──ファーストアルバム『#Twenty』がリリースされましたが、どんな作品にしたいと考えていましたか?
「19〜20歳で作った曲をまとめたアルバムなので、恋愛や日常のワクワク、モヤモヤを詰め込んだアルバムにして、同世代の人たちに届けっていう思いで作りました。等身大の自分で、同世代の子たちの心に何か刺さるようなアルバムになればなというイメージがありました」
──振り返ってみて、AYANEさんにとって、10代から20代になる1年間はどういう日々でしたか?
「そうですね…上京して環境も変わり、「泣きたい夜」がTikTokでバズって。いろんな状況が変わったので、ちょっと心が追いつかない時期もあったし、不安やプレッシャーもあったんですけど、すごく大人になれたというか、一歩、成長できた大事な時期だったかなと思います」
──成長したなとご自身で感じるのはどんな部分ですか?
「以前は見栄を張って、自分を良く見せようっていうのが前面に出てしまって…もちろん、今も多少はそんな気持ちはあるんですけど(笑)。ありのままの自分で、“等身大の自分”という軸をぶらさずにを表に出していけばいいやっていうふうな考え方にはなったと思います」
──20歳でもう!早いですよね。
「あははは。多少はまだありますよ。でも、やっぱ無理しても仕方ないかなって。自分のままの方がいいじゃんっていうのは気づいたかもしれません」
──そう思えるようになったのは何かきっかけがありましたか。
「最近、悩むことが多かったんですよ。プロフィールに<長所:ポジティブ/短所:ポジティブ>って書いてるぐらいだから、自分はずっとすごいポジティブだと思っていたし、“ポジティブでいなきゃ”、“元気でいなきゃ”って思っていたんですけど、やっぱりどうしても落ち込むときもあって。そんな時に、つい、TikTokライブでファンの子に弱音を吐いちゃったんですね。でも、“最近うまくいってないんだよね”とか、“スランプかな?”っていうのをつぶやいても、みんな、“AYANEちゃんもそういうときあるんだ”っていうふうな見方をしてくれて。そこで、誰しもうまくいかないのが普通なんだなって思えたというか。逆にみんなと一緒なんだっていう共感をもってもらえたことが大きかったですね」
──今のお話は新曲「Bitter & Sweet」の歌詞にも通じてますね。<甘い理想と苦い現実>の間で揺れる様が描かれてます。
「そうですね。ここで、こういう結果を出したいという理想があって。具体的にいうと、19歳に作った「泣きたい夜」がバズって、次の「bye bye」もバズって。そこから先もバズを見たかったけど、「hot coffee」からは、なかなか自分の思うような結果が出なくて…。この曲も、あの曲もバズってたらよかったのにっていうのが、<甘い理想>。でも、現実はそんなにうまくはいかないことばっかりで、ついつい人と比べちゃって落ち込むっていうのが<苦い現実>ですね」
──<甘い理想>の期待と<苦い現実>の不安の間で葛藤しながらも<いつだってありのままでいたいの>と私らしさを見つめ直していてるメッセージを「Bitter & Sweet」では伝えたかったんですか?
「たまに自分らしさすら見失ってしまうときもあるんですけど、やっぱ今、思ってるのは、ポジティブっていうところはずれていないと思うんです。ポジティブに加えて、今は何て言うんだろうな…いろいろ考えちゃう時期なんですよ。同世代にすごいシンガーの子っていっぱいいるし、どうしても比べちゃうけど、そこで“自分は自分でいいやん”って心底思えるようにしたいなっていう段階です」
──夢を追いかけてる姿も書かれてますが、<今も思い出すあの日した約束>というのは?
「目標は変わらず、大阪城ホールでのワンマンライブを夢見て、走ってる途中なんです。上京するときに、両親に“頑張ってきてよ”とか、“絶対に夢叶えるんだよ”とか、何回も何回も言ってもらって。上京のときだけじゃなくて、私が歌い始めてからずっと、背中を押してもらう言葉を言ってもらってきたので、そういうときを思い浮かべて書いてますね」
──細かくて申し訳ないんですけど、<どうせ一度きりの人生>というフレーズがありますが、「2023」でも<1度きりの人生 楽しまなくちゃ>と歌ってましたね。どんな気持ちを込めてますか。
「失敗しても何しても、どうせ死んじゃったら誰の記憶にも残らないかもしれない。だったら、“やりたいことやっちゃえばいいやん。怖がらなくてよくない?”っていう意味を込めています」
──それは、ポジティブな性格にもつながる考え方ですね。そして、自身の決意表明のような曲ですけど、サビは<私達まだ夢の途中>と“私達”になっていますよね。
「<私まだ夢の途中>でも良かったんですけど、シチュエーションがライブというイメージが初めからあったので、会場を一体に包み込めるような言葉にしたいなと思って、<私達>にしました。聞いてくれる方に、“1人じゃないよ”って寄り添いたいという意味も込めています」
──ライブのイメージがあったんですね。最初に聞いた時は、アルバムの中でこの曲だけがロックのバンドサウンドだからびっくりしました。
「そうですよね。でも、アルバムだから、曲調もちょっと挑戦したいなと思って。私、元々ロックも好きだから、ロックの要素に、ここまでやってきた「泣きたい夜」の歌詞の要素を詰め込んだ曲になっています。ライブでみんなで盛り上がれるようなイメージで。「泣きたい夜」は“泣きたい夜に1人でしんみり聞いてほしいな”っていうイメージだけど、「Bitter & Sweet」は、“みんなでもうそんな嫌なことを吹っ飛ばそうよ”っていうパワーが強い歌にできたらなと思っています」
──メロウなR&Bやローファイヒップホップのビートが基調になってるアルバムの中でロックをやってみてどう感じましたか?
