――2022年は3週間に一度の連続配信リリースという、驚くほどのペースで活動されています。これは一体、どんな思いで取り組まれていたのでしょうか?
ko-dai「来年のメジャーデビュー15周年を控えて、盛り上げるための助走という想いもありましたし、なによりもいろんな作品をリリースしていきたいという想いがあったんです。そこで、14年間僕たちがやってこなかった、たくさんの作詞家さん、作曲家さんと一緒に楽曲を作ることで新たな一面を見せていこうという案から、この連続配信が始まりました」
matty「これまでの僕たちの曲って、サウンドやトラック的に言えば、どちらかというと足し算で作った、豪華で考え抜いたものが多かったんです。でも、「あれからずっと」や「っていうか、ずっとね」は、すごくシンプルで引き算な曲になっているんですよ。これはすごく僕たちにとっては大きな挑戦なんですよね」
――ソナーポケットと言えば、歌詞のメッセージも個性豊かですが、新たな作家さんとやることでの新鮮味もかなり大きかったのではないでしょうか?
matty「そうですね。「Hit the Road」もそうですが、歌詞の世界って、書いている人のキャラクターがかなり浮き彫りになるんです。だからこそ、ko-daiとeyeronが書いて、その2人が歌うと、どうしてもソナーポケットになっちゃうんですよね。それは当然なんですけど(笑)。でも、今回、他の方が書いた歌詞をこの2人が歌うことでも、ソナーポケットになることに気付いたんです。しかも、3週間に1度というハードなスケジュールの中に身を置くことで、レコーディング当日の夜中の2時半にko-daiがやっと歌詞を仕上げた曲があったんです。それってこれまでにはなかったことですし、だからこそ書けた歌詞もあるんですよね。今になって、そういった新たな経験が出来ることは、人生として素晴らしいなと思いました」
ko-dai「いまmattyが言った曲は「エンドール」なんですが、この14年間で150曲近い楽曲をリリースする中で、一番歌詞に悩んだ曲だったんです。というのも、「花火」をリリースしたときくらいから、なるべく直接的な表現をせずに、情景描写のような、景色が浮かぶような楽曲を書いてきたんです。むしろ、直接的な表現を避けていて。これまでだったら直球ど真ん中のストレートな歌詞が多くて、“愛している”とか、“好きなんだ、会いたいんだ”という答えを最初に言っていたんですが、それを一度、強い意思で辞めていたんですよね。でも、この「エンドロール」では、その経験を踏まえて、景色を浮かばせてつつも、サビの最後で<好きなんだ、まだ、好きなんだ。>という答えを出すという、両方を掛け合わせた歌詞にトライしたんです」
――試行錯誤で生まれていたんですね。
ko-dai「はい。もともとはもっと悶々とした気持ちを歌っていて、最後の気持ちをはっきりと書いていなかったんです。でも、それって“ちゃんと聴いた人に届くのかな?”って思って。それなら、しっかりと最後に想いを伝えて終わりの方がいいんじゃないかと、3人で話して、今の歌詞になりました。情景で表現することもすごく大事だけど、最後にちゃんと感情を表に出すことも大事だということをあらためて感じましたね。それに、これまでは振られる前の片想いの曲が多くて、振られたあとの片想いはあまり歌ったことがなかったんですよ。そういう意味では、新たな側面が見せられた気がします」
eyeron「改めて振り返ると、本当にすごい大きな挑戦になりましたね。今になって、自分達で作る楽曲以外に、作家さんたちと一緒に作ったことで、大きな学びを貰ったんです。これまで通り、自分達で全部完結してしまっていたら、もちろん“ソナーポケットらしさ”は評価するべきかもしれないけど、新たな引き出しを出すことは難しいんです。今は変化が速い時代だからこそ、こうやって連続配信をすることで新たなチャンスと向き合い、また大きな一歩を踏み出すことができていることを実感しています。とくに、「あれからずっと」という曲は、自分のキーより少し低い所で歌って表現しているんですよ。その分レコーディングも上手く歌えずに苦戦してしまったんですが、ko-daiやmattyからのアドバイスでいい方向に進むことが出来たので、すごくいい経験になりました」
