──まずは三阪さんの、音楽との出会いを教えてください。

「もともと両親が音楽が好きで、母は音大でピアノをやっていて、父は高校生の時にバンドでボーカルをやっていたそうなんです。それで家や車の中で日常的に音楽がたくさん流れていました。その影響なのかなと思いますが、ちっちゃい頃から歌うことが大好きでした。小学生の時にダンスを習っていて、そのダンススクールで“上を目指すなら違うスクールでステップアップしたほうがいい”と言われて、行ったところがダンス&ボーカルスクールだったんです。本格的に歌い始めたのはそこからです。習って3ヵ月ぐらいの時にそのスクールのコンテストがあって、そこで賞をいただいた時に、もしかしたら音楽でやっていけるんじゃないかと思って(笑)。それが小学5年生か6年生ぐらいだったんですけど、そこから歌を習いつつ、ライブハウスに出たり路上で歌ったりするようになり、今に至ります」

──日常に音楽がある環境だったんですね。よく聴いていたアーティストや、憧れていたアーティストはいますか?

「父が車の中でよくコブクロさんやSuperflyさん、宇多田ヒカルさんを流していて、特にSuperflyさんが大好きでした。歌詞の意味を全然理解していないのに、ずっと歌ってましたね。洋楽もたぶん父の影響なんですけど、P!nkとかシーラとかが大好きで、アルバムを借りて車で聴いていました」

──小さい頃からダンスを習っていたので、洋楽にも知らず知らずに馴染んでいたんでしょうね。

「確かにそうですね。これが洋楽だと思って聴いていたわけじゃなかったと思うんですけど、とても好きでした」

──ライブハウスや路上では、どんな活動を?

「当時、ライブハウスではカバー曲を歌っていて、いろんなジャンル、いろんな世代の人たちと一緒にやっていました。だけどライブハウスってお客さんが限られているじゃないですか。もっといろんな人に歌を聴いてもらうにはどうしたらいいだろう?と思って、路上ライブを始めようと思ったんです。それで、梅田の北広場にある「MUSIC BUSKER」という場所のオーディションを受けて選んでいただいたので、そこでやっていました」

──心が折れたりすることはなかったですか?

「今から始めるとなると、いろんなマイナスなこととかを考えちゃってやりづらいかもしれないですけど、その頃は小学生だったので、いい意味で何も考えてなかったんですよ(笑)。だから、路上に対しても怖いイメージはなくて、ただただ聴いてもらいたいという、純粋な気持ちでやっていたと思います」

──路上でやる時は楽器も自分で演奏していたんですか?

「はい。「MUSIC BUSKER」では、何かひとつ楽器を持たないといけなかったので、ギターを練習しました。でも結構動き回りながら歌ったりするので、タンバリンを持って歌ったりしてましたね(笑)」

──自分で作詞や作曲をするようになったのはいつ頃から?

「「MUSIC BUSKER」のオーディションが、カバー曲がダメでオリジナル曲を作らないといけなかったんですよ。ライブハウスで対バンしていた方にギターを教えてもらっていたんですけど、その方が“一緒に作ろう”って言ってくれて(笑)。打ち込みで曲を作れる方だったので、一緒に作ってもらいました」

──ずっと歌い続けてきて、手応えを感じたのは?

「小学4年生ぐらいから歌を歌い始めて、ライブハウスや路上でずっと歌っていたんですけど、中学3年生の時に「音楽チャンプ」という番組に出させていただいて、その2週間後にはフォロワーが十数万人になっていたんです。テレビに出たタイミングで、ファンの方達が路上ライブの映像や、ライブハウスで歌ってた時の映像をYouTubeに一気にアップしてくださっていたんですよ。テレビで知った方達が検索して目にすることができるように、ファンの皆さんが広げてくれていたんです。それがすごい嬉しかったです。その後高校生になって、第98回全国高校サッカー選手権大会の応援歌を歌わせてもらうことになって。それまではもう一瞬でした。1年経つか経たないかぐらいの間に、スタジアムに立たせていただいたので」

──地道にやってきた活動が人と人を繋いで広がっていったと。

「はい。それまでやってきたことが報われたなと思いました。まだ夢は叶ってはいないですけど、ターニングポイントになったと思います。テレビに出た後に、あべのAステージというステージに立ったんですけど、400人ぐらいのキャパシティのところに1000人以上の方が見に来てくださったんです。その時に、主催してくださっていた方が、“このステージは関西の路上をやってる子たちに立ってもらって、いろんな人に聴いてもらうきっかけを作れたらいいなと思って作ったから、咲ちゃんがああいう景色を見せてくれたことがすごく嬉しい”と言ってくださって。自分だけじゃなく、嬉しいと思ってくださる方がいてくれて、ここまでやってきてよかったなと、生きがいを感じました」

──昨年12月にはEX Theater Roppongiから無観客ライブを配信されましたね。初めての経験だったと思いますが、やってみていかがでしたか?

