――KさんとNeighbors Complainの出会いはいつ頃になるんですか?

K「201812月に行われた“日本橋Style Vol.11 Year-End Party”が、初めましてですね。そのイベントのオープニングアクトがNeighbors Complainだったんですけど、そのときに僕が一目惚れしちゃって。それで翌年、僕が定期的に取材しているイベント“The Kingdom Fes”にゲストで出ていただいて、さらに同じ年の12月に大阪で行われたAAAAct Against AIDS)でもまた共演してっていう感じで、どんどん会う機会が増えていったんですよね」

――“一目惚れ”したというのは具体的にどんなところでしたか?

K「演奏がめちゃくちゃ上手かったのはもちろんなんですけど、一番は、“これまで聴いてきた音楽が結構かぶってるんだろうな”っていうのが大きかったですね。打ち上げで話してても、そういう匂いを感じたので。そのときから、何か一緒にできたらいいなというのはありましたね」

――Neighbors Complainから見たKさんの第一印象はどうでしたか?

Oto「お会いする前は、Kさんというと、バラードを歌っているイメージが強かったんです。でも実際にお会いして、音楽の話から好きなミュージシャンの話題になったときに、Kさんが“マイケル・ジャクソンが好き”と言ってて。僕もマイケル・ジャクソンが大好きなので、“もしかしてKさんもブラックミュージックが好きなんですか?”っていうところから意気投合したんです」

Gotti「そもそも僕らNeighbors Complainは、やりたい音楽が一緒の方向で、ストリートライブから始まったバンドなので。好きな音楽が近いKさんとも、スッと違和感なく入れた気がしますね」

Oto「あと、個人的には機材や歌い方についての話ができたことがうれしくて。ベーシストやギタリストの人たちは、よくみんなでマニアックなトークをしたりしているんですけど、鍵盤同士だとなかなかそういうのがないんですよ。でも、Kさんとは、どういう和音を弾いているのか?とか、どんな声の出し方をしているのか?とか、めちゃくちゃ話が盛り上がったんですよね」

K「ピアノを弾いて歌っている人自体、特に男性アーティストは日本だと少ないんですよね。それに加えて、曲を書いて、アレンジもできる人となると、さらに少なくて。Otoくんと打ち上げで話したときに、そういうところで共感し合えたし、それ以前に、ライブでOtoくんの歌を聴いて、歌もピアノも上手なので、どうやって演奏しているのかを純粋に知りたくて。打ち上げでえらい盛り上がったのを覚えてます(笑)。あと、Gottiとはレコードの話で意気投合して」

Gotti「そうでしたね。僕が一番覚えてるのは、ラファエル・サディーク…」

K「あはは、懐かしい〜!」

Gotti「R&BトリオTony! Toni! Toné!の人なんですけど、90年代のR&Bソウルとかが本当に好きじゃないと、なかなかラファエル・サディークの話ができる人ってそういないんですよ。だから、Kさんとそういう話ができたのがうれしかったし、自分たちと同じ道を進んでる人っていうか。でも、それがすごい大事で、今に繋がっているのはそこかなって」

――KashさんやTakaさんもKさんと話が盛り上がったりしたんですか?

Kash「僕らは特になかったですね(笑)」

K「その日は出演者が多くて、一人ひとりじっくり話せる時間がなかったんだよね。ただ、Otoくんとは、同じピアノとボーカルっていうことで一番話をしていて」

Kash「珍しく盛り上がっていたもんね」

Taka「そうそう。打ち上げが終わった後、Otoが興奮して僕にコードの話をしてくるんですけど、僕はドラムだから全然わからなくて(笑)。それでもずっと話してくるから、“そうなんや。良かったなぁ”って聞き役に徹してました(笑)」

――2019年の初対面での意気投合からいくつかの共演を経て、2022年4月に東京で行われたライブでは2組によるオリジナル曲「Summer Breezin’」を初披露。このときはまだPurple Drip名義ではありませんでしたが、こうしてバンドを結成し、アルバムまでリリースすることにした経緯はどういったものだったんですか?

