宮崎貴史(みやざき・たかふみ)

20代後半にヨーロッパ留学中にDESIGUALと出会い、非常にユニークなブランドで興味を持ち、帰国後に他のブランドで働いていた時に、原宿店のオープニングを知り迷わずに応募。2012年12月に原宿のフラッグシップのオープンと同時にストアVMDとしてDESIGUALに入社。その後に横浜トレッサ店店長を経て、2014年10月より西日本のエリアVMDに就任。2020年の9月より全国のVMDの統括を担当。

1984年にスタートしたスペイン・バルセロナ発のファッションブランド、デシグアル。
色鮮やかな独特のカラーリングで、男女問わず人気のブランドだ。
もともとはイビサ島が発祥で、アイコニックジャケットと呼ばれるジーンズのリメイクの商品がブランドの原点である。
「イビサ島のカルチャーにかなり影響を受けていると思います。イビサ島って、ヨーロッパでありながらヒッピーカルチャーのパッチワークや曼荼羅柄など、アジアっぽさを感じる独特のカルチャーがあるんですよ。ブランドとしては、その辺りにインスピレーションを受けていて、実際にイビサに行くと、ブランドのルーツが分かります」とは、ビジュアル マーチャンダイザーの宮崎貴史さん。
イビサ島といえば、島全体がクラブカルチャー中心の島で、世界中のクラブミュージックファンにはおなじみのパーティーアイランドである。

店内に一歩足を踏み入れると目に飛び込んでくるのは、鮮やかなカラーパレットで描く大胆な柄の数々。1階はウィメンズアイテムとアクセサリーを展開。デイリーユースからパーティーなどでも活躍してくれそうなアイテムが勢揃い。
1階エントランスのディスプレイは、常に最新のコレクションやスタイリングを提案。

さて、店舗のVMDに関する指示は、やはり基本的にスペイン本国から来るという。
「上陸当初の2〜3年はすべてがスペイン主導でしたが、日本のカルチャーと違って女性のボディーラインを強調する商材が多く、日本人のお客様にはなかなかハードルが高かったんですよね。日本のマーケット自体も独特な部分があって、売れ筋や商品に対する感覚がスペインとはギャップがあります。そういう点も踏まえて、商品の打ち出しに関しては、この7、8年ほどで日本独自でローカライズしていく方向に変わりました」。
現在のジャパン&アジアカントリーマネージャーであるバラッシュ・クリジャニック氏の就任を機に、徐々にVMDや商品展開の方向性が変わったと話す。

フィッティングルームには3面の鏡を設置しており、角度調節自由、後ろ姿までチェックができ、とても便利。
螺旋階段の天井から吊られたアイコニックなジャケットはブランド誕生のきっかけとなった。

宮崎さんは、VMDを担当しつつ、商品のセレクションにも関わっているそう。
「展開する商材の時期に関しては、本国のマーケティングカレンダーに基づくのですが、日本のカルチャーとフィットしない場合は代替え商品にしたり、展開を遅らせるなどのアレンジを加えています。あとはセレクションで商品を調節しますね。例えば、原宿などの大型店でコラボレーションコレクションやポップなアイテムを展開したり、本国であれば4月くらいからビーチウェアを打ち出しているのですが、日本はゴールデンウィーク以降からしか売れませんので、そこは展開のタイミングを変更しています。気候などが違いますからね。そういった形で積極的にローカライズを行なっています」。
理由がクリアであれば現場に任せてくれるそうだ。

今シーズンのテーマは「Life is Awesome(人生は最高だ)」。
「実は会社のスローガンも一緒で、そこからコレクション名を取る事が多いのですが、特に今季に関しては、創始者であるトーマス・メイヤーが世界的にこのコロナの状況という事もあり、"人生を楽しもう"というポジティブなメッセージにしたようです」と宮崎さん。
「現在、ミッキーマウスとの新作アイテムで円盤のようなプリント柄を展開しているのですが、あれはブランドが昔から取り入れている曼荼羅柄という柄で、一時期は制作自体を減らしていましたが、また復活させて、ブランドとしても原点回帰を目指している感じです」と続けた。

