――encore初登場のaoさん。改めて、これまでの経歴をお伺いしたいと思います。音楽との出会いは?
「3歳か4歳の頃にピアノを習い始めて、今も続けているんですけど。小学5年生くらいまではあんまりポップスは聞いたことがなくて。でも、TWICEの「TT」が流行ってきたときに、そのまま流行に乗っかって(笑)、BLACKPINKやBTS、SEVENTEENとか、いろんなK-POPのグループを知っていって。それを入り口に、YouTubeでどんどん音楽を掘っていって、K-POPアーティストがカバーしてる洋楽にたどり着いて、洋楽にどっぷりハマって、自分の好きな音楽を見つけていきました」
――好きな音楽というのは?
「グレース・ヴァンダーウォールさんです。私は小学校6年生、12歳の時にオーディションを受けたんですけど、オーディションを受ける2週間前くらいに、私より2歳年上のグレース・ヴァンダーウォールさんが12歳の時にオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」で優勝したことを知ったんです。彼女の映像を見て、そこからウクレレを練習して、オーディションを受けました」
――オーディションを受けようと思ったのはどうしてだったんですか?
「もともと歌うことはすごく好きだったんですけど、“絶対に歌手になるぞ!”っていう気持ちで受けたわけじゃなくて。“今の自分の実力はどんなもんなんだろう?”っていう力試しのつもりでした。お母さんも“そんなの受かるわけないよ”みたいな感じでしたし(笑)、平成が終わる年だったので、平成最後の夏休みの思い出ってことでオーディションを受けました」
――それが4年前の2018年の夏ですね。オーディションのことは覚えてます?
「最初は音響システムも何もない練習室みたいなところでした(笑)。裸足でウクレレ一本でグレース・ワンダーオールがカバーしていた「Over The Rainbow」を歌ったんです。審査員の方も1人しかいなかったんですけど、最終審査は何人かの審査員の方の前でマイクを通して歌いました。ファイナリストの皆さんと一緒にっていう感じでした」
――合格した時はもう将来は歌手になりたいと思ってましたか?
「いや、そのときもあんまり思っていなくて。まだ本当にウクレレを始めたばっかりだったし、曲を作ったこともなかったので、“まさか”っていう感じでした。合格してからはどんどんことが進んでいって、逆に私が圧倒されるみたいな感じでしたね。」
――そこから作曲のレッスンに通い始めるんですね。
「そうです。ボーカルの面では、自分の個性というか、“こういう歌い方をしたい”というのはあって。ただ音楽作りの面では経験がなかったので、不安なところがあったんですけど、ロジックを習って、DTMで音楽作りを始めていって」
――最初に作った曲は?
「小学6年生の時に作った「pillow」という曲です。お母さんのスマホのボイスメモにしか入ってないんですけど、ウクレレで4つのコードを弾きながら、適当に鼻歌で歌って、歌詞を書いて。今と作り方はあんまり変わってないんですけど、ウクレレと携帯1台で作ってました」
――先ほどあった“自分の歌い方”というのは?
「洋楽をずっと聞いていたので、自分で作る曲は洋楽っぽいメロディーラインが多くって、歌詞も英語メインだったりするんですよね。歌い方も洋楽を真似するところから入っていて。小学校の低学年のときは張り上げ系というか、歌い上げ系だったんですけど、声があまり高くなくて、低めだったので、“この歌い方は合わないな”って思っていた時に洋楽に出会って。“この歌い方だ!”と思って、完コピから始めたんです。洋楽のような歌い方が自分に染みついてきたときに、その歌い方で日本語の曲を歌ってみて、自分のものにしていきました」
――そして、中学2年生になった2020年9月に「no THANKYOU」を自主配信してます。
「自分で初めてDTMを買った直後に作った曲です。学校の友達と些細なことで喧嘩をしてしまって、その時の気持ちを書きました。それまではお母さんに歌詞作りを手伝ってもらってたりしたんですけど、この曲は本当に自分の実体験を元にして、本当に自分の言葉で、自分の思いを書いた曲なんです」
――1年後の2021年9月に「Tag」でメジャーデビューを果たしますが、どんな変化がありましたか?
