ジャズ喫茶でよくかかるブルーノート裏名盤というタイトルだが、「裏名盤」の意味をちょっとヒネってみた。試みに、アナログ時代のB面、つまり裏面がよくかかるアルバムばかりをピックアップしてみたのだ。そうしてみると、マニアの言ういわゆる裏名盤、要するに知る人ぞ知る好盤と見事に一致するのである。

これは理由のないことではない。アナログ時代はA面の最初に一番派手というかキャッチーな曲、たとえば《モーニン》などを入れ、B面には、ちょっと地味だけれどミュージシャンのホンネが出た演奏を入れるという傾向があったからだ。マニアの巣窟、ジャズ喫茶では、思いのほかB面の登場回数が多いのもそんなところに原因があるのかもしれない。

ドナルド・バードもジャズ喫茶での登場回数が多いミュージシャンだが、このアルバムはいつものコンビ、バリトン・サックスのペッパー・アダムスの他に、テナー奏者チャーリー・ラウズが起用されている。ウオルター・デイヴィスの哀愁を帯びたピアノも良く、マイナー調の曲想が印象的。

ジャッキー・マクリーンのブルーノートB面名盤は『ジャッキーズ・バッグ』『デイモンズ・ダンス』が有名だが、マクリーン特集でご紹介したばかりなので、今回は『ブルースニク』を聴いていただきます。フレディ・ハバードとの2管だが、タイトルどおりブルージーな感覚にあふれた好演だ。このアルバムなどもA面の印象だけではあまり購買意欲が湧かないかもしれないが、裏に聴き所があったのだ。それにしても、ブルーノート、マクリーンは裏に宝が眠っている。ご参考までに挙げておけば、『スイング・スワング・スインギン』などはA、B両面とも良い演奏だ。

ケニー・バレルの『ミッドナイト・ブルー』自体はむしろ表名盤と言ってよいぐらいの知名度があるが、CD時代はさておき、昔はA面ばかりが有名だった。だが、このアルバムの聴き所はむしろB面で、メジャー・ホーリーのベースに導かれて登場するスタンレイ・タレンタインのドス黒いテナーが迫力満点。

その名も『クリフ・ジョーダン』とシンプルなネーミングのこのアルバムの聴き所は、トランペットにリー・モーガン、アルトはジョン・ジェンキンス、そしてトロンボーンにはカーティス・フラー、そしてジョーダンのテナーという豪華な4管が醸し出す厚みのあるアンサンブルだ。くすんだ音色が持ち味のジョーダンに似合った、黄昏色の曲想がいかにもハードバップ。

ハンク・モブレイの『アナザー・ワークアウト』は未発表セッションだが、面白いことに、これも最初に出たアナログ盤B1曲目に収録された《ハンクス・アザーソウル》が実に良い。ジミー・スミスは山のようにブルーノートにアルバムを残しているが、これはスタンレイ・タレンタイン、ケニー・バレルをサイドに迎えたセッションで、バレルの『ミッドナイト・ブルー』にオルガンが加わったと見ることも出来る。だとすれば、これもまたタレンタインの黒さが聴き所で、彼の作曲した《マイナー・チャント》が気分。

ボビー・ハッチャーソンの『ハプニングス』は昔からB面が有名で、それはもちろんハンコックの名曲《処女航海》が、ハンコックのリーダー作より曲の良さを生かしているのではないかと言われてきたからだ。確かにハッチャーソンのヴァイブとハンコックのピアノが生み出すクールなサウンドは、斬新なこの曲のイメージにピッタリだ。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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