今井翼:INTERVIEW
──今回、映画『TELL ME ~hideと見た景色~』にhideさんの弟、松本裕士さん役で出演なさいました。この作品が翼さんにとっては映画初主演であり、しかも、それがロック界のレジェンド的存在であるhideさんの物語です。最初にお話をいただいたときは、どんな気持ちになりましたか?
「僕は、小学生のころにX JAPANに魅了されて以来、ずっと音楽を聴いていました。しかも、裕士さんは実在の人物ですし、音楽のことは何もわからない中でhideさんのパーソナルマネージャーになった方。兄弟がアーティストとマネージャーという関係になるのって、めったにないことだと思いますし、なかなか難しいことでもあると思うんです。ただ、hideさんが亡くなった後にも、裕士さんの中にはあきらめない気持ちがとても強くあって。それで、いろいろな人の力を借りながらも、hideさんの想いを自分がしっかり継いで残し続けたいという信念を持っていたんですね。それだけに僕もしっかりとした意志を持って演じたいなと思いました」
──hideさんというカリスマを兄に持った苦労も裕士さんにはあったと思います。
「本当にそうだと思います。hideさんは、まさにカリスマ。音楽性はもちろん、ファッション性などでもたくさんの方から支持されていた方。圧倒的な人気があった。マネージメントの経験があったわけでもなく、かといって教えてくれる人もいないので、最初の頃は何をやってもうまくいかなかったと思うんですよ。hideさんに求められるところに行こうとしても、なかなか行けない。そういうもどかしさは、とてもあったでしょうね。残念ながら映画に入る前にはタイミングが合わなくて裕士さんにはお会いできなかったんです。だから、裕士さんがお書きになった『兄弟 追憶のhide』と、台本を読んで、自分なりに咀嚼して挑もうと思ったんですけど、それでもやっぱり非常に難しい役どころではありました」
──実在の人物ですからね。
「そうなんです。イン前にhideさんのお墓に行って手を合わせてきました。ただ、裕士さんをどう演じるかに関しては、どうしても実際に現場に立たないと感じられないことが多くて。それだけに全てはクランクインしてからだなとは思っていましたね」
──現場に入り、共演者の方たちと接する中で発見したことはありましたか?
「今回の作品は、全ての面においてI.N.A.さんの存在が大きいんですよ。当然、I.N.A.さん役の(塚本)高史くんの存在も大きかったですし、僕にとっても、高史くんがいたことは、とても心強かったです。現場に入って、2人で“ああしよう、こうしよう”と話し合うということは、ありませんでした。それでも裕士としての迷いを表現する上でも、そしてこの役を演じる中で葛藤する僕自身にとっても、I.N.A.役が高史くんだったことはよかったです」
──裕士さんとI.N.A.さんの関係性にも通じる部分があったのかもしれないですね。
「そうですね。すごく助けられました」
──映画を拝見していて、裕士さんは不器用だけど、とても真っすぐな方だなという印象を受けました。翼さんご自身は、どんな部分にこだわって演じられましたか?
「自分の色を足していくというよりは、裕士さんの気持ちやそのときの状況を自分なりに想像してやることが大切だと思うんですよ。裕士さんと全く同じではないですけど、僕自身も生きていく上で悩んだりつまずいたり、なかなかうまくいかないことってあって、そういう経験をひとつ自分の中からつまみ出して演じました。そうすることによって、素直に自分なりに演じられたような気がしています」
──なるほど。翼さんご自身の人生経験もちゃんと生かしながら。
「そうですね。もちろん裕士さんの人生っていうのは、僕とは比べようもないほど大変なものだったと思います。」
──この作品をやってみて、改めてhideさんの魅力に気づいた部分はありましたか?
「今でも熱狂的なファンがたくさんいるくらい、唯一無二のカリスマですし、この映画の中でも描かれているように、今もファンの人ひとりひとりの中で生き続けているんだなと再確認しました。特に当時のファンの方にとっては、hideさんは生きがいだったと思うんです。そういう意味では、もしかしたらこの作品に対しても、複雑に思う方がいても当然だと思うんですよ。僕は、この作品を見て、すごくhideさんを近くに感じたんですけど、ご覧になった方、それぞれが捉え方は違うと思いますから。だからこそ、残された関係者の方やファンの悲しみも感じながら丁寧に描いたつもりですし、この作品に関わった全員が本当に真剣に取り組みました」
──翼さんや塚本さんだけではなく、hideさんを演じたJUONさんも、相当な覚悟が必要でしたでしょうね。
「JUONくんがhideさん役を引き受けた勇気には敬意を払いますし、彼だけじゃなく、ひとりひとりにそういう想いがあったと思います。だから、ライブシーンもすごく充実していますし、出来る限り緻密に作っている。やっぱり誰もがここで表現されているhideさんの人柄やhideさんにしか作れない音楽を通してhideさんの魂を感じ取っていただけたらと思いながら、この作品にたずさわっていたんですよ。それだけにファンの方だけではなく、世代を問わず、それを感じていただけたら僕たちも嬉しいです」
──作品を拝見していて、やっぱり音楽って素晴らしいと改めて思いました。
「そうですね。音楽の力って、すごくあると思います。僕自身、音楽がとても好きですし、音楽に救われたり、音楽で自分を鼓舞することもできたりするんですよ。今回はhideさんが残したものを大切に繋いでいくということがテーマでした。今はコロナ禍で、まだ映画館に足を運ぶことを躊躇する方もいらっしゃると思うんです。だから、絶対に劇場で見ていただきたいとは言えないんですけど、逆に言えば、この状況ゆえにストレスを感じていらっしゃる方も多いはず。そういうときだからこそ、今一度hideさんの音楽の魅力と共に、普遍的なものの大切さを感じていただけたら、エンターテイメントをやっている立場としてありがたいですね」
