Nagie Lane×黒沢 薫(ゴスペラーズ)インタビュー

――黒沢さんとNagie Laneとのつながりは、いつ頃からになるんですか?

黒沢「ゴスペラーズとの接点というと、Nagie Laneが結成される前からリーダーのbarattiとうちの北山は交流があったみたいで。でも、僕らは全然知らず、僕自身はNagie Laneがメジャーデビューする前にYouTubeに上げた「東京は夜の七時」をカバーした映像を観たのが最初でしたね。そのとき、“これは新しい!ついに日本でもこういうグループが出たか!”って、ちょっと感動して、すぐにSNSでもシェアしたりして」

――どのあたりが新鮮に映ったのでしょう?

黒沢「僕らはアカペラグループではなく“アカペラもするヴォーカルグループ”ですが、それでも気になってアカペラシーンを見てきて感じてたのは、カバーをするときに“原曲をただアカペラで歌ってみました”というようなものが多いなって。もちろんそれも悪くないけど、それは僕らが25年以上前から通ってきた道なので、さすがに新鮮だとは思わないですよね。その後、ボイパを入れたスタイルが主流になったんですけど、それもアレンジメントという意味ではボイパとコーラスが融合していないように思えて、僕の中ではピンときていなかったんです。むしろビートボックスは入れずに、自分たちでちゃんとテンポやグルーヴを感じて歌ったほうが、ノリとしてはいいんじゃないかなって。一方、海の向こうではそういう感覚を持った人が出てきていたんですよ。代表的なのがペンタトニックスで、彼らはカバーでも、アレンジメントも含めてオリジナリティあふれる音楽を演奏をしていたんです。それが本当に素晴らしいなと思っていたところにNagie Laneが登場して、“やっと日本のアカペラグループにもそういうグループが現れたな”ってうれしく思ったんですよね。「東京は夜の七時」という渋谷系を選曲したのも面白いし、コード進行の作り方ももともとはメジャーだったものをマイナーにしたり、ビート感も原曲とは異なったりと、音楽的な思想や主張があったので、“これは応援しなくちゃ!”と思いました」

――こうした黒沢さんの反応はNagie Laneの耳にも入ってましたか?

mayu「もちろんです。もともと私はゴスペラーズさんの出身のアカペラサークルにいたんです。本当に雲の上の存在と思っていた方が反応してくださったということで、驚いたと同時にとても嬉しかったです」

mikako「それと同じくらいの時期に私たちのライブにも来てくださって。歌ってたらテレビで観たことがある方がいらっしゃったのでビックリしました(笑)」

黒沢「“これは生で観なきゃ!”と思って、割とすぐに行ったんですよね」

rei「それが4年くらい前なんですけど、そもそもNagie Laneとしてライブをするのが23回目だったので、その時点で結構緊張していて。そこに黒沢さんがいらっしゃったので、感覚が麻痺したというか(笑)。とにかく“やるべきことをやらなきゃ!”と思ったのは覚えてます」

――今回のEPアマクテ、ニガイ』は黒沢さんのプロデュース作品ですが、昨年リリースされたゴスペラーズのアルバム『アカペラ2』にbarattiさんが参加されています。今回のお話もそこがきっかけだったそうですね。

黒沢「そうですね。『アカペラ2』ではbaratti3曲共作させてもらって。“こんなにいろいろ協力してもらったから今度は僕がNagie Laneに曲を書くよ”って話を、アルバム制作中に話してたんです」

mayu「最初は1曲だけの予定だったんですよね。黒沢さんがreiに向けて……」

黒沢「“向けて”っていうと、やましいみたいじゃん(笑)」

mayu「あ、違うんです。そういう意味じゃないんです(笑)」

黒沢「違いますからね(笑)。いや、その当時はNagie Laneのオリジナルでreiのリード曲が少ない印象があって。rei90年代以降のシティポップの声を持っているなと思っていたので、まずは“reiの声で1曲作るのはどうかな?”って話をbarattiとしてたんです。そしたら、途中で“mikakomayuにも1曲ずつ作ってください”って言われたんですよ(笑)」

mayu「最初はreiが羨ましくて。黒沢さんがプロデュースしてくださるなんて、すごい機会じゃないですか。だから、そのあとにmikakoと私のソロ曲も作ってくださると聞いて、すごく嬉しかったです」

