――単独では初となるオーケストラ公演が決まった心境から聞かせてください。

「お声がけいただいて本当に嬉しかったです。ただ、オーケストラさんとの演奏は、まだ本当に数えられるぐらいしか経験がないので、“私なんかでいいのかな?”という思いもありますし、すでに今からもう緊張しています(笑)」

――(笑)昨年9月には「billboard classics festival 2021」に参加してますね。

「「ちっぽけな愛のうた」と「STARTLINE」、それに、ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の「Fly Fly Away」のカバーを歌わせていただきました。「Fly Fly Away」を初めて聴いたのが、オーケストラさんバックの演奏だったので、“私もいつか歌いたい”と思っていた楽曲だったんです。なので、自曲にプラスして、自分が歌いたい曲を入れさせていただいて」

――オーケストラをバックに歌唱した感想は?

「ドラマ『つまり好きって言いたいんだけど』の撮影が終わった後だったんですけど、オーケストラさんとのライブでの共演が初めてだったので、ちょっと構えてしまっていたんですよね。オーケストラアレンジされたデモを聴きながら一人で練習して、当日に演奏者の皆さんと合流したんですが、なんというか…構えていたのが逆に失礼だったなと感じて。“楽器の音に身を委ねていいんだ”って、ほっとした自分がいたんですよね。いい意味で肩の力が抜けたというか。私の後ろには、演奏してくれる人が大勢がいて、“みんな自分の味方なんだな”って思った時に、安心しきって楽しむことができたんですよ」

――難しさは感じなかった?

「指揮者の方や演奏者の方との呼吸の合わせ方という部分では、まだ素人というか、初めてだから“慣れてないな”っていう感じはあったんですが、それよりも、“なんか気持ちいいな〜”っていう感覚の方が強かったです。でも、私は西宮公演のみの出演だったので、あっとういう間に終わってしまって。“もっとやりたい!”、“構えてしまってもったいなかったな”っていう思いばかりが募っていたので、今回、その夢が叶うという喜びがありますね」

――それ以外でもオーケストラさんとの共演はありましたか?

「テレビの生放送でバックにオーケストラさんがいて、共演させていただいたことがあるくらいですね。それ以外だと、お芝居との関わりで多く触れてきました。例えば、帝国劇場でやるようなお芝居のときには、オーケストラピットに皆さんがいて。そこで、オーケストラの皆さんや音を奏でる方々、指揮者の方も“みんな役者なんだな”っていうのを感じることがたくさんありました。あとは、以前、ビルボードクラシックスの企画で、石崎ひゅーいさんがオーケストラさんと共演されたコンサートを観に行かせていただいて。その時の印象や会場の雰囲気がすごく心に残っていますね。いつも聴いていたひゅーいさんの楽曲がオーケストラさんたちとの演奏によって、“こんなふうに変わるんだ、面白いな、すごく新鮮だな”と感じて。この体感も、今回の楽しみに繋がっていますね」

――どんなコンサートになりそうですか?

「自分の曲もやりつつ、カバーをやりたいなと考えていて。勝手ながら、“オーケストラさんとディズニーの曲をやりたい”と思っていたので、今回はちょっと多めに入れています。1曲だけ挙げるとするなら、自粛期間中に自宅で録って歌ったことがある、『ムーラン』の「リフレクション」とか。“大好きなディズニーをぜひオーケストラの皆さんと”っていう思いがありましたし、何か挑戦したいなという気持ちもあって、実際にちゃんとした形で届けるのが初めてになるカバー曲を選びました」

――『ムーラン』はアニメと実写、どのバージョンで出会ってますか?

「最初は、もう音源でした。ひたすら、歌だけを聞いていましたね。ミュージカル『ミス・サイゴン』の初代キム役で、オリジナルキャストと言われているレア・サロンガが大好きだったので、彼女の歌を聴いて、ライブ映像を見て、ムーランの歌声を担当したディズニーのアニメ映画『ムーラン』(1988)を観て。とにかく、ずっと「リフレクション」を聴いていましたね。あと、日本語のカバーも準備しています。小さい頃からよく聴いていて、今も大好きな楽曲たちです。特にテレサ・テンさんの「時の流れに身をまかせ」(1986)は、私がミュージカルデビューした<地球ゴージャス>の舞台『LOVE BUG』(2016)の打ち上げで、マルシアさんがアカペラで歌ってらっしゃったんですよ」

――えーー!!そうなんすね。

「<もしも/地球ゴージャスと会えずにいたら/私は何をしてたでしょうか>っていう替え歌で唄ってくれて。聴いた瞬間に、みんな、涙がでそうなったんですよね。その日から私の中で特別な歌、自分の中の思い出の曲になったので、今回、歌いたいなっていうのもあって」