──今回の作品では、hide with Spread Beaverのドラムス・JOE役で川野直輝さんが出演なさっています。川野さんは翼さんとは若い頃に共に活動なさっていた時期がある方。だから、とても感慨深い気持ちになりました。
「僕も本当に縁を感じましたね。実を言うと4~5年前ですかね。今回も出演して下さっている北山雅康さんと親しくさせていただいていて、川野と3人で食事をしたことがあるんです。そのときに、“じゃあ、もう一軒行こう”と飲みに行ったバーが、hideさんが生前通っていたお店でした。そのバーのhideさんがよく座っていた場所の壁にはhideさんの写真が飾ってあるんです。僕も川野も元々X JAPANが好きなので、そのとき、そのバーでX JAPANやhideさんの歌を2人で歌いました。それから何年か経って今回のお話をいただいた上に、そのキャストの中に川野もいる。それを聞いたときは、なんて言ったらいいのか...」
──運命的ですよね。
「そう!まさに運命的なものを感じました。昔、川野と一緒にやっていた時代からはずいぶん月日が流れましたけど、彼も音楽家として、そして役者としてずっと真摯に取り組んできていた。それが今回一緒にやってわかったので、その姿に僕は今回とても感銘を受けましたし、このご縁にも本当に感謝していますね。今回は僕が主演という形にはなっていますけど、作品自体は映画の内容と同じく、みんながひとつになって作り上げていくもの。バンドメンバー、みんなカッコイイんです。ライブシーンは本当に素晴らしいものになっています。」
──先ほど“ライブシーンが充実している”とおっしゃっていましたが、本当に素晴らしくて泣けました。昔から好きな方はもちろんですが、今はSNSが発達したこともあって、最近X JAPANやhideさんのファンになったという方もいらっしゃると思うんですね。そういう方たちにとっては、こうして改めてhideさんの歴史や生きざまを見ることは、いい機会になるような気がします。
「そうですね。何事においても、出会うきっかけってあると思うんですよ。だから、この作品を通して、今まではあまり知らなかった方にも、こういう素晴らしいアーティストがいたんだということ。そして、その人がいなくなってしまっても、残された人たちがあきらめずに前を向いて進んでいったこと。そういう全てを含めて見ていただきたいですし、その中で、この作品にしかないものを感じていただきたいと思っています」
(おわり)
取材・文/高橋栄理子
写真/野﨑 慧嗣
2022年7月8日(金)劇場公開『TELL ME ~hideと見た景色~』
『TELL ME ~hideと見た景色~』
出演:今井翼、塚本高史、JUON、津田健次郎 ほか
監督:塚本連平
脚本:福田卓郎 塚本連平
原作:松本裕士「兄弟 追憶のhide」(講談社文庫刊)
原案協力:I.N.A.「君のいない世界~hideと過ごした2486日間の軌跡」(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス刊)
配給:KADOKAWA
製作:映画「TELLME」製作委員会
©2022「TELLME」製作委員会
U-NEXT
劇場映画『TELL ME ~hideと見た景色~』公開に先立ち、『hide LIVE MOVIE ”PSYENCE A GO GO” ~20 YEARS from 1996~』をU-NEXT独占で見放題ライブ配信決定!
2016年に劇場公開された「hide 3D LIVE MOVIE ”PSYENCE A GO GO” ~20 years from 1996~」をご家庭でも楽しめるようにパッケージ化した『hide LIVE MOVIE ”PSYENCE A GO GO” ~20 YEARS from 1996~』。 X JAPANのギタリストであり、ソロアーティストとして圧倒的なカリスマ性で愛され続ける、hideのソロ2ndライブツアー「PSYENCE A GO GO」ファイナルにあたる東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた伝説のパフォーマンスを再編集した本作では、HD画質・立体音響システム・ドルビーアトモスのホームミックスした臨場感あふれるサウンドと映像で、当時のライブを目の前で見ているような臨場感を楽しめる、ファン必見のライブムービーとなっています。
7月8日(金)より劇場公開となる『TELL ME ~hideと見た景色~』と共に、長きにわたって色褪せることなくファンを魅了し続ける、hideの圧巻のライブパフォーマンスをお楽しみください。
>> その他ライブ映像はこちら
『hide LIVE MOVIE ”PSYENCE A GO GO” ~20 YEARS from 1996~』
>> ライブ配信の詳細はこちら
【配信期間】
ライブ配信:2022年7月2日(土)19:30~配信終了まで
【視聴可能デバイス】
・スマートフォン / タブレット(U-NEXTアプリ)
・パソコン(Google Chrome / Firefox / Microsoft Edge / Safari)
・テレビ(Android TV / Amazon FireTV / FireTV Stick / Chromecast / Chromecast with Google TV / U-NEXT TV / AirPlay)
※ライブ配信には1時間に最大約5.5GBの通信量を消費します。当日はWi-Fi環境での視聴を推奨します。
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