――新曲のリリースは半年ぶりになりますが、「祭歳」を最初に受け取った時はどう感じましたか?
栗本優音「最初は仮歌も入ってないサウンドのみで、「祭歳」っていうタイトルもなかった状態だったんですけど、その時点ですでに祭り感を感じてて。サビに阿波踊りをモチーフにした振り付けがある通りに、みんなで円になって踊っているような印象を受けました。あと、かわいい鈴の音が入っていたり、モラのラップもすごくかっこいいので、私たちの同世代の人にも憧れられるような曲になってるんじゃないかな?って思いました」
山崎カノン「ポップなサウンドですし、自然とリズムに乗りたくなるような楽曲なので、すぐに耳に残っちゃう!っていう印象でした」
モラレスきあら「私は曲の途中でTikTokとかのセリフで使われるようなフレーズが入っていて…“え?何これ!?”って思いました」
栗本「ふふふ。私が1人二役でセリフに挑戦しました。夏にぴったりのお祭り感あふれる楽曲っていう楽しいイメージもありつつも、儀式とか昔なりのしきたりみたいな、ちょっと怖い部分もある。お祭りの二面性が込められていて、すごく聞きごたえのある楽曲です!」
モラレス「そう。ラップもあるし、セリフもあるんだけど、いままでのet-アンド-にはないような楽曲で、本当にガラッと変わった新しい一面を見せれるんじゃないかな?って思いました」
――今までにない面というのはどんな部分ですか?
モラレス「これまでのサビは自分たちの個性を生かしつつ歌っていたんですけど、今回はみんなで一つのものを作ってるような感じになっています」
野島樺乃「いつもはレコーディング現場で、ユニゾンのパートでも大体、“好きに歌っていいよ”っていうディレクションを受けていたんです。1人1人の個性を伸ばして、一つにするっていうことをet-アンド-の曲ではやっていたんですけど、今回の「祭歳」に関しては、4人で歌ってるサビに“あまり感情を入れすぎないで”って言われて。さらに、自分の歌い方ではなく、前に歌ったメンバーの歌を聴いたうえで合わせて歌っていて。完成したものを聞いたら。本当に綺麗一つにまとまっていて。まるで1人が歌ってるかのようになっているところが、今までのet-アンド-になかったような感じかな?って思います」
モラレス「そうだよね。それこそサビでみんなで歌うところも、J-POPの夏ソングっていう感じで、今までの「夏海月」や「Eenie, meenie, miney」ではないような楽曲だったので、すごく驚きました」
――これまでの夏曲との違いを挙げるとすると?
モラレス「今までは洋楽っぽい感じで、どちらかっていうとドライブしながら聞きたくなるようなイメージだったかな?って思うんですけど、今回はガッツリ聞いちゃいそうな感じのイメージだなって。夏曲としても、ガラッと変わってるなって思いました」
野島「「Eenie, meenie, miney」、「夏海月」と比べると、「祭歳」も明るいし、夏といえば、お祭りっていう印象が感じられる面白い音もたくさん入っていたりするんですけど、私は、歌詞がこれまでの曲とは違って、結構リアルな心情が描かれてるなって感じていて。夏のキラキラした楽しい感じの影に隠されてる心のモヤモヤだったり、ちょっと儚い感情が綴られてます。“こういう曲を私は待っていた!”っていう感じで、嬉しいです」
栗本「私も「Eenie, meenie, miney」、「夏海月」には明るい印象しかなくて。一つもネガティブな感情は描かれてなかったんですけど、「祭歳」は明るい部分だけでなく、自分の中の暗い感情…例えば、自己犠牲も描かれていて。夏の夜に浸れるような楽曲になってるんじゃないかな?って思います」
山崎「今までの2曲はちょっとかわいらしさもあったり、音源の中でぽよんっていう水音や、海の音が入っていたりして。「祭歳」も鈴の音とか、よく聞いたらかわいい部分もありつつ、歌詞はみんなが言ってるように、深く深く考えさせられる部分もあって。音だけじゃなくて、歌詞も一緒に読むと面白いかな?って思います」
――その歌詞はどう捉えましたか?