「EX Theaterは、全国ツアーのファイナル公演で立つ予定だったステージだったんです。なので、正直すごい寂しかったです。この会場がお客さんでいっぱいになっていたらと想像しながらライブをやったんですが、配信は配信でいいところもたくさんあったなと思っていて。たとえば会場ではお客さんの席が決まっているので、そこからの視点しか見れないですけど、配信だったらいろんな視点から見ることができますし、バンドの方の表情や指の動きまで全部見ていただけますから。もちろん生で感じる音とは全然違うけど、それぞれが聴きたい時に、聴きたい環境の中で観ていただくことができて、自由度が広がったなと思いました」

──そんな無観客ライブを経て、今年開催した全国ツアーは楽しかったですか?

「楽しかったですね。私の曲は、みなさんに声を出してもらう曲ばっかりなので、最初はどうしようかなと思ってたんですけど、声が出せない分、手を挙げてくださったり拍手してくださったりして、みなさんの思いはちゃんと伝わってきました。いつもはみなさんと会話しながらMCをしていたんですけど、一人しゃべりがめちゃくちゃうまくなったような気がします(笑)」

──そして、いよいよメジャーデビューデジタルEP「I am Me」が11月1日にリリースされます。インディーズ時代の楽曲の多くは三阪さんが作詞されていましたが、本作はだいぶ洋楽志向というか、がらっとイメージが変わりましたね。

「洋楽をずっと聴いて育ってきて、もともとEDMとかが大好きだったんですよ。私もそういう音楽もずっとやりたいと思っていて、今回メジャーデビューのタイミングでそれを実現することができました。なので、今回は自分で作詞をしていませんが、この曲はこういう歌詞にしたいという思いをそれぞれに伝えさせてもらって、歌詞を書いていただきました。」

──楽曲に関しては、どうやってセレクトしましたか?

「今までは等身大な感じの楽曲を歌ってきたんですが、18歳になって、かっこいい音楽をやっていきたいなという思いがあって。スタッフのみなさんで共有していただいたんです。それを元に、まずはスタッフのみなさんが厳選をした曲を私のところに送ってくださって、その中からシンプルにかっこいいなと思った曲をセレクトさせていただきました。自信をもって、かっこいいと思える4曲が揃ったと思います」

──1曲目の「My Type」は、SNSを使ったいまどきの恋愛ソングですが、大人っぽいボーカルが聴かせどころですね。

「そうですね。今まではわりとパワフルに歌を出す曲が多かったんですけど、この曲はいい意味でちょっと力の抜けた、大人っぽいボーカルになっています。歌詞はInstagramという言葉も出てきていまどきっぽくて、ちょっとキュートな感じ。最近の若い人たちは、インスタで出会って、会ったことないけどDMでお話をして好きになって、恋に発展したりすることが多くて。そういうことを歌詞にしてもらいました」

──ボーカルは三阪さんがこうやってふだんしゃべっているような声のトーンに近い感じがします。

「今までキーの高い曲が多かったんですが、いつものキーよりも低いですね。ちょっと落として、大人のちょっとウエットな感情を表現できたらいいなと思いました。今回どの曲も英語と日本語が混ざっていて、それがすごい難しかったんですけど、日本語を日本語としてちゃんと歌ってしまうと英語となじまなかったり、曲となじまなかったりするので、少し英語っぽく歌ったりして、どの曲も聴き心地を大事にしました」

──2曲目の「Get Stronger」はさらに低音の魅力が炸裂しています。

「この曲は声もそうなんですけど、曲自体も低音がバスバスと鳴っているので、すごいかっこいいですよね。それこそ、でっかい会場でバスバス鳴っているとかっこいいだろうなと思いながら聴いていました。ライブでやるのが楽しみです。歌詞は、試合とかでもなんでもそうなんですけど、勝つのは一チームだったり一人だったりして、負けた人は何か報われない感じがするじゃないですか。でも、負けた人たちには負けた人たちにしかわからない気持ちが生まれたり、負けたからこそ出来たことってたくさんあるなと思って、敗者の方に焦点を当てて書いてもらいました。トラックとのハマりがすごくよくて、めちゃくちゃかっこよくなっています。あと、ラップもしていて綺麗に韻を踏んでいるので、かっこいいなって思ってもらえたら嬉しいです」

──この曲の作詞はASOBiSMさんですね。

「ASOBiSMさんが曲に歌詞を吹き込んで送ってきてくださった時に、ラップの部分がうますぎて、そのまま使いたいなと思ったくらいです(笑)。だからすごく大変でした。ASOBiSMさんの曲をたくさん聴いて、ラップ頑張りました!」

──3曲目の「DANNNA」なんですけど、この曲の歌詞はどういうテーマなんですか?

