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――5月26日に配信される「Day ‘N’ Night feat. MADz’s」はMADz'sとのコラボレーション。まず、彼らとコラボレーションすることになった経緯から教えていただけますか?

「去年3ヶ月連続で配信で楽曲を出させていただいたんですね。その3作目を出す前くらいに、次はどうしよう?って考えたとき、コラボをやっても面白いかもって思ったんです。僕は、ずっとひとりでやっていましたし、僕からお願いしたコラボは、もうだいぶ前にやったきりでしたから。それに今もそうなんですけど、最近は自分が今までやっていなかったところをどんどん攻めていきたいというモードになっていて。それもあって僕が全く関わりのなかった世代のミュージシャンとやってみたいということもぼんやり思っていたんですよ。それでSpotifyを聴きまくっているうちに、この曲カッコイイな!と思ったのがMADz's。だから、ダメ元で僕のインスタからDMしてみたんです(笑)」



――えっ!インスタ!?

「そうなんですよ。正直、連絡来ないかもなって思っていたんですけど、なんとすぐに返事が来て。しかも、一緒に曲を作りませんか?という提案に対しても、すごく積極的だったのでうれしかったですね。ただ、彼らは長崎在住で。だから、最初はどうしよう?って思ったんですけど、そこは今の時代ですから。全部ネットでやりとりして完成させることができました」

――Kさんが、彼らとコラボレーションしたいと思った理由は何だったんですか?

「ゴテゴテなHIP HOPに関しては、リスナーとしては聴くものの、僕が自分でやるイメージはないんですよ。でも、彼らの音楽は心地いいR&BとHIP HOPが混ざったような感じ。僕は自分のベースにあるのが80年代後半から90年代のブラックミュージックだったこともあって、そういう音楽シーンに影響されたHIP HOPやR&Bが、すごく好きなんです。MADz'sは若いので当時の音楽を聴いていたかどうかはわからないですけど、そこに影響されたアーティストの音楽を聴いて育ったとは思うんですね。だから、そこが僕に引っかかったんだろうと思います。それに僕の曲はハイトーンが多いんですけど、彼らは、ほとんどハイトーンがなく1曲が終わる。その中で工夫して曲を作っていく感じが面白くて、すごく魅力を感じました」



――ネットを使った楽曲制作の過程をもう少し詳しく教えてください。

「今の子たちの楽曲の作り方って、例えばピアノを弾いて、そこにメロを乗せていくとか、歌詞から先に考えるとかじゃないんですよ。まず1曲丸々トラックを作って、その上に感じたことを乗せていくという方法がほとんど。だから、トラックをどうするか? という話になったとき、僕は彼らがトラックを作って、そこに僕が乗っかるイメージを持っていたんです。彼らの引き出しから曲作りをしたいと僕は思っていましたからね。でも、彼らは逆に僕にトラックを作ってもらえないかと言ってきたので、じゃあ、アイディアをちょうだいって彼らにお願いしたんですよ。そしたら、こんな感じのはどうですか? っていうイメージをいっぱい送ってきてくれたので、それを参考にしつつ、そこに自分の感覚も混ぜて作ったトラックを彼らに送り、そこから曲作りが始まりましたね」

――楽曲の世界観的には、お互いの間で方向性は決めてあったんですか?

「いえ、決めてないです。ただ、先ほども言ったように僕としては彼らの引き出しを使わせてほしいと思っていたんですね。だから、まず彼らに1曲丸々メロと歌詞を作ってもらったんですよ。そして、その中で僕が歌えるところをあとから僕が作ったんですけど、世界観に関しては、彼らが作ってきたときから今の形になっていましたね」

――最初に彼らから送られてきたものを聴いたとき、Kさんは、どう感じましたか?

「僕も今の音楽がすごく好きですし、聴いているほうだと思っていたんですよ。でも、彼らの楽曲を聴いて、俺って古いのかもって思いました(笑)。やっぱり僕の場合、いわゆるサビはキャッチーに作りたくなるんですね。そこをわりと大きくて伸びやかなメロディにしてバーッと広げれば、他をどんなに難しくしてもうまくできるっていう認識がどこかにあったので。それに対して彼らが作ってきた楽曲のサビはメロディもリズムもすごく細かくて、あれ? これってサビって言っていいの? って思うくらいだったんです。もはや彼らはサビとも言わないんですけどね(笑)。しかも低い声なので、最初は何を言っているかもわからなくて、これでいいのかな?って何日か悩みましたから(笑)。ただ、その後、いろいろな人に聴かせてみたら、これが今のHIP HOPやR&Bの作り方だということだったので、なるほど、と。そういう意味でも、僕はとても新鮮でしたし、まさに僕にはない部分だったので面白かったです」

