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──既発のシングルヒットも多く収録されるわけですが、アルバムとしてまとめていく際、いかがでしたか?

藤原聡「アルバムももちろん作品なんだけど、活動の足跡という意味合いがすごく多いと思いますね。その中で、各々がやりたいこととか、今やりたいことをとにかくやるってことを、徹底というか、自然とそうなったところはありました。どうしても2019年の冬から今までってなると、結構な期間なので、割とその中でやりたいこととか、好きな音像とかもちょっと変わってきたのかなっていうことも、改めて聴き返してみてありますね」

──アルバムのリードトラック「アポトーシス」。このタイトルは意味として深いですよね。この曲のアイデアはどういうところから出てきたんでしょうか?

藤原「2020年の春ぐらいからメロディの断片はちょこちょこあったんですけど、この形にまとまって、歌いたいことが定まったのは2020年のちょうど自分の誕生日の日でしたね。あと1年で30ってことで、もう僕に残された20代の時間はほんとにわずかなんですけど、そこに思いをはせた時に浮かんだ、自分の中で持っている不安だったり、憂いだったりっていうものがあって、今までそういうものを曲にしちゃいけないと思ってたけど、すごくこれを綴って残しておきたいなという風に思ったっていうのがきっかけで」

──これは科学の用語で言うと"地球の成長に必要な細胞は死んでいく"みたいなことなんですよね?

藤原「そうですね。要はおたまじゃくしがカエルになる時に、尻尾がなくなったりっていうのもそういうことになるし。木の葉っぱが紅葉して枯れていくっていうのもそうなんですけど、結局"全ての生き物が永遠に生存し続けたらこの地球は破綻してしまう"っていう意味では、このでっかく世界っていうものが生まれ変わったり、どんどんどんどん新しい命が生まれていくっていうことを可能にしてるのはある種、地球にとってのアポトーシスというか、この世界のプログラム細胞死っていうことで、自分たちの命もいつかは失われていく、そういうものなんじゃないかっていう考えがタイトルに影響してますね」

──イメージとしてはお母さんが娘に語りかけてるような印象がありました。

藤原「あ、でもそういうようなことだと思います。もちろん対象をあまり限定しないようにはしたいんだけども、例えば普通に自分より歳の上の家族でもいいし、下の家族でもいいし、いろんな存在に対して思うことなんじゃないかな?と思って。まぁ普通にバンドっていう、この形をとってもそうだなと思うし。いつまで続けられるのかとかも正直わからないんですけども、続けられるうちは一生懸命、慈しみながらやるっていうことが大事なんだろうなっていう。半分諦めに近いけど、そこに実は希望もあるっていうところがあったんだけど、"こうしたら大丈夫だ、こう思えば大丈夫だ"って答えが最終的に出ませんでしたっていう楽曲ではありますね。普通に命がなくなっていくというさだめを前向きに理解できる言葉が自分の頭の中には存在しなかったので、存在しないなら書けないので、それをリアルに形にするのが一番自然だと思いました」

──アレンジに関してですが、楽器はどれぐらい入ってるんですか?

藤原「たくさん入ってます。結構リズムを作ったりとか、あとは明確にアタック音のない楽器を担当して欲しくて。なので、最初の音とかは人間の声をサンプリングして作りました」

──割とエレクトロニックな聴感ですけど、楽器の使い方で聴きどころはありますか?

小笹大輔「たぶん、ストリングスとか使ったら映える曲だとは思うんですよ。イメージがつくというか。それをこう、ただ荘厳とかいう方向に行くんじゃなくて、力強さみたいなのもあった方がいいだろうし、ストリングスがやりそうなフレーズをツインリードでハモって弾いてるんですけど、意外と針の穴を通すようなとこを行かないといけなくて。それを暑苦しくやっちゃったりとかしたら、また違う聴こえ方になってたと思います」


──そして今回はいよいよ松浦さんと藤原さんのコライト楽曲「フィラメント」が登場しました。

松浦匡希「最初、まず一人で作るっていうので、サンプリング音源をループして、そのコードの中でずーっと歌のメロディを考えてたんですけど、なんか限界があるなと思って(笑)。さとっちゃん(藤原)に相談したんです。そしたらなんか"こういうメロディの展開があった方がいいんじゃないか?"っていうのが、どんどん出てきて。で、メロディが変わると持ってくる言葉も変わってくるじゃないですか。だったらもう作詞作曲、共作にした方が面白いんじゃないかっていう風になっていって、共作で仕上げて行きました」

