──2025年は振り返ってどんな1年でしたか?

「おぉー、なるほどね。そうきますよね」

──(インタビュー時は)年末ですから。2024年12月から2025年1月にかけては、まず、舞台『桜の園』がありました。

「そのあと、Billbordで『大原櫻子 Premium Concert 2025Not just I 2」』 があって、白石加代子さんと二人舞台『銭天堂』をやり、2024年の10周年イヤーから新しくなったディレクターさんと8枚目のアルバム『Travelling』をガッツリ作りました。だから、10周年を超えて新しいページがめくれたような感覚があります。私も今年1月には30歳になってるので、20代の最後にさらにまた大人の階段を一歩を上ったと思える1年でした」

──役者業の方で特に印象に残っている出来事を挙げるとすると?

「やっぱり白石佳代子さんと二人芝居をやったのはすごく印象に残っています。まさか共演できると思っていなかった女優さんだったので、その方と全国各地を回ったというのは役者業の中でも宝のような時間でした」

──ドラマ『緊急取調室』での圧巻の演技も話題になっていました。明るく元気なイメージしか持っていなかった人は驚いたと思います。舞台『ザ・ウェルキン』を観てる方は知っている一面ですけど…。

「死刑囚は 2回目でしたから(笑)。主演の天海祐希さんと鈴木浩介さんとは年始の『桜の園』でご一緒していて。久々にお会いしつつ、天海さんとは舞台では親子だったのが、キントリでは取調官と日本最年少の女性死刑囚という、全然違う役柄でした。すごく新鮮な気持ちでしたし、視聴者のみなさんがリアルタイムで楽しみにしているドラマに携われて嬉しかったです。いい作品に出会うって、音楽でもお芝居でも難しいと思うんですけど。ほんとうにいい作品に出会えた1年でしたね」

──そして、6月から7月にかけてはアルバムを引っ提げた全国ツアー2025『Trip To rakko Traveler』を開催しました。

「今回はファイナルが沖縄という大きなゴール地点があったので、お客さんと一緒に旅行をしているような気分でとても楽しかったです。東京公演はオペラシティ コンサートホールという少しクラシカルな会場だったんですけど、リバーブをかけた音の広がりを作らなくても十分に響くような環境でした。ある意味、音楽をやる側としては、“もしかしたら歌いづらいかもしれないかな?”と思っていたんですけど、本番は全くそんなことなく、とっても気持ちよくて!」

──その東京公演のみ弦楽カルテットが入りました。

「はい。とてもに品格ある会場でロックをやるという、大原櫻子ならではのライブができたと思いますし、私自身、すごく楽しかったです」

──ツアーファイナルの沖縄公演の会場はガンガラーの谷でした。2万年前の人類“港川人”の居住地と言われている太古の谷でのライブはどうでしたか?

「パワースポットと呼ばれるだけあって、ほんとうに不思議な空間でした。当日は暑いし、、、湿気で機材も濡れないようにしないといけなくて、ステージに行くには鍾乳洞をずっと通っていかないといけなくて。いろいろ大変なことはあったんですけど、ライブはすごく楽しくできました。私、ライブが終わってから、誰にも何も言っていなかったんですけど、せっかく洞窟で歌うんだったら、アカペラで 1曲歌いたいと思って…「明日も」をひと節だけ歌ったら、皆さんがすごく大きい拍手をくださったんです。“ああ、人生で経験できてよかったな”と思いました。あと、ライブだけじゃなくて、来てくださってお客さんが、その前後で私が行っていたお店に行ってくれていました」

──ツアーの3ヶ月前くらいに沖縄一人旅をYouTubeであげていたからですね。

「そうなんです。皆さんが私と同じようにお店巡りをして楽しんでくださってこともすごく嬉しかったです。私自身は、中高で一緒だった友達の女の子が今、沖縄でお医者さんをやっているので、その子に連絡して、彼女がお勧めしてくれたお店で美味しいものを食べました。いろんな思い出ができましたけど、やっぱり沖縄でライブをやれたのは、10年間やってきたからこそ見れた景色だったんだと思いました」

──ツアー全体を終えてどんなことを感じましたか?