「レコーディングがすごく楽しかったです。このトラックを聞きながら歌うのがすごく好きなので、わくわくしながらレコーディングしたし、みんなの前で歌うのもすごく楽しみです」
──AYANEさんは明るくて元気なポップクロックやエールソングも似合うと思うんですが、R&B調の切なくて泣ける恋愛ソングのイメージもあります。そのことにはご自身はどう感じてますか。
「私自身はいろんなジャンルが好きなので、このジャンルだけをしていきたいみたいなのは正直ないんです。「Bitter & Sweet」は、かなり挑戦した楽曲なので、この曲をみんなはどういうふうに捉えてくれるのか。どんな反応をしてくれるかな?っていうのはわくわくもあり、ちょっとドキドキもしてます」
──そういう意味では、アルバムのリード曲「まだ、、」も挑戦の1曲ですよね。オーセンティックなピアノバラードになってます。
「そうですね。実はアルバムのリード曲、本当は違う曲を制作していたんです。その曲の制作が終わったときに、プロデューサーと向き合ってこのアルバムのリード曲はこの曲でいいのか、何か足りないんじゃないか、というのをもう一度話し合って。私も“確かに…”と思ったので、変えることになったんです。そして改めて書き起こして作ったのが、「まだ、、」だったんです」
──改めて作ったとは思えないくらいドラマチックですよね。
「まさにドラマチックな曲にしたかったんですよ。だから今までの曲とは曲調も全然違うし、歌詞の雰囲気も違くって。エモく、儚くっていうところを中心に置いた曲で、失恋なんです。今までにがっつり失恋の曲っていうのは書いたことがなくて。だから、歌詞を書くときは迷ったし、すごく考えたんですけど」
──「bye bye」はクズ男に引っかかって、さよならしたいけどできない曲だし、「空っぽ」は浮気されてるのに嫌いになれない曲だったから、この子にはもっと幸せな恋をしてほしいです。
「あはははは。心配ですよね。でも、それが20っぽさだったりもするのかなと思いつつ、実はこの「まだ、、」という曲は、幸せな恋愛をしたあとにした失恋っていうイメージで書いたんです。未練だらけの感情を散っていく花びらに重ねて書いていて。そこもエモさが出てるポイントかな?と思います。一番注目してほしいのはやっぱり、<叶わない願いでも/届かない想いでも>というサビのフレーズ。ただの失恋ソングじゃなくて、いろんな捉え方をしてほしいし、深い読み取りもしてもらえたらなという思いで書きました」
──レコーディングはどんなアプローチで臨みましたか。
「この曲すごく難しくて。AメロBメロは低いところで歌っているんですけど、サビになるとすごく高くなって。そこの切り替えがすごい難しかったですね。自分で作ってるんですけど(笑)、レコーディングの前に“この曲、歌えないかも…!”って思うくらい難しくて。最終的にはたくさん練習して、とある映画を見てから書いたので、その映像を思い浮かべながら歌ってた気がします」
──そのとある映画からインスパイアーを受けてるから“花”がモチーフになってるんですね。また、この曲は、ドラムとベース、スナップのビートを抜いたアコースティックバージョンも収録されてます。
「歌詞的にすごく切ないんで、アコースティックでしんみり聞いてもらうバージョンもあってもいいんじゃないか?って話になって作りました。個人的にすごくお気に入りです」
──もう1曲、アルバムの新曲として「星に願いを」が収録されてます。
「夜、全然寝れないときとか、好きな人に会えなくて寂しいときとかに、1人で聞いてもらいたいなというイメージで作りました。トラックを聞いてもらったらわかるんですけど、音数がすごく少なくなってて」
──特に1番はほぼアコースティックギターの弾き語りになってます。
「ちょっと寂しさに浸れる曲になったらなと思って作りました」
──これは遠距離恋愛ですか?
