2023年から例年開催されている「渋谷のオカユ」は、渋谷のギャル出身のおかゆにとって、ライフワークとも言える公演。3年目の今年は昭和100年にあたることにちなんで、自身がこよなく愛し、流し時代にもよくリクエストに応えていた昭和の名曲をたっぷり歌うというコンセプチュアルな内容で、バックバンドとダンサーを従えたステージも通常のライブとは一線を画すスペシャルなものだった。
くしくも公演日の11月1日は、個人事務所設立から、ちょうど半年となる節目の日。おかゆは開演前の囲み取材で、自ら電話でライブ会場を押さえるところから、どうにか開催に漕ぎ着けるまでの苦労を明かし、「人はひとりでは生きていけないことを、改めて痛感しました。たくさんの方々の力添えのおかげで、こうして新しい物語を始められるので、感謝の気持ちと私の覚悟をお届けしたいと思います」と語っていた。

赤のハッピを身にまとい、最前列に陣取る親衛隊の熱烈なコールを受け、ライブは「シブヨル」「渋谷のマリア」「渋谷ぼっちの歌謡曲」という渋谷三部作でスタート。スペシャルなステージと先に述べたが、この日はバンドマスターとして、高橋真梨子バンドのサックス奏者、野々田万照が迎えられていた。そこには、敬愛する高橋真梨子に一歩でも近づきたいという、おかゆの切なる願いが込められている。そして男女のダンサーが登壇。おかゆの情感豊かな歌の世界に、時に激しく、時に儚く、彩りを添えていく。
ちなみに「シブヨル」は、錦織一清(少年隊)とパパイヤ鈴木によるユニット、Funky Diamond 18にカヴァーされており、10月にリリースされた彼らのアルバム『PHOENIX』にも収録されている。渋谷の喧騒やきらびやかな空気感をリアルに描き出す、おかゆの渋谷シリーズは、都会での暮らしを夢見る人はもちろん、実際に都会で生きる人々の心もとらえずにはおかないのだ。

ライブ中盤は、注目の昭和歌謡カヴァーパートだったのだがさすがはおかゆである。美空ひばり「お祭りマンボ、弘田三枝子「ヴァケーション」、ちあきなおみ「夜間飛行」、ペドロ&カプリシャス「別れの朝」など、リアルタイマー世代のファンもうなる選曲が絶妙で、楽曲を愛で、慈しむような歌唱も実に見事。その姿からは、昭和の名曲を自分が歌い継ぐという覚悟が、ひしひしと伝わってきた。
そして終盤には、スペシャルなゲストが登場。女優であり、SAKI名義で歌手としてもデビューを果たしたおかゆの妹の咲貴だ。おかゆの衣装やグッズを手がけていることでも、ファンには知られている。SAKIのデビューシングル「瞬」と、母親の口癖を曲にした「七転び八起き幸せに」の姉妹デュエットに、会場が沸き上がった。
今年6月にリリースされた、独立後の第1弾シングル「ジモンジトウ」を力強く歌い上げて、本編が終了すると、会場には自然発生的に合唱が広がっていく。歌われているのは、「渋谷のマリア」だ。このアンコールには、ステージに戻ってきたおかゆも「こんなことは初めて」と、感慨深げだった。最後は「ヨコハマ・ヘンリー」で観客と“ゲッチュー!”ポーズを、「ガラクタのど真ん中で」でラララの大合唱を決めて、記念すべき独立後初のライブは幕を閉じた。
「メジャー・デビュー10周年の2029年までに、LINECUBE SHIBUYAで「渋谷のオカユ」をやりたい。絶対に連れていきます。いや、連れていってください」と、ライブの最後に目標を宣言したおかゆ。志も新たに走り出した彼女は、12月24日に新曲「君ならできる」を配信リリースし、2026年1月4日には新春ライブ「おかゆ 2026」をLoft9 Shibuyaにて開催する。
(おわり)
取材・文/鈴木宏和
写真/平野哲郎
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おかゆ「ジモンジトウ」DISC INFO
2025年6月18日(水)発売
G線上盤/VICL-37783/1,500円(税込)
ビクター

おかゆ「ジモンジトウ」
2025年6月18日(水)発売
シブヨル盤/VICL-37784/1,500円(税込)
ビクター

おかゆ「ジモンジトウ」
2025年6月18日(水)発売
桑名盤/VICL-37785/1,500円(税込)
ビクター



