栗本「私は、<時間はとても儚いもの>っていうパートを歌っているんですけど、最近、高校を卒業して。高校って、“ザ・青春時代”じゃないですか。でも、祭りだけじゃなく、青春にも二面性があって。青春って本当に一瞬で過ぎ去っていくものだし、楽しいっていうイメージがあるけど、人とぶつかり合った経験とか、部活ですごい苦しい思いをしたり、ちょっと孤独を感じる一瞬もあって。そういうのも青春に含まれているので、声に寂しさを入れることも意識して、“青春は儚いな”っていう気持ちで歌えました」
山崎「ラップで言いたいことをバーっと言って、Bメロで<そんなに簡単じゃないのよ/退屈だなって笑わないで/今を必死に生きてるの>っていう本音をぶつけていて。サビの前に、本当に思ってることをこのBメロで全部言っています。言いたいけど言えない気持ちとか、ちょっともどかしい思いが全部ここに詰まってるかな?って思います。サビに入るまで、樺乃がもうワーッて盛り上げて歌い上げてくれるので、そこが歌詞としても、感情が爆発する部分かなって思います」
モラレス「今の社会の闇の部分を私がラップで言っていると思っています。普段、感じているかもしれないけど、感じていることにも気づかないような言葉が並んでいたので、“どういうふうにラップをしたら人に伝わるのかな?”っていうことをすごく考えながらラップしています。すごく深い歌詞だなって思います」
野島「私も共感できる部分が多いというか…もう共感しかないですね」
――先ほども“リアルな心情が描かれている”とおっしゃってましたね。
野島「冒頭のきあらのラップからそうですね。<なかなか尽きないな悩み/むかつくおでこのニキビ>。すごく順調に人生を毎日ストレスフリーに生きていたら、多分ニキビが1個できたぐらいでむかつくって感情にはならないんです。でも、他にもいろいろと抱えている問題があって、それこそなかなか尽きない悩みがあるから、そんなちっちゃなニキビでも気になっちゃう。それは、すごく繊細な心だと思うんですね。しかも、その後に、<一応夢だってあるし>って言ってる。この<一応>も儚いし、切ないなと思って。もっと自分に自信を持って、<夢だってあるし>って言えばいいところを、ちょっと謙遜して、<一応夢だってあるし>…って言ってる。今の子たちって、ちょっと辛いだけですぐに心が折れちゃったりする子も多いし、本当に同世代の子たちの心情を見透かされてるような歌詞だなって思っています」
――今、他のメンバーもうんうんと頷きながら聞いていますね。
野島「そうなんですよ。だから、踊りたくなるような夏のお祭りサウンドではあるんですけど、歌詞は、現代に生きる人々の社会に対する思いを熱く綴られていて。何回も聞くことで、この曲の深さがわかるし、きっと皆さんの心にグッとくるものがあるんじゃないかなって感じています。しかも、自己肯定感も上がるというか。自分が人に言えなかった思いを見透かされて、ちょっと寄り添ってもらえているみたいな感覚があって。助けを求められる曲でもあるので、個人的にすごくいい曲だなって思います」
――鬱々とした思いをラスサビ前の<踊り明かせ>で開放してくれる感もありますね。
野島「そうですね。ライブではいつもお祭り娘になった気分で踊ったり歌ったりしているんですけど、サビでみんなで一つになって、“ちっちゃな悩みを吹き飛ばして、今を楽しもうよ、今も生きようよ!”って言ってる感じがあって。メンバーみんなでライブでパフォーマンスしていても、自分が歌って自分に返ってくるものがあるというか、元気づけられる曲にもなっています。すっと聞いたら、単純に“お祭りソングだね”って、それでも全然いいんです。でも、ちょっと悩んでる人にとっては、これが応援ソングになったらいいなという思いもあります」
――会話の部分はどうですか?