「今回はこれまでに行ったことのないホールを回ったので、終わった時に、“あれ? 本当にこれで終わりなのかな?”と感じました(笑)。あと、沖縄まで行ったんだったら、次は海外進出したいと思いました。“アジアツアーをしたいな“って」

──そうですよね。もう少し足を伸ばせば、台湾はすぐそこですからね(笑)。

──そして、年が明けて、1月28日に新曲「裸になって」がリリースされますが、アンジェラ・アキやさかいゆう、フジタカコなどのシンガーソングライター系の作家陣とタッグを組んだアルバム『travelling』を経て、次の一歩はどう考えていましたか?

「アルバム『travelling』で素晴らしいアーティストさんやクリエイターの方とご一緒して…その中で私のディレクターさんが阿部真央さんのライブに行った時に、“櫻子にメッセージ性のある強い女性の曲を歌わせたら合うんじゃないか”と思ったそうなんです。それで、“阿部真央さんと一緒にやるのはどう?”というご提案をいただいて」

──阿部真央さんにはどんなイメージを持っていましたか?

「そもそも私の姉がすごくファンでした。あと、私がデビューした当時、“ギタ女”という言葉がすごく流行っていて…実際に顔を合わせたことはなかったんですけど、ライブイベントでも“阿部真央、大原櫻子”という名前の並びを何度も目にしていました。だから、“あ、また阿部真央さんと一緒なんだ。でも、日にちは違うのか”というニアミスがたくさんあって、勝手に“すごく近い存在だな”って感じていました。“年齢も近いのかな?”と思っていたら、全然先輩だったんですけど」

──そうですね。櫻子さんが1996年生まれで、歌手デビューが2014年。阿部真央さんは1990年生まれの2009年デビューなので、2024年の櫻子10周年イヤーは、阿部真央15周年イヤーでもありました。

「しかも、この間のライブに行かせていただいて、息子さんもいらっしゃるのを知って! でも、私にとっては、楽曲もよく聴いていましたし、すごく近い存在だとは思っていたんです。そんな阿部真央さんに一番感じるのは、やっぱり、女性の強さですね」

──その強さというのは何でしょうか?

「“こういうことを言いたいんだけど、ちょっと恥ずかしい”というようなことをちゃんとぶつけてくれる。そのクリエイティブの覚悟だと思います。そういう強さを感じつつも、“とは言えね、私もそんなに強い女の子じゃないからね”ということも言える。とても素直というか、可愛らしさもあるし、繊細でもあるところが私はすごく好きだったので、“もしよろしければ”とお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。初めましてで少しお話したんですけど…」

──それまで直接お会いしていなかったんですね。

「はい。すれ違ってはいたんですけど、初めてでした。ちょうど5歳上なんですけど、直接お話しすると、すごくお姉さんというよりかは、“お姉ちゃん”という感じでした。フィーリングや世代感はやっぱり近いものがあると思っていて。阿部真央さんにお会いした時も、初めましてなのに気さくに「こんちわー!」みたいな感じで、イメージした通りだと思っていたんですけど、“どういう曲にする?”という話になった時に、私は阿部真央さんの魅力はロックなカッコ良さにあると思ったんです。だから、“実は私にもロックな曲があって…この映像を見てもらってもいいですか?”と言って、「READY GO!」のライブバージョンの映像を見てもらったんです」

──いつのライブですか?

「『10th Anniversary Tour 2024 “ハイッ!10ション!”』の映像です。すごい興味津々で見てくださって、“マジで超おもろいじゃん! いいね、これ!”と言ってくださいました」

──櫻子さんが再現しているこの阿部真央さんの口調も文字で伝えたいところですが…。

「文字で表現するのは難しいですね(笑)。男前な感じというか、さっぱりしているんですよ。阿部さんの歌声は甘さもありながら、喋る時は別の人格が出てくるというか…ねちねちしていないですし、いい意味でドライでサバサバしていて。前から友達だったような親しみやすさもある話し方で、“めっちゃいいじゃん!”って食いついてくださって、すごく盛り上がったんです。あと、阿部真央さんの繊細で丁寧な楽曲も本当に素晴らしくて。ちょうどその頃、阿部真央さんが「Somebody Else Now」を歌っているライブの映像も観ていて“ライブでみんなで一緒に歌う楽曲。この優しさがあるのもいいなあ”と思っていたので、そのこともお伝えしていました。で、今回は…」

──「READY GO!」とは違う感じですよね。

「そう、全然違うんですけど、失恋して悲しいだけの曲にはなっていなくて。別れの痛みをむき出しに歌い上げるという意味でのロックさは組み込まれたと思います」

──「Somebody Else Now」には近いかもしれないですね。振られたという主観ではなく、自分から立ち去って、次の居場所を決めるという曲でしたから。改めて、最初に受け取った時はどう感じましたか?

