――『ASKA&DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023』は、かなりスペシャルなニュースで驚きました。このコラボレーションはどのように開催が決まったのでしょうか?

「実は、4~5年くらい前から、”いつか実現できるんじゃないかな?”とは思ってたんです。その後、彼のステージに飛び入りして歌ったりするきっかけもあり、今回のコンサート実現になりましたね」

――ビックネームのお2人だからこそ、どのようにステージを作っていくのかとても興味深いです。

「DAVIDの方から、早いうちから“こうしたらどうだろう?”と連絡をくれていたんです。そこで、彼が完璧主義者であることが分かりましたね。彼は1から10まで設計図を立ててステージに臨む方でしたね。僕は、インスピレーションで取り組んでいるタイプなので、彼の設計図を崩すようなことにならないかが心配なところですが、基礎工事をしっかりしたものであれば、少々なことで壊れることはないでしょうから、僕のインスピレーションを“面白い!”と思ってもらえるのではないかと思っています。これだけ多くのアーティストをプロデュースされてきた方なので、どんな事も場面もエンターティメントにされるのではないでしょうか。作品が物語ってます。器用な方ですからね」

――最初に、“こうしたらどうだろう?”と打診されたアイディアに驚くようなものもありましたか?

「“まさか!”というようなことも来ています()。というのも、僕は日本語の歌詞をとても大切にしてます。でも、DAVIDは当然日本語は理解していないわけですから、大胆な変更をしてきてますね。洋楽って、長くて4分、だいたいが3分半。僕の歌は平均が5分なので楽曲がDAVIDサイズになってます()でも、そこはDAVIDに乗りながら、彼が要求するサイズのなかで僕がどう表現するのかが試されているところなので、いい曲の繋げ方や、次の曲への展開などを調整していきたいと思っています」

――なるほど、たしかにそこは大きな挑戦になりそうですね。

「僕はあまり意識をしていなかったんですが、僕の音楽をずっと聴いてくれている方々から、 “2番のAメロの歌詞が良い”と言われます。そこ、大方カットされています。でも”作品はワールドワードであるべき”という観点からは、今後の僕の重要な課題であると思っています。映画監督のスピルバーグが”(映画を)観る人の集中力は2時間”と言いました。楽曲においては4分なのでしょうね。気がついてはいたんです。過去、僕の作品で大ヒットした楽曲のほとんどが4分台ですから。ヒットを狙うということではなく”4分の法則”に今更ながら目を向けています。共演前を前にして、すでに収穫を得た感覚です」

――そこは制作時からこだわっているポイントなのでしょうか。

「歌詞って、心理描写と情景描写が行き来しているんです。1番はわりと情景描写を込めて、絵を見せるように歌い、もちろん心理描写も入るんですが、2番になると、最初に心理描写がドンと出てくるんです。そこでグッと掴んでいくんですよね。そこがみなさん“いい”と言ってくれているんだと思うんです。ただ”4分の法則”はあるようですから”良い”と感じていただけるモノを失わずに新作に向き合っていこうと思っています」

――ASKAさんがDAVIDさんとのコンサートで楽しみにしているのはどんなことですか?

「僕は楽しみというより、とにかく光栄という気持ちが大きいので、どんな時にも、どんな場面でも、リスペクトが見える時間になると思うんです。僕はフロントマンとして歌わせていただきますが、そこには“DAVID FOSTERがいる”という空気感をすごく感じてもらえると思います」

――ASKAさんが思う、DAVIDさんの魅力はどこにあると思いますか?

「彼はもともとクラシック畑なんですが、そこからアウトローの料理の仕方も覚えて、とにかく万能なんです。でも、音楽のベースがしっかりしているから、ロックなテイストでも品が良いんです。ちゃんと計算されているんですよね。その彼が、僕の音楽を受け入れてくれたことがいちばんの喜びです」

――今回、関東ではぴあアリーナMMでの開催となります。アリーナだからこそ意識していることはありますか?

