──三阪さんは今年3月に高校を卒業されましたが、何か環境の変化はありましたか?
「いちばん大きかったのは3月に高校を卒業して、上京してきたことです。音楽関係以外の友達はみんな大阪近郊にいるので、上京した当初は一人でいる時間もありました。引っ越し先のまわりに音楽をやっている子もがたくさんいて、新しい友達がたくさんできたんですよ。出会いは増えましたね。」
──ヘアスタイルのせいか、雰囲気も随分変わりましたね。
「高校在学中は髪の毛を染めちゃダメだったので、卒業してすぐに染めました(笑)。意外と馴染んでるので、ハイトーンカラーをもう少し続けようかなって思っています」
──スタイルの良さも際立って、すごく素敵です。メジャーデビューして一年が経って、環境が変化したり、背負うものもあったり、心境の変化もあるのでは?
「私自身はあまり変わってないんですけど、高校を卒業して、ひとりの社会人というか、音楽一本になったので、学校と両立している時以上に時間もできて、集中することや新しく始めることもたくさん増えましたし、音楽面では新しく曲作りを始めました。責任とかプレッシャーは日々大きくなっていきますけど、楽しくできているかなと思います」
──11月17日発売のデジタルシングル「Singing for the night sky」は、前作「I am ME」から一年ぶりのリリースとなります。様々な経験を経て、どんな思いで今作の制作に臨みましたか?
「私はあまりネガティブな内容を歌にすることがなかったんですけど、今年3月にKT Zepp Yokohamaでワンマンライブをやらせてもらった時に、コロナというみんなの共通の悩みがあって、それに対するネガティブな思いはみんなが共感できるものだから、発信してもいいのかなと思ったんです。ネガティブなものってあんまり好きじゃないなと思っていたけど、共感してもらえるような気持ちを私が歌うことで、みんなの心に寄り添えることもあるのかなと思って。それで今回、一年半ぶりに自分で歌詞を書いたんです。この一年半の中で自分の中に生まれてきた思いを楽曲に落とし込んでできた曲が「Singing for the night sky」です」
──コロナ禍を経験して、三阪さんの中に生まれてきた感情というのは?
「高校1年生の2月に東京と大阪でライブをしたんですけど、その辺りぐらいからコロナというワードが世に出始めて、“このライブはマスクをつけるのかどうなのか?”みたいな話をしてたんです。その頃はまだ他人事のような感じがしてたんですよ。そのライブで8ヵ所の全国ツアーをしますという発表をさせてもらったんですが、できなかったんですよね。それでもまた、すぐライブできるかなっていう気持ちだったんですよね。だけど実際は全然できる気配もなく、高校2年生3年生の間はいろんなことがあったなって……いや、いろんなことがなくなったなっていう気持ちの方が強いんですけど。それはきっと私だけじゃないと思いますが、コロナという共通の障害のせいでうまくいかないことがたくさんあったことを自分が歌にして発信してもいいんじゃないかって思うようになった。それがこの半年ぐらいのことです」
──その思いがまさにこの歌詞に反映されているんですね。
「そうですね。今回は書きたいことが私の中で明確に決まっていたので、作曲のオファーをする時にそれをみなさんにお伝えして、そこから膨らませて作っていただいたんです。先ほどお話したコロナ禍での思いだけじゃなく、SNSを見ていると、冬から春にかけてみんな何かから卒業をして、新しく社会人になった人もいれば、高校生が大学生に、中学生が高校生になって、環境の変化で何かうまくいかないなっていう呟きをよく見かけていて。私自身も環境の変化があったから、自分の素直な想いを歌詞にしたいなと思いました」
──候補曲はいくつかあったのですか?
「10曲近く作っていただいていて、その中でこの「Singing for the night sky」がデモ段階からすごく良くて。わりと即決だったと思います」
──どういうところが決め手になりましたか?