――指揮者の山脇幸人さんは1992年生まれの30歳という若手ですし、若い二人が演奏するには珍しい選曲だなと思ってました。

「同世代の家入レオちゃんもライブで歌謡曲をカバーしていたりするし、同世代の子とカラオケにいくと、みんな、80年代の歌謡曲を唄うんですよね。それがどうしてなのかは私もわからないんですけど(笑)、私達の世代は歌謡曲が好きな子がすごく多いですね。私自身、歌謡曲だけじゃなく、演歌も好きだし、ディズニーもミュージカルナンバーも好き。あまりジャンルを問わないで聴いているので、“とにかく私が好きな曲を歌おう!”って思っています」

――ご自身のオリジナル曲はどんな基準で選びましたか。

「きっと、デビューしたときから応援してくださっている方々もたくさん来ていただけると思うんですね。でも、みんながよく知っている曲でも、オーケストラさんとやるととっても新鮮に響くと思うので、デビュー曲から最近の曲までをピックアップしていて。オーケストラの皆さんと一緒に踊れるような曲も考えています」

――クラシックとの融合で、ライブでお馴染みのあの曲が入るとは想像してなかったです。

「私もまさか一緒に踊ってもらえると思っていなかったんですが、演奏しながら踊ってくださるそうなので、“楽しくなりそうだな”と思っていて。自曲では、私自身だけじゃなく、私を今まで応援してくださっているお客さんにとっても、この曲がこんなふうに体に染み渡るんだという発見がたくさんあると思うんですね。私もオーケストラさんが奏でてくれる音色に寄り添いつつ、楽曲の世界観を広げていきたいし、ひたすらオーケストラさんとの音の中で見える新しい景色を楽しんでいきたいなと思っています。あと、新曲もやらせていただくんですよ」

――え?新曲をやるんですか!?

「そうなんです。初披露がオーケストラの皆さんとの共演になるので、そこは私も挑戦ですし、一つの見どころというか、聞きどころになるんじゃないかなと思います。私自身も、初披露で新曲の別の世界観を味わえるので、非常に楽しみですね」

――9月21日に配信リリースされた新曲「Door」の初披露の場がオーケストラ公演になるんですね。この曲は3ヶ月連続配信リリースの第1弾に位置付けられてます。

「レコード会社のスタッフさんの方から“『3ヶ月連続配信をしよう!”という提案をいただいて。私も配信はやったことあるんですけど、3回連続っていうのはなかったので、“みんなはどんなふうに受け取るんだろうな?”と思って。自分が聴く側だったときに“何かストーリーになっていたら面白いな”と思ったんですね。10月と11月の新曲の詳細はまだ話せないんですが、「Door」から始まって、いろんな恋愛の側面を見せていけたらなと思っています。この3曲はどれも、恋心の価値観や主観の視点が全然違うので、きっと楽しんでもらえると思います」

――「Door」は作曲と編曲が、いつものライブのバンドメンバーである小名川高弘さんで、作詞は元ねごとの蒼山幸子さんが手がけてます。

「アーティストで、同性である蒼山幸子さんとは初めてタッグを組ませていただきました。アーティストとしての蒼山さんは知っていたんですけど、改めて、蒼山さんが描かれた歌詞を見てみると、本当に素晴らしい言葉を紡ぐ方だなと感じて。“ぜひ、お願いしたい”と思って、最初の打ち合わせはリモートの予定だったのですが、お互いに“初めてだから1回お会いしたい”という気持ちになって、実際にお会いしました」

――どんなお話をされたんですか?

「メロディはもう出来上がっていたので、最初は、“恋心を伝えられない女の子のもどかしさを歌うのはどうか?” という話になっていたんです。 26歳の私が歌うことで、何か響くんじゃないかという案があったんですが、蒼山さんがメロディーを聞いたときに、“もう失恋が目の前に来ていて、それをわかっている女の子の心境はどう?”という案を出してくれて。”私、歌ったことないな”と思って。蒼山さんにご提示いただいた方が、より生々しいリアルな感じになるのかなと思って、その方向で書いていただきました」

――メロディは歌謡っぽいですね。

「そうですね。歌詞もそういう匂いがして、私はすごく好きですね」

――うんうん、<バーボンソーダ>というフレーズからも歌謡曲の雰囲気を感じます。歌詞は“どんな思いを唄ってる”と言えばいいですか?

