──昨年9月に、15歳のときから約11年間在籍したアイドルグループ=SKE48を卒業されて、卒業後初のソロシングル「鍵の在処」をデジタルリリース。収録曲についてはもちろんですが、本格的にソロ活動をスタートさせた現在の心境なども聞ければと思います。まず、グループ卒業後はどんな日々を送っていたんでしょうか?

「これからの人生について考えるために、自分と向き合っている時間が多かったと思います。今まではアイドル=古畑奈和の人生を考えてきたんですけど、これからはいち個人としての古畑奈和の人生を考えなきゃいけない。いよいよそういうステージに入ったんだなって、これまで以上に日々の重みが増えた感じがします」

──その中で思い描いた、“これからの古畑奈和”は?

「歌と演技を2つの軸にして、どちらも疎かにせずに挑戦していきたいと思っています。グループにいた頃からソロで歌わせていただく機会はありましたけど、やっぱり歌うこと、音楽が私は大好きなんです。演技についても、SKE48時代からいろんな舞台に出演させていただいて、演じることが楽しいという感覚がありました。そんな自分をあらためて確認して、これからは歌と演技の2つを軸にしようと思ったんです」

──2つの軸の1つ。歌の本格的なスタートが、「鍵の在処」になると思います。表題曲の「鍵の在処」は、速いテンポのサウンドに言葉数の多い歌詞が乗っていく、今の時代感がある楽曲に仕上がっています。

「作詞家の方やスタッフさんと話をして、自分のことを歌っている曲を書いていただきました。私は、曲を歌ったり、役を演じたり、人と会ったりする中で、いろんな自分が出てきて、ふとどれが本当の自分かわからなくなることがあるんです。それはきっと、聴いてくださるみなさんにもあるんじゃないかな?って思います。仕事での自分、家族といる自分、友だちといる自分、SNSの自分。いろんな自分があって、どれが本当の自分かわからなくなる。それに対して悩んだり、不安になったりすることもあるけど、本当はどれも自分だし、いろんな自分が生まれる中で新しい自分に出会うこともある。それは喜びでもあると思うし、いろんな自分がいることをポジティブに捉えられる歌になったと思います」

──プライベートでも、いろんな自分がいる?

「いますね。私は、相手によってこうありたいという自分があるので、この人の前ではこういなきゃ、この子の前ではこうしたいって考えるタイプなので、プライベートでも時々自分がわからなくなるんです。以前はそんな自分について悩んでいたんですけど、「鍵の在処」はそんな悩みに対するアンサーというか、歌にすることで“そうか。全部が自分だよな”って思うことができたので。以前は“どれが本当の私なんだろう?”って無限ループしてたんですけど(笑)、もう大丈夫です。「鍵の在処」ができたので、いつでも聴けるし、いつでも歌えるので、全部が自分なんだって思えます」

──歌い手としての挑戦も多い楽曲だったと思います。

「アップテンポで音程の上がり下がりも激しいですし、ブレスもクイックブレスなので息継ぎも本当にむずかしくて。SKE48時代にはなかったタイプの曲で、“歌い手として試されてるなー”と思ったんですけど、それでも最終的には歌っていて楽しかったです」

──新しいことに挑戦して、新しい自分に出会うことは楽しいですか?

「楽しいです。自分ってこういう考え方もできるんだってわかったり、こうなると自分はダメになるんだなって知れたり。そうやってどんどん自分を客観的に見れるようになって、自分を攻略していくっていうか。そんな中で出会った新しい自分は、大切にしてあげたいなって思います」

──カップリング曲の「Moonlight parade」は、初めて作詞に挑戦した楽曲になりました。

「ライブで声が出せる曲にしたいということと、ファンの方を応援する歌を書きたいという2つの軸を決めて、歌詞を書きはじめました。“じゃあどうしよう?”って考えたときに、私には『NAOPARADE(なおパレ)』っていうファンクラブがあって、みんなと一緒にパレードしているような楽しいファンクラブにしたいという思いが、そこには込められているんです。そのロゴやデザインのモチーフに月があったりするので、そこから「Moonlight parade」というタイトルにして、君を明るい世界に連れていく物語を歌詞にしました」

──初めての作詞は楽しかったですか?

「言葉がスラスラ出るようになってからは楽しかったですけど、その前の時間が長かったなって思います(笑)。まだ言葉の組み立て方が拙かったり、韻が上手に踏めるわけでもないですから。でも、今後の自分にいろんなことが起こって、それを歌詞にしたいって思ったときに、しっかりと書ける自分ではありたいなと思っています」

──リリース後、ソロとしての次のステップがライブになると思います。すでに1st LIVE『Moonlight parade』が8月26日(土)に東京・恵比寿のThe Garden Roomで開催されることが発表されていますが、今後のライブについては今どんな思いを抱いていますか?

「私、卒業コンサートのときにファンのみなさんの声が聞けなかったんです。その前の2年間ぐらいも、みんなの声は聞けていません。だから、もう1回みんなの声が聞きたいという思いがずっとありました。今、やっとライブで声を出していい状況になっているので、ファンのみなさんには声を思う存分出してほしい。その一心です。ソロのライブではアイドルの私とはまた違った私を見せられると思うし、お互いに声を出し合うことで一体感が生まれたら最高だなって思っています」

──昨年、SKE48を卒業する目前のインタビューで“私にとってアイドルは、夢みたいなもの”と語ってくれました。ソロとして本格的に活動をスタートさせた今は、アイドル時代の自分に対してはどんな思いがありますか?

「アイドルの世界って、すごくまぶしいじゃないですか。私自身、そんなアイドルの世界にいたからこそ、キラキラと輝かせていただいていた部分があると思います。今は、そのときの自分に負けないようにしたいという思いが、自分を駆り立てています。過去の自分に挑戦するというか、その気持ちがあるから今も頑張れています。そう考えると、SKE48での経験はすごく貴重なものだったとあらためて思います」

──プライベートも含め、これからの古畑奈和はどんな人になっていきたいですか?

「まず、趣味を見つけたいですね(笑)。今までの私は、本当に趣味がなくて。刺激をもらえたり、没頭するほど好きな趣味があれば、もっと素敵な人生になって、自分も豊かになるんじゃないかなって。だから、本気で趣味は見つけたいですね。あとは、芯があって凛とした人、かっこいい背中を見せられる強い人になりたいという気持ちもあります。そう思うようになったのは、自分には弱い部分がたくさんあることがわかってきたからなんです。だから、ブレない強さを持っている人がかっこよく見えるし、憧れるんです。でも、弱い部分を見せられるのも強さだってこともよくわかっているから、今はこんなこと言ってますけど、何年後かには“やっぱり人に頼るって大事ですね!”って…たぶん言っていると思います(笑)」

──どんな自分も自分だし、新しい変化をいとわないし、ためらわないっていう。

「はい(笑)。そういうふうに捉えていただけたら!」

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

古畑奈和「鍵の在処」

2023年816日(水)デジタルリリース
収録曲:鍵の在処 / Moonlight parade

LIVE INFORMATION

古畑奈和 1st LIVE 「Moonlight parade」

2023年826日(土)
会場:東京・The Garden Room
1部>開場 13:15 / 開演 14:00
2部>開場 17:15 / 開演 18:00

チケット一般発売中
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チケットぴあ(Pコード:248-883)

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