――15年間活動を重ねて、年齢も重ねることで、新たなことが出来たり、視野が広がる経験ってなかなかないですよね。
ko-dai「そうですよね。僕は今まで、一度作った歌詞を壊すのが苦手だったんですよ。一度完成してしまうと、それを壊して、また違う歌詞を載せる気持ち悪さがあったんです。でも、今回は、メロディと歌詞が一度に出てきた曲であっても、一度歌詞を取っ払って、メロディだけにして、あらたな歌詞を載せる作業を何度もやってみたんです。そうしていくうちに、今はそこに面白さを感じ、むしろやりやすくなったんですよ」
matty「ものの見方を変えることで、視野がグッと広がりますよね。ko-daiもeyeronもすごく器用なので、いつも、新たなスイッチを見つけるとすぐに習得することが出来るんですよ」
eyeron「他人の評価って、自分が思うものと違ったりしますからね。例えば、3週間死ぬほど考えた歌詞と、3分で考えた歌詞、どちらがいいかを聞いたときに、3分の方が「いいね!」って言われることもあるんです。前はそういう考え方が出来なかったんですが、今は客観的に考える力がついて、“そういうこともある”と考えられるようになり、視野が広がったんです。それに、長く音楽をやらせてもらえるなら、ちゃんと自分も変わっていかなくちゃいけないなって思っていて」
――そう思うことで、出会えることもありますよね。
eyeron「そうですね。物事だけでなく、感情にも出会えることがあるんです。くすぶったり、腐っていたら出会えないことってたくさんありますしね。なにより、答えを出す時に、1つしか道を知らなったら当然範囲は狭まるから、いろんなことを知ったうえで答えを探していくのはすごく大事なことだと思うんです」
matty「人生と一緒ですよね。曲との出会いは人との出会いと一緒なんです。遠回りの経験があるからこそ、出会える曲があるんです」
eyeron「ちょっと哲学みたいになってきちゃったね(笑)」
――あはは。でも、Mayu Wakisakaさんの楽曲提供での曲「Hit the Road」も、出会いですよね。
matty「そうですね。Wakisakaさんが、シンプルかつスタイリッシュなものにしあげてくださいました。歌詞も、日本語と英語の比率がいつも以上に英語が多くなっているんですよ。eyeronがレコーディングの時に英語の発音でかなり苦労していました。英語って、グルーヴ感があるから、日本語が静だとしたら、英語は動なんですよね。それが上手く混ざった曲は、ソナーポケットのイメージを一新してくれる曲になったんじゃないかなと思っています」
――確かに。最初に聴いたときに、ものすごい意外感がありました。
matty「「秋雨」もこの曲に近いんですが、よりUSテイストになっているんですよね」
eyeron「僕たちも最初にこの曲を聴いたときに、“ソナーポケットになるのかな?”って不安があったんです。でも、レコーディングをする中で、僕の知らなかったko-daiを見ることもできたし、僕自身も新たな自分を発見できて、すごく価値のある1曲になった気がします」
――eyeronさんが知ったko-daiさんのあらたな部分はどんなところでしたか?
eyeron「やっぱり、“こいつは天才だな”って思いました(笑)。これまでとは違う歌い方を聞いて、いろんなことを感じたんですよ。20年以上、彼の声を聴き続けているからこそ、“ここ得意だったよな”ってことも感じますし、表現としてまだ足りない部分、伸びしろも感じますし。そんな成長していくのを見せてくれると、“こいつはやっぱり只者じゃないな”って思うんです。知らないところに行って、新しいものを知ったら、また武器にして次に生きていく、その姿をあらためて見せてくれたんです」
――すごく素敵ですね。英語でメッセージを伝えるという、これまでにない歌詞に関してはいかがでしたか?
ko-dai「僕は“歌詞は手紙”だと思っているので、普段使わない英語は使っていなかったんです。どちらかというと、避けていたんですよね。でも、今回使ってみることで、日本語だと伝えづらい言葉や、表現などがグッと増えて、“これも新たな形になるな”って思ったんです。しかも、昨年からオンラインで英会話を習い始めたので、ちょうどよかったです(笑)」
――ものすごいタイミングでしたね!