「メジャーデビューした後は、“広告で見たよ”とか、“ラジオでかかってたよ”とか、友達に言われるようになりました。全然知らない先輩からも声をかけられるようになったんです。自分で“曲を出してます!”って言わなくても、知らない誰かが自分のことをどこかで発見してくれているっていう状況が不思議でたまらなくて。でも、同時に“嬉しいな!”という思いがすごく強かったですね。そこから、地道にですけど、自分の想像してた数字の何倍も多い再生回数で聴いて頂いたりするようになっていって…。でも、本当に実感し始めたのは、2022年になってからですね。Spotifyの<RADAR: Early Noise 2022>に選んでいただいて」
――メディアで取り上げられる機会も増えましたよね。
「そうですね。『スッキリ』や『ZIP!』、『news every.』とかに出ている自分を見て、“あ、テレビに映ってる”って思って(笑)。“本当にデビューしたんだな”っていう気持ちになりました。SNSで見知らぬ人からコメントをいただけることにも驚いたんですけど、周りの一番身近な友達にも“テレビで見たよ”とか、“渋谷の広告塔にいた”って言われると、より実感が湧いてきて。実際に自分でも渋谷に行って看板を目にすると、なんというか、世の中に自分が出てる、広まってきているんだなって嬉しく感じますね」
――話題になったり、反響がることに対してはどんな感情を抱いてますか?
「嬉しいですし、不思議っていうのが一番大きいんですけど、“次はどんな曲を書こうかな?”っていう気持ちもどんどん芽生えてきています。リリースしていくごとに、リスナーの皆さんが求めるものも段々意識したりして。以前は“日本語が聞き取りづらい”って言われることもあったので、最近は日本語の歌詞をメインにしたり、日本語がはっきり聞こえてくるように曲を作ってみたりしていて。今は、ずっとそういう挑戦の過程にいますね」
――2022年3月にリリースした1st EP「LOOK」はご自身にとってどんな作品になってますか?
「初めて自分のCDを見たときに、“あ、CDになっちゃったんだ!”っていう感覚が強くて(笑)。中学生の頃にリリースしたので、給食の時間に友達がかけてくれてりして。校内放送で自分の曲が流れているっていうことが信じられなかったですし、そのときは本当に不思議っていう感覚が一番強かったです」
――小学校6年生から中学3年生までの4年間で制作した楽曲が収録されていますね。
「そうです。「kekka(first recording ver.)」がEPの中では一番古い楽曲なんですけど、スクールにいた時代に、ウクレレとスマホ1台で作った曲なんです。「you too」はTomoLowさんとの共作です。そこまで大した年数ではないけど、作曲を始めてから私が今まで歩んできた道が1枚に詰まっていますし、“リアルな私が見れるんじゃないかな?“と思っています」
――TomoLowやYaffle、TAARなど、楽曲ごとに違うプロデューサーさんを迎えて制作する中で、ご自身の音楽性について何か見えたものとかってありましたか?
「すごく素敵な音楽を作ってくださったので、音楽の聞き方も変わって。トラックメイキングをすごく意識するようになりました。今までは本当に歌しか聴いていなかったんですけど、音色とか、楽器の音が入るタイミングとか、より音楽的な聞き方ができるようになって。自分の曲に関しては、一つ一つの楽曲を独立させたいっていう思いがあります。“同じような曲にはしたくない”というか。1曲ずつ違う思いがあるので、全然違う曲なのに、リスナーさんからしたらちょっと同じように聞こえるのはもったいないですし、私も悔しいんです。だから、一つ一つを独立させたいっていう思いが、いろんなプロデューサーさんのおかげで叶っています」
――一つのジャンルに縛られないってことですかね。
「そうですね。まだやってないジャンルやテイストもあるし、これからも挑戦を続けていけたらと思います。「チェンジ」のときに初めてラップをやって、“自分に合っているかも”って感じたので、もうちょっと経験を重ねながら、いろんなジャンルをやっていきたいと思います」
――2022年はその「チェンジ」に加えて、「リップル」「余所見」というデジタルシングルも配信しましたが、どんな1年になりましたか?
「メジャーデビューをしたのが2021年の9月だったので、2022年までは本当にあっという間でした。<RADAR: Early Noise 2022>に選んでいただいて、メディアに本格的に取り上げていただくようになって。自分でもびっくりするぐらいにインスタのフォロワーとかYouTubeの登録者数や再生回数が本当に伸びて。それと同時に、生み出すことの大変さを感じたり、初めて壁にぶち当たったりもして。ライブのステージはまだ数が少ないんですけど、5月にTOKIO TOKYOというライブハウスでライブをやったんです。本当にお客さんとの距離が近かったし、初めてファンの方に直接会えて。お顔を初めて見れたことがとっても嬉しかったです」
――とても堂々としたステージングだなと感じてますが、緊張はしないんですか?
「すごく楽しいです。曲を作ったときの思いとはまた違う思いを乗せて、ファンの方に直接音楽を届けることができるのが嬉しくって。きっと、その場にいる人も私のライブで、その日だけ感じることがあるだろうし、本当に素敵な空間だなと思っていて。だから、“ライブをもっとやりたい”って気持ちで、もっともっと経験を積んで、いいライブができたらなっていう思いもあります」
――どういうライブがしたいですか?
