<PR>
J-POPフリークの音楽アプリ「SMART USEN」



――最新作『Curiosity』はセルフプロデュースによる作品です。

「これまではアルバムを1枚作り終えると、だいたいいつも次に何をやっていいかわからない状態がしばらく続くって感じだったんです。全部出し切っちゃうせいか、曲作りもほとんどやらなくなって、次の作品に取り掛かるまですごく時間がかかるというか。それが、昨年1月にリリースした『Storyteller』のときは、制作の中で“こういうのよかったなとかあの部分はもうちょっとこうできたかもな”と思うところが多くて。それを忘れないうちに形に残したいという思いもあって、わりと早いタイミングから曲作りを再開したんです」

――リリースの予定はあったんですか?

「いいえ、ありませんでした。今回の作品に関しては、アルバムを出すから曲を作るというよりは、曲が集まったからアルバムができたという感じ。いつもとは逆ですが、今回みたいなやり方はすごく僕に合っていた気がしますね」

――タイトルのCuriosityは好奇心という意味ですが、まさに自分の好奇心の赴くままに作った感じ?

「そうですね。追われない環境で作ることによって、より深く掘り下げていけるというか。例えば、スタジオを借りて、この日までに何曲作るってなると、やっぱり僕も人間なので、周りにいるスタッフの顔色をうかがってしまうことがあったり、制作以外のことに意識がいってしまうことで自分がやりたいと思うことが表現しきれない部分が出てくることもあったんです。もちろん、ある程度の制約があることがいい流れを生むこともありましたけど、逆に今回はそれがなかったので、音楽ととことん向き合って、今の自分に出せるものはすべて出し切った感覚があります。『Curiosity』というタイトルも、名付けたのは後からだったのですが、曲が集まったときに振り返ってみて、本当に自分が興味を持ったことだけを掘り下げていったものだったので、その名の通りの作品になったと思います」

――ちなみに、今回の作品に収録されなかった楽曲もあるんですか?

「5、6曲くらいはありますね。実は今回、作り方も普段とは違っていて、僕がトラックを作ったあと、アルバムでギターを弾いてもらっている江部和幸さんにギターを入れてもらって、そこからさらに編集したり、素材を貼ったりというスタイルで作っていったんです。そうやってトラックができたあとに歌詞やメロディをのせて、歌ってみたら違ったって感じでそのまま放置している曲もありますし、そこに至らず、60%から70%くらいの完成度で止まっている曲もいくつかあります。それらは次の作品に入れるかもしれないし、それを元にまた違う形を作るかもしれないし。どうなるかはまだわからないですね(笑)」

――リリース時期も決めず、作り方も今までも違う中で、逆に意識して決めていたことというのはあるのでしょうか?

「リリース時期を決めないと言っても、やっぱり最終的にはアルバムとして出したいという気持ちはどこかにあったので、自分的ルールはいくつか決めておきたいなとは思っていました。なかでも、インプットもアウトプットも自分でやることを意識していたので、好奇心のままにあっちこっち行くことがあったとしても、最終的に自分の中で消化して出せるものであることというのは最初から決めていましたね」





――トラックはKさんが打ち込みで行われたとか?

「そうなんです。そのときにひとつ気を付けたのが、世界観が狭くならないようにすること。打ち込みは何でもできるんですけど、それによって音の響きなども含めて、どんどん狭くなっていってしまうことがよくあるんです。なので、今回はなるべく1人でやるんだけど、1人でやっていない感じを出したいということは決めていました」

――1人でやっていない感じを出すには、具体的にどういうことをするんですか?

「今回実際にやったことで言えば、例えばドラムを生に差し替える。それも、自分で叩いてみたりとか。あと、同じようにギターやベースを生にしている部分もあるんですけど、すべて同じ人に弾いてもらっているほか、録ったデータも、本来はクオンタイズという機能を使ってズレを補正するところを、今回はそれを敢えて使わず、ちょっとしたズレによって人間味が出るほうを優先しました。そうすることで、今までやってきた生音の良さと、打ち込みの良さの両方を活かしたかったんですよね。ただ、そのバランスがとても難しくて……ミックスをしてくださるエンジニアさんと何度も何度も試行錯誤を重ね、1曲1曲細かく調整していきました。時間はかかりましたけど、終わったときの達成感、それから作品に携わってくれた方々への感謝っていうのは今までで一番大きかったかもしれません。みなさんよく我慢して付き合ってくれましたっていう(笑)」

――セルフプロデュースと言うと、自分のやりたいことを詰め込むのがひとつのメリットでもあると思うのですが、そこに“1人で作っていない感じを出したい”という感覚をプラスしたバランスが絶妙ですね。