ko-dai「来るべきタイミングでした(笑)」
matty「この英語の発音でも発見があって、僕から見てふたりはすごく好対照なんです。2人とも話せるわけではないんですが、ko-daiは耳がいいんですよ。いわゆるモノマネも上手いから、“歌ってください”と言われたときに、ちゃんとメロディとして耳に入ってくるから、英語でも歌えるんですよね。しかもリズム感がいいから、ちゃんと乗りこなすことが出来るんです。eyeronは違くて、最初は苦戦するんですが、数を重ねていくうちに、どんどんできるようになるんです。それが両極で“おもしろいな”と思いながら見てました」
eyeron「mattyは歌っていないからか、たくさんいろんなこと言ってくるじゃん(笑)」
matty「褒めてるのよ(笑)」
ko-dai「今度、思いきり難しい英語でコーラスしてもらおうかな(笑)」
matty「LとRの発音、練習しておきます(笑)」
――さて、コロナ禍を経て、いまは全国でのファンミーティングを決行されていますが、このコロナ禍での心境の変化はどんなところにありましたか?
eyeron「この時期って、大事なものは何かを見つめ直す時期だったと思うんです。ソナーポケットも、グループの大切さや、応援してくれる人たちがいるからこうやってリリースできていることをあらためて感じましたし、結局自分一人では何もできないなということも再確認したんです。いま、やっとファンミーティングが出来て、近い距離でみなさんの顔を見ながら歌っていると、大きな感謝を感じますし、15周年に向けて、本当に大切な助走期間だったなと思っています」
――書く歌詞も変わってきましたか?
ko-dai「前回のアルバム『80億分の1 ~to you~』には、<マスクをはずした君を独り占めしてる>(「80億分の1」)”とか、時代を連想させる切り取りをしたんですが、最近は“今を切り取り過ぎるのも違うのかな?”って思ってきたんです。僕たちはこれまで、限定的になる歌詞を意識的に入れてきたんですよね。例えば、“LINE”や“既読”って言葉も僕らが一番早く歌詞に使ったと思っているんです。でも、10年が経つと、懐かしさは覚えるようになりますが、普遍的な曲になるのかと言ったら、それは違うような気がしていて。それは大きな心境の変化でしたね」
matty「コロナ禍中に書いた「80億分の1」も、それは近い未来に人数が増えることを想定して作ったら、もう80億に達成したようで(笑)」
ko-dai「そうそう(笑)。でも、そういうのってやりつくしたなって思ったんです。それに、自粛期間は11周年くらいの時だったんですが、10年駆け抜けてきて、初めて休めたんですよ。そこで、やりたくて始めたはずなのに、追われてやっていることも気づいたんです」
matty「でも音楽から離れた瞬間、音楽を作りたくなったよね」
ko-dai「うん。やっぱり音楽が本当に好きだなって気づかされたんです」
eyeron「俺たちがインディーズで始めたばかりの頃って、“好き(音楽)”を追いかけてやってたのに、逆に追いかけられる側になってしまったんです。でも、それを一度休むことによってまた追いかけることが出来るようになったんですよね」
ko-dai「本当にそうだね。すごくいい機会になりました」
――いま、みなさんがすごくいい状態なのが伝わってきます。そんなソナーポケットが15周年となる2023年は、どんなビジョンを描いていますか?
matty「いわゆるチャレンジを積み重ねていって、今よりも大きなソナーポケットを見せられたらなと思っています。今できていないことを1つずつ、着実にこなしていきたいですね」
eyeron「15周年に向けて、ファンとともに成功体験をしていくのって大事だと思うんです。だから、自分たちがやりたいことに対して、目線を高くするのではなく、同じ目線になって、何か一つを達成して、15周年最後の日まで走り抜けていきたいなと思っています。もちろん、それは通過点にしかならないんですが、先が見えないことに不安になる人は多いと思うので、そこに一度ピンを差して、目指していきたいと思っています」
ko-dai「15周年やってきた感謝や経験をつめこんだライブがしたいという気持ちはありますが、なによりも誰もが口ずさめるような名曲を出したいと思っています」
(おわり)
取材・文/吉田可奈
RELEASE INFORMATION
INFORMATION
Sonar Pocket Premium Christmas Party 2022
【日程】 2022年12月25日(日)
【ディナー会場/ショー会場】 グランドプリンスホテル新高輪 大宴会場 飛天
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