「もちろん人数を増やしたいっていうのも一つの目標ですし、もっと曲数をたくさんやりたいし、いろんなアレンジでもやりたい。普段、デバイスから聞くノーマルなものとは違う形で会場に足を運んでくれたお客さんに感動を届けられるライブをやりたいです」
――11月30日には新曲「瞬きと精神と君の歌と音楽と」がリリースされました。
「私の初めてのラブソングです。前々からラブソングを書きたいとは思っていたんですけど、書けないっていう状況が続いていたんです。でも、新曲は“ウィンターバラードにしよう”っていう話になったときに、ラブソングを書くチャンスなんじゃないかな?と思って。しっとりした音楽に乗せられるぴったりの歌詞はラブソングなんじゃないかな?って思うので、“ここがチャンスだ”と思って挑戦してみました」
――どんな思いで作った曲でしたか?
「私が客観的に見たものなんですけど、最終的には結ばれない恋を書きました」
――そうなんですね。見つめ合ってる2人の瞬間を切り取ったイメージでした。
「恋愛のドキッとする一瞬みたいな、そういう優しい気持ちになれる曲を作りたくて書いた曲なので嬉しいです」
――でも、結ばれないんですね。
「そうですね(笑)。きっかけはいろいろあって。ミュージカル『レ・ミゼラブル』を観ていたので、昔のミュージカルや王宮のようなイメージが浮かんだんです。あと、灰色のブラインドがある電車に乗っていたんですよ。ブラインド越しに窓をずっと見てて、太陽がないときは綺麗に景色が見えるのに、太陽が当たった時は全部影になって見えなくなっちゃう。陽が当たることで消える恋愛みたいなのってあるのかな?って思ったり。いろんなところからちょっとずつインスピレーションを受けて描きました」
――タイトルはどんな意味ですか?
「今回は歌詞のことを一番に考えて作ったので、歌詞からタイトルを決めたいなと思って。でも、歌詞から取るには。ちょっといろんなこと言い過ぎてて(笑)。繰り返しが少ないんですけど、<瞬きと精神と君の歌と音楽と>は相手の全部を言ってる気がして。相手に埋もれたいとか、のまれたいという切実な思いが一番出てるフレーズだなって思ったので、この歌詞をタイトルにしました」
――全編日本語だけのバラードのレコーディングはどんな思いで臨みましたか?
「レコーディングのときに、ESME MORIさんもいらっしゃって、一緒に相談しながら作ったんですけど、基本的には“歌い上げたいな”って思っていました。今までは歌い上げるよりも、流れるような感じのメロディーが多かったんですけど、ここは感情を込めて歌おうっと思って、歌詞の一つ一つをと考えながらイメージを膨らませて歌いました。私の曲の中で初めてのテイストのバラード。一番J-POPっぽいメロディなので新鮮に聴いてもらえたらいいなと思います」
――MVではピアノを弾いてますね。
「ピアノが主役のバラードだったので、ピアノをMVにも登場させたいと思っていたんです。私自身、ピアノをずっと習っていたので、ちゃんと意味のある曲で使えて嬉しいですし、ピアノを弾いてる姿をあまり公開したことがなくて。“ピアノが弾けるんだ!”、“新鮮”って声もいただいたので、それもすごくよかったなって思います」
――この曲を経て2023年はどうしていきたいですか?
「もっと作曲の経験を積んで、能力を上げて、まだ挑戦したことない曲に挑戦したいです。あとはやっぱりライブをもっとしたいなっていう思いがすごく強くて。2022年はライブっていうライブは2回くらいしかできていないので、ファンの方に直接会って、直接音楽を届けてっていう場をもっと作れたらなと思っています」
――作詞作曲っていうのはこだわってきます?
「はい。やっぱり伝えたいことがないと歌っても意味がないと思います。ちゃんと自分が伝えたいことを自分の言葉にして、発信するっていうのが私にとって一番大事なプロセスなので、そこはこれからも大切にしていきたいです」
――最後に野望を聞かせてください。
「ミュージックステーションをはじめ、音楽番組に出演して歌いたいです。1度だけ、NHK『Venue101 EXTRA』の公開放送に出演させていただいたんですけど、すっごく楽しくて。有名な歌手の方がたくさん出演されていて、そのパフォーマンスを見てとてもいい経験になりましたし、そういう場を増やしていけたらなって思います。あと、最近ライブを見に行かせていただく機会が多いんですけど、私自身が武道館のような大きい会場の真ん中で輝けたら素敵だなって思っています。それも野望ですね」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/中村功
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