「デビュー10周年ぐらいのときに感じたことなんですが、もともと僕の音楽のスタートは、街の教会に通って、そこでその教会の歌を歌うってことだったんですね。来る人はもちろん僕の歌を聴きに来ているわけじゃないし、歌う僕らも自分の歌を聴いてほしいわけではなく、教会に来てくれる人たちのために歌う。それが僕の音楽のスタートだったんです。でも、デビューすると、自分をわかってほしい、自分の音楽を聴いてほしい、自分はこういうものを表現したいっていうエゴが出てしまいがちで……それが、10周年を迎えた頃に、自分の音楽の原点というか、みんなの喜ぶ顔が見たい、楽しんでもらいたいという気持ちのほうが大きくなってきて。誰かのためと言ったら綺麗事かもしれないですけど、それがなかったとしたら果たしてプロと言えるのだろうか?という気持ちが自分の中に生まれたんですよね。だから、自分の歌を聴いてくれるリスナーのことを意識するってことはあったかもしれません」

――では、ここからは収録曲についてお聞きしましょう。まず1曲目の「Prelude to curiosity」から続く「Curious」ですが、こちらは松尾 潔さんの作詞です。

「この曲は最初から松尾さんにお願いしたいと思っていました。ご一緒するのはかなり久々なのですが、僕の中の松尾さんの印象は、音楽を奏でる人に対してのリスペクトと愛が誰よりも強い気がするんです。そのリスペクトからくる音楽の情報量というのはものすごく膨大で、引き出しもたくさん持っていらっしゃる方なので、すごく信頼できる方だなと思います。と同時に、僕は松尾さんってとても純粋な方だなって思うんですよ。音楽に対するピュアな部分というのは必ず言葉や作品に現れると思うので、いざというときに頼りたくなるんですよね」

――「Curious」の歌詞もすごくストレートですよね。文字だけで読むと、ちょっと恥ずかしいくらいというか(笑)。

「わかります(笑)。でも、歌にのせたときの世界観というのは素晴らしいなと思いました」





――7曲目の「光るソラ蒼く」は笑福亭鶴瓶さん主演の映画『閉鎖病棟―それぞれの朝―』の主題歌として書き下ろされた曲です。オファーを受けたときの印象はいかがでしたか?

「もちろんとてもうれしかったのですが、原作の小説や台本を読ませていただいたときは、正直どういうものを書いたらいいのかわからないと思いました。すごくセンシティブな話なので、どんな表現をしたらいいだろうかっていうのはすごく迷った部分でしたね」

――制作にあたっては撮影現場にも足を運んだとか?

「そうなんです。歌詞を書くときは現場を見させていただいたほうがいいなと思ったので。あと、平山秀幸監督とお話したかったんです。作品についてどう思っているのかとか、曲のイメージとか、そういうのもキャッチしたいという思いもあって何度か見学させていただきました」

――現場ではどういうことが得られましたか?

「そうですね……これは原作や台本を読んだ感想も含めてですけど、映画は病院の中の話ではありますが、実は普段僕らが生活しているところと何も変わらない感じがして。特に、劇中に出てくる“事情を抱えてない人間なんて誰もいない”という台詞には、本当にその通りだなって。生活している場所が違うだけで、やってること、感じることはみんな一緒だし、人生は人間関係だったり心に受けた傷だったりをどう解決していくかで進んでいくもの。この映画を通してそれを強く感じたので、主題歌を書くときも、ストーリーとか病院だからとかはあまり考えず、自分の身近なことで作っていこうと思いました」

――監督とお話しされたことも大きかったですか?

「すごく大きかったですね。監督は登場人物の立場で曲を書いてほしくないとおっしゃっていて、むしろ映画を見終えた1人のお客さんとして感じたものを表現してほしい、と。その言葉によって、それまでずっと感じていたプレッシャーから解放されたような気がしました。だからこそ、作品からは一歩離れた立場で、この映画をご覧になった方を包み込むというか、寄り添えるような作品にしたいと思いました。そのきっかけは、間違いなく監督の一言だったと思います」

――完成した曲を聴いた監督の感想というのは耳に届いていますか?

「監督はわりと口数が少ない方で、映画が完パケしたあともあまり曲に関しての会話っていうのはなかったんです。でも、完成披露試写会のときに、初めて“主題歌がKでよかった”と言ってくださって。めちゃくちゃうれしかったですね。もっと早く言ってほしかったな(笑)。でも、今まで一緒に作ってきて、最後にポンッと認め印を押してもらった感じがして、とてもうれしかったです」

――「光るソラ蒼く」はミュージックビデオも公開されていますが、そこでピアノの前に座って、ピアノを弾かないKさんがちょっと意外でした(笑)。

「いつ弾くんだろう?って感じですよね(笑)。綾野 剛さんにも“ピアノじゃないんかい!”って言われました(笑)。そういう反応も個人的には面白かったです」

――この曲でピアノをメインにしなかったというのにも理由が?

「やっぱりアルバムの繋がりというのも大切にしたかったので。他の収録曲が結構攻撃的なサウンドであったりする中、優しく包み込むようなこの曲を自然な流れで入れるには、どうしたらいいのかなって。歌詞とメロディはそこまで考えていなかったんですけど、アレンジについてはそのへんを考えましたね。この曲のイントロはもともとピアノ始まりだったのですが、そうすると今回のアルバムのテイストとはあまりにも離れてしまうのと、なんだか急にオシャレになりすぎる感じがして。もっと素朴な感じも入れたいっていうことで、ピアノではなく敢えてギターをメインにしたり、ドラムの音色も土臭い感じにするなど、アルバム全体の世界観に寄せながらアレンジしていきました」





――先ほどの「Curious」もそうですが、収録曲の中にはKさんが詞を手掛けたもの、作詞は別の方に依頼したものがありますが、その線引きというのは?