栗本「楽曲の中で初めて1人二役っていうのをやって。最初は全部繋げてやってみたんですけど、どうしてもラストサビにかぶっちゃうので、結局1人1人を分けて録って。セリフの内容は、意味がわかると怖い話なんです。それこそ自己犠牲がある、何でも“いいよ”って言っちゃう子なんですけど。その子は友達の彼氏と浮気してるっていう…」
――え?そうなんですか!?怖いんですけど…。
野島「あははは。そう、怖いんですよ」
栗本「Aちゃんが“ダブルデートしない?”っていう提案をして。Aちゃんはとにかく明るくて、何でも人に言っちゃう子なんですけど、Bちゃんは正反対で、自分を犠牲にしても、何でも全部、OKOK。“いいよ”って言っちゃう。でも、最後の最後でAちゃんに“私の彼氏も見つけておいて”って言われたBちゃんは、“それはごめん”って言う。それはAちゃんの彼氏と浮気してるからっていう…」
野島「やだ、そんな友達…」
栗本「なかなかそういう人は周りにいないし、浮気してるっていう気分になるのもめちゃめちゃ難しかったです。Aちゃんのめちゃめちゃ明るい役をやってからBちゃんをやったので、ちょっと複雑な感情になりながらも、頑張りました、そこは」
山崎「怖いね」
野島「それも闇だよね。だから、深く掘れば掘るほど、闇がいっぱい入っているんですよ。お祭りは二面性があって、元々は儀式とか、生贄とか、鎮魂とか、少し怖いイメージもあって。でも、光が強ければ影の部分も濃いじゃないですか。それがすごく良いバランスで書かれてる曲だなと思いますね」
――ここまでのお話を聞くと、歌も二面性を表現してるのかなって感じました。無機質に歌うユニゾンと感情的なソロパートに明暗のギャップがあるから。改めて、レコーディンングについてもう少し聞かせてください。
野島「そうかもしれないですね。私、感情をあんまり入れないで歌うことが個人的に難しくて。いつもどれだけ感情を入れられるか?を意識していたので、今回はそこを一旦しまって。“これで合ってるのかな?”というモヤモヤした感情の中でのレコーディングだったんですけど、完成した音源を聞いたら本当にすごく綺麗にまとまっていて。セリフが入っていたり、ラップが入っていたりって、つい口ずさみたくなるメロディもたくさんあるし、1回聞いたら頭から離れないサウンドになっているので、皆さんに口ずさんでもらえる曲になればなって思いました」
モラレス「サビは別々に録音したんですけど、最後のサビの方にバックで入ってる“あらよっと”とかは、みんなでレコーディングブースに入って、初めてみんなで“せーの!”で録ったので、それはいい思い出になりました。私自身で言うと、今までもラップはしてきましたけど、この短い秒数の中にここまで言葉が詰まっていて、しかも、日本語しかないラップはなかったんです。“日本語のラップの方がすごく難しいな”って感じました。ちゃんと言わないと聞き取れないので、そこを悩みながらも、めちゃくちゃ練習して、早口のラップに挑みました」
――カノンさんはどうですか?YouTubeチャンネルでのカヒミ・カリィのカバーもよかったです。もっとウィスパーボイスを聞きたいなって思いました。
山崎「ありがとうございます。ウィスパーもだんだん定着しつつあって。今回の自分のパートも、“息を多めで”っていうディレクションをいただいて。モラのラップから優音の後に来るので、ここで雰囲気をガラッと変えてやろうって思っていて。“ちょっと大人っぽくやってみよう”って挑戦してみました。だんだん自分の歌い方っていうのもわかってきたからこそ、今までよりすんなりと順調に進められたかなと思います」
栗本「私は一番最初の<咲いても/散らないでよ/儚いもの>を最初、すごく感情を込めて、優しく歌っていて。でも、プロデューサーの菊地さんに“あんまり感情を込めすぎないで。無機質な感じで!”ってディレクションしていただいて…それがすごく難しくって。歌いだしが私の声なので、“ここで曲の雰囲気が決まる”ってことも言われたので、一つ一つの言葉を大切にしながら丁寧に歌いました。それ以外のところだと、<時間はとても儚いもの>は、ノンと樺乃と交互に歌うんですけど、自分らしさも出しながらも、元々私、声が高い方で…」
――4人でカバーしたSPEEDでも、甘いハイトーンを響かせてましたね。
栗本「あははは。見ていただいて嬉しいです。全体的な歌詞がちょっと暗めなので、低く低くっていうのは難しかったですけど、意識した部分でもありました」
野島「あと、私はサビ前の<今を必死に生きてるの>は、菊地さんに、“サビで押し殺してる分、ここはパンって言っちゃっていいから。好きに歌っていいよ”ってディレクションしていただいて。情熱的な歌詞でもあったので、本当にと一瞬のワンフレーズですけど、サビに繋げれるように意識しつつ、心の底から“今を生きてるんだ!”っていう必死さを持って、歌ったっていうか、思いを叫べたなと思います」