――どうしてもAメロ、Bメロ、サビっていう流れで作りたくなるんですよね(笑)。

「そうなんですよ(笑)。もちろんそれに変化をつけたりする場合もあるんですけど、基本形はそれで曲作りを始める。だから、それを壊す作業から今回は始めた感じですね。そう考えると、最初に彼らに丸投げしたのがよかったのかもしれなくて。もし、僕が先に曲作りをして、彼らにその中に入ってもらうというやり方をしていたら、どうしても僕の楽曲のニュアンスが出ていたと思いますし、それは今回望んでいたことではなかったので」



――MADz'sのような世代は音楽に対する取り組み方が変わってきたと思いますか?

「時代が変わってきたのは感じますね。音楽を誰かに届けるとか、ライブをやって目の前の人に届けることも、もちろんすごく大事なことだと思うんですよ。でも、そういうことを全く考えないアーティストも世の中に増えてきている。そして、そういう人たちが作る音楽は、またちょっと違ったアプローチだったりしますし、それが面白いんです。だから、そういうものをうまく取り入れながら、そこからいろいろな広がりを作っていくのもいいんじゃないかなって思いますね」

――「Day’N’Night」の場合、歌入れはどうしたんですか? 先ほど音源のやりとりは全てネットということでしたが、コロナ禍でレコーディングも当然一緒にはできないですよね。

「MADz’sには彼らの環境で録ってもらったので、それに僕が合わせる感じでした。普通コラボっていうと、例えば僕だったら“K節”みたいに、それぞれの個性を出すことが多いと思うんですけど、今回はひとつのチームみたいな感じで録りたかったんですね。だから、声にかけるエフェクトやオートチューンは何を使っているのか彼らに教えてもらって、僕も同じものを使ったんです。一体感を出すためにそういうことをしましたね」

――ドライビング・ミュージックというか、すごくライトな感覚で聴ける仕上がりになっていますよね。それがとても心地よかったです。

「まさに、それを狙っていました(笑)」

――エフェクトがかかっていることも驚きましたし、そういうものばかりではないにしろ、Kさんの歌って、どちらかというとドラマチックなイメージが強かったんですよ。だから、また新たな一面に触れた気がしました。

「そうですよね。どちらもいいところがあると思うんですけど、僕は聴いて育った音楽が今おっしゃっていたようなドラマチックなものが多かったので、これまではどうしてもそういう方向になりがちだったんです。でも、今回は敢えてそういうものにはしなかった。だから、ファンの人がどういう反応をするのかな?っていうのが楽しみです。それにMADz'sの音楽を聴いてきた人たちに、どういうふうに映るのかも興味深いですね。僕自身は、キャリアとかって正直どうでもいいと思っている人なんですよ。それだけに年齢やキャリアに関係なく、一緒に出来る人がいるなら、これからもどんどんコラボしていきたいと思ってるんです。たぶん“K”っていう名前は知っていても、僕のことをそこまで知らないだろうなって思うMADz'sに声を掛けさせてもらったのも、そういう理由ですから。ただ、それでもいざ一緒に曲を作ったり音を鳴らしたりすれば、ジェネレーション・ギャップはほとんど感じない。そこがアーティストの面白いところだなって思いましたね」



――MADz'sが、なぜKさんとのコラボに積極的だったのかは聞きましたか?

「いや、わからないです。そこは怖くて聞いてないので(笑)。でも、ああいう世代のHIP HOPやっている子って、結構気軽にフィーチャリングをやっているじゃないですか。だから、今回もそういう感覚で、素直に引き受けてくれたんじゃないかなって思います。僕もそういうアプローチの仕方をしましたからね。それにやっぱり音楽はミュージシャン同士で作るものなので、そこのキャッチボールが一番重要なんだなって改めて思ったんですよ。そこがハマれば、変な話、大人の事情は何とかなる(笑)。実際にMADz'sは、僕の 10代の頃と同じように純粋に音楽を楽しむということをしていたので、一緒にやっていて、すごく嬉しい気持ちにもなりました」

――彼らの声が入っているというのもありますけど、曲調的にも声や歌い方的にも、もしかするとパッと聴いただけでは、Kさんだとわからないかもしれないですよね。

「USENの街鳴りやカフェで聴いたとき、たぶんこの曲の声と“K”の声が一致しない方がほとんどだと思います。でも、僕はそれがすごく嬉しいんですよ。僕は、もともとこういうR&Bが好きだったんですけど、それをなかなか披露できる場がなかったという部分もありましたからね。だから、こういう形で発表することで、それがどんどん広がって、いつか誰かに、あれ、もしかして“K”? って気づいていただければいいなと思っています」

――Kさんご自身にとっても、今回のような歌い方は新しかったですか?