「私が書きたかったことって、決してポジティブなことではなかったんですけど、楽曲自体を暗くしたかったわけではなかったんです。この曲は爽やかさもあるし、かっこよさもある。私の中にスッと入ってくる楽曲だったんですね。そしてAメロやBメロは、私の感情を絶妙に表現してくれるような感じがあって、アレンジでもだいぶ変化したのですが、この曲で歌詞を書きたいなと思いました」
──アレンジは今回PABLOさんが手掛けていますね。
「そうなんですよ。昔からPABLOさんめちゃくちゃ大好きで!レコーディングの時に“アレンジはPABLOだから”って言われて、ドッキリかと思いました(笑)。私はLiSAさんが大好きなんですけど、いつもLiSAさんのステージで観ていた方が、レコーディングで横にいるんですよ!今回、PABLOさんがアレンジをしてくださったくれたことによって、この楽曲はすごい変わったんです。PABLOさんのエッセンスが加わることで、曲の輪郭がよりはっきりとしたんですよ。寂しさや辛さ、悔しさみたいなことを歌っている曲ではあるんですけど、このレコーディングや制作期間はすごく楽しかったです。本当にいい曲ができたなって。私一人だったらやらなかったであろう歌い方をしていたりして、みなさんの力があってこそ出来上がった曲だなって思っています」
──“一人だったらやらなかったであろう歌い方”というのは?
「感情が上がったり下がったりしている曲なので、それは大切にしたいなと思って。自分の素直な気持ちを書いた歌詞なので、レコーディングの際は歌詞を書いた時のことも思い出しつつ、歌い方でもその感情が伝えられたらいいなと思いながら歌いました」
──歌詞について、AメロBメロはご自身の心情と向き合っていますが、サビから<君>という存在が出てきて開けていくところが、すごく希望を感じるなと思いました。
「うれしいです!一人で悩んで解決できることって、私自身わりと少なくて。悩んだ後に、誰かと話したり、何かを見たり聞いたりすることで、救われたり解決していくことって多いなと思っているんですよ。この曲も、一人で悩んだり辛いなって思っている人にとって、そういう存在になれたらいいなって思います。」
──「Singing for the night sky」が12月3日から開催される映画祭「MOOSIC LAB 2023」のテーマソングに決定しましたね。
「うれしかったですね。今回「MOOSIC LAB 2023」の予告編とオープニング映像の監督をされている村田夕奈さんが私の一つ年下で、ほぼ同世代なんですよ。ふだんは同い年の方とお仕事する機会すらないのでに、年下と聞いた時は驚きでした。年下でもこうやって近い年代の方と、映画祭を通じて関われるということがまずうれしかったですし、すごく誇らしくて、ありがたいお話だなと思いました。同世代の人たちとひとつのお仕事をやり遂げるって、なんかすごいなって。予告映像を見させていただいたんですけど、村田さんの表現したいことに、この「Singing for the night sky」が作品に携われたことがうれしかったし、とても刺激になりました。実は村田さんに、“この映像を作っている時、三阪さんの曲が支えにでした”と言っていただいて、すごくうれしかったです。」
──ちなみに三阪さんはどんな映画が好きですか?
「私は『ヘアスプレー』がすごい好きで。自粛期間中にも何回も観ました。ミュージカル映画で、音楽がたくさん入っているのも好きになるポイントだったんですけど、主人公の女の子や登場人物が全員素敵で、一人一人のことを大好きになれるんですよ。とにかくハッピーで、でも人の痛みもちゃんとわかっているようなところも素敵だなって思います」
──2022年も残り少ないですが、今後の予定は?
「まず11月17日に「Singing for the night sky」がリリースになって、12月3日に「MOOSIC LAB 2023」があります。そして12月10日に国立代々木競技場 第一体育館で開催されるBリーグ アルバルク東京のホームゲームで、ハーフタイムショーに出演させていただくので、めちゃめちゃ楽しみです」
──それでは来年の目標は?
「半年後には20歳になるので、ラストティーンの間にやりたいことだったり、やるべきことを確実にやっていきたいなと思います。今は子供とも言えるし、大人とも言える19歳なので、それを残り半年間最大限に生かしていきたいですね(笑)。20歳になったらたぶんすごい変わると思うんですよ。できることも増えると思うので、いい意味でどんどん進化していきたいなと思います」
(おわり)
取材・文/大窪由香
写真/佐藤 亮
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