「とにかくドキッとしました。聴き終わった瞬間に、阿部さんに“15分でいいから電話していいですか?”と言って、感想を伝えました。別れた二人なのに、主人公が絶望から前に進む、そのもがき方に満ち溢れる生命力を感じて…“私自身もとても勇気もらえた”って」

──阿部さんはなんておっしゃっていましたか?

「“素直にすごく嬉しい”と言ってくださいました。自分の経験を組み込んで書いてるけど、櫻子ちゃん自身にも響いて、“自分の心の体験としてもこういうことがある”と言ってくれることがすごく嬉しい、ありがとう。そう言ってくださって」

──通じ合うものがあったんですね。

「この間も真央さんとメールをしていたんですけど、“やっぱりね、私たちは、いろいろと不毛な恋愛をしてきて。こうやって一歩を踏み出して生きてる私たちって偉いよね”とおっしゃっていました。私は、自分自身に対して“偉い”って言葉を投げられるところもすごいと思いました。そういう人たちが偉いのではなくて、“いや、自分も偉いんだよね”と言ってらっしゃるところが、“自分の言葉として書いてくださったんだな”と感じて。すごく嬉しかったですし…なんて言うんでしょうね。世の中には恋愛ソングは溢れているじゃないですか。“それってどうしてなんでだろう?”と考えた時に、人生において恋愛が、日々を華やかに輝かせてくれるものだからだと思うんです。でも、恋愛が成就しない時もあるし、辛い出来事もある。そういう時にこの曲を聴くと、“ああ、生きていこう”というふうに思えるエネルギーがあるのを感じました」

──歌入れにはどんなアプローチで臨みましたか?

「阿部さんが仮歌を入れてくださっていたので、この曲に込めた想いや主人公のニュアンスはとても明確に見えていました。だから、表現者としては歌いやすかった曲です。ただ、メロディーがとても難しいんですよ。聴くだけだと、阿部さんはすごく簡単そうに歌っているんですけど、実際に歌ってみるとすごくキーが高くて…。このキーの高さは、きっとレコーディングで綺麗に歌って完結するものではないんだなって。もう、うわーって気持ちが高ぶって歌うライブで完成するんだと感じました。それは、いろんな楽曲で歌うと感じることでもあるんですけど、この曲は非常に強くそう思いました」

──この主人公、この二人の関係性はどう捉えました?

「真央さんとは“いろんな関係性があるよね”という話をしていて。でも、きっと本当に好きで、それこそ結婚という未来も見えていたのに、諦めなければならなくなってしまったっていう。楽しかったとか、信頼していた関係性が深ければ深いほど、これだけの情熱になるんだろうなっていう印象は受けました」

──相手はダメ男ではないですか。急に連絡が取れなくなって、“またよりを戻したい”と言って戻ってきて、またいなくなったクズ男なのかな?って感じましたけど…。

「あははは。そこはそれぞれに自由に捉えてもらいたいというか、どうとでも取れると思います。ただ、そんな人をまた好きになっていた自分もいた。そこは確かで」

──でも、最終的にはこの主人公は自分から別れをもう決めていますよね。

「そうですね。だから、落ちサビはありったけの涙を浮かべながら、すごく笑顔で歌っているような印象で歌っています」

──その落ちサビはピアノとボーカルだけになりますが、冒頭はアコギとボーカルだけで構成されていますね。

「実はいろいろとアレンジの候補がありました。最初は、心音のようなトントンっていう音からヒューッていう花火が打ち上がった後、火花が落ちていく時の音に近いような楽器音が入ってきて、<また会えなくなって>と歌い出すバージョンもありました。そのバリエーション違いで、少し華やかというか、何かが始まるという感じが強い長めのイントロもあったんですけど、いろいろと検討して、“これだね!”となりました。他にも頭サビで始まる曲はたくさんあったんですけど、この曲に関しては、やっぱりドキッっとした最初の印象を大事にしたかったんです。<はぁ>っていう息遣いから<また会えなくなって>という絶望的なフレーズで始まる。最初からもう真っ暗な印象しかない。みたいな(笑)。それを表現するのはこれだと思って、こういう始まり方になりました。レコーディングが終わってからもギリギリまで考えて…結果的にシンプルになりました」