「はい。力を入れずに歌うことで、歌詞も変わって来ますし、メロディもすごくライトになりますからね。歌い方次第でいろんなものが変わってくる。そこがとても面白かったです。それにこういう楽曲をやることで、今までやってきた作品が逆に光ったりもする。そういう効果もある気がします」

――今、歌詞のお話が出ましたけど、今回の曲は特にメッセージ性があるわけではないですもんね。それよりも心地よさ重視というか。

「そうですね。本当に身体を動かしてほしいっていうだけがテーマ。もともとR&Bのスタートってそこで、それを忠実にやっているだけなので、深く考えずに、まずリズムに身をゆだねて揺れてほしいなって思いますね」

――こういうコラボレーションを試みたのは、さらに様々なことにチャレンジして、自分の幅を広げたいと考えているからですか?

「2019年に15周年を迎えたことが、ひとつのきっかけだったんですけど、僕は韓国でデビューして、その後、すぐに日本で活動するようになったんですね。そして、ありがたいことにドラマの主題歌をやらせていただいたりして、いろんな人に聴いていただけるチャンスをたくさんいただいたんです。だから、アーティストとして、すごくいい人生を送っていたと思うんですよ。でも、15周年を迎えて振り返ったとき、最初に自分が憧れて、音楽を始めようと思ったジャンルをもう一度やってみたいという思いが沸き上がってきて。それで2019年からは、わりと歌詞もリズムのひとつとして考えるようになりましたし、映画『閉鎖病棟-それぞれの朝-』の主題歌「光るソラ蒼く」以外では、バラードは1曲も出していないんですよ。それははたから見たらチャレンジに感じるかもしれないんですけど、やっている本人からすると、前からの延長線上にあることなんです」

――むしろ原点回帰なんですね。

「そうなんですよ。逆に戻ってきている。でも、そのことにとてもワクワクしていますし、楽しいですね。僕、自分のスタジオを持っているんですけど、そこに座っている時間は、以前より今のほうが圧倒的に長い。それくらい楽しんでやっています。そもそも、なぜ音楽をやりたかったのか?って自分に問いかけてみたとき、やっぱりやっている本人が一番楽しんでいるからだなって思ったんですよ。これが曲を書かなきゃ!ってなってしまうと、楽しさの質が違ってくる。もちろん、今後もそういうことはたくさんあるとは思いますけど、音楽を作る原点の部分では、とにかく楽しみたいと思ったんです。そして、そうするためには自分が惚れていた音楽のジャンルに戻って楽曲作りをするべきじゃないか。そう思ったという感じですね」



――今回の楽曲が新たなプロジェクトの第一弾ということですが、そのプロジェクトの中で今後も様々なコラボレーションをやっていこうとお考えですか?

「やっていきたいですね。実際に連絡を取り合っている方もいたりするんですけど、それが実現するかどうかも含めて柔軟にやっていけたらと思っています」

――連絡を取り合っている方も若いアーティストですか?

「今はそうですね。でも、別に若い方に限っているわけじゃなく、国を飛び越えたようなこともやってみたいと思っています。僕は韓国人なんですけど、日本に来てから一度もハングルで曲を出していないんですよ。だから、ハングルで歌ってみたい気持ちもあるので、例えば韓国のアーティストとのコラボレーションというのもいいんじゃないかと思いますしね。今の時代、壁みたいなものはなくなっていると思うので、あまりこれだと決めるのではなく、フレキシブルにいろんなものにチャレンジしていきたいと思っています」

――ちなみに、先ほど「自分のスタジオに座っている時間が長くなった」とおっしゃっていましたが、それは音楽を楽しんでいると同時にコロナ禍の影響もあってのことですか?

「去年出した3曲に関しては、まさにコロナ禍の影響が大きかったです。スタジオに集まれなくなってしまったので、だったら、もう家で全部やっちゃおう! って(笑)。それに僕はスタジオを取って、そこにエンジニアさんに来ていただき、昼から夜までずっとレコーディングをすることをちょっとプレッシャーに感じてしまうところがもともとあったんですよ。何時までに作業を終えないと、と考えることで自由にチャレンジできなくなってしまうこともありましたから。それでコーラスは家で録るという感じで家で出来ることをどんどん増やしていった結果、2019年は60パーセントが家、40パーセントがスタジオという形だったんですけど、去年は家が80パーセント、スタジオが20パーセントという具合になり、今回の「Day’N’Night」に至っては、家が100パーセント。そのほうがノンストレスで自由に出来るので、僕にはすごく心地よかったんです。だから、これからも家でやることが増えると思いますね」

