――Nagie Lane待望の2ndアルバム『待ってこれめっちゃ良くない?』が10月26日にリリースされました。みなさんにとってメジャーデビュー作のアルバム『Interview』を経て、2枚目のアルバムというのはどのような位置付けでしたか?早くリリースしたい気持ちもありましたか?

baratti「そうですね。1stの時は結構タイトなスケジュールの中で作っていたこともあって、今振り返ると余裕がなかったというか。自分たちのことを表現しきれていたかな?って思いが残っていたところがあったんですよね。そういう意味では、“次のアルバムで自分たちの音楽を改めて提示したいな”と、『Interview』をリリースしてすぐに思った記憶があります」

――アルバム『Interview』にはインディーズ時代の楽曲も入っていましたものね。

mikako「そうなんですよね。インディーズ時代のものと、アルバム用に新しく作ったものとで、どうしてもばらつきが出てしまうというか…。とにかく、そのときにあった楽曲を全部詰めたっていうのがあったので、次はさらにいいものにしたいなって想いはありました」

Nagie Laneアルバム『Interview』インタビュー

新体制となってアカペラ界を牽引するという攻めの姿勢
rei、mayu、mikakoの女声ボーカル3人、ボイスパーカッション担当のbarattiに加え、コーラスのkeiji、ベースのeuroが加入し、6人編成となったNagie Lane。アルバム『Interview』でメジャーデビューを果たしたメンバー全員のそれぞれの想いを届ける。
(2021年9月27日公開)
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Nagie Laneアルバム『Interview』インタビュー

――アルバムの中身についてのお話をうかがう前に、やはり、このインパクトあるタイトルを避けて通ることはできません(笑)。前作『Interview』のときはメンバーで候補を出し合ったとおっしゃっていましたが、今回このタイトルになった経緯は?

mikako「今回も全員で候補を出したんですけど、これを出したのはbarattiでしたね。でも、前回はパッと決まったけど、今回は決まるまでに3回、6人でミーティングを重ねたんですよ」

baratti「制作しながらタイトルもずっと考えていたんですけど、全体をまとめるテーマはそんなに浮かばなかったというか、むしろバラエティに富んだものができたと思っていて。あと、今の時代を考えると、アルバムタイトルで会話することがあまりないなと思ったんですよね」

――確かに。“誰々の新しいアルバム”という言い方になっちゃいます。

baratti「ですよね。だから、いっそのことタイトルは無しのままでいいかなとも思ったりして(笑)。でも、そういうわけにもいかないので、じゃあ、このアルバムを話題にしてもらうときのワードを決めちゃえばいいかと」

――それが、“待ってこれめっちゃ良くない?”だった。

baratti「はい。そんな感じで人に薦めてほしいなと思ったし、自分たちとしても本当にその気持ちで薦めているものなので、メンバーに提案したんですけど、一旦考えるって(笑)」

mikako「持ち帰りました(笑)。でも、結果として、一番いいタイトルでしたね」

baratti「みなさん面白がってくれますしね」

mikako「地方に行くと、“待ってこれめっちゃ良くない?”を方言で言ってくださったりするんですよ。インストアライブのときには、お客さんに“この土地の方言だと何て言うんですか?”って聞いて(会話を)広げられるし、ラジオなどのプロモーションでも、パーソナリティの方がタイトルを言ってくれたら、“そうですよね!”なんて言いながら薦められるし(笑)。すごくハッピーなタイトルだなと思います」

baratti「ファンのみなさんの中でも、タイトルを模して“待って○○じゃない?”って言うのが、ちょっと流行っていて(笑)。なんとなく浸透していってくれている様子が見られるので、うれしいですね」

――ここからはアルバムについていろいろとうかがっていきたいと思うのですが、制作はいつ頃からスタートしたんですか?

baratti「今年4月に配信リリースした「ピャバラバ」は、リリースもですけど、今回のアルバムの中で一番最初に制作した楽曲になります。制作したのは昨年の12月とか、今年に入ってすぐくらいからで。そこから徐々にアルバムに向けての制作を進めていきました」

mikako「この曲が一つの道標になった気がしますね」

――というと?