「そういう捉え方もしてもらっても大丈夫です。例えばこれが遠距離恋愛の曲だったとしたら、空はどこから見ても同じように見えて。ぱっと空を見たときに、あの人も同じ空を見てるかな?みたいな。そうやって星に願ってるかわいい切ない女の子のイメージなんですけど、喧嘩して電話が繋がらない相手とかでもいいですし、捉え方は人それぞれでいいなと思ってて。寝るときの心地良いBGMというか、ループして聞いてもらえる曲になったらなと思って作りました。だから、歌い方も、もうほぼ息みたいな感じで歌っています」
──ベッドで窓を見ながら口ずさめるようなトーンですよね。ちなみにAYANEさんの今の等身大が一番投影されてるなと思う曲は?
「全部、等身大なんですけど、今、自分が聞きたいって思うのは、「Bitter & Sweet」です。最近、とにかくモヤモヤすることが多くて。五月病かわかんないんですけど、それに今、浸りたいという気分よりは、スカッと吹き飛ばしたい気分ですね」
──改めて、全12曲揃って完成した感想を聞かせてください。「泣きたい夜」で<ここから始まるストーリー>と歌ってからちょうど1年後のリリースになります。
「ここから歩いていく、まさに第一歩になったと思うんですけど、すごく良い一歩を踏み出せたかなとは自分では思っています。毎回シングルをリリースするたびに、ファンの方からすごくいい反応もらえるし、もっと結果出せるように頑張りたいなと思っていて。でも、結果にとらわれすぎると、焦っちゃったり、プレッシャーに感じる自分もいるから、結果はもちろん大事だけど、そこだけを見ず、楽しくやっていけたらなと思ってます」
──広く浅くじゃなく、狭くてもより深く刺さってる人もいますからね。ジャケットはどんなイメージでしたか?
「実は1曲目の「泣きたい夜」から、「まだ、、」「星に願いを」までのジャケットの全部の要素が入ってて。「泣きたい夜」の女の子がベットで体育座りしてて、あの部屋にあったレトロなテレビがあって。「bye bye」の月、「hot coffee」のコーヒー、「初雪」の雪だるま、「2023」の時計、「空っぽ」の瓶、「2gether 4ever」のスマホ、「Love Letter」の手紙、「Bitter & Sweet」のギター…。このワンルームに全部の要素が入っているんですけど、かわいいし、おしゃれだなって思うし、やっぱ一番AYANEの曲で知ってもらってるのは「泣きたい夜」だから、ぱっと見たら、「泣きたい夜」の人と一緒だってわかって、キャッチーでいいかなと思ってます」
──ファンの方にはどう届けたいですか。
「背中を押したいっていうのはもちろんあるんですけど、それよりもみんなの日常に寄り添えたり、心の声を代弁できたらなという願いの方が強いですね。なんかモヤモヤしていても、“何でモヤモヤしてるんだろう?”とか。自分の気持ちすらわかんないときって、きっと多いと思うんですね。それを代弁して、“私はこういうことでモヤモヤしてるんだな”とか、“私が言葉にして言いたかったのはこういうことだ”っていう感情になってもらいたいなって思います」
──そして、東名阪のツアーが決定してます。
「ツアー自体が初めてなので、ワクワクもしてるんですけど、それよりは、プレッシャーとかドキドキとかの方が多いですね。でも、アルバムが完成して、初めてみんなに直接会いに行けるので、一番は、楽しみたいです。ライブっていう環境で、音楽を楽しみつつ、等身大の自分を届けることができたらなと思っています。アルバムのタイトル通り、『#Twenty』の総まとめ的なライブをしたいです」
──東京は二十歳ですけど、8月21日に誕生日を迎えて、名古屋と大阪は21歳になってますね。
「ほんとだ!TwentyはいいTwentyになったと思ってるんですけど、“こういうところを改善していきたいね”っていう反省点も明確に見つかった年でもあるので、そこを改善して、実力をつけていきたいなと思っています。あと、つい、結果結果ってなっちゃいますけど(笑)、やっぱり結果はみんなへの恩返しにもなるかなと思うので、結果は出していきたいです」
──20代はどう過ごしていきたいですか。シンガーソングライターとして、1人の女性として。
「どんなんでしょう…音楽的には、今まではヒップホップ〜R&B系が強かったんですけど、「まだ…」や「Bitter & Sweet」みたいに、“いろんなジャンルをやっていきたいよね”っていう話はしていて。私は個人的にヒップホップとロックが混ざったような曲が好きなので、“ガールズロックの要素もやっていけたらな”と思います。音楽面以外で言うと、“めっちゃ凛としたかっこいい大人になりたい!”っていうのはなくて。いい意味で、子供心も忘れず、だらけ心も忘れずにいたいです(笑)。楽しくやっていきたいというのが一番かもしれない。その中で、自分の芯の強さが生まれてきたらいいなと思いますね」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/中村功
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION
AYANE『#Twenty』LIVE TOUR 2023
8月4日(金) open 18:30 / start19:00 東京 Spotify O-Crest
8月28日(月) open 18:00 / start18:30 名古屋 RAD SEVEN
8月29日(火) open 18:00 / start18:30 大阪 心斎橋VARON
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