――作詞には黒沢さんのお名前のほか、「Smile Again」にはreiさん、「Whatcha gonna do」にはmikakoさん、「Dream of me」にはmayuさんと、それぞれリードヴォーカルを務める方の名前もクレジットされています。どのようなやりとりで作詞されていったのでしょうか。

黒沢「まだコロナ禍になる前、今回のプロジェクトも何も決まってないときから、ライブやイベントの帰りなどにみんなでご飯を食べに行って、彼女たちといろんな話をしていたんです。それこそ相談事なんかも聞いたりして。“こんなに面白いエピソードをたくさん持っているのに、どうして自分たちで歌詞を書かないのかな?”って思ってたんですよ。それくらい僕の中に彼女たちのストックフレーズがいっぱいあって(笑)。今回の歌詞は、それぞれ“これはあの飲み会で話してたな”とか“これはあの電話のときに話したな”とか(笑)、自分の引き出しに入っていたものから出してまとめた感じなんです。僕が書いてはいるんですけど、内容は僕の中からは出てこないものばかりなので、3人の名前をそれぞれの楽曲に入れたんですよね」

mayu「黒沢さんはアカペラの大先輩であり、人生の大先輩であり、恋愛の大先輩でもあるので、この3つのキーワードは特にたくさん相談させていただいてました」

――黒沢さんの中にある“ストックフレーズ”をもとに書かれた歌詞を、3人はそれぞれどういう想いで受け取りましたか?

rei「私は、その頃に話していたことがそのまま歌になってるなって思いました。具体的なエピソードが入ってるわけではないんですけど、例えば<このままでいたら 私が私を 嫌いに なっちゃうよ>というフレーズとか、当時の記憶がぶわって鮮明に蘇ってくるくらいそのときのことがぎゅっと詰まっていて、すごいなって思いました」

mikako「私も、当時黒沢さんに聞いていただいていた相談に沿った形というか……」

黒沢「そんなに赤裸々じゃないから大丈夫だよ(笑)」

mikako「まさにそうで、ピンポイントじゃないんだけど、世界観がすごくあるなぁと思って」

――mikakoさんの「Whatcha gonna do」は一見強気な女性が描かれているようでいて、よくよく聴くとそうじゃないのも印象的ですよね。

mikako「そうなんですよ。実は最初にいただいたものは1番も2番も強気な感じで、すごく嬉しかったんですけど、そこまで強くなれないというか。黒沢さんにも、“私は強くない人間です”みたいな話をさせていただき、それなら2番の歌詞を変えてみようかってことで今の形になって。それによってより自分自身に近付いたように思います」

黒沢「そうやって言ってくれたことで、mikakoのパーソナルな部分に近付いたのは良かったです。僕自身も最初の歌詞に関しては、シティポップ的な華やかな歌ではあるけど、ためらいのある歌詞という点で弱いなと思っていて。それで、2番の歌詞を、実は1番の強気な言葉は自分に対して言っていることがわかるように変えてみました。そういう意味では、mikakoの言葉に僕も気付きをもらった感じでしたね」

――mayuさんは「Dream of me」の歌詞を見てどう感じましたか?

mayu「私も2人と同じで、黒沢さんとお話ししたことが、すべて歌詞に詰まっているなって思いました。私は結構恋愛体質で、当時もちょうど失恋したばかりだったんですけど……。でも、恋愛に限らずいろんな悩みがある中で、ずっと持ち続けていた夢はやっぱり“歌”だし、Nagie Laneの音楽をたくさんの人に聴いてほしい想いは常にあって。「Dream of me」の歌詞を読んだとき、私が一番大事にしてきた気持ちと改めて向き合わせてくれる楽曲だなと思いました」

――私も聴かせていただき、それぞれのイメージにピッタリだなと思いました。

黒沢「一緒にごはん食べに行った甲斐があったね(笑)」

mikako「黒沢さんには感謝の気持ちでいっぱいです」

mayu「このEPアマクテ、ニガイ』ってタイトルを付けるのも、すごくいいですよね。甘い歌声やメロディで歌いつつも、歌詞は刺すものだったりして。女の子ってそういうところあるじゃないですか。それが3曲それぞれに詰まっていると思います」

――歌詞はもちろん、曲調も三人三様ですが、これも3人のタイプに合わせて選ばれたんですか?