baratti「さっき1stアルバム『Interview』の話で、自分たちを表現しきれていない気がするって言いましたけど、それはやっぱり、インディーズ時代の僕たちはオリジナル曲よりもカバー曲が多かったっていうのがあって。カバー曲自体は、シティポップなど自分たちの好きな音楽で、そこに“自分たちの色をどう出していくか?”ってところを四苦八苦しながらやっていたんです。でも、それがいざオリジナルを作っていくとなったときに、“自分たちが何を伝えていきたいのか?”っていう大きな芯がないまま進んできてしまったようなところがあって。『Interview』を作っているときも、11曲のテーマだったり、その曲で伝えたいことだったりはハッキリしていたんですけど、全体で見ると芯がないまま作ってしまったなっていうのがあったんですよね。そこを、メジャーデビューして以降、メンバーがそれぞれ自問自答し続けてきた中で「ピャバラバ」ができたときに、すごく自然体で歌えたり、パフォーマンスできたりするなっていう感覚があって。“自分たちの芯はこういうものだ”っていう一つの形が見えたのが、この曲でした。あと、個人的には「ピャバラバ」で、“こういうことを歌っていけばいいのか”っていうのが見えたので、今までほとんどやってこなかった歌詞が浮かぶようになったのもありますね」

――「ピャバラバ」はkeijiさん作詞作曲の楽曲ですが、今作にはbarattiさんが作曲に加えて歌詞を手掛けたもののほか、mikakoさん、mayuさん、reiさんの3人も作詞に参加されていますね。以前、ゴスペラーズの黒沢 薫さんとmikakoさんたち女声3人とでお話をうかがった際、黒沢さんから“自分たちで歌詞を書くといいよ”と言われていましたよね。

mikako「そうでしたね(笑)。今回の「Midnight Door」という楽曲は、女声メンバー3人が、それぞれ自分が歌うバースの部分のリリックを書いたんですけど、私自身は黒沢さんと「Whatcha gonna do」を共作させていただいたことで、自分の想いをどう表現するかってことに向き合えた気がしていて、「Midnight Door」でもその経験を生かしたリリックが書けたと思ってます」

Nagie Lane × 黒沢 薫(ゴスペラーズ)インタビュー

女性メンバー3人をフィーチャーしたDigital EP『アマクテ、ニガイ』を深掘り!
Nagie Laneがゴスペラーズの黒沢 薫プロデュースによるEP『アマクテ、ニガイ』を配信リリース。それぞれの楽曲でフィーチャーされたrei、mayu、mikakoの女声ボーカル3人とプロデューサー=黒沢 薫、4人にタイプの違う3曲の魅力を聞いた。
(2022年2月25日公開)
>> インタビューはこちら!

Nagie Lane × 黒沢 薫(ゴスペラーズ)インタビュー

――メンバーが歌詞を手掛けることによって、作詞家さんの歌詞との違いはどのように感じていますか?

baratti「「Midnight Door」の3人の歌詞に関しては、3人の個性が出ているなと。それと、言い方が難しいんですけど、歌詞を読んだときに、“不満とか言いたいことをちゃんと言ってるな”と思って(笑)。そういうのは他の人の言葉では伝えきれないところだと思うし、たぶんメンタルヘルス的にもすごく良くなったと思う(笑)」

mikako「お父さん目線(笑)」

――思っていることを吐き出している印象になった、と。

baratti「そうですね。もちろん、聴いてくれる人もそういう部分を楽しんでもらえると思いますし」

mikako「それぞれのキャラがわかったほうが、きっと楽しいですよね」

baratti「keijiや僕が詞を書くときも、やっぱり楽曲に出てくる登場人物をメンバーと照らし合わせて書くことが増えてきたと思うんだけど…どうですか?」

mikako「そうだと思う」

baratti「メンバーとかけ離れていない人物像で詞を描けるようになったところも、『Interview』とは違うところかもしれないですね」

――黒沢さんは歌詞を書かれるとき、それぞれにすごいヒアリングをしたとおっしゃっていたのですが、barattiさんも改めて話を聞くこともあるんですか?