K「20221月に、FM COCOLOとビルボードライブ大阪が立ち上げたイベント“LIVE RE-ORIGIN-Addicted to STIVIE WONDER”で共演したときの感触が、ものすごく良かったんです。僕とNeighbors Complainとでスティービー・ワンダーの楽曲をカバーしたんですけど、面白い仕上がりになったので、“このまま終わるのはもったいないよね!”って話になって。それで4月に東京公演を行うことにしたんです。東京ではスティービー・ワンダーのカバーのみで構成する日とは別に、自分たちの楽曲だけで構成する公演も追加したんですけど、そこで2グループのオリジナルを1曲できたらいいなという提案は僕からさせてもらいました。当初は“K”と“Neighbors Complain”という考え方で曲作りを進めていたのですが、ある日、オンラインで打ち合わせをしてたときにGottiから“新しいグループ名で出しませんか?”って話があったんだよね?」

Gotti「そうですね。なんていうか、 “K”と“Neighbors Complain”って形でのリリースも素晴らしいことではあると思うんですけど、“へぇ〜、そうなんだ”くらいの感じに思われたくなかったんですよね。もっと、すごいことをやるっていうのを示したかったというか。そんなふうに僕らが思うのも、Kさんだからなんです。自分たちが突き詰めているものと同じ道を歩んでいる人と作り上げるのであれば、思い切って一緒のグループとしてやる形にしたい。それをまずはうちのメンバー内で相談してから、僕が代表してKさんに想いをぶつけました。でも、KさんはきっとOKしてくれると僕は思ってました!(笑)」

K「あははは。それはやっぱり、うれしかったですよ。僕はこれまでK以外の名前でやったことがなかったので。だからこそ、そう言われたときに2つのことが頭に浮かびました。一つは、自分の名前じゃないから、いい意味で責任が軽くなっていろいろなことに挑戦できるなってこと。もう一つは、それとは真逆で、2組が一緒にやることによって生まれる責任感と、そのプレッシャー。矛盾しているようだけど、その2つを同時に感じられるのは、刺激という意味でもすごくいいことだし、面白みを感じましたね」

――そうして誕生したPurple Drip。ユニット名はどのように決めたんですか?

Taka「それはKashが…」

Kash「そう、僕なんですよ」

K「こう見えても(笑)」

Oto「どう見えてるんだ(笑)」

K「僕らもそれぞれ出したんですけど、Kashが出したPurple Dripという案がすごく良くて」

Kash「パープルって、青と赤っていう対照的な色を混ぜてできる色じゃないですか。僕らとKさんはちょっと似てるところがあるけど、もともと別で活動していた2組が合わさることで、何か新しいものが出てくる…。濃いエスプレッソみたいな、抽出されたものがピトッと落ちる。そんなイメージから名付けました」

K「実は、僕らで1曲「Summer Breezin’」を出しましょうってなった段階で、“なんならアルバムも出しませんか?”という提案までされたんですよ。それなら曲を作って、アレンジをして、レコーディングをして…と考えたときに、Otoくんが“もう曲はできてます!一緒にやりたい曲があるんですよ!”と言ってくれて」

――そうだったんですね。“Kさんと一緒にやりたい”という、Otoさんの創作意欲を刺激するKさんの魅力はどういうところだと思いますか?

Oto「そうですね…どういうところなんやろうな…」

K「顔じゃない?(笑)」

Taka「顔がタイプだから(笑)」

Oto「顔、なんですかね…(笑)。でも、一つ思うのは、やっぱりNeighbors Complainとして今までと全然違うものを新曲でリリースするのって、結構勇気がいることだったりするんですよね。今までR&B一色だったのに、いきなりロックテイストのもの…やっても全然いいと思うんですけど、そこに踏み出す勇気が僕自身なくて。でも、Kさんとライブで共演したときに、“こんな感じの曲があるんですけど”って聴いてもらったら、“こうすればいいんじゃない?”ってアドバイスをくださったんです。しかも、めちゃくちゃいいボールが返ってくるんです。それで、もっとKさんと一緒に楽曲を作りたいなって。Kさんと話すことで、すごくいろんなアイデアが湧いてくる。なんか、そこが好きです」

Gotti「顔が?」

Oto「顔も好きです。って、話変わってもうてるやん(笑)」

――(笑)。でも、今回KさんのクレジットにVocal、Keyboard以外にSound Designerと入っているのは、そういった側面もあるからですか?

