もちろん踊りも、めちゃくちゃかっこいいし、だんだんおもしろくなっちゃって……今年でもう4年かな?1年か1年半に1回くらいお披露目しなくちゃいけないんですよ。400人くらい入るようなホールでね。そうだ!今度、久保さんも見に来てくださいよ(笑)」

久保雅裕「ははは、ぜひぜひ!」

谷口「ま、そのお披露目も入谷の下町あたりでやるんですが、帰りに必ず飲みに行くわけじゃないですか。入谷、下谷、根岸、竜泉あたりにメディアに出てこないようないい店がたくさんありましてね。そういう店に兄弟子たちと飲みに行くという(笑)。あと、趣味といえば……古いクルマかな」



――谷口さんが、古いジャガーXJ6をとても綺麗な状態で乗ってらっしゃるという記事を見たことがあります。

谷口「1968年から72年まで生産されていたシリーズⅠです。直列6気筒ですが、意外と燃費もよくて、街乗りでリッター6キロ、遠乗りだと7は走りますよ。クルマは子供のころからずっと好きで、でも新車には1回も乗ったことがなくてね。ヨタハチ(トヨタ スポーツ800)にも乗りましたし、もっと若い頃はイタ車に夢中でした。アルファ(アルファロメオ)はめちゃくちゃ詳しいかもしれない。」

――アルファはどの時代が好きだったんですか?

谷口「60年代、70年代の105系ですね。ジュリアとかスパイダーが有名ですが、僕が乗っていたのは1750と2000のGTV」

――美しいクルマが好きなんですね。その頃のアルファはジウジアーロでしたっけ?

谷口「はい、ベルトーネでチーフスタイリストをやっていた時代のジウジアーロですね。まあ、当時のアルファはいろんなデザイナーが関わっていましたから。いま、ヨーロッパじゃ60年代、70年代のクラシックカーは投資対象になっていて価格が高騰してしまいましたけど、早く落ち着くといいですね」

久保「トゥモローランドの佐々木さん(株式会社トゥモローランド 代表取締役会長 佐々木啓之氏)も旧車好きですよね」

谷口「ミッレミリアに出ていたり、佐々木さんも相当なマニアですよね(笑)。僕のはサラリーマンの趣味なんで、ふだん使いのアシがわりですよ。メカニックも好きだから自分でいじったりもしますしね」



――番組中で語っておられた学生時代の武勇伝というか、同級生たちの逸話が印象的でしたが、いまでも交遊があるとか?

谷口「さっきもお話ししましたが、学生時代の僕はめちゃくちゃだったけど、まわりの連中は優秀でしたから、中学のときの同級生が、カシオ計算機の北米法人の社長だったり、博報堂のお偉いさんになっていたり……あと、これは僕がバーニーズ ニューヨークに入ってからばったり再会したんですが、100年以上続く山田紙器という、バーニーズ ニューヨークの本国のアプルーバルを得て、ジャパンのあの象徴的なショッピングバッグを納めている会社がありまして――本国の連中に言わせると“本国よりも日本の紙袋の方が質がいい”ということなんですが――そこの社長が同級生の山田晴久くんだったという(笑)。彼は学生時代からできるヤツでね、馬術部の部長でしたし。それからうちにアンティークジュエリーの店子で入っている業者も中高の同級生で、ある日、新宿店でばったり出くわして“あれっ!お前、なんでこんなところにいるの?”って。僕の人生でいちばんめちゃくちゃな6年間をいっしょに過ごした友人のひとりですよ(笑)」

久保「中高一貫のマンモス校だから、いろんな才能が集まっていたんでしょうね」

谷口「高校は1学年で10クラス、500人くらいですから、いろんなヤツがいましたね。利口も、金持ちも、そうでないヤツもいましたけど、不思議とみんな仲がよかったんですよ。変な妬み、嫉みがなくてね」



――さて、いま現在の谷口さん、というかバーニーズ ニューヨークについてもう少しお聞きしたいのですが、バーニーズ ニューヨークは傍から見ていても、クリエイティブを優先させるカルチャーが根付いているように感じるのですが。

谷口「それは大いにあるでしょうね。そういう部分はこれまでずっと本国のバーニーズ ニューヨークに倣ってきましたし。向こうは決定権を握っているのはクリエイティブの人間で、それは社長ではないんですよ。それってふつうの日本の企業だったらありえないじゃないですか。でもバーニーズ ジャパンでは同じように僕のデザインに誰かが口出しするってこともありませんし、もしそういうやり方になってしまうのならバーニーズ ニューヨークの看板じゃないほうがいい。当然ひとりの人間に任せるということのリスクはありますし、それを踏まえたうえで僕を信頼して権限を与えてもらっていると思っています」



――なるほど。これは久保さんにお聞きした方がいいかもしれませんが、たとえば、日本のアパレルやセレクトでバーニーズ ジャパンにおける谷口さんと同じ役職を置いている企業やブランドってあるんでしょうか?