「私は今、女子校に通っているんですけど、みんな自分の好きな俳優さんやアーティスト、推しのことを“ダンナ”って言うんですよ。男性が“ヨメ”って言うのと同じですね。そういうお話しをスタッフさんとしていたら、面白いからそれを歌詞にしようっていう話になって、こうなりました(笑)」

──そういうことだったんですね。誰かのダンナさんを好きになってしまった歌なのかと、言葉をそのまんま受け取ってしまいました(笑)。

「違うんですよ(笑)。本当にもう女子トークがきっかけです。私もまさかそれが歌詞になるとは思ってなかったんですけど」

──この曲はイントロがちょっと歌謡曲チックだったり、転調も面白くて、インパクトのある曲ですね。

「そうですね、最初に聴くと“どういう曲なんだろう?”って思いますよね(笑)。この4曲の中でいちばんパワフルな曲だと思います。何回も聴いてると、キャッチーなところがたくさんあって、頭から離れない曲になっていると思うので、たくさん聴いてください」

──そして4曲目の「Rollercoaster」は、メロディの綺麗なドラマチックな曲ですね。

「この曲は初めてデモを聴いた時に、エモいなと思った曲で、めちゃくちゃ好きです。詞を書いてくださったMuginoさんと歌詞の方向性の話をした時に、恋バナをしたんです(笑)。そうしたら私とMuginoさんと、恋愛観が少し似ていて、それを歌詞にしていこうということで書いていただきました。少しツンデレな感じだったり、<後悔させないで>とか<受け止めてよ>とか、少し言葉が強いんですよ。でも<君が好きだ>っていう、ちょっとキュートな歌詞になっています」

──あと、この曲はコーラスワークも素晴らしいです。

「この曲のコーラス、大変だったんですよー!レコーディングに12時間かかったんですけど、いい感じにできたと思うので嬉しいです」

──タイトルの「I am Me」に込めた思いを教えてください。

「インディーズから応援してくださっている方は、この曲たちを聴いてびっくりしたり、“変わっちゃったの?”と思うかもしれませんが、変わったというよりは、どんどん挑戦していく姿とか、進化していく姿を見てもらいたいなと思っています。そんな姿も全部“私”なんだよっていう意味も込めています。そして、この作品で新しく出会う人たちもいると思うので、その人たちにも“これが三阪咲なんだ”と思ってもらえたら嬉しいなと思って「I am Me」というタイトルにしました」

──どの曲もメイン曲だと言えるくらい強力な曲が並んだと思います。今作を通して、リスナーのみなさんにどんなことを伝えたいですか?

「どの曲も歌詞をすごく大事にしたし、シンプルに聴いてかっこいいなと思える曲になったと思います。たとえば洋楽を聴いている時の自分ってかっこいいなって、思ったりすることがあるじゃないですか。この曲を聴いている自分がかっこいいな、みたいな、誰かにとってそんなふうに思えるような曲になれればいいなと思っています。何より私自身が心からかっこいいと思える、自信をもって“これが私です”って言えるEPになっているので、そのメッセージを受け取ってもらえたら嬉しいです」

──いよいよメジャーデビューですが、これからどんなアーティストになりたいですか?

「先ほども言いましたが、進化していって挑戦していく姿をみなさんにずっと届けていきたいなと思いますし、この曲を聴いたらテンションが上がるとか、誰かのそばにいられるような曲をどんどん作って歌っていけたらいいなと思っているので、楽しみにしていてもらえたら嬉しいです。どんどん大きいステージに立って、たくさんの人に聴いていただいて、たくさんの人を幸せにしていきたいと思います」

──さきほど、まだ夢は叶っていないとおっしゃっていましたが、その夢って?

「いちばん近い夢だとZeppでライブをやることが夢で、それからホールやアリーナ、ドームもスタジアムもやりたいなと。高校サッカーの時にスタジアムで歌わせてもらった時に、ここにいる5万2千人全員がファンのみなさんだったら、きっと素敵だろうなとか、そういうことを感じられるステージをこれまでもたくさん経験してきました。全部叶えられるかどうかはわかりませんが、叶えられると思って頑張っていきたいなと思います」

(おわり)

取材・文/大窪由香


PROFILE三阪 咲(みさか さき)

SNSを中心にZ世代から熱い注目を集める女性シンガー。幼少の頃からダンス、ピアノ、ギターを習い始め、11歳で歌手を目指すことを決意。以降、路上ライブやライブハウス出演など積極的な音楽活動を開始。洋邦問わず幅広く歌いこなすソウルフルな歌声と、観客を魅了するステージング、溌溂としたキャラクターがYouTubeやSNSなどを通じて話題となる。2019年、「繋げ!」が史上最年少で第98回全国高校サッカー選手権大会の応援歌に抜擢。「私を好きになってくれませんか?」がABEMA「今日、好きになりました。」の主題歌に、「Bling Bling」がティーン誌『Seventeen』史上初となるテーマソングになる。2021年11月1日、EP「I am ME」でソニー・ミュージックレーベルズからメジャーデビュー。

三阪 咲オフィシャルサイト

LIVE INFOSaki Misaka One-Man Live 2022 at KT ZEPP Yokohama

2022年3月6日(日)@KT Zepp Yokohama

イープラス

三阪 咲「I am ME」

2021年11月1日(月)配信
アリオラジャパン

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