K「Otoくんが作った曲があって、さらにアイデアも豊富でってなると、そこに僕も飛び込んでしまったらまとまらない感じがしたんですよね。自分の立ち位置を最初にすごく考えたというか。グループですから、僕は一歩引いたところで全体を見るようにしました。例えば、録り終えた演奏を聴いて、この部分とこの部分を入れ替えようとか、ここで弾いてるギターを、こっちのコードも一緒だから引用しようとか。Neighbors Complainとして作る楽曲ではあり得ないことかもしれないけど、今回はPurple Dripとしてやるので、“一歩引いてるから見える景色”っていうのを常に意識してました。それは僕も自分のソロではできないことなので、すごく面白かったですね」

――なるほど。だとすると、デモ音源だったり、実際にレコーディングし終えたものでも、最終的にKさんから上がってくると違う印象に生まれ変わった楽曲というのもあるのでは?

Kash「ありましたね。特に「Urban Jungle」は、もともと録っていたイメージと、Kさんが最終ミックスをして戻ってきたものとで、いい意味でまったく違うものになっていて。僕らだけで演奏してたら、もっとソリッドになったり、生演奏ゆえの荒々しさが出たりするんですけど、Kさんがミックスすることによって、角がいい感じに取れて、聴こえやすいサウンドになってることが衝撃でした」

Oto「僕も「Urban Jungle」は、今Kashが言ったようなことに近い印象を受けました。作ったときは、生の音色でファンキーさを出して、多少コードとかミスしても“それはそれでカッコいい”みたいな、70年代80年代のオールドスクールなサウンド感の楽曲にしよう思ってたんですけど、Kさんに送ったら、そういうのじゃなくて、昔の良さも残しつつも、現代版にブラッシュアップされたアレンジで返ってきたんですよね。僕らの演奏だけでなく、ブラスの音だったり、シンセの音だったりっていうのがいくつも散りばめられていて、ニューオールドスクールなサウンドになったというか。“こういうサウンドになるんだ!”って思いました」

Kash「いっぱい(音が)鳴ってるのがめちゃ新鮮」

Taka「そうだよね。大御所バンドって感じがする(笑)。“ライブどうしよう!?”って、ドキドキもするけど(笑)」

――TakaさんやGottiさんが衝撃を受けた楽曲は?

Gotti「楽曲もそうなんですけど、レコーディングをしているとき、Kさんはとにかくいろんなアイデアをくださるんです。ミュージシャンで、エンジニアもやるっていう人、周りにあまりいないんですよね。エンジニアにも素晴らしい方はたくさんいますけど、そういう方々とはまた全然違っていて。僕はChicのナイル・ロジャースが大好きなんですけど、そういうサウンド作りを瞬時にしてくださるんです。こっちが“もっとこうしてほしい”って言う隙がないくらい。そういうので「Night Chillin’」のアルベジオなんかは、すごくいいのが録れたなって思います。あと、「Thinking About You」のギターの音も、だいぶ素敵な感じにしてくれたので、返ってきたのを聴いてびっくりしました。(“もっとこうしてほしい”と)言う気満々でいたんですけど(笑)、アルバム通して1つもなかったですね。むしろ、“これしかないやろ!”って感じでした」

――Takaさんはいかがですか?

Taka「僕はドラムなので、Neighbors Complainでデモを作るときは打ち込みを構築したりするんですけど、そのときに例えばトライアングルとかパーカッションとか、ドラム以外のエッセンスも担うんですね。でも、Kさんはそういうところも事前に入れておいてくれて。そこも、めちゃくちゃ“そう、そう、そう!”って思うような感じだし、僕にない引き出しがあるので新鮮でした。あとは、(小さな声で)顔ですね」

K「あははは!」

Kash「小さな声で足すな(笑)」

K「でも、今回Takaくんのドラムは、生ドラムの曲もあれば、打ち込みの曲もあって。それも、Takaくんが生で叩いてくれた音を打ち込んでるから良いっていうサウンドも当然あるんですよね。さっきも言った通り、いろんなパーツを組み合わせてパズルのようにビートを作っていくっていうところが結構あって、それが今回楽しかったし、できればここで終わりじゃなく、もっとやってみたいなって気持ちがあります」

――Purple Dripとしてもっとやりたい?

K「どうなるかはわからないですけど。でも、ここで得た知識をまた次の作品で。なかでもビートに特化したものを作ってみたいなっていうのは、ちょっと思いますね」

――歌詞の世界観についてはいかがですか?普段Kさんが歌われているようなテイストとは異なる気がしたのですが、Otoさん的にはそのあたりもKさんの歌声などからインスピレーションを受ける部分が多かったのでしょうか?