3階のカフェスペースで季節ごとにフリードリンクを提供。買い物の合間にほっとできる場所。
「Desigual in Beta」プラットフォームを通じたアーティストやデザイナー、俳優とのコラボレーションでもクリエイテイビティーを加速させていく。

3月からはまた別のテーマの展開を見せるそうで、「他のデザイナーとのコラボ商品の展開を予定しています」。
と、国内外の多様なアーティスト達の作品展示やコラボレーション商品を販売する。

店内BGMはブランド的なこだわりがあり、スペイン本社が選んだ音楽を流しているという。
「弊社の場合、VMDに関しては"売り上げに直結するか"という部分が求められるんです。ですから、ビジュアル的な感覚だけではなく、売り上げを追ったり、売れ筋を追ったりしています」と、ビジュアル面とビジネス面、その両方をVMDに求められることを語る。

現在、全国に37店舗を展開するデシグアル。
フラッグシップショップは、原宿の他、銀座と心斎橋、名古屋の3ヶ所だ。
「実はコンセプトが3種類あり、毎回3種類の企画を用意しないといけないんですよ(笑)。そこの調節は難しいですね。ちなみに、一番新しい店舗の心斎橋は、ギャラリーをイメージしたようなコンセプトで、他の店舗とは商品の見せ方もまったく違っています。さらに、それプラスでアウトレット店のVMDもコントロールしているので、それ以上のコンセプトがある状況です。それでも出来るだけ同じイメージを打ち出さないといけない。もちろんそこに面白さもありますが、色々なパターンを同時に展開する難しさは感じています」。
店舗によってVMDが変わる多コンセプトの難しさを語ってくれたが、その店舗コンセプトは、リニューアルのタイミングと立地で変わるそうだ。

内装テーマは「地中海」。イビサ島やカナリア諸島などの風景写真を壁に貼り付け、天井にはライトボックスを設置。※写真提供:デシグアル
2021年6月に移転オープンした大阪心斎橋店は売り場面積217平方メートルのワンフロアで、ウィメンズやメンズ、アクセサリーなどを展開。現在国内では唯一のギャラリーコンセプトのストアだ。※写真提供:デシグアル

2012年12月にオープンした原宿の旗艦店は、2019年にリブランディングの一環としてリニューアルオープンした。
「ブランドとして、商品構成もより幅広い年齢層のお客様が手に取りやすいブランドを目指しています。具体的には、商品のバリエーションを増やしてみたり、わかりやすいスタイリングを壁のディスプレイやトルソーのコーディネーションで提案したり。特にここ1年での打ち出し方は変わりました。これからは新規のお客様にアプローチしつつ、既存のお客様にも満足していただけるように、バランスの良いVMDを目指していきたいと考えています」と、今後の課題について話した。

白を基調とした店内。植物が配された壁、温かみのあるウッディーなカウンターや床などが設えられクリーンで開放的な空間へとチェンジ。アルファベットを反転した新ロゴに合わせ、壁面などにあしらわれている逆向きの「D」には、ブランドらしい遊び心がいっぱいだ。

店舗によってさまざまなVMDコンセプトを打ち出すデシグアル。
同一ブランドの直営店ではなかなか見ないスタイルではあるが、デシグアルの面白さは、リアルな実店舗にこそあるのかもしれない。

写真/遠藤純
取材/久保雅裕(くぼ まさひろ)
取材・文/カネコヒデシ

デシグアル ストア 原宿

住所:東京都渋谷区神宮前6-10-8 ウィンベルプラザ原宿
TEL:03-5467-2680
営業時間:11:00-20:00

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

Journal Cubocci

カネコヒデシ

メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。

TYO magazine

関連リンク

一覧へ戻る