Photo by Tom Beetz, CC BY 2.0

1930年9月にニューヨークで生まれたソニー・ロリンズ。9歳でピアノを始め、11歳でアルトサックス、そして高校時代にテナーサックスを手にします。その頃から、後にジャズのスタープレイヤーとなるジャッキー・マクリーンやケニー・ドリューたちとも演奏活動を行うようになりました。

1950年、マイルス・デイヴィスがロリンズの才能に惚れ込み、彼は若くしてジャズ界のスターダムに駆け上がります。そんなロリンズを誰もが「無敵の天才」と呼びました。最大の武器は、ダイナミックで繊細なテナーサウンドと、ステージに立つまで何が飛び出すか本人にすら分からない圧倒的なアドリブです。またキャッチーなカリプソのリズムを取り入れた「セント・トーマス(St. Thomas)」や、腕試しのスタンダード曲となった「オレオ(Oleo)」など、数多くの作曲も残しました。

「セント・トーマス(St.Thomas)」by YouTube
私がジャズを聴き始めた頃に大好きになったロリンズ作品を紹介します。1956年にプレスティッジ・レコードからリリースされた大名盤『サキソフォン・コロッサス』の1曲目。カリプソに影響を受けた明るい曲で、タイトルの由来はセント・トーマス島です。母方がヴァージン諸島出身ということもあり、彼は幼い頃からカリプソに親しんできたそうです。マックス・ローチの豪快なドラミングに、ロリンズの踊るようなテナープレイが繰り広げられ、誰もが夢中になりました。



しかし1950年代後半、ロリンズ最大のライバルとして立ちはだかったのが、同じテナー奏者のジョン・コルトレーンです。コルトレーンの迫り来る演奏に、彼は畏怖とプレッシャーを感じたといいます。

人気絶頂の1959年、「自分の演奏に納得がいかない」という理由で、ロリンズは突如として表舞台から失踪します。彼が向かったのは、マンハッタンのウィリアムズバーグ橋でした。ほぼ毎日10~16時間、サックスを吹き続けた2年間。この伝説のスランプ克服こそが、彼の音楽を唯一無二の次元へと押し上げたと言われています。ちなみに、復帰後の1962年のアルバムタイトルが『橋(The Bridge)』というのも納得です。

Photo by Brianmcmillen at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0

1963年には初の来日公演を果たし、その後も2014年に引退するまで、何十年にもわたって「生きたジャズ」を演奏し続けました。

2026年5月25日、95歳で旅立ったジャズ界の大巨人=サキソフォン・コロッサス。彼が遺してくれたダイナミックで繊細な音に心を寄せて、大きな拍手を送りたいと思います。

(おわり)

文/小島万奈(USEN)


Photo by Tom Beetz, CC BY 2.0
Photo by Brianmcmillen at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0




小島万奈(こじま まな)PROFILE

株式会社USENのジャズ担当。趣味はもちろんジャズを聴くこと、にしておきます。最近は薬膳に興味があるが、好きな食べ物はアメリカンなジャンクフード。

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