路面店を中心に百貨店などさまざまなショップを展開し、メイド・イン・ジャパンのデニムブランドとしておなじみの「45R」。
今回は、青山の骨董通りにある旗艦店、バドウ・アール本店へ。

現代美術作家の杉本博司氏と、建築家の榊田倫之氏によって設立された「新素材研究所」と店づくりをしているバドウ・アール本店。正面にスコットランドの海近くの街をイメージしてウッドラックのパネルが背景で使用されている。

「この秋の祭り『45夜』では、『わいわいスコティッシュ』というテーマで、超ガーゼ素材のインナーをはじめ、コットンツイードやフランネルなど、ベーシックなアウターを上からまとうアイテムを展開しています」とは、VMDチーム リーダーの細谷耕生さん。
45Rの祭りは、春は『sa・ku・Ra』、夏は『WAsshoii』、秋は『45夜』、そして冬に『4545祭り』と、四季に合わせて大きく分けているという。

天井には柳の枝が張り巡らされ、所々に北海道から送ってもらった栗が配置。

店内にはところどころに栗が置かれていたり、天井にはやなぎの枝が張り巡らされていた。

「バドウ・アール本店は、禅的な世界観で詫びの雰囲気を提案しています。だから、そこに栗や柳などがあるのが自然な要素だと考えていて、そういった面白いことを仕掛けています」と今期のVMDの方向性について語る。
さらに「今回の背景は、スコットランドの海近くの街をイメージしてウッドラックのパネルを作りました。スコットランドの店は居抜きでどんどん作るから、壁にポスターを貼って、剥いでを繰り返しているんですね。その景色が海らしいなと。だから、パネルに和紙を貼って、サンドして、ペンキして、昔からあるような壁に仕立てて、アイテムのネイビーが映える背景にしました」と特徴を語った。

VMDの基本は「季節感を大事にしている点」と細谷さん。
「日本の春夏秋冬という季節感を製品を通じてどういう風に伝えるか、というのがひとつ。あとは、アーミッシュやアメリカングラフィティーなど、コレクションのさまざまな要素を入れながら、そこに"どう日本を伝えるか"を大事にしていますね」。

また、海と山という2つの大きなコンセプトを持つという45R。
「海というコンセプトも単純にマリンスタイルではなくワーキングスタイルで表現していたり、海岸にデニムを並べることで海を表現したり。山であれば、川から流木を拾い集めて店内に飾り付けて山の要素を出したり。他ブランドがやらないような解釈を意図的にやっています」と表現方法について話した。

来年、ブランド設立45周年を迎える45R。
毎年、港北にある物流拠点、45スタジオRで開催しているイベント「楽市着座」において、今回はアニバーサリーイベントをイメージしたそうだ。

同イベントのプランニングや進行も行っている細谷さんは「45周年に向けて、スタッフが実際にはき、育て上げたデニムを販売する、"リアルビンテージ"というプロジェクトを作りました。サステイナブルを意識した事はありませんし、あまりこの言葉を使われるのは好ましくないです。元々は、MOTTAINAIという精神から、より45Rの服と長くお付き合い頂けるような取組みを考えてきた結果だと思います。あとは、バドウ・アール本店をリサイズしたような駅にある売店的な1.5坪のポップアップショップ、僕たちはそれをスモールスマアールショップと呼んでいます。それの全国キャラバンを考えています。コンセプトは、Tシャツやバンダナ、シャツなど、45Rのスタンダードを集めたショップです」と45周年イベントの企画案も進行中だ。

「五感で感じるものがすべてVMDである」と考えている細谷さん。
「以前は、お香やポプリの香りを季節に応じて使っていましたし、照明にはかなり力を入れていて、実は百貨店でも照明はすべて変えているんです」。

ただ、音楽に関しては、服で世界観を出すという理由から無音にしていた時期もあったとのこと。
「路面店においては、外部の人にテーマに沿った音源を選曲してもらっていたのですが、ユニオンスペシャルのミシンを踏んでいる店舗もあるので、ミシンの音だけにしていた時期がありました。最近はまた音楽を流していて、丸の内店とバドウ・アール本店ではレコードを流しています」と、ビジュアル以外のVMDも一家言あることがうかがえた。

来年9月にオープン予定の葉山店。
「僕たちは海の本店と呼んでいるのですが、葉山に灯台を建てようということで、12角形で360度ガラス張りの海が見える店づくりをしています」。

さらに「幌馬車と呼んでいるエアストリーム、港北でも展開した飲食販売店を駐車場に置いたり、いま30フィートくらいのヨットも制作していて、スタッフに船舶の免許を取ってもらって、顧客に乗ってもらえるようにしたり。海の匂いがして、海を見ながら服がある。そういう設えをしたいですね」と考えを話す。

細谷さんは海外出張の経験から「海外ではVMDはコンセプトを伝えるという大切な仕事であり、その価値は高いと感じました」という。
コロナの状況もあり、EC購入者と直接来店する客が二極化している現状において、「僕自身は、こだわりのものづくりや、VMDのクオリティーを上げることで、客数に繋がっていくと考えています。45周年に向けて、もちろんハイテク化は強化していくのですが、売り場のビジュアルに関しては、クオリティーを上げてアナログでやることで来店者が新しい受け方をすると思っているので、いまのVMDはかなりアナログに落としています」と、クオリティーを高くする事でリアル店舗に行く意義をつくりたい考えだ。

「また本質の時代が来るのかな。だから、現場のクラスは上げていきたいですよね。やはり、体験を通じたイベントは一番深く心に残りますから、時間軸のある4次元的なイベントが大切になってくると思っています」と、今後のVMDにおける考え方について語ってくれた。

DX化が急進している現在、リアルに感じられるVMDのクオリティーアップが店舗の存在意義を強める起爆剤になっていくのかもしれない。

写真/野﨑慧嗣
取材/久保雅裕(くぼ まさひろ)
取材・文/カネコヒデシ

10月15日に港北スタジオで開催された楽市着座

細谷耕生(ほそや・こうせい)45rpm studio co., ltd.

店舗運営部 VMDチーム リーダー
2008年入社。都内路面店を中心に勤務、店長職を経て2014年より本社VMDチームへ配属。国内外問わず、新店オープンの内装や、イベント、展示会のしつらえを企画立案。

Badou-R本店

住所:東京都港区南青山6丁目5-36 キングホームズ青山
TEL:03-5778-0045
営業時間:11:00-18:00(※第2・第3水曜日定休)

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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カネコヒデシ

メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。

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