残暑厳しい赤坂の夜、Jazz Dining B-flat。テーブル席で、カウンターで、グラスを傾けながら開演を待つ人々。ライブへの期待が高まる中、まずはMCの宮本隆治が登場し、主役であるおかゆを呼び込む。この日ステージに立つ3人の出会いや、昨年の吉田正音楽記念館でのコンサート、2日前にビクターの先輩方との食事会で教えを請うたエピソードで会場を和ませつつ、おかゆのショーがスタート。
白いロングドレスに身を包んだおかゆ。まずはちあきなおみのカバー「朝日楼」を披露。ハイチェアに腰を掛け、クラブシンガーのように深みのある歌声で観客を昭和歌謡の世界へと一気に引き込む。続いてはペドロ＆カプリシャスの名曲「別れの朝」「五番街のマリーへ」「ジョニーへの伝言」をメドレー。母の影響で大好きになったという髙橋真梨子へのオマージュを感じさせるステージを展開。
さらに、鶴田浩二の「傷だらけの人生」をセリフ入りで情感豊かに歌い上げ、ムード歌謡のテーマを逆手に取り、独特の魅力を引き出した。
続いて吉田 正作品でおかゆが得意とする歌謡ブルースの名曲、古都清乃「和歌山ブルース」をカバー。ここでギターを手に弾き語りバージョンで三沢あけみの「島のブルース」を披露。途中、タブレット純が赤いスヌーピーがプリントされたTシャツに短パン、サンダルというリラックスした姿で乱入。客席を笑いの渦に包みつつも圧倒的な低音ボイスで2番を競演。
さらに、所属レーベルであるビクターの先輩、門倉有希の「ノラ」を力強く歌い観客を魅了した。その後は、松尾和子の「再会」、青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」ではセクシーかつ哀愁漂う歌声で披露し、昭和歌謡から学んだ大人の色気をたっぷりと表現。
最後は、自身の新曲「渋谷ぼっちの歌謡曲」を披露し、ファンの熱い声援を浴びながら第1部のおかゆショーが幕を閉じた。
おかゆのショーが終わり、再び登場した宮本隆治が呼び込むと、紫のスリーピースに胸には真っ赤なバラという個性的な出で立ちでタブレット純が登場。フランク永井の「東京カチート」から始まり、軽やかなステップを交えながら石原裕次郎の「俺はお前に弱いんだ」、そしてフランク永井の「16トン」を披露。「ムーンリバー」では、テーブルを回って観客と握手を交わすなど、ディナーショーさながらの演出で会場を盛り上げた。トークでは、ラジオのレジェンドパーソナリティたちや演歌番組のナレーションのモノマネを披露。笑いに包まれるひととき。
笑いの後には、愛用のギタレレを手に取り、「コモエスタ赤坂」をしっとりと演奏。そして、この日に訃報が伝えられた、敏いとう氏への追悼を込めて「わたし祈ってます」でムード歌謡への深い愛情を感じさせた。その後、自身が作曲した特撮ヒーロー映画のテーマ曲「超伝合体ゴッドヒコザ・のテーマ」をアクション付きで披露。フロアを沸かせてショーはクライマックスへ。最後には、加藤登紀子作詞作曲の新曲「母よ」をしっとりと歌い上げ、心に響くフィナーレを迎えた。
最後のコーナーは、おかゆ、タブレット純、宮本隆治の豪華共演で、昭和ムード歌謡の名曲を披露。まずは宮本隆治がイントロで渋いナレーションを加えつつフランク永井の「おまえに」を熱唱。会場を一気に昭和ムードに引き込んだ。
続いて、おかゆと宮本のデュエットで「東京ナイトクラブ」を披露。ラテンステップを交えたパフォーマンスで観客を魅了。曲中、ラテンのリズムに乗ったダンスレッスンも展開され、会場はさらに盛り上がった。
タブレット純はダークブラウンののスーツに身を包み再登場。元マヒナスターズのボーカリストとしておかゆと「グッド・ナイト」をデュエット。ムード歌謡の象徴とも言える一曲を、二人が息の合ったパフォーマンスで披露し、感動を呼んだ。
クライマックスは、3人でマヒナスターズの名曲「誰よりも君を愛す」をフルコーラスで熱唱。おかゆの深い歌声、タブレット純の魅惑の低音、そして宮本隆治の堂々とした歌唱が一体となり、会場全体を包み込むような圧巻のフィナーレとなった。
最後に3人が共演した「いつでも夢を」のパフォーマンスでは、会場の温かな雰囲気とともに、昭和歌謡の持つ哀愁と温もりが改めて感じられた。おかゆは「昭和歌謡がさらに好きになった」と語り、この夜のショーは、観客だけでなくステージに立った3人にとっても特別な一夜となったことを感じさせられた。
（おわり）
取材・文／松崎泰資（USEN）
写真／平野哲郎
おかゆ「渋谷ぼっちの歌謡曲」DISC INFO
2024年5月1日（水）発売
遥かな人へ盤／VICL-37733／1,500円（税込）
ビクター
おかゆ「渋谷ぼっちの歌謡曲」
2024年5月1日（水）発売
ミッドナイト盤／VICL-37734／1,500円（税込）
ビクター
