2023年春夏メインコレクションのために、クリエイティブ・ディレクターのウィリアムズは、オーセンティックなワードローブを構成する典型的なガーメントとアクセサリーを明確にし、パリの職⼈たちが誇るクラフツマンシップとテクノロジーの可能性を通してアイテムの魅⼒を増幅させた。
ジバンシィの歴史を物語るドレスコードに対する⾃らの世代らしいアプローチを反映させ、私⽣活やジバンシィでの仕事の中で、ウィリアムズを取り巻くアーティストやミュージシャン、デザイナーなどの男性たちにインスパイアされた「コミュニティの装い」という⾃由で流れるような表現によって、サブカルチャー的な要素をあたかも「異花受粉」させるかのように組み込んだ。
⾳楽を担当し、ショーに影響を及ぼしたのが、過激なルックスと⿊⽬を⼤きく⾒せるコンタクトレンズの着⽤で知られるジャマイカ出⾝のダンスホール&レゲエアーティスト、アルカライン。
オートクチュールの制作を通して脱構築を探求する中で、ウィリアムズはメゾンの洗練されたエレガンスを介して、彼の⺟国、アメリカ社会を象徴する「ユニフォーム」を表現する術を模索してきた。
ブラックとグレーのブレザーやコートには、ボリュームがありながらもリラックス感のある斬新なテーラリングのシルエットが現れ、こうしたアイテムは、膝部分を破ってロゴで飾られたライニングを露出させたセットアップのパンツと合わせている。
それはまさに、スクールボーイが制服をDIYでカスタマイズしたようなスタイルとなっている。
タンやベージュのレザーで仕⽴てたブルゾンとカーゴショーツは、メゾンのレザー⼯場からアップサイクルされた未染⾊の端材をパッチワークし、ラミネート加⼯で丈夫なシルエットに仕上げた。
また、ミントグリーンとブラックのクラシックなシェルジャケットに使われているのは、超軽量レザーだ。
ミリタリーサープラス(軍放出品)を思わせるレザーのバーシティジャケットは、全体に刺繍が施され、ウィリアムズの脚に⼊っているタロットカードのタトゥーと同じモチーフがあしらわれている。
デジタルプリントが施されたウォータープルーフ素材や、4Gロゴ⼊りの⽇本製デニムジャカードに細かいレーザーカットと⼿作業でダメージ加⼯を施したモスリンを重ねたブルゾンやタクティカルベスト、カーゴパンツはカモフラージュモチーフを想起させる。
カモフラージュ柄はまた、ホワイトとプリントのナイロンを重ねて⼿縫いし、⼿作業でサンド加⼯とウォッシュド加⼯を施したワークウェアでも表現されている。
着⽤すると、チョークでオーバープリントされたリップストップナイロンの⽩いカモフラージュ柄がさらに引き⽴つのが特徴だ。
同様に、オーバーダイ(後染め加⼯)で落ち着いた⾊合いになったシェルジャケットやミリタリーパーカーのライニングには、もともとの蛍光⾊が採⽤されている。
リフレクティブ・プリントを施したグレーとブラックのデニムパンツのフロントには、プリントプレスされる際に付くバックパネルの模様が残されている。
写真/ジバンシィ ジャパン提供
クリエイティブ・ディレクターのマシュー・M・ウィリアムズ
「メンズウェアは、当然ですが私がファッションに興味を持つことになったきっかけそのものです。ジバンシィでの仕事において、私のメンズコレクションはそういった本能的な出発点から始まりました。このショーは、私⾃⾝や親しい友⼈、刺激を与えてくれるアーティストといった、私の⾝近にいる男性たちを反映したものであり、男性が⽇常的に着飾る⽅法~新しい世代が⾃⾝の進歩を通じて過去のドレスコードやファッションの原型を受け⼊れ、さらに進化させていく⽅法~を形作るための時間と⽂化の対話です。それはワクワクするような進化であり、私がジバンシィのためのメンズ単独ショーを決めた理由なのです。」