――この曲を持って、アンドとして3度目の夏が始まりますね。
モラレス「2021年と2022年の夏ははっちゃけることもしてこなかったし、お祭りにも出れていなかったんですが、今年は「et-アンド- glow tour 2023」もありますし、フェスとかイベントとかもたくさん出て。みんなで「祭歳」を盛り上げていけるようなet-アンド-の夏にしたいです。本当にめちゃくちゃ暑い夏にしたいね!」
栗本「うん!5月から土日は全部埋まるぐらいにイベントづくしだったので、この勢いを止めないように、夏もこの「祭歳」と一緒に盛り上げていきたいなって思います。ツアーとともに、「祭歳」のリリースイベントもたくさんやっていくので、et-アンド-のことを全く知らない人たち、家族連れの方とかとかも来てくださるような場所でet-アンド-の良さを広げていけたらなって思います」
山崎「ツアー中にはイベントもたくさんあるので、私達のことを知ってくださる方がたくさん増えたらいいなと思います。「祭歳」はダンスも含めてSNSでも積極的に出していって、どんどん世に知れるように頑張っていきたいです」
野島「デビューして3年目になりますけど、2年間はコロナ禍でいろいろ規制されている夏だったので、今回やっと当たり前だった日常を取り戻した夏を迎えることになるんです。だから、こんなに楽しい夏を迎えるのは逆に今回が初めてなんですよ。ライブの声出しもOKになったし、地方のいろんなところに行けるようになったし、リリイベも会場でできるようになりました。だいぶガラッと変わった活発な夏になってるので、みんなで体調管理には気をつけて、この調子で夏を駆け抜けていきたいなと思います」
――「et-アンド- glow tour 2023」はもう始まってるんですよね。
山崎「はい。香川はモラの実家に行ってきました」
モラレス「メンバーのみんなが香川にいて、商店街を歩いてるのも不思議だし、いつも来てくださるファンの皆さんが香川の聖地を巡ってるのもすごい不思議というか。みんなは香川にいるっていう、嬉しいし、不思議な気持ちでしたね。ライブもアットホームな感じで、みんなも“モラの地元やけん、モラ喋りなよ”って振ってくれたりとかして、MCもちょっと仕切らせてもらったりとか。あとは香川の夜公演だけ、「水星」のカバーをソロで歌ったんですよ。et-アンド-になって初めてソロでステージに立ったので、本当にアットホームだったし、みんながいるのが不思議だったし、すごい楽しい空間でした」
栗本「讃岐うどんも美味しかったです」
野島「天気も良くて最高だったね」
――カノンさんの地元である北海道公演もありますね。
山崎「“凱旋ツアーをずっとやりたいね!”って言っていたので、みんなの地元に行けるのは嬉しいですよね。香川は初めて行ったので、すごい楽しかったんですけど、北海道はちょっと変な緊張感があります(笑)。でも、すごく楽しみですし、その土地土地でしかできないことを私達もいろいろ練っていて…いろいろと新しいこととかできるたらいいなって思ってます」
野島「6月11日の大阪から始まって、8月11日に東京でファイナル。3ヶ月間に渡って続くツアーなんですけど、その間に「祭歳」もリリースされました。まだリリース前だったので大阪と香川で披露したときは、ファンの方々も見ることで必死だったんですよ。でも、名古屋や北海道、東京ではサブスク解禁しているので、より会場が一つになって盛り上がっていけるかなっていう期待もあって。今回、et-アンド-最大規模でやらせてもらっているので、自分たちもその土地でしか会えない方々との出会いを大切にして、1回1回のライブを本当に真剣に受け止めて、しっかりと良いパフォーマンスをしていきたいなって思ってます」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣
LIVE INFORMATIONet-アンド- glow tour 2023
2023年7月16日(日) 愛知 SPADE BOX
昼公演:13:00開場 / 13:30開演(対バン: mzsrz)
夜公演:17:00開場 / 17:30開演
2023年7月29日(土) 北海道 PLANT
昼公演:13:00開場 / 13:30開演(対バン:ambitious)
夜公演:17:00開場 / 17:30開演
2023年8月11日(金) 東京 DIVE
昼公演:13:00開場 / 13:30開演(対バン: IDOLATER)
夜公演:17:00開場 / 17:30開演