──歌い出しからまさにドキッとしますよね。

「タイトルが「裸になって」ですし。それこそ覚悟がある人から出る強い言葉ですよね。私は最初にこのタイトルを見た時に、裸で女の人が海の中を泳いでいるイメージが浮かびました。自分を隠すための洋服とか、そういうものはもう一切いらないって。“次の恋愛は、本当に素の私を見せていこう”という気持ちが組み込まれてるんだと感じました」

──だから、悲しくて絶望的な失恋ソングだけど、前向きな歌ではあるんですね。

「もちろん、そうです。ただ、単純に“よし、前を向こう”というのでなく、自分の中での後悔や悲しさ、切なさ、いろんな感情を抱えていて。そこを乗り越えて、自分の足で進んでいくんだという気持ちの強さは阿部真央さんならではだと思います」

──MV はどんな映像になりますか?

「今の私をシンプルに美しく撮っていただきました。個人的な見どころとしては、新しいギターを持って歌っているんです。ずっと憧れていた黒のアコギです。Takamineさんが、満開の桜ではない、夜桜をテーマにして、黒にピンクの桜を彩ったギターを作ってくださいました。アコギにもロックと優しさが入り混じっていて、みんなへのお披露目が楽しみです」

──ここからまた新段階に突入するイメージですか?

「アンジェラ・アキさんに作っていただいた「名前」も“優しさの中にロックがある”曲になっていたと思います。それが、私の人柄というか…私自身がそうなのかなって感じています。沸々と煮えたぎるものがあって、30歳を前にして(インタビュー時、2025)など、、やりたいことが明確になってきました。最近は特に、歌を通して、自分の想いやメッセージを思い切り訴えかけていきたいと思うようになっています」

──「裸になって」から始まる2026年はどんな一年にしたいですか?

「1月10日(土)からみやぞんさん主演の映画『星野先生今日も走る』が公開されますし、ありがたいことに、映像でも皆さんに会える機会が少しずつ増えるのかな?って思います。あと、繰り返しになりますけど、“30歳を楽しむぞ!”というスタートダッシュが切れたらいいですね。周りの先輩方からよく“30代はすごく楽しいよ”という話を聞くんです。30歳で新しい扉を開く人もいますし、人生の節目になりそうだと思います。より自分自身で行動できるのかな?って思いますし、本当の意味で自分の人生が始まりそうで楽しみです」

──音楽活動はどう考えていますか? 3月には『武部聡志プロデュース「ジブリをうたう」コンサート その2』の出演と3年連続となるBillboard Live での『Premium Concert 2026 「Not just I 3」』が決まってます。

「阿部真央さんを皮切りに、2026年もまた新境地を見せたいと思っています。いろいろとチャレンジするつもりなので楽しみに待っていてほしいです!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/中村功

RELEASE INFORMATION

大原櫻子「裸になって」

2026年128日(水)配信

大原櫻子「裸になって」

大原櫻子『TOUR 2025 “Trip To rakko Traveler” ~Live at 東京オペラシティ コンサートホール~』Blu-ray

2026年128日(水)発売
VIXL-5087,700円(税込)

Blu-ray

大原櫻子『TOUR 2025 “Trip To rakko Traveler” ~Live at 東京オペラシティ コンサートホール~』DVD

2026年128日(水)発売
VIBL-1209107,700円(税込)

DVD

U-NEXT

大原櫻子 ライブ映像&MVを配信中

■大原櫻子全国ツアー2025「Trip To rakko Traveler」
■10th Anniversary tour 2024「ハイッ︕10ション︕」
■Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」2023.10.12 @Zepp Haneda
■5th TOUR 2018 ~Enjoy?~
■5th Anniversary コンサート「CAM-ON! ~FROM NOW ON!~」
■5th TOUR 2018 ~Enjoy?~
■4th TOUR 2017 AUTUMN ~ACCECHERRY BOX~
■LIVE CONCERT TOUR 2016 ~CARVIVAL~ at 日本武道館
■2nd TOUR 2015 AUTUMN ~秋櫻タルトを召し上がれっ☆~ 2015.11.12@Zepp DiverCity (TOKYO)
■1st TOUR 2015 SPRING~CHERRYYYY BLOSSOOOOM!!!~

大原櫻子 ライブ映像&MVを配信中

大原櫻子 関連リンク

一覧へ戻る