──今年、早くも3曲目のリリースになります。

3曲もリリースさせていただけると思っていなかったので、嬉しいです」

──3rd digital single「ADORABLE」はすでにライブで披露されていましたね。

「今年の5月くらいかな?…前作「サマーバイブス」とほぼ同タイミングで「ADORABLE」は完成していました。個人的にR&Bというサウンドも好きなジャンルでしたし、ファンの方々にもすごく好評で。“サウンドの耳心地がいいし、歌詞もしっかり読みたいから、早くサブスク解禁してほしい!”という声を頂いていたんです。早くリリースをしたいとずっと思っていた楽曲だったので、年内にリリースできて良かったです。ただ、ライブで聴いていた楽曲と、今回リリースする楽曲のアレンジは変わっていて…音数もかなり違うので、ファンの方々で気づかれる方がいたら、“さすがだな!”と思います。コアなファンの方々は、“あ、イントロが変わっている”とか気づくかもしれないです」

──ミドルテンポのR&Bで、野島さんが手がけた作詞では初の恋愛ソングですね。

「私、ずっとラブソングを書きたいと思っていて…歌詞を書き溜めていたりもしてたんですけど、今回は“彼目線”で書きたくて。私が一人称で書いてしまうと、女性らしすぎるというか、自分の私情や雑音が入って、重たくなっちゃう気がしていました」

──それにしても、女性がラブソングを<僕>の男性視点で書くのは珍しいですよね?

「でも、どうしても<私>で書きたくなかったんです。“こんなふうに彼に思われたら嬉しいな”という願望を書きたかったのもあるんですけど(笑)、私が聴いている洋楽のR&Bは彼女をお姫様のように唯一無二のかけがえのない存在として歌っている曲が多くて…愛の言葉を“ラブ”以外で例えるのがすごく素敵で、“愛”という言葉を使っていなくてもひしひしと伝わってきます。“女性として、こんなふうに思われると、幸せだろうな“というようなニュアンスで書かれている歌がたくさんあって。普段から和訳を見ながら、”私もこういう楽曲を自分でも書いてみたい“と思っていましたし、日本語だけでは出せないグルーヴ感もあったので、あえて英語の歌詞を多めに入れて書きました」

──<僕>から<君>に対するどんな想いと言えばいいですか?

「もう“超あまあま”です。本当に私もこんな人に出会いたいです!」

──(笑)割と彼の方が年上のイメージでした。

「年上ですね。しっかりと設定を作っているんですけど、<Adorable>という言葉には私情が入っています。私、人に対しての最上級の褒め言葉が“愛おしい”、“愛くるしい”なんです。動物に対しても、男性に対しても、家族や友達に対しても、“そういう行動をするのが愛おしい!”という思考回路になることが多くて。女性には“愛おしい”と思う感覚があるけど、男性ってなかなか“愛おしい”と思う感覚ってないのかな?…そう思って。女性よりは年上の設定ですし、女性よりもお金を持っていて、男性のお家に女性が遊びに来ているってイメージで作っています」

──「ADORABLE」を日本語に訳すとすると、どういう意味なんですか?

「タイトルは一番最後に決めたんですけど、“ADORABLE“は“愛おしい”や“愛くるしい”という意味で使っています。私もあまり聞きなじみがなかったんですけど、レコーディングの時にロス在住のスタッフさんがいて、“いいタイトルだね”と言ってもらえたんです。自分の子どもや赤ちゃん、ペットに対してはもちろん、恋に対して最上級の褒め言葉のような感じで使う言葉らしくて。“LOVE”や“LIKE”よりは使用頻度は少ないですけど、それなりに重みがある言葉だから、“すごく曲にマッチしていると思った“と言ってくれました。私が狙っていたところがきちんと伝わったのはうれしいです」

──情景がはっきりと目に浮かびますね。

「歌詞は、普段の生活というか…特別なことは書いていないんです。寝起きの“おはよう”の声が年下の彼女だから甘えてくるとか、彼のお家に泊まっているから、彼のTシャツを着てコーヒーを淹れるとか、<今⽇は何しよ?>という他愛もない会話から始まる1日とか。何も特別な瞬間を切り取っていません。ドラマや映画だったら、みんなが早送りしたり、10秒スキップしてしまうような瞬間をあえて切り取ったんです。だから、みんなが、”あ、私もそうしたことある“とか、共感してもらえるポイントになればいいと思っていますし、今、現在、彼氏彼女がいない人たちは、そんな日常が愛おしい、恋しいと思ってもらえるような曲になると嬉しいです」

──特にこだわったところなどはありますか?