――セルフプロデュースですしね。

「そうなんですよ。ただ、これはスタジオでやったほうがいいという楽曲も、今後は当然出て来ると思います。今は全部打ち込みでやっていますけど、この曲は生で録りたいねってなったら、スタジオじゃないと無理ですから。でも、きっとそうなったらそうなったで、スタジオが楽しいと思いますよ。みんなでワイワイしながらも感じるあの緊張感。あれは、一度経験すると病みつきになるので、いずれそういう時期も来ると思います」

――早くコロナが終息して、スタジオ作業はもちろん、ライブも以前のように出来るようになるといいですよね。

「本当にそう思います。この間、感染対策をしたうえで東京、名古屋、大阪の3ヶ所でライブをやらせてもらったんですけど、やっぱり楽しかったですから。僕らの場合、アウトプットがライブじゃないですか。アウトプットがあるから、そこに向かって曲作りをしますし、その出口で見た光景を次は形にしていく。そういう場所でもあるので、ライブがないと曲作りも難しいんですよ。もちろん今は配信も出来ますし、それもいいことだとは思うんですけど、有観客でライブをやって、目の前にお客さんがいてくださるのはいいなって改めて思いました」

――ファンの方にとっても、ライブという空間はとても大切な場所だと思います。

「そうですよね。だから、早く自由にライブが出来るようになるといいと思います。でも、今の状況では、ライブに行きたくても行けないという人ももちろんいらっしゃると思うんですよ。そういう気持ちも僕は尊重したい。それだけに、せめて音だけでも楽しんでいただけるように、どんどん楽曲を作って配信していけたらなと思っていますね」

――Kさんは常に様々な音楽を聴いていると思いますが、その中でも最近気になっているアーティストはいますか?

「海外アーティストだったらデュア・リパですね。デュア・リパのプロデューサーが好きなこともあって、めちゃくちゃ聴いています。日本のアーティストだったらSIRUPくんとか」

――その方たちの楽曲の何がKさんに刺さっているんですか?

「リズムの作り方だったりメロディの作り方だったり……それに、やっぱり楽しんで音楽を作っている感じがするんですよ。いい意味で苦しさが伝わってこなくて、ずっとFUNが伝わってくる。それは作り手が楽しんでいるからだろうなって思うんです。もちろんストイックにやってはいるんでしょうけど、そのストイックさが伝わるのではなくFUNが伝わる。それって大事だなって思いました。リスナーもそれを求めて聴いているでしょうしね」



――特にこういう時代なので、音楽を楽しむことはとても重要だと思います。

「そうですよね。楽しむことがどれだけいいものなのかって、改めて感じます。楽しむことって、自分の生活をよくするための、ひとつのリセットになりますから。僕は発信側なので、今まではあまりそういうことは思っていなかったんですよ。でも、久々にアーティストのライブに誘われて見に行ったりすると、ああ、これか!って感じがしたんです。ジャンル云々じゃなく、すごく胸に刺さるものがあったり、明日頑張ろうって思ったりもしましたし、今まで出てこなかったアイディアがバーッと湧いて来たりもしましたからね。それは映画も同じ。この間、久々に映画館で見たら、やっぱりワクワクしたんですよ。僕はネットフィリックス信者なので見まくっているんですけど(笑)、映画館で見るのはまた違う。チケットとポップコーンを買って、まだかなまだかな?って映画が始まるのを待つあの感じがエンターテインメントのいいところだと思いますからね」

――その感じ、わかります(笑)。Kさんのライブもそうですし、次の新作も待ち遠しいです。

「ありがとうございます。今回のようなコラボ作品もどんどん作っていきたいと思っているんですけど、それとは別に自分の作品も今作っているんですよ。こうやってコラボをすると、自分が作る作品も変わってくる。だから、そっちの作品もストックしていきたいと思っています。今は状況が状況なので、今後のことが見えない部分も大きいじゃないですか。だからこそ、とにかく自分が今出来ることをやっていきたいと思っていますし、そこから今回のコラボのように何かが生まれていくことを楽しみたいと思っていますね」

(おわり)

取材・文/高橋栄理子
写真/野崎慧嗣







■GACKT LAST SONGS feat.K
6月29日(火)オリックス劇場(大阪)
6月30日(水)名古屋センチュリーホール
7月3日(土)よこすか芸術劇場
7月4日(日)よこすか芸術劇場
7月6日(火)福岡サンパレスホテル&ホール
7月7日(水)福岡サンパレスホテル&ホール







K
K「Day ‘N’ Night feat. MADz’s」
2021年5月26日(水)配信
ビクター




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