──当然ですが、作曲者が違うとこんなに歌メロって違うんだと思いましたね。

松浦「ならちゃん(楢﨑)も大輔(小笹)も書いてますけど、なんか前作で感じたんですよ。"あ、この人書いたんだろうな"って近い人だとわかるものになるんだなって、今回自分が書いてみて、"俺の写し鏡"じゃないけど、そういうのがすごい出てるなとひしひしと感じました」

──これはアレンジに絡んでくるところだと思うんですが、印象はU2でした。松浦さんにはそういうイメージはあったんですか?

松浦「これもバンドって面白いなと思うところなんですけど、正直、僕の頭の中に、最初はそんなに明確に音像がなくて。で、ざっくり、"こうしてみると面白そうだよね?"みたいなのをメンバーと話してて。曲を詰めてく中で、大輔がこういうギターの音持ってきてくれて、みたいな。持ってきてくれた音から、"あ、じゃあこうしよう"みたいに、どんどん、メンバーが言葉もですけど、出してくれたような感じがして。なんかそれでようやく1曲に仕上がっていきました」

──小笹さんがエッジ、みたいな?

小笹「そうですね(笑)。U2はまぁなんかちゃんまつ(松浦)から、変わっていく過程の中でリファレンスとして持ってきた中に一つにはあって。まず使う楽器のことを相談してた時に、なんか"もっとストリングス使おうか?"みたいなイメージもあったんですけど。だから大雑把にいうとコールドプレイに行くか、U2に行くか、みたいな瞬間があって。バンドの楽器を推してった方がいいってことだったんで、だからストリングスじゃなくてギターだなっていう話になって。で、音像の広い・狭いみたいな選択があったんですけど、ちょっと広い方に行ってみようかなと思って、ギターで重ねて広げてって、やってったらエッジみたいになってましたね(笑)」


──そしてこれは間違いなく楢﨑さんの曲だと思った「みどりの雨避け」。毎回、アルバムの中にあったかい曲を連れてくる人なんだなと。

楢﨑誠「お酒大好きだから、歌詞にお酒のワード入れたいなと思って、そこからまた発展させて行ったら......僕、街で飲むの大好きなんで、立ち飲み屋さんだとか、行ったことのない街でスッと入って飲んでみるとか、そういうの大好きだったんで。そういうことって、最近やりづらくなってるけど、まぁみんな好きっしょ、っていう感覚ですかね(笑)」

──故郷のことを歌ってるのかな?と思いつつ、頼むお酒がボウモアなので行きつけのバーなのかなという想像もできて。

楢﨑「"行きつけバー"的なこと考えながら、行きつけになってる。イコール、故郷みたいなものと似てて、もう第二の自分の場所になっちゃってるじゃないですか。そういう感覚はあるんだと思うんですよね。だからDメロで自分の少年の頃を思い出してるのも、たぶん時代時代の故郷感みたいなのも入ってるのかもしれないですね」

──ちょっとロードムービーぽいというか。アコーディオンやバンジョーとかも入ってます?

楢﨑「クラシックギターと、バイオリン、アコーディオン。一番最初はクラシックギター一本とボーカルと、あとリズムはトントントンっていう音だけでいいんじゃないかと思ってて。僕はビートルズの「ブラックバード」大好きで。3フィンガーだけでやってて、あんな曲ができちゃうのってすごいなと思ってて。ギターから作り始めて、それでやろうと思ってたんですけど、ちょっと他の音もいるなと思って(笑)」

──この曲だけがアコースティックなテイストなんだけど、それでもこの14曲の中に入ってて浮かないのが不思議で。

楢﨑「これはやっぱヒゲダンっていうバンドの包容力なんでしょうね」


──一番イライラしてる状態をコミカルに落とし込んでいる「ペンディング・マシーン」はアルバムならではですね(笑)。

一同「(笑)」

──でもこういう遊びはアルバム曲で聴きたいので嬉しいです。

藤原「あーの、思ってますね、こういうことを(笑)。割と2019年に『Traveler』あたりで出てきた時、なんていうか"邪気のない人たち"みたいな捉え方されてた部分があって。それはそう思ってても別にいいんですよ。ただ、自分たちが思わず誰かのためとか、保身のためにやるのをやめようと思っていた部分がもしかしたらあったんじゃないかなっていうところがあって。ま、単純にコロナになってからどんどん人と会うようりも、人の発する言葉ばっか見るようになってきて、すごいヤだったんですよね。相手のこととか知りもしない人がいろんなこと言ってたりとか、あとは同じものを好きな人同士なのにそれの何を知ってるとか、何を持ってるとか、思いの優劣を競い合ったり、ってことをしてるのってなんなんだろうな、と思って」