久保「VMDもやって、クリエイティブの統括も、ってことですよね?うーん……まず、その分野にそこまで注力している会社が日本にないからね。ある意味、社長さんや創業者のかたがそういった権限や機能を担っている会社はありますけどね」

谷口「広告やストアデザインまで担っていますからね。まあ、会社の規模によっては似たポジションを置いているところもあるかもしれませんけど。確かに、意外とめずらしいかもしれません」

久保「そうですね。あと、谷口さんというキャラクターゆえという見方もできますよね。もちろん、VMDという役職を置いている会社はめずらしくないけど、ここまでその人のキャラクターを立たせている実例は……ぱっと出てこないね。強いて挙げるなら、先日取材したアッシュペーフランスさんは近いものがあるかもしれないね。社内にアトリエを構えていたりしてVMDにすごく力を入れているし。ただ、アッシュペーの場合はチームのクリエイティブなのでそこまで個人のキャラが前面に出てこない。もちろん、チームの中でリーダーシップを執っている人はいるんでしょうけど」

――なかなか類型化しずらいというか、すごくユニークな立ち位置だなと思いました。

谷口「それもこれも本国のバーニーズ ニューヨークのおかげですよ。やっぱりサイモン・ドゥーナンという才能がいて、プレスマン家が彼に託したという歴史があればこそだと思います。2019年だったかな……アナ・ウィンターが「キャンプ(大げさという意味のcamp)」というテーマでMETガラ(メトロポリタン美術館で開催されるチャリティイベント)をやりましたけど、あれの元になったスーザン・ソンタグの定義とか思考を理解するセンスの持ち主だったんですよ。プレスマン一族って。サイモンにしたって、マジソンの街に出ていくこと自体を心配していたし、チェルシーのあの場所にある、あの規模の専門店だからこそ、バーニーズ ニューヨークはバーニーズ ニューヨークで在り続けられたっていう思いが強かったですし。だからマジソンへの出店を“アップタウンの人たちにチェルシーの文化を伝えるんだ”っていう言葉に置き換えていましたね。これは1993年、J-WAVEの番組に出演したときのサイモンのコメントです」



――いまではバーニーズ ニューヨークという屋号を掲げている店は日本だけになってしまいましたが、そういったフィロソフィーを伝えていくことも重要ですよね。

谷口「バーニーズ ジャパンは、新しく本国のバーニーズ ニューヨークのオーナーになったオーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)からも、すごく期待されていまして(笑)。そして非常に協力的でもあり、銀座本店にも視察に来て、ここがバーニーズ ニューヨークをいちばん色濃く受け継いでいるとまで言ってくれましたね。実際、サイモンの得意だったクラシックなバストフォームの設えかたを知ってるのは世界中で僕しかいないから」

――いわゆるサヴィルロウ仕込みというやつですね。

谷口「そうですそうです。スーツとか、ドレスシャツのフォームとか、めちゃくちゃ早くやっても5、6時間かかるんですよ。僕は、そういうのを本国でサイモンに徹底的に仕込まれてきましたから。逆にそういう技術って伝授できるものなので、そうやって守るべきものは守っていかなきゃいけない。そのうえで、ぶっ飛んだものも作っていくってことでしょうね。どれだけECが普及しても、実店舗での買い物ってなくならないと思いますし、でも商品そのもので何かを伝えていくって難しい時代だから。じゃあ、バーニーズ ニューヨークという場所に来て、買い物をするという行為がどうおもしろいのか?ということを伝えていくのが僕の役目だと思います」

(おわり)

取材協力/バーニーズ ニューヨーク銀座本店(株式会社バーニーズ ジャパン)
取材・文/高橋 豊(encoremode)
写真/柴田ひろあき




■谷口勝彦(たにぐち かつひこ)
株式会社バーニーズ ジャパン取締役、クリエイティブディレクター。1990年バーニーズ ジャパン入社。米国バーニーズ ニューヨークでサイモン・ドゥーナンに師事。現在は、日本のバーニーズ ニューヨークのウィンドウからフロアディスプレイ全般、店舗デザイン、広告ヴィジュアルなどのストアイメージに関わるすべてを統轄している。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。









「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN





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