手越祐也×音楽 スペシャルインタビュー手越祐也『絆 -KIZUNA-』インタビュー――垣根を越えたアーティスト達との"絆 -KIZUNA-"から生まれたミニアルバム

手越祐也『絆 -KIZUNA-』 - INTERVIEW

――ミニアルバム『絆 -KIZUNA-』は、手越くんと接点のあるアーティストの方々とコラボレーションした1枚。錚々たる方たちが楽曲提供してくださった、まさに絆を感じる作品ですね。

「せっかくの『スぺプラ手越〜Music Connect〜』を通じての出会いでしたし、一昨年の『スペプラ手越FES.2022』でも去年やった『2ペプラ手越-TWO MAN ZEPP TOUR-』でも今回楽曲提供してくださったBLUE ENCOUNTやNovelbrightとはステージを共にさせていただいたんですよ。そういう流れもあったので、今、自分がどういう曲を歌いたいかな？って考えたとき、やっぱり一緒に音楽をしてきた仲間で、かつ実際に俺のアーティストとしての表現もそばで見てくれた人たちに書いてもらいたいなって思ったんです。それでお願いしたら、みなさん快くOKしてくださったので、とても嬉しかったですね」

――前回の取材でお話を伺ったマイキさんの「アダルトブルー」をはじめ、全6曲は全て色が違います。手越くん的に、この方にはこういうテイストの楽曲を、みたいなことは事前にリクエストしたんですか？

「“こんな雰囲気の曲を書いてほしい”っていう大枠は、それぞれの方にお願いしました。じゃないと、全員からすげえロックが来ちゃったり、全員からラブバラードが来ちゃう可能性もあったので（笑）。例えばBLUE ENCOUNTの田邊（駿一）くんが書いてくれた「everlasting」は、“ザ・ブルエン！”っていう感じのメロディで、ロックバラードでもいいし、ロックミディアムでもいいっていう感じでリクエストをさせてもらった曲なんです。歌詞に関しては何も言わなかったんですけど、やっぱり田邊くん節がいっぱい入っています。彼は“あなた”っていう言葉が大好きですし、“～だよ”とか“～でした”もよく使いますからね」

――語尾に特徴がありますよね。

「そうそう。だから、歌うときもちょっと田邊くんっぽい語尾の抜き方やビブラートのかけ方をしたところもあります。田邊エッセンスのボーカルも入れたいと思ったので」

――「everlasting」は、手越くんを応援してくれている方たちとの絆はもちろん、手越くんの生き方も表現した曲になっていますよね。手越くん自身も歌詞を見たとき、自分をわかってくれているなって感じましたか？

「もちろん感じました。それに今回に限らず、俺は普段から作詞作曲してくれた人に、“どういう思いで曲を書いたの？”って必ず訊くんですよ。それでメッセージをもらうんです。そうすると、“ああ、そういう思いで書いてくれたのなら、この物語の主人公に、その思いも宿して歌おう”って思えますからね」

――なるほど。それは素敵な試みですね。そこで田邊さんがおっしゃっていたのが、手越くんとファンの方のことだったんですね。

「そうですね。“HONEYYY（ファン）だけじゃなく、周りの全ての人とお互いに支え合いながら、前に向かって進んでいくっていう表現になっている“っていうメッセージをもらいました。俺が共演した人に必ず言われるのは“手越さんのファンって、すごいよね”っていうことなんですよ。それは『スぺプラ手越』だけじゃなく、サッカー番組で共演した人やバラエティで共演した人も含めて。特に田邊くんはステージでも共演しているので、たぶん田邊くんにも俺のファンからメッセージが届いたんだと思うんです。ステージで共演した人には“こんなにあったかいファンは見たことないです！”って絶対言われますから。それで田邊くんも、こんな素晴らしい関係なら、それを歌詞に表現したいって考えてくれたんだと思います」

――私自身もこのミニアルバムを聴いたとき、アーティストのみなさんと手越くんの絆もあるけれど、それぞれ大切な人との絆も描かれた楽曲が集まっているなって思いました。

「そうです。そういう作品になっていますね」

――「everlasting」は、前半では少しネガティブな部分も描かれますが、後半はポジティブな気持ちに変化する。それもあって最後のサビは歌い方にも感情があふれていますよね。

「それも敢えてです。それは俺の考えなので、田邊くんの仮歌とは全く違う歌い方をしています。1番2番は敢えて地声とファルセットを混ぜて歌って、最後のサビは転調してキーが上がるんですけど、自分の解放された思いとか、未来に向かっていくような明るい部分になっていく…だから、地声でバーンと歌っているんです。それだけで緩急がつきますから。それは全部地声でもできないし、全部ファルセットでもできないことなので、最後のサビのみを地声にしたんです」

――楽曲を提供してくれたみなさんもアーティストなので、ご自身で仮歌を入れるんですよね？それに手越くんは引っ張られたりはしないんですか？

「しないですね。『スぺプラ手越』でセッションするときも、相手の人が持っているいいニュアンスを少し取り入れたりはするんです。でも、物真似になったら俺が歌う意味がないですから」