黒沢「そこは結構プロデューサ目線で考えましたね。最初は「Smile Again」だけの予定だったので、Nagie Laneの雰囲気、当時(2020年)リリースされたアルバム『Dramatique』の中に入っても悪目立ちしないものをと思いました。イメージで言うと、90年代に流行ったスウェディッシュ・ポップ。というのもreiの声質が、原田知世さんに通じるんですよね。ちょっとロックっぽくて、でも儚げで。そこを引き出すようなテイストの楽曲を作ろうと思いました」

――ちなみに「Smile Again」を制作されたのはいつ頃なんですか?

黒沢「結構前ですね。一昨年のクリスマスくらいかな」

mikako「ちょうど昨年の2月にあったワンマンライブで初披露したので、それくらいですね」

――リリースまで結構時間が空いてるんですね。

黒沢「でも、完パケしたのは3曲とも一緒なんですよ。途中でNagie Laneのメンバー構成が変わったっていうのもあって、「Smile Again」もレコーディングし直したので」

rei「そのときに歌詞やアレンジも変わったんですね」

黒沢「アレンジメントにメリハリをつけたのと、大サビの歌詞をちょっと変えました。今<優しく そよいだ風 頬を撫でて>となっているところが、前は<明るく染めた髪をなびかせて>だったんです。でも、せっかくだから年齢が40歳、50歳になっても歌えるように。“明るく染めた髪”だと、reiはずっと明るく髪を染めなきゃいけないなと思って」

rei「私、髪をずっとピンクや紫に染めていて。だから、昨年2月のライブで歌ったときは前の歌詞でも自分の歌として歌えたんですけど、ふと“この先もずっと髪の色を明るくするのかな?”と思い始めて……。Instagramのストーリーで、“どっちがいいと思う?”ってアンケートを取ったりしていたんですよ。たぶん、黒沢さんもそれを見てくださって、もしかしたらreiは髪の色を暗くするかもしれないと思ったのかも(笑)」

黒沢「“明るく染めた髪に、そんなに縛り付けていいのか?”と思って(笑)」

rei「プレッシャーだったとかじゃないんですけどね(笑)。でも、歌詞が変わったおかげで、何の不安もなく髪を暗くすることができました(笑)」

――mikakoさんの「Whatcha gonna do」についてはいかがですか?

黒沢「mikakoに関しては前々からソウルフルなものが歌える人だと思っていたので、そこですね。そしたら途中でmikakoがアレサ・フランクリンの人生を描いた映画『リスペクト』を観て、“すごく良かった!”と言っていて、それならと、映画をオマージュしたコーラスを書き足しました」

mikako「黒沢さんからは楽曲が完成する前から、“アレサ・フランクリンを聴いておいて”って言われていて。まだ映画『リスペクト』の存在も知らない時期だったんですけど、ずっと聴いてましたね。そしたら映画が公開されるっていうのですぐ観に行って。観た後は黒沢さんに“観ました!もう準備万端です!”って送りました(笑)」

