──4月に「One」でソロアーティストとしてデビューして以降、様々なステージで歌ってきましたね。
「ストリートライブもそうなんですけど、なでしこリーグのスタジアムでも「One」を歌わせていただいて…ここまで自分の曲を何回も何回も歌うことがこれまであまりなかったんです。とても納得がいく曲を作れました。“「One」を聴いて、背中を押してもらって好きな人に告白できました”というファンの方もいてくれて」
──えー、それはすごいですね!
「自分が歌っていても気持ちがすごく入るので、歌うほどに自分に対してのメッセージも強い楽曲だと思いますし、誰かの背中を少しでも押すことができた曲になったことが嬉しいです」
──その次というのはどう考えていましたか?
「具体的にはリリースを考えていなかったんです。もちろん、“新曲をリリースしたいな”っていう気持ちはあったんですけど、まずは「One」をいろんなところで歌って、野島樺乃をより多くの方に知ってもらう…今年は種をまいていく年だと考えていてたんです。そう思っていた矢先に“夏に新曲をリリースすることが決定したよ”って言われて。だから、最初は驚きました。“えっ!? 新曲をリリースできるんですか? 嬉しいです!”っていうのが率直な心境でした」
──新曲「サマーバイブス」は6月の横須賀での路上ライブでも歌っていましたよね。
「そうです! ライブをやるにあたって、オリジナル曲をリリースが決まってなくても何曲か作っていて。他にも「Stand by you~あるがまま~」や「ADORABLE」、「evidence」といった曲があるんですけど、「サマーバイブス」は未完成で…ライブでは1番までしかない状態で、ショートバージョンとして歌っていたんです」
──そうなんですね。
「だから、今回、「サマーバイブス」をリリースすることになって、2番を作りました。作曲家の大志さんと一緒にスタジオに入って、トラックを流しながらその場で宇宙語を話すような感じで、ニャニャニャ〜とか言いながらメロディーを考えました。探りながら作って、持ち帰って、そこに合うような言葉をメロディーにのせて。また後日に仮レコーディングして…」
──コライトという感じで作ったんですね。
「そうですね。私が普段聴くようなジャンルの楽曲ではなかったですし、アッパーチューンもあまり歌ったことがなかったので、いろいろと教えていただきながら、2番を作りました。“夏のノリ“ではないですけど、少し羽目を外したい。今までやってこなかったジャンルに挑戦してみたい。”やっちゃおうかな? やっちゃえ! リリースするぞ!“って感覚で楽しく制作しました。本当にセッションのような楽曲制作で、気軽にコミュニケーションを取りながら生まれた、遊び心満載の曲です」
──ソロ第2弾がトロピカルハウス調のサマーチューンになるわけですよね。
「そのことに関しては、大志さんやマネージャーさんともじっくりと話し合いをしました。“メッセージ性の強い楽曲、綺麗なバラードに想いを込めて丁寧に歌うシンガーになりたい“という私の軸は変わっていないですし、これから変わることもないです。でも、そういう私らしさを取り払って、羽目を外してみたというか、遊び心のある楽曲にチャレンジしてみたというか…」
──繰り返しになるかもしれないんですけど、どうして今、これまでにやったことのない曲にチャレンジしたいと思ったんでしょうか?
「本当にシンプルな理由なんですけど…夏だから(笑)」
──え…夏だから?
「でも、この“夏だから”っていうのがとても大事なんです。ソロのシンガーとして、幅を広げていきたいですし、引き出しも増やしたいです。そして、いろんな野島を見せたくて。新しいことを始めたり、冒険する時って、何かきっかけや理由が必要じゃないですか。それを全部含めた意味での“夏だから”なんです」
──夏だからこそ、ラップにも挑戦できたってことですよね。
「はい。新たに2番を作る上で、“1番と同じメロディーで、歌詞変えようか?“っていう案もあったんです。でも、バラードではないですし、私がやりたい路線からは外れていて。”外れてるんだったら、思い切って外れて、楽しんだほうがいいよね”っていうことになりました。大志さんと一緒に、“じゃあ、2番はガラッと変えよう。1番からラップじゃなくて、2番からラップに変わるんだっていう遊びの方が面白いんじゃない?”って話をして…」
──実際にラップパートを作ってみてどうでしたか?
「すごく苦戦しました。言葉数はもちろん、アクセントのつけ方やグルーヴ感にも慣れてなくて。だから、すごく練習しました。仮レコーディングをやったんですけど、<泳ぐ前に視線が泳ぐ>っていうパートがずっと言えなくて(笑)。大志さんに“ジェスチャーで手をつけて体で覚えたら?”って言われて…すごく独特な覚え方をして、このワンフレーズだけでも何テイク録ったかな?っていうぐらい仮レコーディングで練習をしました。最終的に、本レコーディングではあまり時間がかからずにできました」
──リリックで気に入ってるところはありますか?
