今回からジャズ・ジャイアンツの極め付き名盤、そして、とりあえずこれだけは聴いておきたい彼らの名演の数々をご紹介していこうと思います。現在でも元気に活躍しているテナー・サックスの大御所ソニー・ロリンズは、1950年代からジャズ・シーンの第一線で活動し、多くの名盤を残しています。

『ソニー・ロリンズ第2集』(Blue Note)は、珍しくトロンボーンのJ.J.ジョンソンとの2管クインテットで、収録時期は1957年ですがバップ的勢いにあふれた快演。ホレス・シルヴァーのピアノも決まってます。他のトラックには、ロリンズと相性のよいモンクも入っている。

そしてご存知『サキソフォン・コロッサス』(Prestige)。このアルバムの代名詞的名曲《セント・トーマス》も素晴らしいが、マニアは《ストロード・ロード》がお気に入り。そして《あなたは恋を知らない》も極め付きです。とにかくこのアルバムはすべての曲に利き所がある、まさに彼の代表作。

『サキコロ』とならんで有名な『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』(Blue Note)は、ライヴ・レコーディングの名盤として評価が高い。ロリンズ自身の曲目紹介で始まる《ソニームーン・フォー・トゥー》はこのアルバムの白眉で、ゴリゴリとしたちょっと硬質なロリンズのテナー・サウンドはいやがうえにも臨場感を盛り上げます。

ソニー・ロリンズを語るとき、必ず言われるのが彼の「歌心」です。ビ・バップのギザギザしたラインに比べ、ロリンズのフレーズは滑らかでメロディアス。それでいてジャズのスリルは失われていないのですから、これは凄い。そうした彼の資質が現れたのが『ワーク・タイム』『ウィズ・モダン・ジャズ・カルテット』(ともにPrestige)ではないでしょうか。コール・ポーターの名曲《イッツ・オールライト・ウィズ・ミー》や《ウイズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート》の流れるような軽やかさ、この境地は本当に誰にもまねできません。

もちろんロリンズはハードバップ的名盤も多く、ウイントン・ケリーをサイドに従えた『ニュークス・タイム』(Blue Note)はその手の人気盤です。人気といえば映画の主題歌を扱った『アルフィー』(Impulse)も発売当時ジャズ喫茶でよくかかりました。このアルバムはアレンジも良かった。

ロリンズはあっさり系のアルバムにも良いものが多く、『サウンド・オブ・ソニー』(Riverside)などはブルーノートのものとは一味違う上品さが聴き所。その系列に属するのがウエスト・コースト・ジャズの大物たちと共演した『ウエイ・アウト・ウエスト』『ウイズ・コンテンポラリー・リーダーズ』(ともにContemporary)で、ロリンズのテナーの音色がブルーノート録音とはまったく違うのが面白い。プロデューサー、録音技術者の感性の違いがよくわかります。

80年代以降のロリンズはあまり注目されていないようですが、『プレイズ・G・マン』(Milestone)は久しぶりの快演です。15分以上吹きまくるタイトル曲は圧巻。そして最後の『ビッグ・ブラス』(Metro Jazz)は、レーベルが珍しいのであまり知られていないのですが、トリオ演奏を収録した面が素晴らしい。後にヴァーヴから『ブラス&トリオ』と改題されて出たので、そちらを探してみることをお奨めいたします。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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