baratti「ヒアリングまではしてないですね。でも、例えば「ふらぺちる」の<昼間の最低なこと><忘れさせてよ>なんかは、それっぽいことを言ってたような気がするなとか、甘いものを食べてるメンバーが、そういう感じで食べてたなとか」

mikako「すごい見られてる(笑)」

――普段の会話や様子の中に歌詞のヒントがあるんですね。

baratti「あと、「Wink and Thumbs Up」の感じとかも、メンバーたちを見ていて、何か踏み出そうとしてる、でもちょっと勇気が出ない…みたいなものを感じて、それを応援したいと思って書き出したところがあったり。瞬時に他の人も思い浮かんでるとは思うんですけど、先にメンバーが浮かんで(歌詞を)書いてるっていう感覚はありますね」

mikako「barattiが書いてくれたものは、そこにある言葉が、以前に比べてより近いものになっていますね。前は、いただいた楽曲に対して、作詞してくださった方…作詞家さんやkeijiに“これはどういう気持ちで書いたんですか?”って聞くこともあったんですけど、今回はそういうことはなくて。それこそ「Wink and Thumbs Up」も、barattiから受け取って、すぐにストンと入ったし、“これぞNagie Laneだな”って思いました。私たち6人の等身大の言葉が出ているし、また、それを自分たちの言葉として歌えるうれしさがありましたね」

baratti「僕がさっき言ったようなことって、keijiもよく言っていて。keijiとは制作陣として、よく2人で話すんですけど、“これはメンバーの様子を見て思い付いた曲です”みたいなことを言われて、“確かに!”って(笑)」

mikako「そんな見られてるんだ(笑)」

baratti「だから、すごく近くに曲作りのいい要素があるんです(笑)」

――先ほどmikakoさんが黒沢さんとの共作が大きかったと話されていましたが、barattiさんもゴスペラーズの作品(『アカペラ2』)に参加したりと、グループ以外の活動も盛んに行われています。そういった経験が今回、Nagie Laneの作品に生かされたと思うことはありますか?

baratti「そうですね。なかでも、ボイス・エンタテイメント『アオペラ -aoppella!?-』への楽曲提供は大きかったです。久しぶりに歌詞を書いたんですけど、僕にとって正式に歌詞を任された初めてのお仕事で。身近にkeijiという素晴らしい歌詞を書けるメンバーがいるので、そこから刺激を受けているのはもちろんなんですけど、もう一つ、ちょうどその頃YouTubeでピースの又吉さんのチャンネルを見てたんですよ。又吉さんが、人が書いた小説を添削する企画で」

――面白そうですね。

baratti「そうなんです。もう、びっくりするくらい直されてて、最終的にほとんど違う作品になっていたっていう(笑)。なんていうか、行間の読み方がすごいんですよね。小説を書いた方の前で添削していくんですけど、又吉さんが考察したことに対して、書いた本人が“言われてみるとそうですね”って(笑)。本人以上に行間を読んでいて、とっても面白かったんです。でも、自分もちょっと又吉さんに似ているというか、そこでちょっと表現の仕方の方法論がわかったんですよね。そういうことが重なって、今回のアルバムで書けるようになった感じがあります」

――よりNagie Laneらしさが出た今作で、みなさんが特に思い入れのある楽曲、あるいはリリース日に行われたリスニングパーティでファンからの反響が大きかった楽曲というと?

mikako「反響があったもので言うと「SMDD 〜秘密がドラマをドラマティックにする〜」とか、「Wink and Thumbs Up」あたりかな?」

baratti「確かに、その2曲はよく言われますね。個人的には、それまであまり鼓舞するような歌詞を書いたことがなかったので、「Wink and Thumbs Up」みたいなメッセージが人に伝わるのか不安に思ってたんですけど、伝わっているのがうれしかったです」

――mikakoさんはいかがですか?

mikako「11曲に思い入れがあるんですよね、本当に。『Interview』のときは自分たちも必死になりながらの部分があったんですけど、今回はプリプロを重ねて、それぞれ歌い方にこだわったりして。特に「あやまらない」は、後ろを弦楽器の雰囲気で作ったんですけど、その中でもバイオリンやビオラがどうやって弦を弾くか、どれくらいの速さなのか、それが重いのか軽いかなど、細かいところまで意識しました。さらに、コーラスも4本ずつ重ねて厚みを出していて、そのうちの2本はちょっと(声の)芯が強めで、残りは柔らかめにとか、そういうところにもこだわって。声だけで何をどこまで表現するかについては、「あやまらない」を筆頭に、今回ものすごく考えたと思います」

――本当に隅々までこだわりが詰まっているんですね。まだまだたくさん“こんなにこだわった!”ってところがありそうですが、注目してほしいポイントを教えてください。

mikako「例えば「ふらぺちる」は曲の中で歌い方を変えていて。冒頭の<ふらぺちる〜>は喉を開いて柔らかく、チルな感じの声なんですけど、Aメロに入った途端に喉を閉めて、口の形もしっかり変えた強めの音でシンセの音を表現して。というのを、セクションごとにすべて変えています。特にライブだと変えているのが目で見てわかると思いますし、ライブではそれを踊りながらやっているので、頑張ってます(笑)」