「歌詞は大志さんがまとめてくれたんですけど、私の意見も参考にして、引っ張って書いてくださいました。ラップの一番最後の<夏のせいにしよう>ってところは私が書いていたんです。さっきもお話ししたように、この曲は“夏だから”リリースできたところが大きくて。その感覚を入れたいと思いましたし、大志さんもそれを汲んでくださって、この歌詞になりました。自分の言葉ではうまくまとめられなかった部分や入れたかった雰囲気をうまく歌詞に落とし込んでくださったので、好きな歌詞が多いです」
──野島さんにとっては、夏というのはどんな季節ですか?
「実は春夏秋冬の中で夏が一番嫌いなんですよ。暑いし、太陽が痛いし、電車の中でもみんな、暑くてイライラしてるじゃないですか。だから、あまり得意じゃないですし、一番好きな季節は冬なんです。真逆なんですけど、夏ははっちゃけれるというか、ノリで乗り切れる季節かな?と思っていて。嫌なことがあっても、ちょっと羽目を外して遊びに行って、忘れることができたり…。あと、そんなに気を遣わずに日焼けしちゃうってことは、それだけオープンに自然体でいられるってことじゃないですか。そういうのも全部、それこそバイブスじゃないですけど、ノリで過ごせる季節は、春夏秋冬だと夏しかないと思っています。春は出会いや別れ、卒業、新生活っていう1年の中では分岐点になる季節ですし、秋冬は夜に思いに耽って、いろいろ考えちゃったりする季節…。そういう意味では、1年で一番ストレスを発散できるのが夏なのかな?って思います」

──夏のはっちゃけた思い出とかはありますか?
「小さい頃はすごくアクティブでしたよ! 夏合宿やキャンプに行って、川遊びをしていましたし、オニヤンマをたくさん捕まえたりもしていましたし。それぐらいですけど…」
──あははは。子供の夏休みじゃないですか。
「でも、野外ライブはすごく好きです。歌手活動をしている中での夏はすごく好きです。逆に冬は寒くて、声が出ないってこともあるんですけど、夏は自分のテンションも上がりますし、歌っていてすごく気持ちがいいです。ファンの方々もとても盛り上がってくださいますし、野外フェスや野外ライブの雰囲気はとても好きなので、夏で唯一好きだと言えるのは、アーティスト活動をしているときの夏ですね」
──ステージ上でははっちゃけられるんですね。
「それこそ私、プライベートでは本当に太陽を浴びたくないんです。日陰があれば日陰に入りますし、地下にもぐります。ステージ上は直射日光ですけど、浴びているほど気持ちいいくらいで。だから、プライベートではっちゃけたことはあまりないんですよね…。SKE48の頃にメンバーと海の近くでグランピングやバーベキューをしたことはあるんですけど、それは少しだけおしゃれだったんですよ…“イエーイ!”っていうノリはなくて。<遊ぶ朝からまた朝まで>ってラップをしていても、そんな経験はしたことがなくて。“疲れない?”とか思っちゃいます(笑)」
──あははははは。まあ、歌詞の主人公は<僕>ですし。
「実際、自分とはかけ離れている性格だと思っています。<僕>と言ってますけど、“しちゃいけない”って言われたことをしたくなるようなタイプの女の子をイメージしていて。本当にひと夏だけ、“ちょっと盛り上がって思い出を作ろう”っていう。そのためには、“ルールとか関係なくない?”みたいな。“なんでそんなに固いことを言ってるの?”っていう感じのバイブスで歌っている女の子をイメージしています。歌う時はそういう意識で、ライブでは少しだけバイブス高めで頑張って煽っています」

──“バイブス”って言葉も使い慣れてないですよね(笑)。
「あはははは。慣れてないんですよ。“それな!”とか“マジ?”もあまり言ったことなくて、ギャルピースもしなかったタイプなので。“バイブス”っていう言葉は私から出てこないんです。それも大志さんに伝えていました。“デモの状態でここまで私らしくない楽曲が出来上がっているんだったら、ラップも含めて、もう最後まで、私らしくない言葉のチョイスをしたい“って。だから、”私はこういうイメージで書きたい“とか、<夏のせい>とか、そういうワードは言うんですけど、それを大志さんなりに解釈して、それこそバイブス高めのギャルっぽい感じの歌詞にしていただきました。”みんな、バイブスあげてこう!“なんて本当に言ったことないですから…。でも、私がそういう言葉を使わないと、曲に負けるんです。曲に踊らされるのではなく、曲でみんなを踊らせるために、ライブでは頑張って言ってます(笑)」
──4つ打ちのトロピカルハウスというアッパーチューンを歌ってみたことに関しては、シンガーとしてどんな感想を抱きましたか?