Oto「歌詞は特に意識していなくて。でも、自分が女性になって、Kさんにこう歌われたいなとか、こういうことをKさんに言ってほしいなみたいなことをイメージしながら書いた曲もあります」

K「え〜(笑)」

Gotti「じゃあ、やっぱり顔じゃん(笑)」

Kash「ちょっと聴き方が変わりそう(笑)」

――(笑)。逆にKさんからすると、Purple Dripだから歌えたというような側面もあるのでは?

K「それはそうですね。とにかく僕の名義でも、Neighbors Complainの名義でもない曲をやりたいっていうのが最初からあったので。Otoくんから届いた曲もそういうものが多かったですし、そのなかでも「Just Do It」は、デモ音源を聴いたときから、僕には絶対にこういうのは書けないし、“どう仕上がるんだろう?”ってワクワクした楽曲でした」

――さらに歌唱の面では、KさんとOtoさんのボーカルのバランスが絶妙でした。ソロアーティストとバンドが一緒にって、ともするとフィーチャリングのような印象を与えかねないと思うんですけど、そうはなっていないというのが印象的で。

K「そうですね。やっぱり、これだけ演奏が上手くて、何でもできちゃう4人なので、今おっしゃったみたいに“曲を作ったので、ここをこう歌ってください”と言っても4人なら絶対できると思うんですよ。もちろん、それはそれで面白いと思うんですけど、また繰り返しになっちゃいますが、ここではそれぞれのグループじゃなくてPurple Dripだからできる冒険をすることが大事なので。そういう冒険ができる場所として、2ndアルバム、3rdアルバム…と、Purple Dripというバンドをこれからも置いておきたいなって思ったりします。そこでの経験が、またそれぞれの作品に返ってくるというのを信じてやりたいな、と」

――今回の制作を通して、プレイヤーとして新しい発見や可能性を見つけりもしたのでは?

Kash「今回のレコーディングは大阪にいる僕らと東京にいるKさんとで、遠隔で進めるところもあって。僕が自宅で録ったものをKさんに送ると、演奏でちょっと足りないところの細かいアジャストを教えてくれたりもしたので、それを次の作品に…それはPurple Dripとしても、Neighbors Complainとしても、生かしていきたいですね」

Taka「僕の場合は、今回のアルバムで言うと打ち込みが多くて。それも自分の生ドラムから派生しているものなので、制作の過程で得ることも多かったんですけど、個人的には、これをまた生ドラムに返すときにどうするかってところが課題というか、勉強になるような気がしていて。ツアーではそこを観てもらえたらいいなと思いますね」

――打ち込みを生で再現するって、大変ですよね…。

Taka「そうですね。どちらかと言うと、僕は今からが大変(笑)。最悪ライブでは音源を流して、僕は客席から観るほうにシフトしようかなと(笑)」

――でも、2組で一緒にツアーを回れるのも楽しみですね。

Taka「本当に。Purple Dripの話が出る前から、Kさんともそういう話はしてたんですけど、まさかバンドで回るとは思ってもいませんでした(笑)」

Gotti「まさに願ったり叶ったりです」

Oto「アルバムの楽曲たちがライブでどうなるか、僕ら自身もすごく楽しみにしています。会場に来てくださる人が想像する斜め上のものを届けたいですし、Purple Dripがライブバンドであることは間違いないと思うんで、それができる自信もあって。きっといいものが届けられるんじゃないかと思ってます」

――ライブはもちろん今回のアルバムが中心になるかと思うのですが、アルバムだけだとちょっと足りないですよね?

Taka「なので、1曲につき3回ずつやろうかと(笑)」

K「まぁでも、お互いの楽曲のPurple Dripバージョンみたいなこともできますし、今まで一緒に演奏してきた楽曲もあるので、いろいろと織り交ぜながら」

Kash「言ってみればPurple DripKさんとNeighbors Complainと、3組観られるような感じですね(笑)。結果、盛りだくさんのライブになると思います」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

Purple Drip『Possibility』
2023年125日(水)発売
VSCD3229/2,750円(税込)
VIVID SOUND

LIVE INFORMATION

Purple Drip 2023 Tour "Possibility"
日程・会場:
2月11() 福岡 ROOMS
2月12() 広島 VANQUISH
2月17() 大阪 umeda TRAD
2月23(木祝) 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
2月24() 名古屋 THE BOTTOM LINE

Purple Drip 2023 Tour "Possibility"のチケット情報 >>>

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