――だから、今回収録されている楽曲も、提供してくださったアーティストの味もありながら、しっかり手越くんの曲になっているんですね。

「それもよく言われますね、いろんなアーティストに。“手越くんの楽曲みたい”って」

――本当にそうですよね。今回も1曲1曲の世界観は違うのに、トータルとして1本芯が通ったものになっている。それは、やっぱりボーカルの力なんだなって改めて思いました。「face to face」も今までになかったタイプの楽曲ですけど、しっかり手越ワールドになっていますもんね。

「この曲はBIGMAMAの金井（政人）くんが作ってくれたんですけど、金井くんはありがたいことに、すごく前のめりだったんですよ（笑）。俺から直接“あの～、曲とかって…”ってお願いしたら、“マジっすか！？ちょっと待ってください！”って、もう数日後に2曲届いたんです（笑）。“手越くんなら、絶対このどっちかがいいと思うんで聴いてみてください！”って（笑）」

――すごい！確かに前のめりですね（笑）。

「俺も、“早くね！？”って言いましたから（笑）。もう1曲もすごく素敵だったんですけど、こういう曲がないから歌いたいって言ったのが「face to face」なんです」

――そうやって、すぐに行動を起こしてくれるのって嬉しいですね。

「嬉しいです。金井くんは、最初に番組に来てくれてセッションが終わったときから言ってくれたんですよ。“僕は才能がある人と仕事がしたい。だから、絶対いつか手越さんと一緒にやりたいです”って。それもあって今回のことも二つ返事で引き受けてくれたんです。そこもまさに絆だと思いますし、それを俺は直接本人から聞けるので、余計嬉しいですよね」

――リスペクトがある同士なんですね。

「ただの楽曲提供じゃなく、金井くんは俺にだったら書きたいって思ってくれたんでしょうし、俺も金井くんに書いてほしいと思った。お互いがお互いに寄り添った思いで作っているので、より作品が厚くなりますよね」

――この曲、歌詞もすごいですよね。＜心の綺麗には流行りはないでしょう？＞っていう部分なんて、うわっ！って思いました。

「すごいですよね。＜見た目の綺麗には流行りがあるけど　心の綺麗には流行りはないでしょう？＞ですよ。“俺にはこんな歌詞は書けねえ！”って思いました（笑）。俺の辞書にはないものですから（笑）。だから、今回このアルバムを作ってみて、アーティストって特殊な職業だなって改めて思ったんです。マイキの「アダルトブルー」もそうなんですけど、彼自身の性格が出ているんです。マイキは決して強くない人ですからね。もし、これがプロスポーツ選手だったら、“お前、もっと心を強く持てよ！”っていうことになるかもしれないですけど、アーティストは心の弱さや繊細さが表現力に繋がって、キレイな歌詞とメロディになる。弱いのが悪いわけじゃなく、むしろパワーになるんです」

――その弱さがリスナーに寄り添う部分にもなるでしょうしね。

「そうなんです。俺には、それは書けない（笑）。パワフルでポジティブで、“夢に向かっていこう！”みたいな歌詞だったらいくらでも書けるけど、弱くて繊細な部分は俺にはないから、そういう点はリスナーに寄り添えません（笑）。でも、逆に言うと、俺みたいな歌詞が書けない人もいるだろうから、そこがいいですよね」

――それがその人の個性ですから。歌の面では「face to face」は、すごくやわらかい歌い方になっていますよね。

「自分の声にあるキレイな成分をいっぱい出したいなって思ったんです。陰な色気というか…いっさい声も張らないですからね」

――ふわっと包まれているような気持になるので、ずっと聴いていられます。

「俺もすごく好きです。カッコイイし、キレイだし、クールなので、こういう女の子が一番モテるんだろうなって思いました（笑）。ミステリアス感もあるんだけど、美しいし、助けたくなるような儚さもありますから」

――確かに（笑）。ちょっと手を差し伸べたくなるような感じですよね。でも、ちゃんと芯があるっていうところが、また魅力的だと思いました。

――その「Lover」から一転、Novelbrightの山田海斗さんと竹中雄大さんが作った「Gluttony」は疾走感あふれるロックチューン。この曲には現代社会への怒りさえ感じました。

「そうですね。この曲でリクエストしたのは、“ザ・Novelbrightな明るい疾走ロックにはしてほしくない”っていうことだったんです。なので敢えてダークめの社会への訴えとか自分の中の邪悪な部分を書いてほしいってお願いしたんです」