「まだどうなるかわからないですが、どんな小さな会場でも、大きな会場でも、最後の出口の高揚感は同じなので、出口までの道順を失わないように、しっかりと歌いたいと思っています」

――そして、このコンサートが終わって2週間たたないうちに『ASKA Premium Concert Tour Wonderful World 2023』が始まるんですね。

「そこに関しては、本当に、困っています(笑)」

――あはは!リハーサルも被っているとお伺いしました。

「実は3月からツアーが始まるはずだったんですが、急にDAVID FOSTERとのコンサートが決まったんですよ」

――急だったんですね。

「そうなんです。チャンスって前髪しかないですからね。通り過ぎたら後ろの髪の毛はないんです。今回、お話を頂いた時期が、まさにここしかなかったのでツアー日程を変更しました。“このタイミングを逃したら、もう一緒にやれるチャンスはない”と思ったんです。だから、ツアーをずらしたら、こうなってしまって…(苦笑)」

――こちらのツアーは、どんなものになりそうですか?

「前回のツアー(『ASKA premium concert tour -higher ground』)に参加してくれていたストリングス隊がいないので、今回は全く違うものをやろうと思っています。ないものを補おうとすると、失敗するのは経験上わかっているので、前回とは全く違う、ゴリゴリのロックでいこうと思っています」

――ゴリゴリのロックですか!

「はい。だから、全然違うライブになると思いますよ。やっぱりストリングスが入ると何もかもが美しいんです。でも、いないのであれば、美しさは求めず、来てくれたお客さんを感動でなぎ倒すような気持ちで挑もうと思っています」

――となると、ファンの方はものすごく驚きそうですね。そのパフォーマンスを見せていく体力ってものすごく必要なんじゃないのかな?と思うのですが…。

「僕は30代の時に、“死ぬほど仕事をしよう”と決めていたんです。20代というのは、社会に出て、いろんなことをこなす時だったんですよね。そこで自分を作っていった時間でもあったんですが、30代になると、自分を作りつつ、下に伝えていく年齢になるんです。さらに、身体も動くし、人脈もできるし、“いま仕事をしなかったらいつ仕事をする!?”って時期だと思っていたんですよ。実際に、30代はその公言通りに死ぬほど仕事をしました。これは胸を張って言えますね。その30代があったから、今も長く音楽がやれていると思っています。そして、いま、60代になった時に、“どうするか?”と考えたときに、“もう一度30代の気持ちになってみよう!”って思ってます」

――そうだったんですね。より気合いも入っている状態なんですね。

「はい。すごくやる気に満ちています(笑)。

――そのツアーのタイトルが、『Wonderful World』という、昨年11月25日にリリースされたアルバム『Wonderful world』と同じタイトルではありますが、内容は別ということで、あらためてこのタイトルを付けた理由を教えてください。

「いま、この状況下で、なかなか“Wonderful World(素晴らしい世界)”って言えないですよね。でも、せめて心の中だけでは、“いろんなことはあるけれど、でも最高じゃないか!”というようなライブをしたいと思ったんです。お互いがお互いにこの言葉、“Wonderful World”を言い合えるようなライブにしたいなと思ったんです」

――どんな曲が聴けそうですか?

「実はブログで、“野郎ライブ(男性だけでのライブ)をやろうか?”と書いたことがあるんです。いつか本当にやりたいなと思っていて。その入り口になるようなライブになるんじゃないかなと思っています」

――長期のツアーになりますが、どんなことを楽しみにしていますか?

「今はちょっと、DAVIDとツアーとの頭の住み分けができていなくてドキドキしていて(笑)。その重圧を強く感じていますね」

――リフレッシュするためにはどんなことをしていますか?

「僕はわりと重圧に強いみたいなんです。だから、どんなに大変でも倒れることはしないんですが、さすがに膝をつくくらいのことはあって(笑)。でも、そこから立ち上がるぐらいが、“人生おもしろい”と思うんですよね。もし、膝がついてしまったら、あとは立ち上がるだけなので、むしろそこからを楽しんでもらえたらなと思っています」

――ものすごい強いですね!