――mayuさんの「Dream of me」についても教えてください。

黒沢「「Dream of me」は一番最後に作ったので、mayuの声質に合うのはもちろん、他の2曲にはない曲調で考えました。そこで思いついたのがドゥーワップ。アメリカのヒットチャートを見ても、ドージャ・キャットやアリアナ・グランデなどがオールドスクールなものをハイファイな音でやっているものがあったので。「Dream of me」に限らず、曲調はどれも洋楽からヒントを得ましたね。それは60年代70年代のシティポップの作り方と同じだと思います」

mayu「でも私、事前の準備として“ちあきなおみさんの「喝采」を練習しておいて”って言われました。あれってどういうことだったんですか?」

黒沢「そこはまた違うアプローチで、すごく重要な練習だったの。というのも、アリアナ・グランデとか今の人たちって意外とビブラートをかけてないんですよ。で、mayuの声ってすごくビブラートがかかるのが特徴なんですよね。それが繊細でいいというのもあるんですけど、今回作る曲に関してはあまりかけてほしくなかったんです。メロディを平たく歌ったときに日本で一番うまいのはちあきなおみさんだと僕は思っているので、“ちあきなおみさんを参考にしてください”と。だから、歌い方の予習ですね」

mayu「そうだったんですね。でも、それはすごい学んでいました。「喝采」の、例えば<黒いふちどりがありました>の<た>とか、伸ばすところ絶対にビブラートがかからないんです。私だったら、たぶんちょっとかけちゃう。だから、大事なところは敢えて(ビブラートを)かけない歌い方をするんだなっていうのを学んでました。よかった〜」

黒沢「そうそう。たぶん、その気付きがなかったら、歌入れに時間がかかっちゃってたと思う」

mayu「確かに(苦笑)」

黒沢「その唱法への理解度があるかないかで変わってくるはずだから。実は、僕もビブラートがすごいかかっちゃうほうだったんですよね。それを27年かけて、やっと最近自分の中でコントロールできるようになったんですけど。ビブラートはなんとなくかけるんじゃなくて、歌世界に合った感じでかけるのがいい。それに、歌い手としてそういう引き出しを持っておくのが大事だと思ったので、今回の曲の予習と今後のアドバイスということで伝えました」

mayu「「Dream of me」は自分の心をそのまま歌にしたような曲なので、そこで敢えてビブラートをかけないほうが聴いている人に伝わるっていうのを学びました」

――それぞれの魅力が引き出された仕上がりですが、自分以外の方の楽曲についてはどんなふうに感じてますか?

黒沢「モメない程度にね(笑)」

mikako「そんな3人じゃないですよ(笑)」

mayu「mikakoがライブでソウルフルな歌声で歌うことって、これまで小出しにしつつもNagie Laneの楽曲だとあんまりなくて。でも、黒沢さんがそこに気付いてくださって、それが生かされた曲になったなって思いました。レコーディングでも、ずっと“かっこいい!”って言ってたくらい」

mikako「言ってくれてましたね、ずっと。“今の良かったよ!”とか(笑)」

mayu「横で聴いてて興奮しちゃって。私にはない要素だから、同じ歌い手として尊敬します」

mikako「ありがとう(照)」

rei「mikakoの曲、この前keijiが言ってたんですけど、“普段のmikakoとステージにいるmikakoとでは当たり前だけどギャップがあって、普段見せるちょっとナイーブな一面を出しながら歌うのか、出さずに歌いきるのか、どっちだろうね?“って。私もそこは楽しみだなって思います」

mikako「え〜ヤバい、どうしよう」

rei「その日によって変わるのも面白いよね。今日のmikakoは振り切ってるなとか、そういうのが見られそうでワクワクしてます」

mikako「楽しみにしててください(笑)。reiの「Smile Again」は、実は私、reiのリード曲だって知る前に曲を聞かせていただいて。歌うパート決めって、だいたいいつもそれぞれ歌ってみてから決めたりするんですけど、この曲は聴いたときにすぐ、“あ、これはreiだな”って思ったほど。それくらいreiの声が生きる曲だと思ったし、彼女の声でこの曲を聴いてみたいと素直に思いましたね。その後、reiがリードを歌うと聞いたときも、“それはそうだろう”って(笑)。実際、この曲にはreiの柔らかいけど強さもあるみたいな声の魅力が詰まっていると思います」

mayu「reiは話し声が耳元で囁くような優しい声なんですけど、「Smile Again」はそれがそのままメロディになったような曲で。たぶん、一番喋り声に近いんじゃないかな」

mikako「他の曲で無理してるわけではないけど、本当に無理なく、そのまま出てる感じがします」

rei「レコーディングのとき、2人から“今までの曲で一番歌いやすそう”って言われたのを覚えてます」

mayu「そう。やっぱり黒沢さん自身が歌い手なので、一番映えそうな音域を把握されていて、reiにぴったりの音域で作ってくださったんだと思います」

黒沢「mayumikakoのもそうだよ」

mayu「あっ!そうですよね!」

rei「今回の3曲って、どれも歌っていて辛そうだなって思うことがないんです」

――mayuさんの「Dream of me」についてはいかがですか?