――でも、社会への批判もありながら、最終的には、そういう世界にいるのではなく、美しい世界を楽しもうよっていうメッセージになっている。そこがいいですよね。

「そうなんですよ。アニメみたいですよね」

――確かに！アニメのオープニング曲とか似合いそう！

「ね。ダークな世界と主人公が戦って違う世界を切り開いていくみたいなアニメ感があるんですよ」

――それだけにすごくパワフルな歌になっていますし、熱いボーカルがカッコイイです。

「でも、レコーディングブースの静かな空間で、こういうダークな曲を歌うのって結構大変なんですよ。だって、レコーディングブースって最も冷静な場所でしょ？ライブだったらお客さんもいるし、俺自身もテンション上がっているから大丈夫なんです。ただ、レコーディングのときはブースの中には俺ひとりですし、ブースの外で聴いているのもおっちゃん（笑）。その人が冷静に“もうワンテイクお願いします”とか言うわけですよ。俺はテンション上げているのに（笑）」

――そうなんですね。手越くんが得意なタイプの曲だなって思いましたけど…。

「得意は得意なんですよ。ただ、レコーディングのときのテンション感が辛いだけ（笑）。それにNovelbrightの曲だから、キーがずっと高い！だから、レコーディングのときは腹筋が痛くなって、トレーニングみたいでした（笑）。でも、ライブではスパークできる曲だと思いますね」

――楽しみにしています。最後に収録されているSHE'Sの井上竜馬さんの「My Own Beat」もライブ映えする曲ですよね。とてもスケール感がありますし。

「俺も大好きです。やっぱりSHE'Sの井上くんのメロディラインって、本当に美しいですよね。それにサビの部分には“WOW WOW”ってお客さんが参加できる部分もあるので、そこはぜひライブでみんなに歌ってほしいです」

――手越くんの歌も前に出ているので、すごくダイレクトに入ってきますよね。

「「everlasting」や「My Own Beat」みたいな曲は、歌っていてすっごく気持ちいいんです。感情も乗せやすいので」

――歌い方が伸びやかですよね。

「そう。すっごく大きく歌っているので。感動的なシーンで歌っているのがイメージできる曲です。それにこれはひとつの夢なんですけど、それぞれの曲を作ってくれたそれぞれのアーティストと一緒に歌いたいんですよ」

――それが実現したら、楽曲の魅力が倍増すると思います。

「たぶん各アーティストのみなさんも、仮歌を歌ったときの自分ではなく、俺が歌ったものを聴いて、そこにあるエッセンスにも引っ張られてくれると思うんです。一緒に歌ったら、もちろん俺にもそれは起こると思うんです。しかも、今回の音源にはないハモやフェイクも即興で入れられると思うので、そういうことをいつかやってみたいですね」

――実現することを願っています！

――まずは２月１日から、このミニアルバムを引っ提げたツアーが始まりますが、どんなツアーにしたいと考えていますか？

「今回は、今までのツアーではやっていない目玉がひとつあるんですよ。全国5ヶ所で2公演ずつライブをやるんですけど、その1日目と2日目でセットリストを変えようと思っているんです」

――え？大変...。今ちょっと引きました（笑）。

「そういうバカなことをします（笑）。その理由としては、『手越祐也 Symphonic Concert 2023』の昼公演と夜公演でセットリストを変えたのが好評だったっていうのもありますし、やっている側としても、すごくやりがいがあったからなんです。それに今回また新しい曲が増えたこともあって、もう歌いたい曲が歌えない状況なんです。曲が増えすぎちゃって。これって嬉しい悲鳴なんですけどね。でも、そうなるとひとつのセットリストだと、鉄板の曲とかさえも入らない。それで、“じゃあ、2つやる？”っていうことになりました（笑）」

――うわ～。考え方は単純ですけど（笑）、手越くんもバンドのみなさんも大変ですよね。

「日本で、そんなことやっているの俺だけじゃないですかね？普通じゃないので（笑）」

――日替わりで1曲変えるとかはありますけど、まずやらないですよ。それもツアーで。でも、それをやるのが手越くんなんですね（笑）。

「しかも、曲だけじゃなく、衣装も変えます。やっぱりイメージがありますから。でも、それだけ見せたいものが増えたっていうことなので、いいことですよ」

――去年もたくさんライブをやりましたけど、きっと今年もたくさんやるんでしょうね。

「これだけライブやっていたら、俺自身もライブやらないと我慢できない身体になっちゃっているんですよ（笑）。だから、レコーディングから時間がたって、リハーサルがまだだったりすると、俺、家のカラオケでがっつり歌ったりしますから（笑）。ずっと歌っているから、ちょっと歌っていないと歌いたくなっちゃうし、喉の筋肉も維持しなくちゃいけないですから（笑）」

――（笑）そのぶんだと、今年も去年以上に歌う手越くんが見られそうですね。

「2023年より2024年のほうが、間違いなくいい１年になる自信しかないんです。そうなると、当然やることも増えます。だから、いろいろと楽しみにしていてほしいですね！」

（おわり）

取材・文／星野 櫻

写真／encore編集部

RELEASE INFORMATION

LIVE INFORMATION

INTERVIEW - BACK NUMBER