──加熱する一方でしたからね。

藤原「でも"僕たちはそういう幻影に惑わされずに健全に生きてますよ"って聞こえるかもしれないけど、全然そんなことはなく、ガッツリとこの時代の被害者になっているわけでして。でも、だからこそ、一旦逃げることが大事というか、そんなにあの世界に張り付いていられるほど、僕の心は強くないので。でも、"もっと思いやれよ"って、人に向かって言えるような立場の人間でもないんで、それは2番で歌ってる通りで、自分も過去にやってきたこともあるし、自分が普通に今、現在進行形で人が嫌な思いすることも言ったりしてることもあるわけで、っていう。これも解決とかないですよね。ただ、僕は疲れたと。疲れたんで、ちょっとここらへんでお暇させてもらいます、そういう曲になっております」

──最高なのが、ボーカルのエフェクトに滲むユーモアで。

藤原「怒ったり疲れ果ててますけど、それをコミカルにやるのがすごく楽しかったです。逆にこういう気持ちだからこそ軽快っていうか、少しコミカルなトラックの中でやりたくて。でも躊躇はしてましたね、この歌詞。"思い切って書いちゃったけど、ええかな?"みたいな。それを辛抱強くメンバーやチームのみんなが"いいと思うけどな"って背中押してくれて、無事リリースとなりましたけど」

──そして小笹さん作の「Bedroom Talk」。いつも外からの風を連れてきますね。

小笹「せっかくなんでというか、試せる機会があれば外からの風を試したいと思ってるフシがあるんで。mabanuaさんと有賀さんというお二人をお招きして、超助かりましたね(笑)。まずギターはアレンジとディレクションをやっていただいて、自分は弾くことにしたんですけど」

──mabanuaさんが叩いてるわけじゃないんですけど、あのタイム感て出ますよね。

小笹「ドラムだけじゃなくて、ベースとか鍵盤とかも一回、mabanuaさんに揉んでもらってて、これ。グルーヴをとにかく自分の手札にないものからやりたいなという思いがあったので、レイドバック感とか。まぁそれに関してはイメージとしてまずmabanuaさんが出てきたんで。最後、メンバーが弾き直すにせよ、出てくるフレーズとかもレイドバック感があったり、全然変わってくると思う。それもあって、4人の楽器使ってるけど、4つの楽器、一回他人に全部、揉んでもらって。面白かったです」

──ラストの藤原さん楽曲の「Lost In My Room」。これはなかなか途方に暮れたまま終わりますねぇ。

藤原「途方に暮れてますねぇ。まぁまず自分たちでほんとにいいと思ったものを作るっていうことがファンのみんなにとってもいちばん、真正面から向き合うことだと思ってて。とは言え、"自分のこの浮かんだアイデアが喜んでもらえるだろうか?"とか、"どれだけの人に気に入ってもらえるだろうか?"っていう恐怖心というか、そういうものもそこには内包されてて、っていうのがすごく出てるから、曲作りの時の大体この歌詞で歌ってるようなモードに入ったら早く寝た方がいい」

──(笑)。

藤原「例えるなら、曲作りやバンドの活動っていうものに対して、全部がうまくスルスル行かないってことを好意的な立場で歌ってる1曲目の「Editorial」と、そこに大きな不安を抱えているっていう、この「Lost In My Room」っていう楽曲があって。どちらも自分の心の中にあって、それが日々顔を出しながら、人生が続いているっていうのはすごくリアルかなと」

──今回、内面の正直さが出ている曲が多いので、むしろまだまだこれから進んでいく道の途中という印象を抱くのかもしれないです。

藤原「でも、いい制作でした。すごく。これから先続けていくために大事な鍵を4人でつかむことができたような気がしていて。それが何よりの財産だなと思っていますね」

(おわり)


取材・文/石角友香
LIVE PHOTO/TAKAHIRO TAKINAMI









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