mikako「mayuがリードを歌っている曲に「あのね、」っていうNagie Laneで1番のバラードがあるんですけど、私はもともと彼女の声が持つ伸びやかさ、艶やかさはグループの武器だなと思っていたんです。なので、「Dream of me」でmayuがリードを歌うと聞いて、「Smile Again」のreiのときと同じで、“よっしゃ!”と思って密かに興奮してましたね(笑)。レコーディングをする前から、この曲をライブでどう魅せようかなって考えたりもして」

黒沢「これはもう、(身体を横に揺らして)こういう横ノリでしょ」

mikako「そうですよね、やっぱり」

mayu「keijiもね(笑)」

mikako「“keiko”になってもらわなきゃ(笑)」

mayu「本当は、ドレスとか着たいけど……」

黒沢「60年代から70年代初期くらいのイメージ。ポニーテールとかいいんじゃない?」

mayu「毛先をワンカールにしたポニーテールとか、いいですよね」

――ポニーテール、mayuさん似合いそうですね。

rei「でも、これまでmayuがフルリードを歌ってる曲って、「あのね、」を除いては割と夜の街を1人でヒールをカツカツと鳴らしながら歩いていそうな女性……声だけじゃなくて絵面としても艶やかな感じのものを割り当てられることが多くて。ただ、普段のmayuは、(mayuに向かって)これ、いい意味だからね」

mayu「え〜、何だろう?」

rei「お花畑感があるというか(笑)」

mayu「あははは」

rei「今回の曲ではmayuのそういう部分が出ていて、私たちとしてもうれしいなって思いましたし、みなさんにもちゃんとmayuを堪能してもらいたいです(笑)」

mikiko「確かに!」

rei「今回の3曲って、黒沢さんにプロデュースして頂いたからこそできたものだなって言うのを本当に感じます。barattiだったら、たぶんこういった当て方はしないんだろうなって」

mikako「それは本当に思いますね」

――それぞれの持ち味だけでなく、新しい魅力も引き出されているというか。皆さんにとっては宝物のような楽曲ですね。

mikako「本当にそう思います。私たちが思い切ってアップしたTwitterの「東京は夜の七時」から、まさかここまでしていただけるようになるとは……。図々しいかもしれないですけど、黒沢さんはお父さんのような温かい心で私たち一人一人を見てくださっていて。本当に幸せ者だし、今回の経験をちゃんと次に繋げたいなって思ってます」

黒沢「今回のプロデュースを、僕はNagie Laneにとっての踏み台だと思ってるんですよ。これを踏み台にして、次のステップに行ってほしい。Nagie Laneはライブをすごく大切にしているグループだから、そういう点でも僕は仲間だと思ってるんです。だから、これからも応援し続けたいし。あと、リクエストとしては、今度は自分たちで曲を書くんだよっていう」