「自分が思っている現実と、理想とが入り交じっているんですけど、例えば、<君との365days/どの季節の瞬間も>って、ほぼ言っていることは一緒なんです。でも、あえて繰り返すことによって、彼の愛情がより伝わると思って。あと、<寒い夜も愛を確かめよう>も、女性目線で書いていたら、“寒い夜も愛を確かめたい”や“確かめさせて”になって…きっと、ここまで断定して言えないと思います。そこで、男性らしく引っ張って<確かめよう>と言うことで、男性と女性の違いが、はっきりとしたコントラストとして見えるように、と考えながら書いていました」

──最後の<Iʼll wait for you...>は彼女からの答えを待っている状態ですよね?

「そうですね。恋愛でも結婚生活でも、ギブ&テイクが比例していない時ってあるじゃないですか。でも、この彼は彼女から見返りを別に求めているわけではなくて。“常に君の存在を待っているよ”という言葉は、そういうニュアンスも含めて、最後、ラブラブで終わっていない…というのもこの楽曲のエモさの1つだと思っています」

──ちなみにこの2人は付き合ってどのくらいのイメージですか。

3年かな?」

──じゃあ、そろそろ結婚を考えているかもしれないですね。

「っていうのも視野に入れています」

──でも、歌詞だけではなく、歌声やサウンドを含めて聴くと、この彼女は猫のようにフラっといなくなってしまうような気配も感じていて…。

「さすがですね! 本当に同じようなことを考えながら、1人でニヤニヤ想像して書いていました。人が本当に人のことを好きになれる期間、恋愛的にドキドキするのは大体3年間くらいらしくて。ちょうどその3年が経って、女性の方は恋心から愛情になっていくのか…結婚するのか別れるのか…という間にいて。彼もそれを感じているからこそ、こんなに彼女のことを想っているんだと思います。改めて、12年目には当たり前に思えていた、寝起きの彼女の姿を愛おしいと感じていたりする…そういう気持ちをいろいろと考えながら、書いています」

──終わりの予感がもたらす切なさもあるんですよね?

「はい。歌詞では、彼女のことはあまり書いていないですけど、私も“猫っぽいな”と感じながら書いていました。彼女は私自身とリンクする部分もある気がしています。私だけでなく、女性って一途なところもあるけど、ふとした瞬間に、そっぽを向くというか…離れてしまうような感覚があって。だからこそ、男性には“しっかり見ていてね”と言いたいです。“私のことをちゃんと愛していてね”という意思表示を彼女はしているのかな?というシチュエーションで書いています」

──それもなんとなく伝わってきていました。これ、いくらでも話せますね。妄想が捗るというか…。

「話せます! あと、もう1つ好きなところは、英語で書いてる<The warmth of your heart is where I belong>です。“あなたの温もりが僕の居場所”を表現しているんですけど、それも全部、<僕>発信です。ほぼプロポーズに近いような言葉を並べているのも、恋人のことをすごく大切に想っている感情がすごく分かる部分で、あえて、ここは英語にしています。歌詞を調べたり、和訳してもらえたら、また全然違う受け取り方があったり、より曲への解釈も深まると思うんです。今後、和訳をSNSに上げていくつもりなので、どこかで聴いて、“この曲いいな”と思った方は、ぜひ、和訳も見ながら聴いてもらえると、よりうれしいです」

──一聴するとスイートなR&Bラブソングですが、女性の方の感情が描かれていないからこそ、いろんな解釈ができますね。

「私も“こういう話がしたいなぁ”と思いながら書いていたんです。私は普段、円満に終わっている、誰の手助けも必要ないような曲はあまり聴かなくて。洋楽のラブソングも、圧倒的に彼が彼女のことを想っていたり、“僕自身を君に捧げる”と言っていたり…“君に尽くす”という意思表示をしていたりします。彼側に立つと、幸せだけではないと思うんですけど、そういう彼の頑張りとか、背伸びや優しさも見えるからこそ、「ADORABLE」が何かのろけだけにはなっていない気がするので、皆さんにもいろんな解釈をしてほしいです」

──野島さんはこのくらい愛されたいですか?