――歌うだけでも大変なのに、踊りながら。

mikako「そうですね。でも、だんだん身体に染み付いてきたので、今はそこまで気にせずにできるようになりました。やっぱり、それぐらい(歌い込みを)重ねなきゃいけなくて、他のバンドに比べてリハの回数が多いのも、そういうことかなって思います」

――“だいたいこんな感じ”ではステージに立てない。

mikako「表現したい音、形があるので、それをちゃんとリアルなものにするためには、みんなで話して擦り合わせていくことが大事で。それに、女声3人は声質も違うから、同じ音をイメージしても、声が通るmayuは柔らかめに、柔らかい声のreiは芯を強めに、私は下が響きやすいから敢えて高めを意識しててみようってやって、初めて合うとか。「ふらぺちる」に限らずですけど、毎回割と変態的なことをやってるなって思いますね(笑)」

――(笑)。

――barattiさんは、何か注目してほしいポイントはありますか?

baratti「全体を通して、実はkeijiのパートにオイシイ部分がたくさんあったりしますね。ハーモニーの一番下を担当していることが多いんですけど、「ハナビート」とか、keijiの声を追っていくと意外と面白いんじゃないかと」

mikako「確かに」

baratti「ほとんどの楽曲は、ライブでもちゃんと6人で再現できるような形にしてあるので、1人の音をずっと追ってもらいながら聴くと面白いんじゃないかなと思います。曲中で役割が変わる瞬間があったりとか。なかでもkeijiは、あっちに合わせたり、こっちに合わせたり、結構四苦八苦しているところがあるんじゃないかなと」

――11月18日から始まるツアー「voices oNLy 2022 A/W」では、今お話ししてくださったところにも注目ですね。どのようなライブになりそうですか?

mikako「今までのワンマンって、全部ホールでやってきていたんですけど、今回はライブハウスなんです。というのも、今年いろんなフェスに出させていただいたりしたことで、ライブハウスのような雰囲気も合うっていうのが、自分たちにとってすごく大きな発見で。アカペラって、どうしても“ゆったり聴く”とか“上品に聴く”みたいなイメージがあって、それを変えていきたいという想いがありながらも、自分たちの中でもそのイメージが強かったんですよね。でも、いろいろなフェスを経験したなかで、みんなで身体を揺らして踊ってもらえるような瞬間が作れることに自信を持つことができて、さらにそれが確信に変わったので、今回のツアーではそこをしっかりと出していきたいと思っています」

――そういうステージから見える景色やフロアの雰囲気が刺激となって、また新たな楽曲を生み出すきっかけになりそうですね。

baratti「まさに今回のアルバムがそういう感じで、ライブを組み立てるなかで、“もっとこういう曲があったらいいな”っていうところが出発点でもあったんですよね。ライブをやればやるほど新しい観点っていうのは増えるし、メンバーのパフォーマンスも進化していくし。僕自身はボイスパーカッションという立場なので、どちらかというと後ろから全体を見るような立ち位置なんですけど、1年前のステージを今見ると“コイツは何をやってるんだ!?”って思うし(笑)」

mikako「わかる(笑)」

baratti「“何もできてないじゃないか!”、って(笑)。ステージでのパフォーマンスの変化は、自分自身もそうですけど、全体を横から見ていても、景色が変わってきてるのを実感するので、ツアーではそういう面を見せられるんじゃないかという気がしています」

(おわり)

取材・文/片貝久美子

Release Information

待ってこれめっちゃ良くない?(Deluxe Edition)

2022年10月26日(水)発売
FLCF-4530/3,000円(税込)
フォーライフミュージック

待ってこれめっちゃ良くない?

Live Information

ワンマンライブ「voices oNLy 2022 A/W」

大阪公演
2022年11月18日(金) 会場 梅田シャングリラ 開場 17:45/開演 18:30
名古屋公演
2022年11月19日(土) 会場 名古屋 ell.FITS ALL 開場 16:45/開演 17:30
東京公演
2022年11月27日(日) 会場 代官山UNIT 開場 17:30/開演 18:30

ワンマンライブ「voices oNLy 2022 A/W」

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