「すごく好きなサウンドでした。デモの段階から好きだったんですけど、その好きなポイントというのは、初心者にもすごい優しいというか、分かりやすく盛り上がれるってことなんですね。初めて聴いても、“このメロディーと同じメロディー来るな“っていうのが分かりやすくて。今、この楽曲をいろんなライブで歌っているんですけど、初めての方もノリやすいですし、それこそ海外の方々も、この曲を歌うと”イエ〜イ!“って盛り上がってくれたりするんですよ。みんなが共通してテンションが一気に上がる楽曲なんだと思って。私も歌っていて楽しい楽曲です」
──リリックビデオも作る予定なんですよね。
「はいSNSに上げていく動画も撮影したんですけど、渋谷のスクランブル交差点とか、浅草とか、東京のいろんなところで撮ったんです。例えば、海外の方が日本に来る前に調べた時に、“この楽曲なんだろう?”って気になるようなきっかけをいっぱい散りばめたくて、SNSの施策を考えて…。それがうまく広まって、少しでもこの夏、一緒に盛り上がっていけたらいいなって思っています」
──今年の夏は全国各地のライブイベントに出演されることが発表されています。
「嬉しいです。でも、本当に体調を崩して声を失いたくないので、常に気をつけようようと思っていて。出演時間もさまざまなんです。日没後の時間帯はまだいいんですけど、日中とか午前中、昼前だともう日差しがガンガン照りつけるんです」
──先日の『横浜七夕祭り in 山下公園』は、11時前のステージと、一番陽が出ている15時のステージがありましたね。
「もう尋常じゃないくらい汗をかいたので、自分のことよりもファンの方が心配になりました。お酒を飲んでるの?っていうくらい顔が赤く日焼けしちゃった方もいたんです。暑い夏ですけど、楽しいイベントが待っているので、私もですけど、応援してくださるみんなも体調には気をつけて参加してほしいです。熱中症になって、ダウンしてしまったら大変ですから…。とにかく暑さ対策をしつつ、今回は関東や東海だけじゃなくて、東北や北海道、四国にも行かせていただきます。“歌いに行きたい”と思っていた土地に歌いに行って、一人一人の方に私のことを少しでも知ってもらえたら嬉しいです」
──どんな夏になりそうですか?
「気温とかじゃなく、活動的に絶対、“熱い夏”になると思っています。夏だからこそ、「サマーバイブス」という曲をリリースして、たくさんライブに出させていただく…ライブでやるからこそすごく映える楽曲だと思いますし、これからライブを重ねていくことで成長していく楽曲でもあると思うんです。いろんな場所に行って、みんなで思い切りタオルを回して盛り上がりながら、この曲と一緒に私自身も成長していきたいです。「サマーバイブス」をより濃く自分に落とし込んでいきたいと思っていますし、その先にはワンマンライブも控えていて…」
──11月29日に『野島樺乃One Man Live~ECHOES vol.01~』の開催が発表されていますね。
「11月ってかなり先なんですけど、今、発表したことにすごく意味があって。SKE48のメンバーとして芸能活動を始めてから今年で10年になりました。そのタイミングで、“ワンマンライブを開催するよ!”ってことをファンの方々と共有することで、みんなの先の予定も立てられますし、一緒にワンマンまで気持ちを高めながら、楽しみに待ってくれるんじゃないかな?と思って。あと、自分的には、早めに公表することで、“絶対に完売させなきゃいけない”という目標もできました。ワンマンライブのソールドアウトを目指したいので、そのためにも、この夏にたくさんのイベントに出演させていただきます。ただそこで終わりにするのではなく、意味があるものするためにもしっかり歌って届けていきたいです。ワンマンライブに向かっていく夏になります!」
──ワンマンライブのタイトル『ECHOES vol.01』にはどんな想いを込めたんですか?
「“こだまのように余韻が残る”っていう意味を込めています。自分の歌声だったり、その日に話したMCでの内容だったり、その時に私が選んだカバー曲だったり…。例えば、街中でふとした瞬間に、“あっ、この曲、樺乃ちゃんが歌っていた曲だ”って気付いてもらったり、日常生活のなかで“樺乃ちゃん、こういうこと言ってたな”って思ったりとか。日々の中で、こだまのように浮かんでくるようなライブにしたいと思っていて。現時点で、『vol.02』が決まっているわけじゃないですけど(笑)、回を重ねていけるように『vol.01』とつけました。この『ECHOES』が回を重ねて、シリーズ化できるように…と思っています!」

(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFROMATION
LIVE INFORMATION

野島樺乃One Man Live~ECHOES vol.01~
2025年11月29日(土) 愛知 NAGOYA SPADE BOX
開場:17:30 / 開演:18:00
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