「愛されたいです! キザかもしれないですけど、この<僕>って、きっとひざまずいて、手を差し伸べる系じゃないですか。階段を降りるときも、手を差し伸べてくれるような彼だと思うんです。実際に行動にしなくてもいいですけど(笑)、気持ち的にはそのくらい想ってくれていたら幸せですよね」

──歌入れはどうでしたか? 初のR&Bですよね。

「いつもとは違うグルーヴ感で、かつ、英語詞が多いので、発音を確認しながら挑みました。でも、ライブで歌い慣れていることもあって、メインのメロディーのレコーディングは案外、スムーズに終わりました。そこから装飾で声を重ねていったり、フェイクを入れたりしたんですけど、特にフェイクには時間がかかりました。“頭から流してみるから、自分が気持ちいいタイミングで声を出して、アドリブで歌ってみて”と言われて…」

──いきなり! それは難易度が高いですね。

「私はあまりアドリブが得意な方ではないというか…まだまだ勉強中なので、トリッキーでインパクトがあるフェイクがあんまり思い浮かばなくて。それでも、頑張って“こういう感じかな?”というフェイクをやりながら歌ってみたら、“いいね!”と褒めてもらえたりもして。でも、自分の課題がまた1つ見つかりました。今後、アドリブがうまくなったら、カバーソングでも私らしさを出せますし、自分の持ち歌でもライブで毎回アレンジして届けることもできます。R&Bシンガーの方がよくするフェイクも教わったので、今回を機にいろんな楽曲を聴いて、少しずつ自分のものにできるように勉強しています」

──野島さんの歌声にはR&Bナンバーが一番似合いますよね。

「本当ですか!? 嬉しいです。私、最近、SNSで歌を投稿しているんです。スタッフさんにも“野島ちゃんの声に合っている楽曲、ビシッとハマった楽曲は耳心地もいいし、誰が聴いてもうまいと思う。SNSでもそういう楽曲が再生数も伸びているから、今回の曲も野島ちゃんの声質と音域と雰囲気にピッタリ合う楽曲だと思う”と言ってもらえたんです。自作の歌詞にも自信がありますし、これを機にまたSNSでバズればうれしいです。歌えば歌うほどよくなっていく曲なので、そういうふうに味わって楽しんでもらえたら嬉しいです。でも、まずは、こうして“声に合っている”と1人でも言ってもらえたらもう、“勝った!”という気持ちです」

──(笑)。

──ご自身ではどう感じましたか?

「レコーディング中から、自信満々に歌っていましたし、男性の方に声を重ねてもらったことも、納得いく瞬間でした。あと、“アレンジすれば、絶対にもっとかっこよくなる!”と思っていたので、完成したものを聴いたときも、自分でも“もう1回、もう1回、”と何度でも聴きたいくらい、好きなポイントが多かったです。だから、繰り返しになりますけど、自信作です。サブスクで聴くのもおすすめですし、ライブでは毎回フェイクを入れていくつもりです。ワンマンライブはキーボードの生演奏でお届けするんですけど、オケとは全然違うジャジーな感じになるので、この曲がこれからどう成長していくのかが私も楽しみです」

──11月29日(土)に開催される『野島樺乃One Man Live ECHOES vol.01』はどんなステージになりそうですか?