「すごく簡単な言い方になりますけど、“愛と憎しみ”がダイレクトに出ている歌だなと思いますね。<この恋とわたしが傷に変わって/永遠に残るように>とか言っているところとか“エグいな〜”と思いつつ(笑)、口には出さないけど、実は女子が奥底で思っている感情がうまい具合に出ていて。毒々しさ、女の子の怖さ、それから可愛さが存分に出ているんじゃないかなと思います」

――別れを決めた後の憎しみ?

「憎しみもあるけど、呆れもあるでしょうし、まだ<私の駄目な人>とも言っているので、いろんな複雑な感情ですよね」

――この曲の初披露がオーケストラによる伴奏になるという。

「あははは。原曲にもストリングスは入っているんですが、きっと印象は全然違うと思いますね。新しいものがさらに新しく感じるんだろうなと思うと、私は楽しみでしかないですね」

――新曲をやるって決めたのはどうしてでした?

「私もどんな感じになるのかは想像がつかないんですが、“新曲を早く聴いてもらいたい!”という気持ちが強かったし、“自分の一つのチャレンジとして届けたい”という思いがありましたね。やっぱりオーケストラさんの力って、楽曲の世界観をもう何百倍にも膨らましてくださるから。新曲の世界観がさらに広がっちゃったらどうなるのか。すごくノリノリな曲ではないので、お客さんも圧倒されるものがあるんだろうなと勝手に感じています」

――大原櫻子ファンはどんな気持ちで向かえばいいですか。クラシックのコンサートには行ったことのない方も多いかもしれません。

「いや、もう何も考えなくていいと思います。最初に話したように、私も初めてオーケストラさんと共演した時に、“構えて行かなくていいんだな”って思えたから。逆にいうと、どんなに構えて行っても、オーケストラさんたちが作り出す世界観への引き込み具合と言ったらないんですよ。どうしたって、とにかく居心地が良くなってしまう。…何て言うんでしょうね、天国に行ったことないけど(笑)、雲に浮かんでいるぐらい、すごく気持ちのいい感覚が私にはあったんです。そこには、どんなにあらがおうとしても無理だし、オーケストラさんの音に酔いしれて、“歌うのを忘れちゃうんじゃないか?”というくらい、とても幸せな瞬間をいただけるので、むしろ何も考えないで来ていただけたら最高に楽しめるんじゃないかなと思います」

――緊張しないでいいですか?

「緊張しても、緊張させないんじゃないかなと思いますね。確かにオーケストラのコンサートとなると、アクセサリーを身に付けて、綺麗な格好で行って、姿勢良く聴かなくちゃって思う人もいるかもしれない。その姿勢は素敵だし、それに相当するものだとは思うんですけど、大原櫻子のライブであることは変わらないので、あまり構えずに、素直に音に身を任せて楽しんで欲しいですね。ただ、アレンジや編成はいつものライブとは全然違うので、“本当に新しいものが生まれるんだろうな”っていう期待があって。自曲も“全く違うような作品に生まれ変わって届けられるんじゃないか?”と思うと、私自身、非常に楽しみだし、皆さんにも楽しみにしていただきたいなと思っています」

――最後に櫻子さん自身の意気込みをください。

「オーケストラの方々とはほぼ初対面になるので、そういう意味では、ある種の戦いだとも思うんですね。今回も合同の練習は数少ないので、足を引っ張らないように、オーケストラアレンジされたデモをたくさん聞いて練習して、全力で準備をしていきたいなというふうに思っています。そして、初めてご一緒する方たちとの一期一会の出会いに感謝して、いいライブができたらなと思います」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/辰巳隆二
撮影協力/Amazon Music Studio Tokyo

LIVE INFORMATION

billboard classics 大原櫻子 Premium Symphonic Concert 2022

東京公演
日程 20221012日(水) 開場 17:30 / 開演 18:30
会場 Bunkamura オーチャードホール
出演 大原櫻子
指揮 山脇幸人 / 管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

西宮公演
日程 20221015日(土) 開場 16:00 / 開演 17:00
会場 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
出演 大原櫻子
指揮 山脇幸人 / 管弦楽 京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ

RELEASE INFORMATION

大原櫻子「Door」

2022年921日(水)配信
ビクター

STREAM/DOWNLOAD

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大原櫻子 ライブ映像を配信中

■大原櫻子 1st TOUR 2015 SPRING~CHERRYYYY BLOSSOOOOM!!!~
■大原櫻子 2nd TOUR 2015 AUTUMN ~秋櫻タルトを召し上がれっ☆~ 2015.11.12@Zepp DiverCity (TOKYO)
■大原櫻子 LIVE CONCERT TOUR 2016 ~CARVIVAL~ at 日本武道館
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■大原櫻子 5th Anniversary コンサート「CAM-ON! ~FROM NOW ON!~」

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