ヤヌーク YANUK

米国ロサンゼルスで2003年に設立されたデニムブランド。その最大の魅力はシルエットの美しさとデニム=窮屈という概念を覆すストレスフリーな履き心地。ウィメンズでは女性らしいシルエットを追求し、メンズでは「いくつになってもデニムが似合う人であって欲しい」との思いを込め、ベーシックながらもスタイルアップして見えるカッティング、過度なダメージや色落ちをあえて避け、清潔感を意識した物作りを展開する。L.A.のセレブに人気を博してブレークした。日本ではカイタックインターナショナルが商品の企画・生産・販売を担っている。

クラフト感よりもクリーンなイメージ表現を

ヤヌーク横浜は2021年4月1日、みなとみらい・新港エリアのオープンモール「マリンアンドウォークヨコハマ」に出店。

港ならでは景観を楽しめる施設のセンターストリート中央に位置し、売り場は51.33坪とヤヌークの直営店で最も広いスペースを有する。

ブランドの物作りとの親和性を重視し、「デニムが持つクラフト感やワーク感をあえて感じさせないクリーンなイメージを表現した」とVMD担当者。

壁面や什器の白を基調に、随所に配置した植物のグリーン、そしてデニムのブルーの3色をキーカラーとする。

従来のデニムのイメージとは一線を画す美しいシルエットとストレスフリーな履き心地を最大の特徴とし、米国ロサンゼルスで誕生した同ブランドの底流にあるリラックス感が、ナチュラルかつシンプルなビジュアルのもとに体現されている。

パートナーとなるデニムとの出会いをサポート

正面に集積しているのは、ヤヌークが「今、最も提案したい」アイテムとそのスタイリング。

ウィメンズ・メンズのコーディネートとそのバリエーションを見せている。

この提案商品を軸に、VMDは木曜日の正午を基本に週替わりで計画されている。

VMD計画を広報がランディングページに落とし込み、これに基づいて売り場のディスプレイを変え、バッグなどコーディネートする小物は各店が顧客のニーズに応じてアレンジする。

さらに広報はインスタライブなどSNSに展開アイテムのスタイリングを投稿する。

顧客はリアルとバーチャルで、「ヤヌークは今、何が推しなのか」をキャッチアップすることができる。

一歩進むと、シーズンならでは商品が目に留まる。

今春夏は素材にフォーカスした。

2018年の発売以来、売れ続けている「リアリーライトデニム」は今年も人気の商品。

緯糸に中空糸を使うことで、デニムながら涼しく穿け、その名の通り超軽量なのが特徴だ。

吸水性・速乾性にも優れ、夏の暑さの中でも快適で、洗濯後の乾きも速い。

撥水加工を施したホワイトデニム「スピルプルーフ」は、雨や食べこぼしも玉のように弾くスグレモノ。

突然の雨にも頼れるアイテムだ。

「プレミアムスクエアード」は、縦横に伸びる360度のストレッチ性が特徴で、ビンテージなデザインとのギャップも新たなデニムの価値となっている。

メンズでは「リゾートジーンズ」が人気。綿をメインにレーヨン、麻、ポリウレタンを混紡し、軽く清涼感のある着心地を生む。

  • 通常のデニムより約25%も軽量、速乾性も魅力の「リアリーライトデニム」
  • 汚れや濡れを気にせずデニムのおしゃれを楽しめる「スピルプルーフ」
  • 「スピルプルーフ」は写真のように水をきれいに弾く
  • メンズで人気の「リゾートジーンズ」

壁面の棚には様々なシルエットの定番デニムが陳列されている。

ヤヌークファンなら既知のことだろうが、シルエット名は専門用語ではなく、海外映画の役名で呼ばれる。

ウィメンズならストレートは「アネット」、スキニーは「パトリシア」、スリムテーパードは「ルース」など、メンズならタイトスリムは「ニール」、スリムテーパードは「ヴィンセント」、テーパードは「フィリップ」など。

デニムをパートナーとして捉える同ブランドらしさが感じられるだけでなく、ポップを見て興味が湧き、スタッフとのコミュニケーションを生む視覚効果もある。

ヤヌークはデニムに特化した中で多様なデザイン、シルエットを展開するが、「売り場の品揃えはかなり絞り込む」ことで、クリーンな空間の鮮度を維持し、お客にとってパートナーとなるデニムとの出会いを促している。

壁面棚にはシルエット別にアイテムを陳列

リラックスしてモノとコトを楽しむコミュニティー

売り場中央に広がるリビングのような空間は同店の大きな特徴。

オリジナルのデニムを使い手作りしたソファは存在感があり、「これが欲しい」というお客様もいるとか。

商品のルックだけでなく、雑誌や子どもが遊べる玩具なども用意されている。

「カップルや家族での来店が多い立地。買い物途中に寛いだり、お父様やお子様が待つ時間を暇にしないようにリラックスできる空間を作った」と言う。

プロジェクターを設置している数少ない直営店でもある。

壁面に映す動画にも工夫を凝らす。

コンテンツは、ヤヌークのデニムを生産している岡山工場の物作りや直営店の紹介、高機能素材を使った商品のビジュアル解説、モデルの野沢和香さんやバレエダンサーの飯島望未さんらとのコラボアイテムのプロモーションビデオなど様々。

ブランドや商品の背景、ショップの特徴を10分ほどに編集し伝えている。

フィッティングルームのマットはデニムの残反を編み、アップサイクルした
デニムで手作りしたソファのあるリラックス空間

店奥にはミシンも設置。

社内検定で資格を取得したスタッフが丈詰めに対応する。

刺繍ミシンも備え、お客様のイニシャルや好きなマークなどを入れるサービスを提供するほか、ワークショップイベントにも活用している。

モノを提供するだけでなく、店の空間や、そこに視覚化された情報、パーソナルな体感によって、リラックスできるコミュニティーを醸成している。

昨年11月には店内でイニシャルなどを刺繍するイベントも開催
ヤヌーク横浜では丈詰めも行う。社内検定で資格を取得したスタッフが対応

VMDはマーチャンダイジングを視覚化することだが、五感に関わるもの全てがその表現要素となる。

ヤヌークでも「香りの範疇で、デニムをはじめとする衣類の洗濯洗剤の取り扱いも始めた」という。

国内外アーティストのライブ衣装をクリーニングする「リブレヨコハマ(洗濯ブラザーズ)」とコラボし、ヤヌークからイメージされるフローラル系の香りを持ち、洗剤が排出された後の分解まで考慮された洗剤を開発。

「デニムウォッシュ サムシングブルー」として提供している。

お客様が服に関して困っていることへのソリューションや環境への配慮の観点でも注目される。

写真/野﨑 慧嗣、カイタックインターナショナル提供
取材・文/久保雅裕

  • デニムの縮みや色落ちを軽減する「デニムウォッシュ サムシングブルー」

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

Journal Cubocci

関連リンク

一覧へ戻る