「昼夜2回公演で、昼公演が昭和歌謡をメインにして、夜公演がワンマンライブという形を予定しています。今年、ソロになっての集大成です。2025年の自分の歩みをしっかり曲とMCで話すライブになります。今年の初ワンマンにして、年内ラストワンマンなので、悔いなくしっかりやり遂げたいです」

──去年のワンマンライブは『Euphoria』=多幸感、幸福というタイトルでしたが、今回は『ECHOES vol.01』でナンバリングされています。

「その日限り、その場限りではなく、私がその日のライブにみんなにかけた言葉や歌っていた楽曲が“こだま”のように響いてほしくて。例えば、街中で曲を聴いたときに、“あっ、かのちゃんが歌っていた楽曲だ”とか、“かのちゃんがこの間のMCでこういうふうに言っていたな”とか、“かのちゃんも頑張っているから、私も頑張ろう”って、“ECHOES”=“こだま”のように心に反響して残り続けるライブを届けたいという想いでこのタイトルをつけています。あと、2回、3回と、ワンマンライブがどんどん“こだま”のように反響して続けていきたいという想いも込めています」

──“今年の集大成“とありましたが、振り返って、2025年はどんな1年でしたか? et-アンド-の解散ライブが3月15日だったので、まだ8ヶ月しか経っていないんですね…もっと経っている気がしますけど。

「ですよね。私も1年くらい経っているような感覚です。思い返せば、今年の始めはまだet-アンド-のメンバーと一緒にリハーサルをしていました。切ないくらい時が経つのが早い…という感じなんですけど、みんなそれぞれの道に向かって夢を追いかけていたり、実際に歩みを進めていて。私も過去の経歴に恥じない自分でいたいと思う気持ちがすごく強くて。そこからソロとして再デビューして、やっぱり1人になったことによって、負荷はすべて自分にかかりますけど、自分がやった分だけ返ってくるというやりがいもあります。楽しい反面、いろんな場所に歌いに行ったり、ストリートライブもして…足を止めてくださる方もいれば、全く足を止めてくださらない方も当然いて。でもそれって、音楽活動を本当に地に足つけてやっている気がしています。“人生!”という感じがしたんです」

──それは充実感ですか?

「充実感です。もちろん、悔しいし、苦しいし、“何のために私は今日この場で歌っているんだろう?”という気持ちになる時もありました。でも、本当にその時に「One」(野島の1stシングル)の歌詞がすごく響いて。自分で歌詞を書いた自分の楽曲に自分で歌いながら泣きそうになっちゃいましたけど(笑)、そういう経験ができているのも“生きてる!”と思って」

──「One」の<泣いても笑ってもこの足で/磨いてきた人生をもっと感じて…>という歌詞を体現しているんですね。

「はい。“人生薔薇色!”と言えないような道を歩んでいるんですけど、音楽活動をしている上では、それが逆に曲や歌い方に活きてきたりするので。表現者としてはすごくポジティブに捉えて、“とてもいい経験できている“と思えた半年でした。今年はたくさん種を蒔く年にしていたので、この半年に蒔いた種から少しでも芽を出してくれたり、芽が出そうになってくれると嬉しいです」

──来年に向けてはどう考えていますか?

「目標は東名阪ツアーです。あと、ワンマンライブでは、自分自身のオリジナル曲だけでセットリストを組みたいという目標もあるので、野島樺乃名義の楽曲を増やしていきたいです。今年リリースした3曲に加えて、まだライブでしか歌っていない「Stand by you~あるがまま~」と「evidence」があって。私が歌詞を書いたet-アンド-の「My dream」もいい曲ですし、ファンの方の人気も高いです。SKE48時代にもソロ曲を頂いていますし、「はじまりの唄」(「第3AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」ファイナリストLIVE出演メンバー9人によるNona Diamondsの楽曲でプロデュースはゴスペラーズの黒沢薫)も自分の転機になった楽曲として歌い続けていきたいです。思い入れがある楽曲は自分と一緒にいてほしいですし、来年はワンマンのセトリをオリジナル曲で迷うくらい…両手で収まりきらない楽曲数になるように頑張ります!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFROMATION

野島樺乃「ADORABLE」

2025年115日(水)配信

野島樺乃「ADORABLE」

LIVE INFORMATION

野島樺乃One Man Live~ECHOES vol.01~

2025年1129日(土) 愛知 NAGOYA SPADE BOX
昼公演:開場 13:30 / 開演 14:00
夜公演:開場 17:30 / 開演 18:00

=MORE LIVE IFORMATION=
“もっちゃん。すとりーと”@歌舞伎町 和牛特区前
2025年11月8日(土)
Shibuya Street Live@Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 2F 桜丘広場
2025年11月14日(金)

野島樺乃One Man Live~ECHOES vol.01~

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