「これもすべて30代に頑張ったおかげだと思っています。あの頃はインターネットもなかったし、毎日が時間単位で動いていて、とにかく忙しかったんです。データで送れるようなものもなかったので、レコーディングして、楽曲依頼を頂いて、自分で歌った後に曲を書いて、1時間だけ寝てスタジオに行ったりしていたので、すごかったですね。よく頑張った!(笑)」

――いまはちょっとちゃんと寝たいですね。

「それはそう思います()。やっぱ寝ないとね」

――ASKAさんは本当にコンサートを大事にされていますが、その魅力、魔力はどんなところにあるのでしょうか?

「解放感を味わえるところですね。僕たちは、ある種どこかルールのなかで生活をしていますよね。ルールがないところはないんです。ライブの中でもルールはありますが、精神的なルールはないんですよ。一瞬でもパン!っと破ってあげると、僕もみんなも解放感を味わえるんです。その破ることを任されているので、ライブをやっている最中、盛り上がって、盛り上がってドンッ!となった瞬間。あれが最高なんです。それを目指しながら、楽しみにやることが、ライブの醍醐味だと思っています」

――さて、DAVIDさんとのコラボレーションが叶いますが、そのほかに一緒にやってみたいアーティストの方はいらっしゃいますか?

「この前、澤野(弘之)くんとはご一緒させていただきましたが、若い世代のミュージシャンとのコラボは興味がありますね。あとは時代が変わって、デジタルに移行したあとの楽曲って、本当にいろんなことが違ってきているので、僕の昔の曲を、リメイクして、新たに生まれ変わらせていく作業をしていきたいですね」

(おわり)

取材・文/吉田可奈

LIVE INFORMATION

TRAVEL&Lush Music presents ASKA&DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023

出演
ASKA(ヴォーカル&ギター)/DAVID FOSTER(ピアノ)/宮﨑薫(ヴォーカル)/ASKAバンド&Get The Classics Strings
日程
2023年316日(木) 横浜 ぴあアリーナMM
2023年319日(日) 西宮 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
※西宮公演は全席完売となりました。

TRAVEL&Lush Music presents ASKA&DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023

ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023

出演:ASKAASKAバンド
日程
4月1日(土) 広島 広島文化学園HBGホール
4月2日(日) 兵庫 アクリエひめじ 大ホール
4月15日(土) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
4月22日(土) 大阪 オリックス劇場
4月23日(日) 大阪 オリックス劇場
4月30日(日) 群馬 けんしん郡山文化センター 大ホール
5月7日(日) 千葉 森のホール21(松戸)
5月14日(日) 熊本 熊本城ホール メインホール
5月20日(土) 宮城 トークネットホール仙台 大ホール
7月1日(土) 沖縄 那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
7月9日(日) 奈良 なら100年会館
7月21日(金) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
7月28日(金) 福岡 福岡サンパレスホテル&ホール

ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023

RELEASE INFORMATION

ASKA 『Wonderful world』

2022年1125日(金)発売
DDLB-0021/4,400円(税込)
DADA label

『ASKA premium concert tour -higher ground-アンコール公演2022』Blu-ray+Live CD

2022年105日(水)発売
Blu-ray+Live CD(2枚)/DDLB-002011,000円(税込)
DADA label

ASKA『Wonderful world』インタビュー
僕らが暮らしている今の世の中に必要な言葉は"希望"、"愛"、"勇気"

ASKAが音楽活動43年間&ソロ35周年の集大成となる約3年振りのアルバム『Wonderful world』を11月25日にリリース。”ASKAのありったけ”が凝縮されたASKA渾身の最新アルバムには新曲と共に、「太陽と埃の中で」、「PRIDE」もNEWレコーディングされ収録されている。、"今だからこそ"の心境をASKAに聞いた。
インタビューはこちら >>>
(2022年11月25日記事掲載)

U-NEXT

ASKAのライブ映像とミュージックビデオを配信中!

「billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018-THE PRIDE-」
「ASKA CONCERT TOUR 12>>13 ROCKET」
■「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館」
「自分じゃないか」「幸せの黄色い風船」「僕のwonderful world」
■歌になりたい

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