「松尾さんのように最初からお願いしたい人が決まっている曲もあれば、自分でチャレンジしたけど書けないと思ったら誰かにお願いするっていうケースもあります。無理して自分で書く必要は、僕はないと思っているので。ただ、今回書いてくださっている方に関しては、すごくありがたいことにオーディションをさせていただいたんです。何人かの作家さんに僕の書いたメロディを渡して書いていただくんですけど、そのときに全体の内容であったり、日本語または英語にしてほしいところ、さらにはこのフレーズはア行で終わってほしいなど、全部決めた上でお渡しして。その結果、最終的にこの人!と思った方たちに書いていただいたのが、「It’s a sunny day」や「LOOP」を書いてくれた青木千春さん、「the PURSUIT」や「LIFE」を書いてくれた相馬絵梨子さんなんです。なので、今回の作品作りを通して、いい音楽仲間ができたなっていうのはありますね」

――4曲目の「MUSIC」についても聞かせてください。自身の好奇心を詰め込み、まさに音楽の原点に立ち返ったようなアルバムの中に、“音楽”と名の付く楽曲が収録されていることに意味があるようにも思ったのですが……。

「改めて、今回の作品って、自分にとっての新たな一歩のような気がするんですよ。自分が昔からやりたかったことを、ここで一歩踏み出すっていう。そこには不安や怖さもいっぱいあったんですけど、音楽には正解っていうものがないし、何でも自由にできるのが魅力だと思うんです。そういう意味で、「MUSIC」では面白い遊びをやってます」

――遊びというのは?

「スティーヴィー・ワンダーの曲に「パートタイム・ラヴァー」という曲があるんですけど、その頭に出てくるリフは、スタジオに遊びに来たルーサー・ヴァンドロスの声をスティーヴィーがサンプリングして使ったとか、それこそ山下達郎さんの曲に、たまたまスタジオに居合わせた桑田佳佑さんが参加するとか、実はそうでしたみたいなことってありますよね?コラボレーションとかフィーチャリングと言っちゃうと力んでしまうけど、そんなふうにミュージシャンたちがフレキシブルに音で会話するっていうのは、音楽にしかできないパワーでもあると思うんです。なので、「MUSIC」では後輩ミュージシャンをうちに呼んだり、僕が行ったりして、ちょっと歌ってみてよって(笑)。“「MUSIC」だから、この中で楽しんでもらいたいなあ”と思ったんですよね。本当、一言だけとか、コーラスがちょっと入ってるというレベルなのでクレジットはされていないんですけど、音楽だからこそできる遊びっていうのができたんじゃないかなと思ってます」

――『Curiosity』を作ったことで、Kさんの音楽の幅であったり、表現する場所も変わってきそうな予感もあるのでは?

「そうですね。ただ、今まで評価していただいた部分も保っていきたいとは思っています。その上で、そうじゃないところでの新たな挑戦もしてみたいですし、今まで僕の音楽を聴いたことがないという方たちにも届けることができたら。もっともっと広がるように頑張っていきたいですね」

――来年でデビュー15周年を迎えますが、15周年に向けての意気込みを教えてください。

「15周年だから何か特別なことをやろうとはあまり考えていないんですけど(笑)。ずっと変わらず思っているのは、とにかくライブでみなさんとお会いできたらな、と。ライブの形や編成なども含めて、今以上にたくさんできたらと思っています」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/桜井有里



K

USENのトーク番組「VINTAGE MUSIC」の収録風景。MCのケリー隆介と

K

ケリーが手ずから煎れたコーヒーを飲みながら



■happy birth DAY&NIGHT
11月16日(土) 浅草花劇場(1st/2nd)

■K Premium Live 2019
11月18日(月) ビルボードライブ東京(1st/2nd)
11月21日(木) ビルボードライブ東京(1st/2nd)
12月7日(土) ビルボードライブ大阪(1st/2nd)
12月8日(日) ビルボードライブ大阪(1st/2nd)

■live K 2020~Curiosity~
2020年4月12日(日) ヒューリックホール東京
2020年4月16日(木) なんばHatch(大阪)

■NEW ALBUM『Curiosity』発売記念イベント
11月22日(金) イオンモール鶴見緑地(大阪)
11月24日(日) エアポートウォーク名古屋

■NEW ALBUM『Curiosity』発売記念スペシャルイベント
11月23(土) 阪急西宮ガーデンズ スカイガーデン(大阪)

■NEW ALBUM『Curiosity』発売記念スペシャル招待イベント
11月26日(火) 山野Jam Spot(東京)







K『Curiosity』
2019年10月30日(水)発売
VICL-65256/3,000円(税別)
ビクター
K「光るソラ蒼く」
2019年9月26日(木)配信
ビクター




J-POPフリークの音楽アプリ「SMART USEN」



アプリのダウンロードはこちらから

Get it on Google Play
Get it on Google Play
一覧へ戻る