mikako・mayurei「はい!」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/中村功

LIVE REPORT:Nagie Lane with special guest 黒沢 薫

Nagie Laneが、2月12日、Billboard Live YOKOHAMAにてワンマンライブ『Nagie Lane with special guest 黒沢 薫』を昼夜2回に渡り開催した。Nagie Laneは、昨年9月アルバム『Interview』でメジャーデビューした “楽器を持たないネオシティポップバンド”をコンセプトに活動している、今注目の男女6人の“アカペラバンド”だ。あえて“アカペラバンド”と書いたのは、Nagie Laneのサウンドにその理由がある。reimayumikakokeijiという、それぞれがリードもとれる4人のボーカルスキルと、アカペラというスタイルを生かした美しいハーモニーももちろん武器だが、最大の魅力は、ヴォイスパーカッションのbarattiとベースボーカルのeuroを中心に繰り出される、声のみで再現するバンド然としたサウンドにある。例えば、リードをとっていた1人が次の瞬間にはギターのパート、その次の瞬間にはコーラス、そしてその後に別の楽器のパートを担ったりする。ゆえに、6人全員が、いつも口を動かしていて、アカペラとは思えないほど、賑やかで華やかな「本当に一瞬も休みがない(笑)」(メンバー談)という、サウンドを展開するのが面白い。既存のアカペラという概念では括れない、ネオアカペラが武器なのである。

この日は、前日にリリースされたばかりの黒沢 薫(ゴスペラーズ)プロデュースのEP『アマクテ、ニガイ』収録の3曲の他、Nagie Laneが結成後にSNSを通じて初めて世に送り出したというSNSを中心に初めて話題となった「東京は夜の七時」(カバー)、ミツバチの飛ぶ音を<ミャーミャミャミャー>という独特の言語感覚を用いたコーラスで表現した軽快なアップチューン「花と蜜」の他、スペシャルゲストに黒沢 薫を迎え、ゴスペラーズの「雨あがり」や「ミモザ」など、 アンコールも含めて、全12曲をじつに楽しそうに体現して観せた。

前述したアルバム『Interview』でも最初を飾る「2021」でスタートしたライブ。「東京は夜の七時」では、メンバー同士のアイコンタクト&アドリブで<YOKOHAMAは夜の七時>と歌詞を変えて盛り上げる。『アマクテ、ニガイ』の収録曲を続けて披露した中盤では、3人の女性ボーカルが個性を発揮。reiがメインボーカルの「Smile Again」は、フライトしていくようなサビメロが特徴だが、reiがクリアで安定したトーンを響かせた。mayuがメインの「Dream of me」は、ドゥワップを取り入れた王道のブラックミュージックながら、ディレイしないジャストなリズムで歌い“ナギ―ビート”を印象付けた。mikakoがメインの「Whatcha gonna do」は、ドメスティックなAメロが特徴のファンクナンバー。mikakoはソウルフルな歌回しで迫力あるパフォーマンスを見せた。スペシャルゲスト黒沢 薫を呼び込み、barattiが曲を手掛けたゴスペラーズのアルバム『アカペラ2』収録曲「雨あがり」と「ミモザ」へ。女性ボーカルが入り、オリジナルより軽快でラテンを綺麗なポップスへと昇華していた「雨あがり」の仕上がりを、黒沢 薫はMCで「綺麗な雨粒だった。ゴスペラーズのは大粒な雨って感じだから(笑)」と言い笑わせた。「ミモザ」では、黒沢以外のリードパートをNagie Laneのメンバーが担当。特にkeijiの柔らかで奥行きある歌声は、まさに今のトレンドの声質で、Nagie Laneのポテンシャルを感じた。

アンコールの「花と蜜」では、2番のサビ前のブレイクで6人が膝を曲げバウンドするというエモーショナルなアクションも。再び黒沢 薫を呼び込み、「Billboard Live YOKOHAMAにぴったりな曲。このステージのために準備しました」とマーヴィン・ゲイのカバー「Ain‘t No Mountain High Enough」を披露した。

最後に。この日、最も心に残ったmikakoの言葉を記しておこう。

「Nagie Lane、もっと大きくなります! 皆さんもついてきてください。どうぞよろしくお願いします」

Nagie Laneの道は始まったばかり。これからの方が、きっと、何倍も面白い。そう思わせてくれる、6人の強い意志を感じられたライブだった。

Release InformationNagie Lane『アマクテ、ニガイ』

2022年2月11日(金)配信
フォーライフミュージック

MUSIC INFO

Live InformationNagie Laneワンマンライブ「voices oNLy」

4/2(土) 東京・SHIBUYA STREAM Hall
OPEN / 16:15 START / 17:00
一般発売中

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